兄弟で共有名義にしても大丈夫?共有名義によるトラブルを起こさないための対処法

「兄弟で不動産を共有名義にするのって、実際どうなの?」という疑問は、相続や贈与、不動産の共同購入といった場面で直面しやすいものです。

兄弟間での共有名義は、一見すると不動産を平等かつ公平に分け合える方法のように思えるかもしれません。遺産分割協議を円満に終える手段として選ばれるケースも多く、実際弊社にも、このような意図で兄弟の共有名義にした方から相談が寄せられています。

しかし、私たちが実務を通じて繰り返し目にしてきたのは、「共有名義にしたことで、かえって兄弟関係が悪化した」「売却も管理もまったく進まず、不動産が負動産になってしまった」という深刻な事例の数々です。

兄弟での共有名義には、「売却や大規模修繕に全員の同意が必要になる」「固定資産税や修繕費などの負担で揉めやすい」「相続のたびに共有者が増えて複雑化する」といったリスクがつきまといます。

実際、最初は仲の良かった兄弟でも、「使い方」「金銭負担」「将来の活用」に関する考え方の違いから対立し、共有名義にしたことで関係性が悪くなってしまったケースも少なくありません。

そのため、専門家の立場として兄弟で共有名義にすることは、基本的に推奨はしません。兄弟の共有名義から単独名義に変更したり、不動産全体を売却したりといった対策を講じておくことが大切です。

とはいえ、「現時点では単独名義にまとめられない」といった場合、兄弟の共有名義を避けられないケースがあるのも事実です。そのような場合、共有名義によるトラブルを起こさないためにも、事前に不動産に関するルールを設けておくことが非常に重要です。

当記事では、兄弟間での共有名義がなぜトラブルを引き起こしやすいのか、実際にあった相談事例や解決策を交えながら、共有名義のリスクとその対処法を専門的な立場からわかりやすく解説していきます。

目次

兄弟の共有名義にするリスク・デメリット

結論として、兄弟の共有名義にはトラブルの火種となるリスク・デメリットがさまざまあるため、たとえ仲が良くても「大丈夫」とは一概に言えません。

そもそも共有名義とは、不動産を複数人で共同所有し、それぞれが法的な「持分」を持っている状態を指します。兄弟での共有名義であれば、「相続」「共同購入」「親からの贈与」などがきっかけになりやすく、形式上は公平で柔軟な手段と考えられがちです。

しかし、弊社にも兄弟で共有名義にしたことで後悔している方からの相談は、月に10件〜20件程度寄せられています。兄弟の共有名義によるリスク・デメリットには、主に下記が挙げられます。

  • 固定資産税などの維持管理費の負担が原因となり兄弟で揉めてしまう
  • 不動産を管理する人としない人で分かれると揉め事の種になりやすい
  • 兄弟で意見が対立すれば不動産を売却・修繕・管理しづらくなる
  • 相続があった際にさらに共有者が増えてしまう

共有名義という制度自体が本質的にトラブルの原因となりやすく、特に兄弟間では、性格・価値観・経済状況・生活環境の違いがダイレクトに影響しやすいのが実情です。

弊社は実際に多くの共有不動産を扱ってきましたが、兄弟間の共有は特にトラブルの発生率が高く、長期化・深刻化しやすい傾向があります。

たとえ今は仲が良かったとしても、年数が経つにつれて「使い方の違い」「金銭負担の不公平感」「相続人の増加」など、将来的な分岐点で摩擦が起こるリスクは避けられません。

そして兄弟の場合、他人同士よりも感情が先行しやすいことから、わずかな意見の違いが「不信感」「絶縁」「法的争い」にまで発展してしまうこともあるのです。

つまり、兄弟の共有名義は「揉めるリスクが高い」というより、「いずれ必ず整理・解消しなければならない問題を、ただ先送りにしている状態」と言い換えることができます。

ここからは、兄弟で共有名義にすることのリスクやデメリットについて、それぞれ詳しく解説していきます。

固定資産税などの維持管理費の負担が原因となり兄弟で揉めてしまう

不動産を所有する場合、固定資産税や修繕費、管理費などの維持管理費が継続的に発生します。共有名義の場合、発生する維持管理費は各共有者それぞれに負担する義務があります。

そして、本来であれば、これらの費用は持分割合に応じて分担されるべきですが、兄弟間ではこの取り決めが曖昧なまま共有状態に入ることが少なくありません。

そのため、「いつの間にか自分だけが支払っている」「払ってと伝えると関係が悪くなりそうで言い出せない」「兄弟の一人が経済的に困窮していて、分担が難しい」といった相談が弊社に寄せられることは少なくありません。

特に共有名義における固定資産税は、1人が代表して納税する形になることが多く、その場合には他の兄弟が費用を負担しないまま放置されることもあります。その結果、固定資産税を負担している1人の不公平感が蓄積し、兄弟間の関係悪化につながります。

一度話がこじれると、「これまで払った分を返してほしい」と過去の精算まで争点になり、話し合いが極めて難しくなるのが現実です。

不動産を管理する人としない人で分かれると揉め事の種になりやすい

共有名義においては、すべての共有者が不動産を適切に管理する義務を負っています。これは、不動産が賃貸中であれ空き家であれ同様であり、「住んでいないから」「近くにいないから」といって管理を放棄できるわけではありません。

しかし実務上は、「現地に住んでいる人」「管理能力のある人」「長男や相続代表者」など、特定の一人に管理責任が集中することが圧倒的に多く、他の兄弟は実質的に「関与しない共有者」になりがちです。

