共有名義のデメリットは?共有名義が向いているケースから解消方法まで紹介

「兄弟で実家を相続する予定だけれど、共有名義にはデメリットが多いと聞いて不安」など、不動産を共有名義で取得することに不安を覚える方は少なくありません。弊社にも、共有名義に関するご相談は数多く寄せられます。
共有名義にはさまざまなデメリットがあるのは事実です。弊社がこれまでに受けてきた相談事例から見えてきた、代表的な共有名義のデメリットは次の10つです。
共有名義のデメリット | デメリットの詳細 |
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共有者全員の同意がなければ売却や建て替えができない | 共有者が1人でも反対すると売却、建て替え、増改築ができないので活用の自由度が非常に低くなる |
共有持分割合の過半数の同意がなければリフォームができない | 共有持分の過半数を有する共有者が反対すると、軽微なリフォーム、不動産の使用方針の決定、分筆などができなくなる |
自分が使っていなくても金銭面・管理面を負担しなければならない | 共有名義不動産の金銭面・管理面の負担は、不動産の使用状況には関係なく共有持分割合で決まるのが原則 |
特定の共有者が共有名義不動産を占有し追い出せない | 居住自体は共有者としての正当な権利行使なので、「正当事由」が認められなければ追い出すのは困難 |
他の共有者が支払いや税金を滞納し負担増や揉め事になる | 滞納者がいると、その分の支払いを肩代わりしたり、滞納者との揉め事になったりなどのトラブルが想定される |
特定の共有者が家賃を独り占めする | 家賃を取り戻すには、不当利得返還請求などの法的手続きが必要になる |
子ども・孫の代への相続でトラブルが発生する | 仲が悪い人や遠方の親戚などの共有者が増え続ける、権利が分散し続けるなど、子どもや孫の不動産の管理負担が大きくなる |
離婚時の財産分与で住み続けるか売るかで争いになる | 離婚するだけでは共有名義は解消されないので、そのままでは離婚後もトラブルに巻き込まれるリスクがある |
誰かが共有持分を手放して顔も知らない第三者が共有者になる | 新たな共有者が持分買取や共有名義解消などを打診してきて、対応に追われる |
共有者同士の感情的なトラブルに巻き込まれる | 感情の問題にははっきりとした解決方法が存在しないため、問題が長引く可能性がある |
※デメリット名をタップ・クリックすれば各見出しにジャンプします。
共有名義には、「住宅ローン控除が共有者ごとに適用できる」「住宅ローンの融資額を上げやすい」「相続税対策になる」などのメリットも存在します。ただし実際の運用においては、状況によって必ずしもメリットにならないケースがあるため、注意が必要です。
共有名義を所有するデメリットが大きいなら、共有持分の売却や共有物分割請求などで、共有名義解消を検討してみましょう。
本記事では、弊社のこれまでの経験を基に、共有名義のデメリットや具体的なトラブル事例を解説します。また、共有名義のメリットについて専門家目線での検証や、共有名義を解消する具体的な方法も紹介します。
もし自分の共有持分を売却して共有名義を解消したいときは、共有持分専門の買取業者である、弊社「クランピーリアルエステート」へご相談ください。共有持分の取り扱い経験豊富なスタッフと提携する1,700以上の士業の先生が連携し、権利関係が複雑化した共有持分でも全国どこでも査定し買取いたします。
目次
共有名義のデメリット10選|具体的なトラブル事例とともに解説
共有名義不動産や共有持分を専門に取り扱う弊社に寄せられた、1万件以上の相談事例を分析していくと、「共有名義を所有する代表的なデメリット」が見えてきます。
共有名義のデメリットとして挙げられるのは、主に以下の10つです、
- 共有者全員の同意がなければ売却や建て替えができない
- 共有持分割合の過半数の同意がなければリフォームができない
- 自分が使っていなくても金銭面・管理面を負担しなければならない
- 特定の共有者が共有名義不動産を占有し追い出せない
- 他の共有者が支払いや税金を滞納し負担増や揉め事になる
- 特定の共有者が家賃を独り占めする
- 子ども・孫の代への相続でトラブルが発生する
- 離婚時の財産分与で住み続けるか売るかで争いになる
- 誰かが共有持分を手放して顔も知らない第三者が共有者になる
- 共有者同士の感情的なトラブルに巻き込まれる
共有名義のデメリットの多くは、「共有者同士のトラブル」に集約されます。とはいえ共有名義を所有する限り避けては通れないリスクなので、他の共有者との関係性には常に注意が必要です。
ここではスムーズに記事をご覧いただくために、基本的な用語の意味をおさらいしておきます。
「共有名義」とは、同じ不動産を2人以上で所有している状態です。登記情報には、名義人が2人以上記載されています。一方で、所有者が1人だけの状態は「単独名義」です。
