共有名義不動産の売却を反対されている場合のロードマップ!売却の交渉ポイントや共有状態を解消する方法も紹介

「共有名義不動産を売却したいが、他の共有者に反対されている」という相談は、弊社にも数多く寄せられています。

共有名義不動産全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です。1人でも反対する共有者がいると、不動産全体を売却することはできません。

とはいえ、話し合いや交渉を重ねることで合意を得られ、結果的に不動産全体を売却できるケースもあります。また、不動産全体の売却が難しい場合も、自分の共有持分だけを売却したり、法的な手続きをとったりして共有状態を抜け出す方法もあります。

対策は、共有者との関係性の良し悪しや利害の方向性によって大きく変わります。以下では、共有者から売却に反対された場合にとるべき対応を状況別にまとめました。

状況 方法 おすすめのケース
共有者との交渉の余地がある 売却に反対している共有者に再度交渉をする。最終的には共有者全員の合意を得て、不動産全体の売却を目指す。 ・共有者の仲が良く、交渉の余地がある場合
・近隣相場に近い価格で売却したい場合
・共有名義不動産に誰も住んでいない場合
交渉は難しいが共有状態だけでも解消したい 1.自身の共有持分を他の共有者に買い取ってもらう ・共有者が2人の場合
・不動産を残したい共有者に、持分を買い取る資金的余裕がある場合
2.自身の共有持分を専門の買取業者に買い取ってもらう ・他の共有者との関係が悪く、交渉が難しい場合
・価格が割安になっても、共有持分を早く売却したい場合
3.自身の共有持分を譲渡する ・現金化にこだわらず、共有持分を手放したい場合
・特定の共有者に持分を渡したい場合
交渉は難しい状況でも共有名義不動産を売りたい 共有物分割請求訴訟を視野に入れる。最終的には、以下のいずれかの分割方法になる。

現物分割:不動産を物理的に分け合う(例:土地の分筆)
換価分割:裁判所主導で競売にかけ、売却益を共有者で分配する
代償分割:共有者の1人が他の持分を取得し、その他の共有者に代償金を支払う

・他の共有者が協議に応じてくれない場合
・裁判費用や時間がかかっても、共有状態を解消したい場合

上記の対応策と自身の状況を照らし合わせることで、不動産全体の売却、もしくは共有状態の解消へと進むことができます。

なお、売却に反対されたからといって、共有名義のまま放置してしまうのはおすすめできません。共有名義不動産は、時間が経つほど権利関係が複雑になり、トラブルに発展するリスクが高まります。

実際、「自分だけが維持管理費を支払っている」「共有者と疎遠になり話し合いが進まない」といったトラブルが発生し、弊社へ相談されるケースは少なくありません。

「反対されているから何もできない」と放置せず、状況に合った方法で早めに対応することが、将来の負担を減らすことにつながります。

本記事では、共有名義不動産の売却に反対されている場合の対策と、売却に反対されたまま共有名義不動産を所有することのリスクについて解説します。

なお、共有名義不動産でお困りの場合は、当サイトを運営する「株式会社クランピーリアルエステート」にご相談ください。弊社は、共有名義不動産などの訳あり物件を専門に扱う不動産買取業者です。

全国の弁護士・税理士とも連携し、複雑な権利関係や共有者間のトラブルにも対応可能です。お問い合わせ・ご依頼から最短12時間で金額査定、最短48時間で現金化ができるため、ぜひ無料相談をご活用ください。

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共有者から反対されている場合は共有名義不動産の売却は法的に認められない

共有名義不動産は、1つの不動産を複数人で共同所有している状態です。たとえば、親の不動産を兄弟で相続した場合や、夫婦で資金を出し合って住宅を購入した場合などがこれにあたります。

共有名義不動産の場合、不動産全体を売却する際に共有者全員の同意が必要です。共有名義不動産全体を売却する行為は、民法第251条「共有物の変更」にあたり、以下のように定められているためです。


(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
引用元 e-Gov法令検索 民法第251条

この条文でいう「変更」には、不動産全体を売却する行為も含まれます。つまり、共有者のうち1人でも反対している場合は、不動産全体の売却は法的に認められません。

実務でも、家族や親族間で意見が分かれ、「売りたい人」と「売りたくない人」がいるケースがよく見られます。しかし、共有者の1人が単独で売却を進めてしまうと、売買契約そのものが法的に無効となってしまうのです。

したがって、まずは共有者全員で話し合いを行い、売却に対する合意を得ることが第一歩となります。どうしても全員の同意が得られない場合は、「自分の共有持分を売却・譲渡する」「共有物分割請求訴訟で共有状態を解消する」といった別の手段を検討することも可能です。