この構図は非常に危険で、最初は善意で引き受けていたとしても、「管理は任せるけど、持分は平等」「お金も出さないし、口も出さない」という状況が続くことで、大きな不満・不公平感が蓄積されてしまうのです。

弊社の過去事例でも、管理を一手に引き受けていた弟が、兄の無関心さに限界を感じて持分売却を決意したケースがありました。その際、兄は「勝手に売るなんて聞いてない」と反発し、兄弟関係が完全に崩壊したという例もあります。

兄弟の共有名義では、不動産管理の格差は静かに関係性をむしばむ、見えないトラブルの種になるのです。

兄弟で意見が対立すれば不動産を売却・修繕などしづらくなる

共有名義における不動産の重要な決定(売却・建替え・賃貸・大規模修繕など)には、共有者全員の合意が必要です。これは民法第251条に基づく「共有物の変更」の原則であり、一人でも反対すれば法的に実行できません。

つまり、兄弟で共有している場合に「すぐに売却したい」「思い出の家だから残したい」「話し合いすら避けたい」などと意見が食い違えば、その不動産は共有者全員の合意が得られない限り、法的にも実務的にも動かせない資産になります。私たちの業界では、こうした状態の不動産を「負動産(ふどうさん)」と呼ぶこともあります。

この「誰かが反対すれば何も進まない」構造が、兄弟で共有名義にすることの最大のデメリットとも言えます。兄弟間では家族としての感情が入りやすいため、不動産をどうするかの意思決定ができないまま、感情的な対立に発展しやすいリスクもあります。

結果的に、売却も賃貸もできない「放置された不動産」となり、管理義務や固定資産税だけが重くのしかかります。

こうした状態に陥った相談が弊社には多く寄せられており、持分の買取によってなんとか不動産整理を進める事例も少なくありません。

相続があった際にさらに共有者が増えてしまう

共有名義のもう一つの大きなリスクが、「時間とともに共有者が増えてしまう」という構造的な問題です。

兄弟間で共有している不動産でも、いずれはそれぞれで相続が発生します。そして法定相続により、それぞれの持分が配偶者や子どもなど、さらに複数人に分配されます。

このとき、名義変更をせずに放置された状態が続くと、10年・20年と経つうちに10人以上の共有者が存在するような状況に陥ることもあります。詳しくは後述しますが、実際に弊社には相続が3世代も続いたことで共有者が20名近くに上った方から相談を受けた事例があります。

相続があった際に共有者が増えてしまうと、「誰がどこに住んでいるか分からない」「認知症や未成年、海外在住者がいる」「共有名義になっていること自体を知らない相続人がいる」といった問題が生じやすく、売却や解消のための合意形成がさらに難しくなります。

こうした事態に陥った不動産も、いわゆる「負動産」となってしまうのです。兄弟で共有名義を選択する場合は、将来の相続によって問題が何倍にも膨れ上がるというリスクを必ず認識しておく必要があります。

兄弟の共有名義で実際に起きたトラブル事例

兄弟での共有名義は、長期的に重大なトラブルを招きやすい構造を持っています。

特に弊社のように共有持分の買取に力を注いでいる立場から見ると、兄弟間での共有名義は、他の共有関係(夫婦・親子・投資仲間など)に比べて、感情・距離感・金銭感覚のズレが大きく、破綻に至るスピードが早いと感じています。

ここでは、実際に弊社が相談を受けた兄弟間トラブルの事例をご紹介します。

なお、今回紹介する事例はいずれも「最初は問題なかった」「仲の良い兄弟だった」ところから始まっています。つまり、これらは特殊な例ではなく、ごく普通の兄弟にも起こり得るリスクだということです。

実家を売りたい弟と売りたくない兄で意見が対立して売却が進まなかった事例

このケースは、弊社にご相談いただいた50代男性の弟様からのものでした。

ご相談のきっかけは、「地方にある実家を売却したいが、兄がどうしても応じてくれず困っている」というものでした。

実家はすでに空き家で、今後誰も住む予定もない状況にもかかわらず、兄は「思い出があるから売りたくない」「固定資産税くらい自分が払うから持っておきたい」と主張し、一切の売却交渉に応じてくれない状態が続いていました。

弟様は、「自身の生活拠点が遠方にあるため管理ができない」「固定資産税や草刈りの費用が年々負担になっている」「兄とは年に1回連絡が取れるかどうかという疎遠な関係になりつつある」という状態。不動産の売却益を相続整理資金に充てたかったにもかかわらず、全く動かせない状況にストレスを抱えておられました。

この事例で特に象徴的だったのは、「共有名義という仕組みによって、どちらか一方が反対すれば何も進まない」という点です。

兄弟仲はもともと悪くなく、「父が亡くなったときに一緒に納骨に行った」ほどだったとのことですが、不動産という金銭が絡む資産になると、互いの価値観の違いが浮き彫りになり、関係も徐々にぎくしゃくしていったそうです。

最終的には、弟様から弊社にご自身の持分のみを売却いただき、共有状態を解消する形になりました。「兄には何も言わず、せめて自分の側から整理を始めたかった」という言葉が印象的でした。

弟が固定資産税を払わなくなり兄弟で揉めてしまった事例

この事例は、弊社にご相談いただいた60代の兄様からのものでした。相談当初のお話では、「弟とは昔から仲が良く、まさか不動産のことで揉めるとは思っていなかった」とのことでした。