次に「共有者」とは、共有名義不動産における所有者の名称です。登記されている名義人全員が共有者という認識で問題ありません。
最後に「共有持分」とは、共有者それぞれが持つ所有権の割合です。たとえば共有持分割合が50%ずつ持つ夫婦なら、夫婦で不動産の所有権を半分ずつ持っている状態です。共有持分割合は、登記情報を見れば確認できます。
1.共有者全員の同意がなければ売却や建て替えができない
共有名義の大きなデメリットとして挙げられるのは、不動産全体の売却や建て替えなどに、共有者全員の同意が求められることです。
民法第251条には、「各共有者は他の共有者の同意がないと、共有物に変更を加えられない」と定められています。そして条文内の「変更」のなかに、売却や建て替えが含まれると解釈されます。
民法第251条における行為は、実務上、変更行為や処分行為と呼ばれるのが一般的です。
(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
e-Gov法令検索 民法第251条
共有者全員の同意が必要な行為として、代表的なものは次の通りです。
- 不動産全体の売却
- 建物の増改築、取り壊し、建て替え、新築
- 概ね3年を超える長期賃貸借契約
- 土地の造成
- 不動産全体に対する抵当権設定
- 建築基準法上、確認申請が必要になる大規模修繕行為やリフォームなど
仮に共有持分割合99%を有する共有者99人全員が「建物を建て替えたい」と同意していても、共有持分割合1%の共有者1人が反対すれば、建て替えは認められません。
共有持分割合が1%であろうと、反対者は不動産の正式な所有者です。「自分が持つ不動産を勝手に建て替えられたら困る」という、法的にも倫理的にも真っ当な主張です。
このように、共有名義不動産は活用や処分において自由度が低いというデメリットがあります。もし老朽化した建物や空き家の共有名義なら、時間が経つほど資産価値の低下と倒壊の危険性が高まり、新たなトラブルの火種になるリスクも想定されます。
3人兄弟で実家を相続した相談者様の事例です。「老朽化しているから建て替えて売却したい」と希望していたものの、「思い出が詰まっているから取り壊したくない」と強硬に反対する共有者様からの同意を得られず、手続きが一切進まない状態でした。
そのまま放置していては、資産価値の低下や継続的な管理費用の支払いが続きます。時間が経つほど大きくなる所有リスクについて、相談者様は頭を悩ませていました。
2.共有持分割合の過半数の同意がなければリフォームができない
「共有者全員の同意がなければ売却や建て替えができない」にて解説した「共有者の同意の必要性」については、変更行為以外にも適用されます。
具体的に言うと、共有不動産のうち軽微なリフォームや分筆などの「管理行為」は、「共有持分割合の過半数の同意」がないと実施が認められません。民法第252条にて、変更行為と同じように定められています。
(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
e-Gov法令検索 民法第252条
共有持分割合の過半数の同意とは、「管理行為について同意する共有者が持つ共有持分の合計が過半数かどうか」を表します。たとえば共有者5人のうち4人が管理行為の実施に同意しても、反対者の共有持分割合が51%で過半数に達していると、管理行為は認められません。
管理行為に該当するものは、次の通りです。
- 変更行為に該当しない改装工事など(大規模に該当しないリフォーム、外壁のひび割れ補修、未舗装の私道へのアスファルト舗装など)
- 土地の分筆
- 概ね3年以下の短期賃貸借契約
- 共有宅地の整地
- 建物全体の使用方針の決定
このように共有名義は変更行為だけではなく、一定のリフォームや修繕行為、その他の活用についても、自分の意思のみでは自由にできないデメリットがあります。
なお、変更行為・管理行為のいずれにも該当しない「保存行為」は、他の共有者の同意なくあなたの単独の意思で実施可能です。たとえば、簡単な修繕行為や不法な登記名義を有する第三者への登記の抹消請求などが、保存行為に該当します。
築年数40年を超える実家を、姉妹で共有していた相談者様の事例です。
雨漏りをしていた建物の修繕を希望していたところ、共有持分を過半数を持つ姉から「高額な費用をかけてまで直す必要はない」と反対され、相談者様単独の意思では修繕対応ができませんでした。その結果、建物の劣化や痛みが酷くなって売却価格も減少していき、相談者様も困惑されていました。
3.自分が使っていなくても金銭面・管理面を負担しなければならない
共有名義不動産の維持管理に必要な金銭面・管理面の負担は、共有者全員で負う必要があります。
そして、負担割合はどれだけ不動産を使っているかは関係なく、共有持分割合に応じて決まるのが原則です。共有物に関する金銭・管理の負担は民法第253条の「共有物に関する負担」、地方税の支払いについては地方税法第10条の「連帯納税義務」が根拠です。