共有者から売却に反対されている場合の対策

先述したとおり、共有者の1人でも反対している場合は、共有名義不動産全体の売却は法的に認められません。

しかし、共有者と良好な関係が築けている場合や、利害の方向性が一致している場合は、交渉を重ねることで合意が得られる可能性もあります。たとえば、信頼関係があり、仲の良い家族間での共有の場合は、冷静に話し合いを重ねることで、売却の同意を得られる可能性があります。

一方で「共有者の人数が多い」「連絡が取れない」「相続をきっかけに関係が悪化している」などのケースでは交渉が長期化したり、そもそも話し合いが成立しなかったりすることもあります。

そのような場合には、不動産全体の売却以外の方法を検討するのがよいでしょう。たとえば、自分の共有持分だけを売却したり、裁判を通じて共有関係を解消したりといった方法です。

以下では、共有者から反対されている場合にとるべき対応を、状況ごとに整理しました。
自分の立場に近いケースを確認し、今後の行動の参考にしてください。

状況 方法
共有者との交渉の余地がある 売却に反対している共有者に再度交渉をする。最終的には共有者全員の合意を得て、不動産全体の売却を目指す。
交渉は難しいが共有状態だけでも解消したい 不動産全体の売却以外の対策を講じる。具体的には以下の3つの方法がある。
1.自身の共有持分を他の共有者に買い取ってもらう
2.自身の共有持分を専門の買取業者に買い取ってもらう
3.自身の共有持分を譲渡する
交渉は難しい状況でも共有名義不動産を売りたい 共有物分割請求訴訟を視野に入れる。最終的には、以下のいずれかの分割方法になる。
現物分割:不動産を物理的に分け合う(例:土地の分筆)
換価分割:裁判所主導で競売にかけ、売却益を共有者で分配する
代償分割:共有者の1人が他の持分を取得し、その他の共有者に代償金を支払う

共有者との交渉の余地がある:売却に反対している共有者に再度交渉をする

民法第249条・第251条では、共有名義不動産の共有者全員に「不動産全体を使う権利」と「不動産の変更行為(売却)に同意する権利」が認められています。


(共有物の使用)
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
引用元 e-Gov法令検索 民法第249・第251条

つまり、共有者は自分の持分に応じて不動産全体を使える一方で、他の共有者が勝手に不動産を売却・処分しないように同意する権限も持っています。これはお互いの財産を守るための仕組みであり、法律上ごく自然なルールです。

ただし、「同意が必要だから売却は無理」とあきらめる必要はありません。共有者から反対されていても、話し合い方次第で同意を得られるケースもあります。

「軽く売却話をした際に反対された」「具体的な売却話はしていないが、反対されそうな雰囲気がある」といった段階であれば、まだ本格的な交渉には至っていないため、丁寧な説明を重ねることで売却の同意を得られる可能性があります。

交渉がうまくいき、共有名義不動産全体の売却が叶えば、通常の不動産として売り出しができるため、近隣相場に近い価格で売却できます。売却益は持分割合に応じて分配できるため、公平性も保たれるでしょう。

メリット ・近隣相場に近い価格で売却できる
・持分割合に応じて売却益を分配できる
デメリット ・共有者全員の同意を得られなければ実現できない
おすすめのケース ・共有者の仲が良く、交渉の余地がある場合
・近隣相場に近い価格で売却したい場合
・共有名義不動産に誰も住んでいない場合

共有名義不動産全体の売却を進めるための交渉のポイント

弊社にも「他の共有者が反対していて売却できない」という相談が多く寄せられますが、これらを分析すると、早い段階での丁寧な説明や条件提示によって、同意を得られる可能性もあることがわかります。

そこで、過去の相談事例をもとに、共有者との交渉を進める際の具体的なポイントをまとめました。

交渉のポイント 概要
売却すれば持分に応じて公平に現金を分配できることを伝える 共有者の中には、「名義が分かれているから今のままで公平」と考える人もいます。しかし、実際には固定資産税の負担や使用状況に差が出て、不公平が生じやすいのが現実です。売却して現金化すれば、持分割合に応じて公平に分けられるため、トラブルを防げることを伝えると理解を得やすくなります。
共有名義のまま所有するリスクを伝える 「今は問題がない」と思っていても、将来的に相続が発生すると共有者が増え、管理や売却が難しくなるリスクがあります。早めに共有を解消しておくことが、全員にとって安全で負担の少ない選択であることを説明すると、合意を得やすくなります。
手続きや費用を自分が負担する姿勢を示す 「手続きが面倒」「費用を負担したくない」と反対する共有者もいます。売却にかかる費用や手続きは、事前に合意があれば誰が負担しても問題ありません。自分が主導して進める姿勢を見せることで、相手の心理的なハードルを下げ、同意を得やすくなります。