問題の不動産は、両親が亡くなった後に兄弟2人で相続した地方の戸建て住宅です。当初は「とりあえず共有名義にしておこう」という判断で話がまとまり、固定資産税についても「半分ずつ負担しよう」と口約束で合意していました。

ところが数年後、弟様の生活環境が変わったことをきっかけに状況が一変します。弟様が仕事を辞め、収入が不安定になったことで、固定資産税の支払いが徐々に滞り始めたのです。

兄様は最初、「今は大変だろうから、立て替えておく」「落ち着いたらまとめて払ってもらえばいい」と考え、あえて強く言わずにいました。しかし、それが毎年続き、気づけば5年以上にわたって兄様が全額を負担する状態になっていました。

いざ弟様に支払いの相談をしたところ、「住んでいない家に、なんでそんなにお金を払う必要があるのか」「兄のほうが収入が多いのだから、払ってくれてもいいだろう」といった言葉が返ってきたそうです。

兄様はこのやり取りをきっかけに、「お金の問題以上に、気持ちの面で限界を感じた」とおっしゃっていました。

それまで積み重なっていた不満が一気に噴き出し、兄弟間の関係は急速に悪化。最終的には、固定資産税の話題そのものがタブーになり、ほとんど連絡を取らない関係になってしまいました。

このケースで特徴的なのは、最初はお互いに譲り合い、問題が表面化していなかったという点です。

共有名義では、固定資産税の納税通知書は代表者に届くことが多く、「払っていない側」が負担を実感しにくい構造になっています。その結果、支払う側だけが我慢を重ね、ある日突然、関係が破綻してしまうのです。

最終的に兄様は、「これ以上、弟と税金の話で揉め続けたくない」という思いから、弊社に共有持分の整理についてご相談くださいました。

弟に管理や費用負担が偏ってしまい兄弟仲が悪化してしまった事例

こちらは、40代後半の弟様から弊社に寄せられたご相談です。

相談者様と兄の二人で、亡くなったご両親の家を相続し、共有名義にしたケースでした。もともと兄弟仲は良好で、「とりあえず持っておいて、いずれ売るか貸すか考えよう」という軽い気持ちで共有にしたとのこと。

しかし、数年が経ち、空き家となった家の維持管理が必要になってくると、徐々に問題が表面化していきます。

相談者である弟様は実家の近くに住んでおり、「定期的な草刈りや通風」「近隣への挨拶や苦情対応」「外壁修繕の見積もりや手配」「固定資産税の支払い立て替え」などを、ほぼ一人で行うようになっていました。

一方の兄様は、遠方に住んでいることもあり、「頼りにしてる」「助かる」といった言葉をかけていたようですが、実際には何の協力も金銭的負担もしていない状態が続いていました。

弟様は、最初のうちは「兄は遠いから仕方ない」と納得していたそうですが、年月が経つうちに、兄が何も提案も連絡もしてこないことや請求しても費用を払ってくれないこと、また「そのうち売ろう」と言いながら何もしないことに強い不満を抱くようになったようです。

「このままでは、精神的にも経済的にも持たない」との思いから、弊社にご相談をいただきました。弟様は、「共有しているのに、責任と負担が全部こちらに偏っている。最初から一人で所有していた方がまだマシだった」と、非常に悔しそうに語っておられました。

意見の対立で家を売却できなかったことで弟が独断で持分を売却した事例

この事例は、実家を相続して共有名義にした40代の兄弟2人からのご相談です。

弊社に最初にご連絡をいただいたのは、弟様のほうでした。当初の関係性は良好で、「いずれ誰かが住むか、タイミングを見て売ろう」と兄弟で話し合い、名義を2分の1ずつにして登記していました。

ところが年月が経つにつれ、家は空き家のままで管理や税金の負担が続いており、近隣からのクレームもある状況になり、弟様は「そろそろ売却するのはどうか」と兄に提案します。

しかし兄様は、「もっと地価が上がってから売ればいい」「親の家をそんな簡単に手放すのはどうかと思う」「タイミングを見て話し合おう」と、言葉を濁して売却に同意せず、何年も決断を先延ばしにし続けました。

弟様はその間、管理や費用を一手に担っており、「なぜ自分ばかりが動いているのに、兄は待てと言うだけなのか」と、徐々に不信感を募らせていったそうです。

そして、ついに弟様が弊社に相談されたのは、「もう兄とは協議できない」「自分の持分だけでも手放したい」という強い決意を持った状態でした。

共有名義の不動産は、持分だけを第三者に売却することが可能です。弟様にはその法的権利があるため、弊社でその持分を買取らせていただきました。

その後、兄様からは「勝手に売るなんて聞いてない」「家に知らない会社が入ってくるのか」と強く抗議があったそうですが、弟様は「共有だからこそ、自分の意思で動ける部分は動いた。これ以上時間とお金を無駄にできなかった」と、冷静かつ明確な判断をされていました。

共有名義の家を独占する弟と費用だけ負担する兄で揉めてしまった事例

このご相談は、60代の兄様からのものでした。実家を兄弟2人で相続し、名義も半分ずつの共有としたものの、「弟が一人で住み続け、兄は実質的に名義上のオーナーでしかない状態」になっていたケースです。

当初は、弟様の「親の介護で家に残る」という事情を考慮し、兄様も「それならしばらく住んでいても構わない」と同意。兄弟仲も良く、「お互い協力していこう」という雰囲気の中で共有名義が成立しました。