(共有物に関する負担)
第二百五十三条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
e-Gov法令検索 民法第253条
(連帯納税義務)
第十条 地方団体の徴収金を連帯して納付し、又は納入する義務については、民法第四百三十六条、第四百三十七条及び第四百四十一条から第四百四十五条までの規定を準用する。
e-Gov法令検索 地方税法第10条
つまり、不動産を一切利用していなくても、共有名義の不動産関係の負担はかかり続けるデメリットがあります。金銭面・管理面の負担の具体例は、次の通りです。
- 固定資産税・都市計画税などの税金
- 自然災害や老朽化が要因となった損傷の修繕費用
- 電気・水道・ガスなどの建物に附属する設備の修理費用
- 火災保険料や地震保険料
- マンションの管理費や修繕積立金(※)
- 山林の樹木の管理や侵入者対策などにかかる監守費用
- 不動産や設備などの維持管理のための清掃・工事対応の負担
- マンション管理組合とのやり取りやアパート入居者関係のトラブル対応など
※大規模修繕工事など、建物や設備の修繕に備えて積み立てておくお金のこと
なお上記の条文は義務ではなく「任意法規」であるため、共有者間で約束事があれば負担割合を自由に決められます。たとえば共有者同士の合意があれば、「実際に住んでいる人が多めに負担する」など実態に応じた柔軟な対応が可能です。
共有名義不動産がある土地から離れたところにお住まいの相談者様の事例です。兄弟と実家を共有していたものの、相談者様は遠方に住んでおり不動産を利用することはありませんでした。
しかし、兄弟からは固定資産税の支払いだけではなく草刈りなどの維持管理の負担を平等に求められて毎年数万円単位の支出が続き、不公平感が要因となって相談者様と兄弟でトラブルになっていました。
4.特定の共有者が共有名義不動産を占有し追い出せない
共有名義不動産を巡るトラブルとして、特定の共有者が不動産を占有する問題が挙げられます。
しかし、共有者の1人が共有名義不動産を占有したとしても、それだけを理由に占有者を追い出すことは法律で認められていません。なぜなら、民法第249条にて「各共有者は、共有物の全部について持分に応じた使用ができる」と定められているからです。
建物への居住は、民法第249条の「使用」に当たります。共有者は正式な所有者の1人であり、たとえ不動産を占有したとしても「自分の所有権を行使しているだけ」と判断されます。
共有物の使用)
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
e-Gov法令検索 民法第249条
つまり、身勝手な共有者が不動産を独り占めしても、簡単には追い出すことができません。
退去を命じるには、占有者が「同意を得ず勝手に建物を売却する」「過半数の同意をもって事前に取り決めた使用方法を無視する」など、占有者へ不動産明け渡しを求められる「正当事由」が必要です。ただし相手が争う姿勢を見せるときは、正当事由が認められるかについて裁判所の判断を仰ぐ必要があります。
他の解決法としては、また、共有物分割請求による共有状態の解消も視野に入ります。
このように、特定の共有者が不動産を占有されると非常に対応が難しくなる点も、共有名義のデメリットと言えるでしょう。
母親から相続した実家を共有している相談者様の事例です。姉が相続した実家に住み続けており、相談者様が事実上一切利用できない状況が続いていました。賃料を請求しようにも法的手続きに費用・時間がかかる、不動産の活用もできないなど、長年強い不満を抱えておられました。
5.他の共有者が支払いや税金を滞納し負担増や揉め事になる
「自分が使っていなくても金銭面・管理面を負担しなければならない」で解説した通り、共有名義不動産の維持管理費の支払い・納税は、原則として共有者全員で負担します。
しかし、共有名義不動産でよくあるトラブルの1つに、共有者による支払い・税金の滞納が挙げられます。このような滞納者に関するトラブルに巻き込まれるリスクが存在するのが、共有名義のデメリットの1つです。
滞納者が出てしまうと、多くの場合、他の共有者が滞納者の支払いを一旦立て替える形で負担することになります。
一般的に支払いや納税は「代表者が一旦まとめて支払い、その後各共有者から回収する」または「代表者が共有者から全額徴収した後、まとめて支払う」という形になるので、代表者が滞納分を負担するケースが多いのが実情です。
仮に代表者が「滞納者がいるから支払いができない」と支払いなどを拒否してしまうと、債権者からの督促や損害賠償請求に発展するでしょう。
滞納しているのが固定資産税・都市計画税なら、地方税法第10条の連帯納税義務に基づき、滞納者以外の共有者の財産も差し押さえ対象になるリスクもあります。