交渉は難しいが共有状態だけでも解消したい:不動産全体の売却以外の対策を講じる

共有持分の売却

他の共有者から反対され、不動産全体を売却するのが難しい状況でも、自分の共有持分だけを手放して「共有状態から抜け出す」方法があります。

共有持分は、共有名義不動産の中で自分が所有している「持分(権利の割合)」です。自分の所有物であるため、民法第206条にもあるように自由に使用したり、売却・譲渡したりすることが認められています。


(所有権の内容)
第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
引用元 e-Gov法令検索 民法第206条

つまり、共有持分に関しては、他の共有者が反対していても、自分の判断だけで売却や譲渡ができます。

実際、弊社にも「共有者と意見が合わず、不動産全体の売却は難しいので、自分の共有持分だけを買い取ってほしい」というご相談が多く寄せられます。このように、共有名義不動産をめぐって話し合いが進まない場合でも、共有持分を手放すことで共有状態から抜け出すことが可能です。

具体的な方法としては、次の3つが挙げられます。

  • 自身の共有持分を他の共有者に買い取ってもらう
  • 自身の共有持分を専門の買取業者に買い取ってもらう
  • 自身の共有持分を譲渡する

これらの方法をとることで、他の共有者との関係に悩まされることなく、自分の権利を整理して身軽にすることが可能です。

自身の共有持分を他の共有者に買い取ってもらう

他の共有者への売却

共有名義不動産では、共有者同士でそれぞれの共有持分を売買できます。そのため、他の共有者に自分の持分を買い取ってもらえば、共有状態から抜け出すことが可能です。

この方法は、不動産を「残したい人」と「手放したい人」の思いが分かれている場合に特に有効です。お互いに希望を尊重しながら、無理なく共有関係を整理できます。

具体例は以下のとおりです。

兄弟2人が親の不動産を共有名義で相続しているとします。兄は「実家を残したい」と考えている一方、弟は「持分を売却して現金化したい」と考えています。
この場合、兄が弟の持分を買い取れば、共有状態は解消され、兄が単独の所有者となります。兄は自分の判断で自由に不動産を利用・売却でき、弟も自分の持分を現金化できるため、双方にとって納得感のある形で解決できます。

この方法のメリット・デメリット、おすすめのケースは次のとおりです。

メリット ・不動産を残したい人と手放したい人、双方の希望を叶えられる
・売却する側は「市場価格 × 持分割合」と相場に近い価格で売却できる
・共有者が2人の場合、買い取った側が単独名義となり、不動産を自由に扱えるようになる
デメリット ・買い取る側に十分な資金がない場合は成立しない
・共有者が3人以上いる場合、誰に売るかでトラブルに発展するおそれがある
おすすめのケース ・共有者が2人の場合
・不動産を残したい共有者に、持分を買い取る資金的余裕がある場合

自身の共有持分を専門の買取業者に買い取ってもらう

第三者への売却

共有持分は本来、他の共有者に買い取ってもらうのが理想的です。共有者同士であれば、「不動産を残したい人」と「手放したい人」の利害が一致しやすく、売却価格も市場相場に近い金額で合意しやすいためです。

しかし実務では、共有者同士の関係が悪かったり、疎遠で連絡が取れなかったりして、交渉が進まないケースも少なくありません。そのような場合は、不動産買取業者に共有持分を売却するという選択肢もあります。

買取業者であれば、査定を依頼して提示された金額に納得すれば、すぐに契約を進められます。手続きもスピーディーで、最短数日から1週間ほどで現金化できるため、共有関係から早く抜け出したい方や、持分をすぐに処分したい方に向いています。

メリット ・最短数日~1週間程度で買い取ってもらえる(買取業者による)
・契約不適合責任が免除されるのが一般的で、売却後のトラブルを心配せずに済む
デメリット ・買取価格は「市場価格 × 持分割合 × 1/3~1/2」が目安で、他の共有者への売却よりも安い傾向にある
おすすめのケース ・他の共有者との関係が悪く、交渉が難しい場合
・価格が割安になっても、共有持分を早く売却したい場合