しかし介護が終わり、両親が他界した後も弟様はそのまま家に住み続け、「固定資産税は兄が全額負担」「修繕費や火災保険も兄が支払い」「弟は使用しているにもかかわらず、費用を出す気配がない」という状況が何年も続いていたのです。

兄様が費用分担を求めたところ、「そっちが出してくれてるから払ってないだけ」「住まわせてもらってると思って感謝してる」「家族なんだから、そこまで言わなくても」といった反応だったとのことです。

兄様にとっては、「住んでいない家に、見返りもないまま費用を出し続けるのは限界」と感じるようになり、ついに弊社へご相談いただきました。

このケースの本質は、「名義上は平等でも、実態としては一方的に損をしている」という構造にあります。不動産の独占使用は、法的には他の共有者の同意が必要ですが、家族間では遠慮や気遣いが先に立ち、明確な取り決めをしないまま時間だけが過ぎていくのが現実です。

兄様は、「もし他人だったら、使用料を請求できるし、対等に話し合いができたと思う。でも兄弟だと、遠慮して何も言えなくなってしまった」と語っておられました。

兄弟の共有名義が続いたことで誰と共有しているかさえわからなくなった事例

こちらのケースは、区分所有マンションを兄弟8人で共有していたご家族からのご相談です。

もともとは、お父様が所有していたマンションを相続により兄弟8人が共有名義で登記。最初は「平等に分ける」「思い出があるから一旦残しておこう」という前向きな意図で共有が始まりました。

しかし、そこからさらに時間が経ち、8人のうち複数人が亡くなったことで事態が一変します。

亡くなった兄弟たちの持分はそれぞれ法定相続され、結果的に「3世代にまたがる相続人が誕生」「総勢20名近くの登記上の権利者が存在」「全員が異なる都道府県に居住」という、現実的には誰とも連絡が取れず、管理も売却も困難な状態に陥っていました。

ご相談者様は、「自分の名義が入っていることは知っていたが、他に誰が相続したのかすら分からない」「固定資産税の通知が来て気づいた」という状態で、何十年も手つかずだった共有名義のリスクに気づかれたとのことです。

このような状態では、通常の売却活動は不可能に近く、相談者様からは「せめて自分の持分だけでも整理したい」とのご希望があり、弊社でご本人の持分を買取させていただきました。

兄弟の共有名義にメリットはある?

兄弟で不動産を共有名義にすることには、「一定のメリットがある」と言われることが多いかもしれません。たとえば、「不動産を平等に分けた形になる」「相続の場で話し合いがスムーズになる」など、一見すると合理的なように見える理由が挙げられます。

特に相続の場面では、「兄弟で揉めたくない」「親の遺志を尊重したい」といった思いから、とりあえず共有名義にしておくという判断は非常に多いです。

しかし、こうした判断はあくまでその場しのぎに過ぎず、いわば共有名義のメリットは表面的なものに過ぎないというのが実務上の実感です。

不動産は持って終わりではなく、その後も固定資産税の支払い、修繕、売却といった継続的な判断と管理が必要な資産です。

ところが共有名義にしてしまうと、こうした意思決定を兄弟全員で行う必要があるため、将来的に「誰も責任を取らず、誰も動けない状態」に陥るリスクが高くなります。

弊社が日々ご相談を受けている中でも、「共有名義にしたこと自体は間違いだった」と振り返る方が非常に多くいらっしゃいます。紹介した事例のように、当初は仲が良くても、時間とともに価値観や経済状況が変わり、兄弟間の関係性が崩れてしまうことは決して珍しくありません。

兄弟で共有名義にするかどうかは、「とりあえず公平だから」と決めず、誰が住むのか・維持費を誰がいくら負担するのか・将来売るときに全員が同意できるのかまで見通したうえで慎重に判断する必要があります。

兄弟で共有名義にするべきかの判断基準

兄弟で不動産を相続する場合、結論から言えば、基本的には単独名義にしたほうが将来的なトラブルは起きにくいのが実務上の実感です。

共有名義は一見「公平」に見える反面、維持・管理・売却のあらゆる場面で兄弟全員の意思調整が必要になり、時間が経つほど負担が増えていきます。

とはいえ、一定の条件がそろっている場合に限っては、共有名義にも一時的なメリットがあるのも事実です。そこで、兄弟で共有名義にするかどうかを判断するための基準を、以下の表に整理しました。

判断項目 共有名義が成り立ちやすいケース 単独名義を検討すべきケース
将来の利用方法が決まっているかどうか 当面は誰も住まず、将来売却予定 誰か1人が住み続ける
維持費の負担を明確に決められているかどうか 費用分担について合意できている 負担割合が決まっていない
重要な判断を円滑に行える関係かどうか 話し合いがスムーズにできる 意見が割れやすい・疎遠
共有状態を解消する方針が決まっているかどうか 売却・買取の方針が明確 解消方法が未定
次の相続までに解消できる見通しがあるかどうか 期間や目安が決まっている 次世代へ引き継がれる可能性が高い

上記の判断項目のうち、1つでも不安が残る場合は、共有名義を選ぶリスクは高いと考えるべきです。共有名義は「あとから調整すればいい」という判断が通用しにくく、一度共有にしてしまうと解消が難しくなる点に注意が必要です。