滞納者へ支払い催促しても一向に対応してくれないときは、求償請求訴訟などの法的措置を視野に入れる必要があります。しかし、法的措置には数か月~数年単位の時間や弁護士費用などがかかるため、「採算が取れない」と泣き寝入りしてしまう方が多いのも正直なところです。
共有者である兄が、税金を長期間滞納していたという相談者様の事例です。兄は共有名義不動産の代表者でしたが、相談者様から固定資産税を徴収した後も、経済状況を理由に納税を怠っていました。
ある日、相談者様や他の共有者の下へ自治体から督促状が届き事態が発覚。代表者は交代したとのことですが、「今後も同じことが起こるのでは」と、相談時には共有名義の状態そのものに強い不信感を持っておられました。
共有者の個人的な借金や税金滞納も他の共有者に影響する可能性がある
共有者の個人的な借金や連帯納税義務のない税金の滞納に対する差し押さえは、滞納者の財産のみが対象です。他の共有者へ直接的な影響はありません。しかし、差し押さえられたのが滞納者の共有持分だった場合、その共有持分は任意売却や競売を経て第三者へ売却されます。
そうなると顔も知らない第三者が共有者となり、新たなトラブルに発展するかも知れません。第三者が共有者になるリスクについては、「誰かが共有持分を手放して顔も知らない第三者が共有者になる」にて詳しく解説します。
6.特定の共有者が家賃を独り占めする
共有名義不動産が賃貸マンションや賃貸アパートだった場合、入居者から徴収した家賃は、民法第206条に基づき共有持分割合に応じて共有者へ分配するのが原則です。家賃は、民法第206条における「収益」に該当します。
(所有権の内容)
第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
e-Gov法令検索 民法第206条
実務上多いのは「代表者などの特定の共有者が、家賃を全額徴収した後に共有者へ分配する」という形なのですが、このとき代表者が家賃を独り占めするリスクが存在します。
家賃を分配する気がない独占者から支払ってもらうには、不当利得返還請求や訴訟などの法的措置が必要です。しかし前述した求償請求訴訟と同じく、実際に取り戻すまでには時間や費用がかかってしまいます。
建物を占有されるケースもそうですが、「共有者による物議を醸す行為への対応に膨大が手間がかかるリスク」があるのが、共有名義の大きなデメリットと言えます。
兄弟で共有名義アパートを経営していた相談者様の事例です。急に兄からの家賃分配が一切なくなり不審に思ったところ、「自分しか管理業務に対応していないから、家賃も自分のものだ」と主張されました。
しかし弊社が確認する限りでは、管理業務は兄弟で適切に割り振られており、相談者様も頭を悩ませておられました。
7.子ども・孫の代への相続でトラブルが発生する
共有持分は、他の不動産と同じように相続がおこなわれます。たとえば共有持分が30%で相続人が配偶者と子どもの2人だと、15%ずつ相続されます。つまり、共有持分の状態で相続が続いていくと、相続人の数だけ共有者が増え続けるというデメリットがあります。
子どもや孫の代まで対策せずに相続が続くと、子どもや孫が以下のトラブルに巻き込まれるかもしれません。
- 仲の悪い親族同士が共有者になって争いが増える
- 遠方の接点のない親戚が共有者になって、連絡が取りづらくなる
- 共有者が増えすぎて売却やリフォームについての意思統一が難しくなる
- 遺産分割協議などの相続関係の手続きが複雑化する
実際に弊社が買い取った不動産のなかには、共有者が10人以上いて権利関係が非常に複雑化していたケースが存在します。また、共有者が増えすぎて全容が把握できず、確認してみると「行方がわからない」「すでに亡くなっていた」などのケースもありました。
祖父の代から相続が続く土地を所有していた相談者様の事例です。相続を機に登記を確認したところ、祖父の孫・甥姪などを合わせて共有者が16人に上ることが発覚しました。
相続登記もちゃんとされておらず、全員と連絡を取るのも困難な状況です。なかには海外在住者も存在し、共有名不動産に関する何かしらの合意形成は不可能といっても過言ではありませんでした。
8.離婚時の財産分与で住み続けるか売るかで争いになる
夫婦それぞれがマイホームの名義人の場合、離婚時の財産分与にてマイホームをどう処分するかで争いになるリスクがあります。
共有名義が起因となって発生するトラブルの例は、次の通りです。
- ペアローンなどの住宅ローンで購入したのに、離婚後に相手から「収入が減って払えない」「新しい家庭での出費が多い」など言い訳され支払いが滞る
- 離婚後にどちらがマイホームに住み続けるかが決まらない
- マイホームを売却したくても、相手からの同意が取れない
離婚はただでさえ財産分与や今後の生活など考えることが多いのに、マイホームを共有名義のままにしておくと、さらに面倒ごとが増えるかもしれません。