弊社「株式会社クランピーリアルエステート」でも、共有持分の買取を専門的に行っています。共有名義不動産や共有持分の買取実績が豊富で、他の共有者とのトラブルがある場合や、複数の共有者によって権利関係が複雑になっている物件でも対応可能です。

また、共有持分専門の買取業者として、買取後の再活用にもノウハウを持っており、余計なコストを抑えられる分、その利益を査定額に反映できます。共有持分を売りたい、共有関係から早く抜け出したいとお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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自身の共有持分を譲渡する

共有持分の現金化にこだわらない場合は、他の共有者に自分の共有持分を無償で譲渡するという方法もあります。

同じく無償で共有持分を手放す方法として「共有持分の放棄」もありますが、譲渡の場合は、誰に共有持分を渡すかを指定できます。一方、放棄した場合は持分が各共有者の持分割合に応じて自動的に分配されます。

そのため、共有者が3人以上いて、特定の共有者にだけ持分を渡したい場合は、放棄よりも譲渡の方が適しています。

ただし、譲渡を行うには、譲渡を受ける人が同意し、登記手続きを一緒に行う必要があります。相手に受け取る意思がない場合は、実現できません。

また、無償で共有持分を譲渡する場合、譲り受ける人に贈与税がかかる可能性があります。贈与税は、年間110万円の基礎控除を超えた金額に対して10〜55%の税率で課税されるため、持分の評価額が高いと税負担が発生することもあります。譲渡を検討する際は、事前にこの点を相手にも説明しておくと良いでしょう。

メリット ・共有者が複数人いる場合でも、特定の共有者に共有持分を渡せる
デメリット ・譲渡を受ける人が同意しないと成立しない
・共有持分を手放しても、現金が手に入らない
・共有持分を受け取る人に、贈与税がかかる可能性がある
おすすめのケース ・現金化にこだわらず、共有持分を手放したい場合
・特定の共有者に持分を渡したい場合

交渉は難しい状況でも共有名義不動産を売りたい:共有物分割請求訴訟を視野に入れる

他の共有者が売却に反対し、話し合いにも応じてくれない場合は、「共有物分割訴訟」を起こし、共有状態を強制的に解消する方法もあります。

共有物分割訴訟とは、1つの不動産を複数人で共有している状態を解消するために、裁判所がその不動産をどのように分けるかを決定する手続きです。

民法では、共有者が共有状態を解消するための権利について明確に定められています。第256条では「共有者はいつでも分割を請求できる」と規定されており、これは共有関係から抜けたいと考えたときに、他の共有者の同意がなくても分割を求めることができるという意味です。

さらに第258条では「共有者間で話し合いがまとまらない場合や、そもそも協議ができない場合には、裁判所に分割を請求できる」と定められています。つまり、他の共有者が反対していても、法律上は分割を求める権利が認められています。


(共有物の分割請求)
第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。

(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
引用元 e-Gov法令検索 民法第256・第258条

共有物分割訴訟

訴訟を起こすと、現物分割、換価分割、代償分割のいずれかの方法で不動産が分割されます。詳しくは次項で解説しますが、換価分割になれば競売によって不動産全体が売却され、売却益を分配することになります。

ただし、希望通りの分割方法になるとは限らず、費用や時間がかかる点には注意が必要です。共有分割訴訟の費用は、弁護士費用や不動産鑑定費用、裁判費用などを合わせて50万~150万円程度が目安です。また、審理内容が複雑になった場合や控訴・上告まで進むケースでは、1~2年以上の時間を要することもあります。

そのため、共有者間での協議が難しく、訴訟をしてでも共有状態を解消したいといった場合の「最終手段」として考えるのが現実的です。

「とにかく共有関係を抜けたい」「時間や費用をかけたくない」という場合は、訴訟ではなく、自分の共有持分だけを買取業者に売却する方法をおすすめします。この方法であれば自分の意思だけで進められ、短期間で共有持分を現金化できます。

弊社にも「共有物分割訴訟を起こすかを迷っている」といった相談が寄せられることがありますが、時間や費用、手間を総合的に比較したうえで、最終的には共有持分だけを売却して問題を解決するケースも少なくありません。

メリット ・裁判所が分割方法を決定するため、以下のいずれかの方法で強制的に共有状態を解消できる
現物分割:土地の分筆などで不動産を物理的に分け合う
換価分割:裁判所主導で競売にかけ、売却益を分配する
代償分割:共有者の1人が他の持分すべてを取得し、その代わりに他の共有者に代償金を支払う
デメリット ・時間や費用がかかる
・希望する分割方法にならない可能性がある
・競売になった場合、市場価格より安く売れる傾向がある
おすすめのケース ・他の共有者が協議に応じてくれない場合
・裁判費用や時間がかかっても、共有状態を解消したい場合