将来の利用方法が決まっているかどうか

誰か1人が住み続ける予定がある場合、共有名義は不満や摩擦が生じやすくなります。

住んでいない兄弟が権利を持ち続ける状態は、「使用していないのに口出しできる」「負担と権利が一致しない」といった問題を生みやすいためです。

将来的な利用方法が定まっていない場合は、単独名義を前提に整理する方が現実的です。

維持費の負担を明確に決められているかどうか

固定資産税や修繕費は、共有名義であっても自動的に公平分担されるわけではありません。「誰が・いくら・いつ支払うのか」を具体的に決められていない状態で共有名義にすると、支払いを巡るトラブルに発展しやすくなります。

金銭負担について明確な合意がない場合、共有名義は避けるべきです。

重要な判断を円滑に行える関係かどうか

共有名義では、売却・賃貸・大規模修繕などの重要な判断に、原則として兄弟全員の同意が必要になります。現在は兄弟の関係が良好でも、ライフステージの変化によって意見が合わなくなるケースは少なくありません。

少しでも合意形成に不安がある場合、共有名義は将来的な足かせになりやすいです。

共有状態を解消する方針が決まっているかどうか

共有名義を選ぶのであれば、「いつ」「誰が」「どの方法で」共有状態を解消するのかまで、事前に具体的に想定しておく必要があります。

たとえば、「一定期間後に売却するのか」「誰か1人が他の兄弟の持分を買い取るのか」「相続や住み替えをきっかけに単独名義へまとめるのか」といった解消のタイミングと方法を決めておかなければ、共有名義は放置状態になります。

解消方法が決まっていない共有名義では、「今はまだ売らなくていい」「もう少し様子を見たい」と判断が先送りされやすく、結果として誰も意思決定できない不動産になってしまうケースが少なくありません。

次の相続までに解消できる見通しがあるかどうか

共有名義のまま次の相続が発生すると、共有者がさらに増え、権利関係は一気に複雑になります。兄弟間であればまだ調整できた問題も、甥・姪世代まで広がると、解決は格段に難しくなります。

一時的な共有であっても、次の相続までに解消できるかどうかは必ず確認すべき判断ポイントです。

兄弟の共有名義を相続発生前に防ぐための対策

兄弟での共有名義は、相続の場面では「公平そう」「とりあえず話がまとまりやすい」といった理由で選ばれがちですが、将来的な管理や売却で大きな負担を生む原因になりやすい方法でもあります。

そのため、相続が発生する前の段階で、兄弟の共有名義を避けるための対策を講じておくことが重要です。

兄弟の共有名義を相続発生前に防ぐための対策として、実務で現実的に選ばれやすいものをリストにまとめました。

  • 遺言書で不動産の承継先を兄弟のうち1人に指定しておく
  • 遺産分割協議で共有名義にならないよう兄弟と話し合う
  • 家族信託を利用する
  • 相続が発生する前に不動産を売却しておく
  • 兄弟の1人がすでに共有者の場合は共有者である兄弟が親の持分を買い取る

兄弟の共有名義は、相続が発生してから対処するよりも、相続前の準備でほぼ結果が決まると言っても過言ではありません。どの対策が適しているかは、家族構成や不動産の状況によって異なるため、早い段階で専門家に相談することが重要です。

特に、「将来兄弟の共有名義になりそうで不安」「単独名義にしたいが公平性も保ちたい」「売却や買取も含めて現実的な選択肢を知りたい」といった場合は、共有持分や相続不動産を専門に扱う業者に相談することで、相続後を見据えた具体的な選択肢を整理しやすくなります。

遺言書で不動産の承継先を兄弟のうち1人に指定しておく

兄弟の共有名義を相続発生前に防ぐための対策として、遺言書で不動産の承継先を兄弟のうち1人に指定しておくことが挙げられます。

この対策は、遺言書によって不動産を相続する人を1人に指定しておく方法です。相続時に遺言書があれば、原則としてその内容どおりに相続が進むため、兄弟の共有名義になること自体を防げます。

共有名義が発生しやすい最大の原因は、「遺言書がなく、遺産分割協議で話し合う必要があること」です。遺言書で承継先を明確にしておけば、とりあえず共有名義にしておくという選択肢が消える点が大きなメリットです。

実務上も、共有名義を防ぐ手段として最も選ばれやすい対策の一つです。特に、兄弟が不仲な場合や、多忙で話し合いの時間が確保できない場合、不動産を譲ると口頭で被相続人と約束している場合には遺言書の作成が有効です。

遺言は法律行為の1つです。法的に定められた様式で記載されている遺言書があれば、相続人全員が遺言書に従わないことを合意する場合を除き、遺産分割においては遺言書の内容が優先されます。遺言書として効力を持つのは、現在のところ「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」の3種類です。

  • 自筆証書遺言:自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の全文・指名・日付を手書きし、押印した遺言
  • 秘密証書遺言:遺言書の内容を秘密にしたまま、遺言書の存在だけを公証役場で証明してもらう遺言
  • 公正証書遺言:遺言者が遺言内容を公証役場の公証人(公証業務を行う国家機関)に伝え、公証人が筆記して作成される遺言

誰でも作成できる自筆証書遺言や秘密証書遺言では、法律で定められた様式を満たせていない場合も多く、効力が認められないことも珍しくありません。確実に効力を持つ遺言状を作成するためには、公正証書遺言を選ぶほうがよいでしょう。

さらに、たとえ遺言状が法的に定められた様式を満たしていても、内容に問題があれば遺言状の内容が認められず、相続トラブルに発展することもあります。相続トラブルが発生しないよう遺言状を作成したい場合は、弁護士に相談してアドバイスを受けながら作成するようにしましょう。