すでに離婚が決まっていて、共有名義のマイホームの処分にお困りだった相談者様の事例です。「子どものためにマイホームを残して住み続けたい妻」と、「売却して現金化したい夫」で意見が合わず、離婚後も争いが3か月ほど続いていました。
9.誰かが共有持分を手放して顔も知らない第三者が共有者になる
共有名義不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要な反面、自分の共有持分だけの処分なら同意は不要です。前述した民法第206条が根拠となっています。
つまり、あなた以外の共有者が、自分の共有持分を売却したり放棄したりする可能性もゼロではありません。手放すこと自体は正当な権利の行使ですが、問題になるのは「誰に共有持分を渡したか」です。
共有持分単体を取得する可能性がある第三者は、不動産会社や投資家になります。なぜなら、共有持分を取得した後に、他の共有持分を買い取って単独名義にし活用したり、家賃収入を得たりなどで収益を得る目的があるからです。
そのため、顔も知らない第三者から持分買取、家賃請求、共有状態の解消などを打診される可能性があります。提案内容は必ずしも悪いものとは限らないものの、対応の手間や時間はどうしてもかかります。
なお他の共有者がまた別の共有者へ譲渡した場合は、譲受人となった共有者の共有持分割合が増加するのみです。
とはいえ、その譲渡によって共有持分割合の過半数に達したときは、軽微なリフォームや使用方針の決定などをその共有者単独の意思でおこなえるようになり、別の問題が発生するリスクがあります。
4人で共有名義アパートを経営していた相談者様の事例です。共有者の1人が、事前相談なしに知り合いの投資家へ共有持分を売却しました。投資家は経営の経験もあったことから、共有名義アパートの経営・管理について強引な意見を出し、「意見を聞かないなら共有物分割請求も辞さない」と迫ってきました。将来性を考えた、長期的な経営を考えていた相談者様たちは困惑したと語っていました。
10.共有者同士の感情的なトラブルに巻き込まれる
共有名義不動産には、法律面や実務面以外にも、共有者同士の感情的なトラブルに巻き込まれるデメリットがあります。感情的なトラブルの具体例は、次の通りです。
- 「共有者の〇〇さんが嫌い」など、共有者同士の性格が合わずいつも喧嘩になる
- 共有持分割合に応じた管理負担を分担しているが、「掃除したくない」「面倒くさい」なと主張し対応してくれない
- アパートの管理方針の話し合いで折り合いがつかず、いつも感情に任せた口論に発展する
法律面・実務面と異なり、感情面の問題は「正しいかどうか」や「認められるかどうか」などはっきりした基準がありません。そのため、解決策が見つかりにくいのが厄介な点です。粘り強い話し合いや、相手が納得するメリット・デメリットの提示などが、解決のために重要と言えるでしょう。
兄弟で実家を相続した相談者様の事例です。管理方法や売却方針でお互いが譲らず、最終的には人格否定や日常の不満など、論理的な話し合いができない状態になっていました。相談時には家族関係が破綻寸前まで進んでおり、「不動産の管理よりも、人間関係のほうが疲れる」と憔悴しておられました。
共有名義にはメリットもある?専門家が実務面から検証
共有名義について調べていると、「共有名義はデメリットだけじゃなくてメリットがある」と目にした方もいるのではないでしょうか。
実際のところ、共有名義だからこそのメリットはいくつか存在します。しかし、「そのメリットは本当にあなたにとってメリットになりえるのか」は、しっかりと考えなければなりません。
ここからは、共有名義不動産の専門家である弊社クランピーリアルエステートが、一般的に共有持分のメリットと言われる以下の要素について、実務面から実態を検証しました。
- 住宅ローン控除などで節税できるのは本当なのか
- 住宅ローンの融資額が上がるなど高額の住宅でも購入しやすくなるのか
- 共有者全員が売却時に3,000万円の控除などの特例を使って節税できるのか
- 維持管理費や税金の負担が安くなるのは本当か
- 評価額が低くなるおかげで相続税対策になるのは本当か
住宅ローン控除などで節税できるのは本当なのか
共有名義のメリットの1つに、「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を共有者全員が適用できる」が挙げられます。
住宅ローン控除を、共有者ごとに適用できるのは事実です。たとえばペアローンを使って不動産を購入した場合は、夫の所得税と妻の所得税それぞれから税額控除できます。
しかし、ここで考えるべきは「2人以上の共有者に住宅ローン控除を適用して、本当に得になるのか」です。
具体的には「配偶者の一方の収入が低い、または収入がない場合」だと、むしろペアローンはむしろ節税効果が減ってしまうリスクがあります。このケースだと、住宅ローン控除の枠が使い切れないからです。