現物分割

民法第258条第2項では、共有物を分割する際の方法として「現物分割」と「代償分割」の2つを定めています。 これらのいずれの方法でも分割が難しい場合、または分割によって不動産の価値が大きく下がるおそれがあるときは、裁判所が「換価分割(競売)」を命じることができます。

つまり、裁判所は不動産の性質や共有者の事情を踏まえて、3つの分割方法の中から最も適した方法を選ぶことになります。

現物分割とは、共有名義不動産を物理的に分け、各共有者の単独所有にする方法です。共有物分割訴訟の争いの対象が土地の場合には、まずこの現物分割が可能かどうかを検討するのが一般的です。

たとえば、建物が建っていない広い土地であれば、共有者の一方が「売りたい」、もう一方が「残したい」と意見が分かれていても、土地を分筆してそれぞれの単独所有にすることが可能です。

現物分割

仮に、300㎡ほどの土地で兄弟3人が共有持分1/3ずつ所有している場合は、100㎡ずつに分けて、それぞれが自分の土地を単独所有する形になります。分筆して単独所有になった土地は、各共有者が自由に利用・売却できるため、 売却を希望する共有者は自分の土地部分だけを売却することが可能です。

ただし、建物が建っている場合は、構造上の理由から物理的に分けることができず、分割そのものが不可能なことがほとんどです。また、土地でも以下のような理由で現物分割が認められないケースがあります。

  • 分筆すると建築基準法の「接道義務」を満たせず、再建築はできなくなる
  • 分筆すると土地が極端に細長くなる、または使いにくい形状になる
  • 分筆すると面積が小さくなり、不動産としての価値が大きく下がってしまう
  • 地下の水道管やガス管などのインフラ配置の関係で土地を分けにくい

このように、現物分割は公平でわかりやすい方法ですが、実務上は適用が難しい場合が多いのが実情です。

そのため、現物分割が不可能または不適当と判断された場合には、代償分割(他の共有者が代償金を支払って不動産を取得する)や換価分割(競売による売却)といった別の方法が選ばれることになります。

換価分割

換価分割とは、裁判所の判断によって共有名義不動産を競売にかけ、売却代金を持分割合に応じて分配する方法です。共有物分割訴訟では、まず現物分割や代償分割が検討されますが、それらの方法が難しいと判断されると換価分割が選ばれます。

換価分割

市場価格3,000万円の不動産を兄弟3人で1/3ずつ共有しているケースを考えてみましょう。長男・次男は「すぐに売って現金化したい」、三男は「不動産を残したい」 と主張が対立し、兄弟仲も険悪になった場合は、共有物分割請求訴訟に発展することもあります。

訴訟の結果、現物分割も代償分割も難しいと判断されれば、裁判所が換価分割を命じ、不動産は競売にかけられます。そして、競売による売却代金は、兄弟3人それぞれの持分割合(1/3ずつ)に応じて分配されます。

ただし競売では、市場価格よりも安い価格で落札される傾向があります。入札状況や物件の状態によって価格は変動するため、相場を出すのが難しいですが、一般的には市場価格の6割〜8割程度で落札されるケースが多いです。

つまり、市場価格3,000万円の不動産であっても、2,400万円で落札されれば、1/3の持分に応じて800万円しか手元に残りません。

共有名義不動産を売却して現金を得たいと考えて訴訟を起こしても、実際には競売によって価格が下がり、裁判費用や時間に見合わない結果になる可能性もあります。

さらに、不動産が残らないため、残したいと考えていた共有者との間にトラブルや遺恨が残るケースも少なくありません。

繰り返しになりますが、共有物分割訴訟は最終的に裁判所が分割方法を決める手続きであるため、必ずしも希望通りの結果になるとは限りません。そのため、訴訟に踏み切る前に費用対効果を慎重に検討することが大切です。

「共有関係を整理したい」「時間とコストを抑えたい」という場合は、共有持分のみを不動産買取業者に売却するという選択肢もあります。弊社「株式会社クランピーリアルエステート」は、共有名義不動産や共有持分の買取実績が豊富な不動産会社です。無料査定・無料相談も行っているので、訴訟に進む前に一度ご相談いただくことで、より現実的な解決策が見つかるかもしれません。

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代償分割

代償分割とは、共有者のうち1人が不動産全体を取得し、その代わりに他の共有者へ持分に応じた金銭(代償金)を支払う方法です。 不動産を物理的に分けることが難しい場合でも、代償分割であれば共有状態を解消できます。