遺産分割協議で共有名義にならないよう兄弟と話し合う

相続が発生している場合であれば、遺産分割協議で話し合って不動産を誰かの単独名義にする、または不動産を売却してしまうのが、最も後々揉めない解決策といえるでしょう。

■遺産分割協議とは
相続人全員で、亡くなった人の財産をどのように分割するのか、だれがどれだけ受け取るのかを話し合うこと。遺産分割協議では、相続人全員が話し合い、全員が結論に納得・合意する必要がある。後から言った言わないにならないよう、遺産分割協議書に結果を文面でまとめ、全員が署名・記名・認印での押印などを行って合意をしたことを残す。

不動産を共有名義にしなくても、平等に財産を相続する方法はあります。

■遺産分割の方法①現物分割
現物分割とは、不動産の形状や性質を変えずに分配する方法。例えば、兄が不動産を相続して弟は預貯金を相続する場合や、土地を分筆して相続する場合が該当する。
■遺産分割の方法②代償分割
代償分割とは、特定の相続人が財産(現物)を相続する代わりに、他の相続人に代償金を与える方法。例えば、兄が不動産を相続する代わりに、兄は弟に対して相続分に見合った現金を支払うことで遺産を分割する。
■遺産分割の方法①換価分割
換価分割とは、現金以外の財産を売却して、得た現金を相続人で分配する方法。不動産の場合、不動産全体を売却できれば、持分割合のみを売却するよりも、相続人1人あたりが受け取れる金額が大きくなる。

遺産分割では、必ずしも全員が平等に財産を受け取らなければならないという法律はありません。そのため、場合によっては「田舎の土地で自分は行くこともないから」「○○さんが住んでいるなら」と相続人同士で財産を譲ることもあります。

遺産分割協議がまとまらない場合、裁判所を介して調停をしたり訴訟を起こしたりして解決することも可能です。将来的にトラブルにならないよう、相続に際して発生した財産の分割については相続時に解決しておくほうがよいでしょう。

家族信託を利用する

家族信託で財産の管理や処分を家族に委託すれば、将来の共有状態やトラブルを回避した不動産の相続を行うことが可能です。

■家族信託
家族信託とは、委託者(=財産の所有者)が、委託者(=家族)に財産を預け、受益者(=財産から生じる利益を受ける人)のために財産(=信託財産)を管理・処分してもらう財産管理手法。一般的には財産を持つ親を委託者兼受益者に設定し、子供が委託者として親の財産を管理する。委託者が認知症や要介護で意思能力が喪失した際に資産が凍結されるのを防ぐために活用されている。

この家族信託契約を結んでおくことにより、委託者の意向に沿って、家族に財産が継承される仕組みを作ることができます。被相続人を委託者・受益者に、相続人の1人を受託者に、被相続人の死後は全ての相続人を受益者に設定すれば、受託者である相続人は委託者の死後に自分の意思で不動産を管理・処分することができます。そして、受益者には、不動産の売却や賃貸で得た利益が分配されます。

家族信託を利用すれば、不動産の管理者を定め、共有状態を回避しつつその他の相続人に対して財産を残すことができるのです。

家族信託を利用すると、今回の相続で不動産を譲り受けた相続人が亡くなったときに発生する相続「二次相続」の対策も可能です。例えば、委託者が「自分の死後は兄に、兄の死後は兄の長男(孫)に不動産を引き継がせる」というスキームで信託契約を結べます。

なお、家族信託では共有不動産全体でも共有持分だけでも信託財産の対象として指定できます。

相続が発生する前に不動産を売却しておく

相続が発生する前、被相続人が存命のうちに不動産を売却してもらえれば、そもそも不動産の相続が発生せず、相続トラブルや共有状態による問題は起きません。現金であれば、遺産分割は不動産を分割するよりも簡単です。

どうせ売るのであれば、「遺産分割協議の換価分割と変わらないのでは?」と考えがちですが、現実問題として親が亡くなった後に「不動産をどう処分するのか」揉めることは珍しくありません。親が生きているうちに、不動産をどうするのか話し合っておくことで、遺言書を作成したり家族信託を利用したりといった方法も選択できます。

不動産を所有するつもりがないのであれば、親に不動産の売却を依頼して、必要であれば兄弟とよく相談しておきましょう。

兄弟の1人がすでに共有者の場合は共有者である兄弟が親の持分を買い取る

被相続人と相続人がすでに不動産を共有名義で所有している場合、共有者である相続人が親の持分を買い取っておくことで、被相続人が亡くなった際の共有持分の相続を回避できます。

例えば、父親と兄が共有名義で二世帯住宅を購入した場合。そのまま父親が亡くなってしまえば、父親の持分は兄と弟が分割して相続することになり、兄弟間の共有状態が発生します。一方で、父親が生きている間に、兄が父親の持分を買い取っておけば、父親が亡くなっても弟への相続は発生しません。

ただし、親子間の売買が、相続時の兄弟間のトラブル要因になることもあります。例えば、兄が親から安く共有持分を譲ってもらったとして、弟が遺産を多く相続すべきだと主張するケースです。兄弟の誰かが親から不動産を買い取る場合は、必ず他の兄弟・姉妹にも説明をして、必要であれば売買契約を結ぶ際に立会人として一筆もらっておくとよいでしょう。

相続後でも兄弟の共有名義を解消する方法もある

兄弟で共有名義になってしまった場合でも、相続後に共有状態を解消する手段は複数存在します。

共有名義は「一度なってしまうと何もできない」と思われがちですが、実際には状況に応じた現実的な選択肢があります。ただし、重要なのは、「すべての方法が誰にでも使えるわけではないこと」「方法ごとに、難易度・費用・他の共有者への影響が大きく異なること」です。