たとえば年末時点でのペアローンの残高3,000万円、ローン負担割合1/2ずつ、入居年2025年で考えてみましょう。もし、夫婦が共働きでお互いに所得税・住民税額37万円ずつだった場合、所得税額は以下の通りです。
- 夫の所得税・住民税額:37万円-(3,000万円÷2✕0.7%)=26万5,000円
- 妻の所得税・住民税額:37万円-(3,000万円÷2✕0.7%)=26万5,000円
このように、夫婦のお互いの所得税額を控除できます。しかし、どちらか片方の単独名義のローンだったとしても、「所得税・住民税額74万円-(3,000万円✕0.7%)=53万円」と実は納税額の合計は変わりません。
さらに、ここでどちらかの収入がない場合はどうでしょうか。たとえば、夫の所得税額70万円、妻が退職して専業主婦になって税額が0円になった場合は次の通りです。
- 夫の所得税・住民税額:70万円-(3,000万円÷2✕0.7%)=59万5,000円
- 妻の所得税・住民税額:0円なので差し引ける税額なし
つまり、妻の住宅ローン控除分10万5,000円が実質適用できず、控除できなかった10万5,000円を納税しなければなりません。一方で単独名義の住宅ローンならローン負担分を分ける必要がないため、「70万円ー(3,000万円✕0.7%)=49万円」で済みます。
このように、共有者同士で住宅ローン控除を適用するとかえって損する場合があります。
住宅ローンの融資額が上がるなど高額の住宅でも購入しやすくなるのか
住宅ローンを共有名義にすれば、名義人の収入を合算して審査を受けられるため、融資額が高くなる傾向があります。夫婦名義なら夫婦、親子名義なら親子の収入の合算が審査対象です。
そのため共有名義なら、単独名義の住宅ローンでは手が届かない住宅でも購入できるメリットがあります。
しかし、ここで忘れてはならないのは、住宅ローンはあくまで「金融機関からお金を借りている状態」ということです。借入額が増えるほど、返済すべき金額も大きくなります。
仮に、「死亡する、高度障害になるなどで共有者の支払いが無理になった」「共有者が退職する、転職するなどで収入が減少した」などの事態に陥ると、2人分のローンを1人で返済し続けるはめになるかもしれません。
返済が難しくなれば、住宅の任意売却・競売したり、自己破産・個人再生などの債務整理が必要になったりなども検討する必要が出てきます。
つまり住宅ローンの借入額を増やせるとはいえ、返済能力などを考えず安易に増やしすぎると、万が一のときに大変な目に遭うリスクがあります。
共有者全員が売却時に3,000万円の控除などの特例を使って節税できるのか
共有名義不動産全体を売って売却益(譲渡所得)が出た場合、得られた売却益に課せられる譲渡所得税の申告および納税が必要です。
しかし売却した不動産の種類によっては、「マイホーム(居住用財産)を売ったときの特例」や、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が適用できる場合があります。たとえばマイホームを売ったときの特例は、不動産の所有期間に関係なく譲渡所得から3,000万円まで控除できる優遇措置です。
共有名義不動産の場合、住宅ローン控除と同じく、上記の特別控除を共有者1人ずつがそれぞれ適用できるというメリットがあります。
不動産を売却したときにかかる譲渡所得税は、「譲渡所得✕税率」で計算します。つまり、売却益が3,000万円までなら、マイホームを売ったとしてもその分の税金は一切かかりません。これが共有者が2人なら合計6,000万円、3人なら合計9,000万円も控除できます。
<シミュレーション>
- 譲渡所得5,000万円・共有者が2人・共有持分割合が60%・40%
- 共有者Aの譲渡所得:譲渡所得3,000万円-控除3,000万円=0万円
- 共有者Bの譲渡所得:譲渡所得2,000万円-控除3,000万円=-1,000万円
- いずれも譲渡所得-控除が0円以下であるため、譲渡所得税の発生はなし
- 単独名義の場合だと譲渡所得5,000万円-控除3,000万円で2,000万円分の譲渡所得税がかかる可能性がある
一見すると、売却する際には共有名義のほうが節税につながるイメージがあります。しかし不動産取引の実務だと、そもそも3,000万円の控除枠を使い切れるケースがほぼありません。
譲渡所得の計算は、売れた金額をそのまま使うのではなく、「不動産の購入費」「売却時に支払った仲介手数料」などを差し引きます。単純な計算例を出すと、3,000万円で購入した不動産が4,000万円で売れれば、ようやく譲渡所得が1,000万円になります。
要するに3,000万円を超える譲渡所得が出るのは、「不動産が購入したときよりも3,000万円超の値上がりがあった」などのケースです。
専門家目線で率直に言えば、可能性がゼロではないとはいえ、資産価値がそこまで上昇することはほぼないでしょう。建物だと経年劣化による価値低下もあるので、そもそも売却益自体が出ないのも珍しいことではありません。