市場価格3,000万円の不動産を、兄弟3人で1/3ずつ共有しているケースを考えてみましょう。長男が不動産をすべて取得する場合、長男は次男と三男に対し、持分相当額にあたる代償金を支払います。次男に1,000万円、三男に1,000万円で合計2,000万円支払うということです。結果として、長男の単独名義の不動産になるため、共有関係を解消できます。

代償分割は、「不動産を手放したくない」「共有関係を整理したい」という双方の希望を両立できる方法です。ただし、代償金を支払う側の共有者が「持分相当の金額」を用意できない場合は、代償分割は認められません。

裁判所は、次のような資料などから支払い能力を判断します。

  • 預貯金通帳などの残高証明
  • 金融機関からの融資承認や借入見込み
  • 親族などからの資金援助の確認

こうした証拠をもとに、実際に代償金を支払えると認められれば、代償分割が採用される可能性があります。一方で、支払いの裏付けが不十分な場合には、換価分割(競売)が選ばれることもあります。

売却に反対されたまま共有名義で不動産を所有することのリスク

共有名義不動産は、一見すると公平に感じられ、「とりあえずこのままでいい」と思われがちです。しかし、時間が経つほど共有関係は複雑化し、トラブルの火種になるケースも多く見られます。

売却に反対されたからといって共有状態のまま放置してしまうと、今は問題がなくても将来的に思わぬトラブルに巻き込まれるリスクがあります。

具体的には、以下のようなリスクがあります。

  • 共有者全員に固定資産税などの支払義務が生じる
  • 共有名義不動産の管理の方針で意見が対立する
  • 他の共有者が勝手に第三者へ持分を売却してしまう
  • 相続があるたびに共有者が増えてしまい権利関係がさらに複雑になる

共有名義不動産をめぐるトラブルは、一度起きると解決までに時間や費用がかかることも珍しくありません。弊社にも「共有状態を解消したいけれど、何年も管理費だけを払い続けている」といったご相談が多く寄せられています。

そのため、「今は問題がないから」と放置するのではなく、できるだけ早い段階で共有状態を解消することが望ましいです。

弊社では「長年共有状態に悩んでいる」「共有者10人以上に増えてしまい、話がまとまらない」など、複雑な事情を抱えた共有名義不動産や共有持分にも対応してきた実績があります。共有名義でお悩みの方は、まずは無料相談をご利用ください。

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共有者全員に固定資産税などの支払義務が生じる

共有名義不動産は所有し続けている限り、共有者全員に固定資産税や管理費用の支払い義務が生じます。民法第253条でも、共有物に関する費用は持分割合に応じて支払う必要があると定められています。


(共有物に関する負担)
第二百五十三条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
引用元 e-Gov法令検索 民法第253条

つまり、実際に不動産を使っていなくても、所有者である限り負担義務が発生します。マンションなら管理費・修繕積立金、戸建てなら経年劣化に伴う修繕費など、固定資産税以外にもさまざまな費用がかかります。

さらに、この費用負担は共有者間のトラブルになりやすいポイントです。

たとえば、固定資産税の納税通知書は通常、代表者として登録されている共有者の1人に届くため、その人が立て替え払いをして、後から他の共有者に請求するケースがよくあります。しかし、請求しても「支払ってもらえない」「連絡がつかない」といったトラブルは珍しくありません。

また、共有者のうち1人が共有名義不動産に住んでいて、他の共有者は居住していないケースでは、支払う側に不満がたまりやすくなります。こうした金銭トラブルは長期化しやすく、共有者間の関係悪化にもつながります。

今は問題がなくても、固定資産税や管理費用の負担がきっかけで対立が表面化するケースは多いため、早い段階で共有状態を解消することが望ましいといえます。このようなリスクを他の共有者にも説明し、話し合いのきっかけにするのも有効です。

共有名義不動産の管理の方針で意見が対立する

共有名義不動産にかかる制限

共有名義不動産は、複数人で1つの不動産を所有しているため、管理や運用を行うにも共有者の同意が必要になります。この「他人との合意形成が前提となる仕組み」が、トラブルの火種になるケースはよくあります。