特に、共有者の人数や関係性、不動産の利用状況によっては、話し合いで解決できるケースもあれば、自分だけでも共有関係から抜ける判断が必要になるケースもあります。

  • 共有不動産全体を第三者に売却する
  • 共有者に共有持分を売却する
  • 共有名義の土地を分筆する
  • 自分の共有持分だけを第三者に売却する
  • 自分の共有持分を放棄する
  • 共有物分割請求訴訟を起こす

兄弟間のトラブルは、本人と家族の人生や、他の親族との関係性に悪影響を及ぼします。共有不動産はトラブルになりやすいため、大きなトラブルに発展する前に共有状態を解消しておくことをおすすめします。

兄弟の共有名義にしておく場合はトラブルを起こさないための対策を講じておく

ここまで解説してきたとおり、兄弟での共有名義は将来的なトラブルが起きやすい方法です。

それでも、「現時点では単独名義にまとめられない」「いずれ解消する前提で、当面は共有名義にせざるを得ない」といった事情から、共有名義を選択するケースがあるのも事実です。

そのような場合は、兄弟の共有名義にした時点で、将来を見据えた具体的なルールを決めておくことが不可欠になります。

実務では、「そのときになったら話し合えばいい」と考えて共有名義にした結果、誰が費用を負担するのか、誰が判断するのかが曖昧なまま時間が経ち、話し合い自体が成立しなくなるケースが非常に多く見られます。

兄弟で共有名義にするのであれば、最低限、次の点については事前に合意を取っておくべき事項と言えます。

  • 管理・修繕費の負担ルールを契約書等で明確化する
  • 売却判断のルール(合意方法・タイミング)を事前に定めておく
  • 兄弟の片方が不動産を使用する場合の使用対価を取り決めておく
  • 固定資産税の支払方法と通知先を合意しておく
  • 将来の共有解消時に備えて連絡体制と調整役を明確にしておく

これらを決めないまま共有名義にすると、小さな不満の積み重ねが、後戻りできない対立に発展することも珍しくありません。

兄弟での共有名義を選ぶのであれば、「共有にすること」そのものよりも、共有をどう管理し、どう終わらせるかまでを含めて話し合って決めておく必要があります。

管理・修繕費の負担ルールを契約書等で明確化する

兄弟で共有名義にする場合、建物の管理や老朽化による修繕が発生することは避けられません。このとき、費用の支払いについて明確な取り決めがないと、「どちらがどれだけ負担するのか」「いつ誰が払うのか」でトラブルになる可能性が高まります。

実務では、「先に払っておくから後で半分ちょうだい」「そっちが住んでるんだから払ってよ」など、口約束のままスタートしてしまい、後に揉める事例が非常に多く見られます。

そのため、共有名義にする時点で、「管理費・修繕費の負担割合(持分ベース or 均等)」「支払いのタイミングと精算方法」「緊急時の支払い判断と後払いルール」といった内容を、できる限り文書(契約書や合意書)として残しておくことが重要です。

「今は仲がいいから大丈夫」ではなく、将来の関係の変化を見越して整備しておくべきポイントです。

売却判断のルール(合意方法・タイミング)を事前に定めておく

共有名義の落とし穴が、「不動産を売りたくても全員が同意しないと売れない」という制度上の制約です。実際に、「売却の話を出しても兄弟が首を縦に振らない」「誰かが反対して売却が何年もできない」というご相談は非常に多いです。

このような事態を避けるためには、売却についての意思決定ルールを事前に定めておく必要があります。

具体的には、「売却を検討するタイミング(一定年数経過後など)」「意思決定の方法(全会一致 or 過半数同意)」「決定が出せない場合の第三者関与(調停・専門家等)」などを、共有名義の段階で合意しておけば、将来的に話が進まなくなるリスクを大きく減らせます。

「いずれ売るつもりだったのに、合意できずに固定費だけがかかり続ける」という状況は、兄弟の共有名義の典型例です。

兄弟の片方が不動産を使用する場合の使用対価を取り決めておく

共有不動産を兄弟のどちらかが占有・使用する場合、使用していない側が「不公平に感じる」ことは非常に多く、深刻なトラブルの原因になります。

特に、使用者が「親の家だから自由に使っていい」「誰も住まないなら自分が住む」と軽く考えてしまうと、後から「家賃を払ってくれ」「使ってるのに税金を折半するのはおかしい」と対立に発展しかねません。

そのため、誰かが使用する可能性がある場合は、「無償使用なのか、有償(賃料相当額)使用なのか」「管理・修繕責任の所在」「使用期間と見直しルール」など、使用に関する対価と条件を事前に明文化しておくことが不可欠です。

親族間であっても、不動産の「利用権」は金銭的な価値を持つため、感情に頼らず、契約的な発想で整理することが将来の安心につながります。

固定資産税の支払方法と通知先を合意しておく

共有不動産には、毎年必ず発生する公的費用として「固定資産税」があります。これは所有者全員に納税義務がありますが、実際には自治体からの通知は共有者のうち1名にしか届かないため、支払う側と払っていない側との意識差が非常に大きくなりやすいポイントです。

このまま放置すると、「自分ばかり払っている」「そもそも払ってるのを知らなかった」などの不信感に発展します。

そのため、「誰が通知を受け取るのか」「誰がいつどのように支払うのか」「支払い後の精算方法とスケジュール」を具体的に取り決め、できれば年1回の確認や共有をルール化しておくことが重要です。