単独名義不動産の売却でも譲渡所得3,000万円超になるケースがほぼないのですから、一般の方で共有者が全員3,000万円の控除枠を使い切れる場面はごく稀です。
つまりわざわざ共有名義にしなくても、1人分の特別控除だけで十分な節税になるケースがほとんどと言ってよいでしょう。
共有名義による節税効果が、まったくないとは言いません。しかし、共有名義のリスクを許容してまで狙う必要があるのかを検討はしてみてください。
維持管理費や税金の負担が安くなるのは本当か
前述した通り、共有名義不動産の維持管理費や税金の支払いは、民法や地方税法に基づき共有者の共有持分割合に応じて分担するのが原則です。
確かに、同じ不動産を単独名義で所有するよりも、1人あたりの負担は安くなるメリットがあります。しかし、これは「自分も共有名義不動産を活用している場合」です。不動産を一切使用しないのなら、むしろ使わないのに延々と費用を払い続けるというデメリットでしかありません。
またマイホームを夫婦で購入するなど、生計を一にしている者同士の共有名義だと、負担を分担するメリットがなくなります。なぜなら、結局は同じ財布からお金を出すことに変わりがないからです。
維持管理費や税金の負担が軽くなる恩恵を受けられるのは、「独立した兄弟同士が賃貸アパートを相続し、かつ共同で経営を続ける」といった、ある程度限定された状況だと思っておきましょう。しかしその場合も、前述した他の共有者が支払いを滞納するリスクがある点に注意が必要です。
評価額が低くなるおかげで相続税対策になるのは本当か
不動産の共有者が亡くなった場合、亡くなった方の共有持分が相続人へ引き継がれます。
共有持分の相続税評価額は、「共有名義不動産の相続税評価額✕共有持分割合」です。つまり、不動産を丸ごと相続するより相続税評価額が低くなるため、相続税額が抑えられます。
たとえば、相続税評価額5,000万円の実家を夫婦で50%ずつ所有していた場合、夫が亡くなると実家の共有持分の相続税評価額は2,500万円になります。
相続税の課税額は、原則として「課税される遺産の価額-(基礎控除3,000万円+600万円✕法定相続人数)」、相続税額は「課税額(※)✕相続税率」で計算されるので、共有持分だけを相続したほうが評価額が小さくなり、相続税対策につながりやすいのです。
その後、妻が亡くなったら残りの2,500万円分の共有持分が相続されます。このときも再び基礎控除が適用できるので、節税効果がより大きくなります。
このように、共有名義による相続税対策効果があるのは事実です。ただし、共有持分の相続は「10.共有者同士の感情的なトラブルに巻き込まれる」で解説した通り、共有者が増え続けるデメリットも存在します。
※ 法定相続分で按分した金額です。たとえば課税額2,000万円で相続人が配偶者と子ども2人なら、配偶者は1,000万円、子どもは500万円ずつになります。
共有名義を解消したほうがメリットが大きい人
ここまで、共有名義のメリットとデメリットを解説してきましたが、「じゃあ実際のところ、自分は共有名義で所有すべきなのか、解消すべきなのか」と迷ってしまう方もいると思われます。
そこでここからは、あくまでクランピーリアルエステートの見解という前提を基に、「共有名義を解消したほうがメリットが大きい人」を紹介します。弊社が考える、共有名義を解消したほうがメリットが大きい人は次の通りです。
- 共有者となる予定の人との関係性が悪い
- 共有者の支払い能力に不安がある
- 遠方に住んでいて不動産の管理が物理的に難しい
- 離婚後も元の配偶者と共有状態が続いている
- 共有者が3人以上など人数が多い
共有者となる予定の人との関係性が悪い
これから共有者になる予定の人との関係性が悪いときは、共有名義の解消を検討する理由になります。
実際に弊社へ相談いただく方の多くは、共有者との関係性悪化が要因となったトラブルについて悩みを抱えています。「法手続きが進まない」「話し合いに応じてくれない」などの実務面から、「嫌がらせをされる」「親戚に悪い噂を流される」など感情面でのトラブルまで、関係性の悪さが共有名義に関するあらゆるリスクの起因になっている印象です。
共有者の支払い能力に不安がある
共有者の支払い能力に不安があると、固定資産税・管理費用を滞納するリスクがあります。たとえば住宅ローンを共有で組んでいる場合、配偶者や共同債務者の収入が不安定だと、返済計画が崩れてしまう恐れがあります。
金銭面での負担増加もそうですが、そもそもお金のトラブルは人間関係を悪化させる元凶になりがちです。弊社へご相談いただく内容のなかにも、「仲の良かったご家族とお金関係で揉めて話さなくなった」といった事例が数多く存在します。