共有名義不動産に関する行為には、以下のような制限があります。

行為 具体例 同意の条件
変更行為 ・不動産の売却
・建物の解体
・建物の建て替え・増改築
・長期の賃貸借契約(5年超)
・不動産への抵当権設定
共有者全員の同意が必要
管理行為 ・大規模なリフォーム
・長期の賃貸借契約(5年以内)
・宅地の整地
共有持分の過半数分の同意が必要
保存行為 ・建物の修繕(雨どいや屋根、配管の修理、外壁の補修など)
・軽微なリフォーム(壁紙の交換など)
・不法占拠者への明け渡し請求
・無権利者名義の抹消登記請求
・火災や災害時の建物滅失登記
共有者の合意は必要なし

つまり、自分1人の意思で行えるのは、建物の修繕など現状維持のための「保存行為」に限られます。それ以外の賃貸や売却、リフォームといった収益化・活用に関する行為には、他の共有者の同意が必要です。

たとえば、自分は短期の賃貸に出したいと考えていても、持分の過半数の同意が得られなければ実現できません。

実務でも「リフォームして貸したい」「売却したい」「そのままにしたい」といった意見が対立し、不動産が活用されずに塩漬け状態になることはよくあります。

活用できない不動産であっても、固定資産税や管理費用の負担は発生し続けます。共有者間の意見がまとまらなければ、収益化できないまま維持費だけがかかる「負の資産」になるリスクが高いのです。

こうしたリスクを避けるためにも、共有状態はできるだけ早く解消することをおすすめします。

他の共有者が勝手に第三者へ持分を売却してしまう

共有名義不動産は、共有者それぞれが共有持分を所有しています。この共有持分は個人の財産とみなされるため、他の共有者の同意がなくても、持分だけを第三者に売却することが可能です。

そのため、知らないうちに他の共有者が持分を売却し、まったく面識のない人と共有関係になる可能性もあります。共有持分の売却自体に違法性はないため、売却を止めたり、責めたりすることはできません。

新たな共有者が入ると、次のようなトラブルが発生するケースもあります。

  • 新しい共有者から家賃の支払いを求められる
  • 不動産への立ち入りや使用を主張される
  • 共有物分割請求訴訟を起こされる
  • 共有持分の売却・買取を求められる
  • 新しい共有者が固定資産税などを滞納し、差し押さえなどが発生する可能性もある

実務上、トラブルに発展しやすいのは「共有者と疎遠で関係性が薄い」「共有者との関係性が悪い」「不動産の活用方針などで過去に揉めた経緯がある」といったケースです。こうした背景がある場合、第三者への持分売却をきっかけにトラブルへ発展することが多く、弊社にも実際に多くの相談が寄せられています。

すべてのケースで深刻なトラブルに発展するわけではありませんが、第三者が入ると共有状態がさらに複雑になるため、将来的なトラブルを防ぐためにも、早めに共有状態を解消しておくことが重要です。

相続があるたびに共有者が増えてしまい権利関係がさらに複雑になる

共有名義不動産は、相続が発生するたびに共有者が増えていきます。

たとえば、最初は兄弟2人で共有していた不動産があったとします。その後、兄が亡くなり兄の持分が子ども2人に、弟が亡くなり弟の持分が子ども2人に相続されると、この時点で共有者は4人になります。さらに次の相続でそれぞれの持分が細かく分かれていくと、共有者の数はねずみ算式に増えていきます。

実際、弊社でも共有者が10人以上に膨れ上がった不動産の相談を受けたことがあります。共有者が増えると、次のような問題が起こりやすくなります。

  • 連絡先がわからない共有者が出てくる
  • 遠方に住んでいる人との話し合いが難しい
  • 一部の共有者が話し合いに応じず、手続きが進まない

共有者が増えるほど意見をまとめるのが難しくなり、将来的に不動産を売却したり、活用したりすることが困難になります。最終的に「共有者の所在調査」や「裁判所への共有物分割請求」といった時間と費用のかかる手続きが必要になるケースもあります。

そのため、相続の段階でできる限り共有名義を避け、誰か1人の単独名義にまとめることが理想です。すでに共有名義になっている場合でも、早めに共有持分を整理・売却しておくことで、将来の相続人に余計な負担を残さずに済みます。

まとめ

共有名義不動産全体の売却には、共有者全員の同意が必要です。もし売却に反対されてしまった場合も、状況に応じた対応で共有状態を抜け出す道はあります。

交渉の余地がある場合は、共有状態を放置するリスクを丁寧に説明し、合意を得ることで不動産全体の売却につなげられる可能性があります。一方で、交渉が難しい場合は、自分の持分だけを売却・譲渡して共有関係から抜けるといった方法も選択肢の1つです。

どうしても話し合いがまとまらないときは、最終手段として共有物分割訴訟を行うことも可能です。ただし、裁判では希望通りの結果にならない場合もあるため、慎重な判断が必要です。

なお、売却に反対されたからといって共有状態を放置してしまうと、固定資産税の負担や管理トラブル、相続による権利関係の複雑化など、さまざまなリスクを抱えることになります。実際、弊社にも「共有名義を放置したことでトラブルになった」というご相談が多く寄せられています

そのため、できるだけ早い段階で共有状態を解消することをおすすめします。「共有名義をどうすれば良いのかわからない」「売却を反対されて困っている」という方は、まずは弊社の無料相談をご活用ください。

よくある質問

共有持分を売却する場合の価格はいくらぐらいですか?