「とりあえず今は代表者が払う」だけでは、後のトラブルの種になりやすいです。

将来の共有解消時に備えて連絡体制と調整役を明確にしておく

共有名義は、いずれ必ず何らかの方法で整理・解消すべき財産です。しかし、兄弟間で連絡手段や調整役が決まっていないと、「解消したくても連絡がつかない」「誰に連絡していいかわからない」といった状態に陥りがちです。

実務上も、「共有者の一部と何年も音信不通で手続きが止まっている」「誰が代表して交渉するのか揉めている」といったケースは非常に多く存在します。

こうした事態を避けるためには、「調整役(代表窓口)を明確にする」「緊急連絡方法(電話、メール、LINEなど)を共有しておく」「住所・連絡先の定期更新をルール化する」といった連絡の仕組みそのものを定めておくことが不可欠です。

共有不動産は「今すぐ困っていない」ことが落とし穴になりやすく、連絡が取れないことで数十年放置されるというのは実際に多く発生しているリスクです。

まとめ

兄弟で不動産を共有名義にすることは、一見公平で柔軟な選択肢のように思えるかもしれません。実際、相続の場面では「平等に分けたい」「その場を円満に収めたい」という気持ちから、とりあえず共有にしてしまうケースも少なくありません。

しかし実務の現場では、こうした「とりあえずの共有」が、数年〜数十年後に深刻なトラブルへと発展している例が数多く存在します。

初めは仲の良かった兄弟でも、時間が経つにつれ、経済状況や生活スタイル、考え方が変わっていくことで、不動産の運用方針にズレが生まれ、関係悪化の原因になることも珍しくありません。

特に共有名義は、ひとたびトラブルが起きると、感情のもつれだけでなく、制度的にも解決が難しくなる傾向があります。弊社のもとにも、「もっと早く単独名義にしておけばよかった」「兄弟で話し合えない状態になってしまった」といったご相談は非常に多いです。

そのため、兄弟で不動産を共有名義にするのであれば、「今困っていないから」と安心せず、将来的な管理や解消のことまで見据えたうえで、ルールを明確に決めておくことが不可欠です。

言い換えれば、共有名義とは「将来、必ず整理しなければならない課題を抱えた状態」であるという認識が必要だということです。

そして、すでに共有名義にしている方や、現時点で対立の兆しが見えている方は、早い段階での整理・対応をおすすめします。共有名義で後悔しないためにも、まずは専門家に状況を相談してみることが、最善の一歩になるはずです。

兄弟の共有名義不動産に関するよくある質問

兄弟が共有名義で不動産を所有するのはどんな場合がありますか?

■実家など親が名義人の不動産を兄弟で相続した場合
兄弟が共有名義になる大半は、親が亡くなった際に親名義の不動産を相続するケースです。遺産分割を話し合うための遺産協議や、被相続人が相続する人を指定できる遺言状で共有名義での相続を避けない限り、法定相続分の共有持分を相続することになるため不動産の共有状態が発生します。

■兄弟が共同生活を行う家を購入した場合
稀なケースではありますが、兄弟が共同で生活するための不動産を購入することで兄弟間で共有名義になることがあります。兄弟ではペアローンが組みにくいため、基本的には頭金を支払う人とローンを組む人を分けて資金を調達することになるでしょう。

相続手続きが完了した後に名義変更を行うことは可能ですか?

相続手続きが完了した後に対象の不動産の名義を変更することは可能です。ただし、登録免許税が再度発生するうえ、不動産を譲り受ける人には贈与税が課税される可能性があります。

これは、民法上では遺産分割協議を行った後の協議のやり直しを認めていますが、税務的には原則として再協議を認めておらず、名義変更が相続ではなく贈与とみなされるためです。遺産分割協議が法的に無効とみなされるケースを除き、贈与税を回避しての名義変更は困難だと考えましょう。

一方で、法定相続分に従って相続登記を行っていたケースでは、相続手続き後の名義変更でも贈与税が発生しないこともあります。例えば、遺産分割の話し合いがまとまらず、とりあえず法定相続分での相続登記を行った場合です。絶対に贈与税が発生しないとは言い切れませんが、相続手続き完了後に遺産分割協議が行われたことが認められれば、贈与ではなく相続とみなされ、贈与税が発生しないことが考えられます。

不動産を兄弟で共有名義にするメリットはありますか?

兄弟で不動産を共有名義にするメリットはあるものの、デメリットと比較すると、わざわざ選択するほどの魅力はないといえるでしょう。

■不動産を兄弟で共有名義にするメリット①遺産分割協議がスムーズに進む
兄弟全員が相続して共有名義にすれば、特定の誰かだけが遺産を受け取れるという不公平な事態は発生しません。そのため、遺産分割協議はスムーズに進むでしょう。ただし、いつかは不動産の維持管理や売却・活用について話し合わなければなりません。

■不動産を兄弟で共有名義にするメリット②売却時にかかる譲渡所得税が減税される
将来的に不動産を売却する場合に、共有名義にしておくことで譲渡所得税を節税できる可能性があります。居住用財産(マイホーム)を売却すると、3,000万円の特別控除が適用されます。共有不動産の場合、共有者はそれぞれ控除を受けられるため、単独で相続するよりも不動産を共有名義にするほうがトータルの控除額が大きくなることがあるのです。

こんな記事も読まれています