共有持分の価格は「不動産全体の価格 × 持分割合」で算出します。不動産全体の価格は、周辺の取引事例、不動産会社の査定、固定資産税評価額などを参考にすると目安をつかみやすいです。

たとえば、不動産全体が6,000万円で持分が1/2なら、目安は約3,000万円です。

ただし、買取業者に売却する場合は、この金額の1/3~1/2程度(1,000万~1,500万円ほど)が目安となります。買取業者は、共有持分の買取後に他の共有者との交渉や法的トラブルの整理などを行うため、これらのコストを差し引いて査定額をだすためです。

とはいえ、立地条件や共有者の状況によっては、高値で査定されるケースもあります。まずは複数の業者に相談し、相場を把握するのがおすすめです。

弊社でも共有持分の無料相談・無料査定を実施しています。売却価格を知りたい場合は、ぜひご利用ください。
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共有持分を売却する場合、どんな費用や税金がかかりますか?

共有持分の売却で発生する費用は、売買契約書の作成に必要な収入印紙代です。状況によっては、譲渡所得税が発生することもあります。

収入印紙代 売買契約書には収入印紙の貼付が必要です。金額は売買価格に応じて変わり、たとえば500万円超~1,000万円以下なら5,000円、1,000万円超~5,000万円以下なら1万円が目安です。
譲渡所得税 売却益が出た場合に課税されます。税率は所有期間によって変わり、5年以下は約39%、5年超は約20%が目安です。居住用で条件を満たす場合は控除が使えることもあります。

共有持分の売却後は、買主への所有権移転のために登記手続きが必要です。登記の際には、登録免許税(不動産の固定資産評価額の2%)と、司法書士に依頼する場合の司法書士報酬(5万円前後)がかかりますが、一般的には買主が負担します。

共有者同士の売買では登記費用を折半するケースもありますが、不動産買取業者への売却の場合は、売主側の負担がないケースがほとんどです。

なお、実際にかかる費用は物件や売却額によって異なるため、事前に不動産会社や税理士へ確認しておくと安心です。

共有持分を少しでも高く売るにはどうすれば良いですか?

共有持分を高く売るためには、まず複数の買取業者に査定を依頼して価格を比較することが大切です。共有持分の査定額は業者によって差が出ることが多く、1社だけで決めてしまうと相場より安く売ってしまう可能性があります。

また、信頼できる業者を選ぶことも重要です。なかには、契約前に他の共有者へ無断で連絡するような悪質な業者も存在します。査定実績が豊富で、共有持分の取り扱いに慣れている専門業者を選ぶことで、トラブルを避けながら高値での売却を目指せます。

弊社「株式会社クランピーリアルエステート」は、共有持分などの訳あり物件を専門とする不動産買取業者です。共有持分の買取実績が豊富な分、買取後のコストを抑えて、査定額をご提示できます。ぜひ無料査定をご活用ください。
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共有持分の買取業者はどう選べば良いですか?

共有持分の売却では、業者選びが価格とトラブル回避の大きなカギになります。以下のポイントを押さえて、信頼できる業者を選びましょう。

チェックポイント 確認のポイント
買取実績 年間の買取件数やこれまでの実績を確認。実績が多い業者ほど、複雑な案件にも柔軟に対応できる可能性があります。
口コミ・評判 公式サイトやGoogle口コミなどで利用者の声をチェック。スピード対応や丁寧な説明が評価されている業者が安心です。
査定の透明性 査定額の根拠をしっかり説明してくれるか確認。複数社の査定を比較し、納得できる価格を提示する業者を選びましょう。
共有持分の取扱い経験 共有名義不動産に詳しい業者なら、他の共有者との交渉や登記などもスムーズに進められます。

弊社「株式会社クランピーリアルエステート」は、共有持分の買取に豊富な実績があり、複雑な権利関係にも対応可能です。 「まずは相談だけしたい」という方も、無料で査定・相談が可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
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