また、共有名義不動産関係の支払いで滞納がなくても、共有者個人が債務を抱えているケースも要注意です。債権回収として滞納者の共有持分が差し押さえられると、その共有持分を競売で落札したり購入したりした第三者が、共有者になる可能性も存在します。
もし第三者から共有持分買取を強引に迫られたり、しつこい電話連絡が繰り返されたりすると、大きなストレスを抱えるかもしれません。
遠方に住んでいて不動産の管理が物理的に難しい
あなたが不動産から遠方に住んでいて、不動産管理・活用が物理的に難しいときは、共有名義の解消を検討してみてください。不動産から遠方に住んでいる人が共有名義不動産を所有するデメリットは、次の通りです。
- 工事対応、清掃、その他管理業務のために遠方から出向くのは負担が大きい
- 自分で不動産を活用するのが難しいので管理費用の支払いだけが続く
- 共有者同士の話し合いなどでスケジュールを調整するのが難しい
離婚後も元の配偶者と共有状態が続いている
夫婦で購入した不動産が離婚後も共有名義のままなら、解消をおすすめします。離婚後も共有状態を続けるリスクは、次の通りです。
- 元配偶者が住宅ローンを滞納し続けたことで、元配偶者の共有持分が競売に出される
- 離婚して家から出ていっても、管理費用や税金の支払い義務だけ残り続ける
- 不動産の活用・処分を決める場合、離婚後も元配偶者と連絡を取らなければならない
- 元配偶者が自分の共有持分を売却し、第三者が共有者になる
- 再婚した元配偶者が亡くなった後に相続が発生し、権利関係が複雑化する
クランピーリアルエステートの見解としては、離婚前に共有名義を解消しておくのが無難です。
共有者が3人以上など人数が多い
すでに共有者が3人以上など、共有者の人数が多いときは共有名義のままで所有するリスクが大きくなります。理由は次の通りです。
- 共有者同士の意思統一が難しく、変更行為や管理行為の同意が取りづらい
- 費用の負担や管理業務の分担などについて決めるのが難しくなる
- 仲が悪い人や疎遠な人が増えると、不動産の運用が難しくなる
- 相続時による所有権の分散リスクが大きくなる
- 全員のスケジュールを合わせるのが困難になる
クランピーリアルエステートがこれまでお受けしたご相談内容でも、共有者の数が多い不動産ほどトラブルが起こりやすいのが正直なところです。話し合いや法手続きを進めるのも難しく、「もう数年以上揉めている」といったケースも少なくありません。
共有名義を解消する具体的な方法
「共有名義不動産を所有すると、自分にとってデメリットが大きい」と思った方は、共有名義の解消を具体的に検討してみてください。共有名義の状態を解消する具体的な方法は、主に次の通りです。
共有名義を解消する方法 | 主なメリット |
---|---|
自分の共有持分だけ売却する | 他の共有者の同意なしで自己持分を現金化できる |
同意を得られるなら共有名義不動産全体を売却する | 共有持分単体より高値で売りやすく一般の個人からの需要も期待できる |
共有持分の放棄の手続きをする | 放棄の意思表示するだけで所有権を手放せる |
共有名義の土地なら分筆する | 土地の所有権を手放さずに共有名義を解消できる |
話し合いが難しいなら共有物分割請求をおこなう | 話し合いに応じない共有者がいても対応でき、訴訟まで進めば裁判所の判断などをもって決着を付けられる |
相続前なら「遺産分割協議」「相続放棄」で対応 | 実際に所有する前段階で対応できる |
自分の共有持分だけ売却する
自分の共有持分だけを売却すれば、共有名義から抜け出せます。
「9.誰かが共有持分を手放して顔も知らない第三者が共有者になる」でも少し触れましたが、民法第206条にて「所有者は法令の制限内において自由に所有物を処分できる」とあります。つまり、自分の共有持分の範囲でなら、他の共有者の同意なく自由に売却が可能です。
共有持分単独で買い取ってくれるのは、主に「同じ不動産の共有者」または「第三者の買取業者」の2つです。不動産仲介を利用しても、一般の個人からの需要がほぼないので注意してください。
共有持分の売却先 | 概要 |
---|---|
他の共有者 | 共有持分割合を増やすチャンスであるため、買取を期待できる。買取業者への売却よりも高値で売れる傾向あり。売却相場は「共有名義不動産の市場価格✕共有持分割合」。 |
買取業者 | 顧客から不動産を直接買い取り、買い取った不動産を活用して利益を得る業者。1週間程度での現金化や現況のままでの買取などスムーズに売却しやすいのがメリット。売却相場は「共有名義不動産の市場価格✕共有持分割合✕1/2~1/3」と、諸経費の分だけ査定額が低くなる傾向がある。 |
共有持分単体での売却については、以下の関連記事にて詳しく解説しています。
同意を得られるなら共有名義不動産全体を売却する
共有者全員から同意を得られるなら、共有名義不動産全体を売却し、共有者全員が所有権を手放せば共有名義を解消できます。
不動産全体を売却するメリットは、市場価格や需要の高さから売却が進めやすい点です。購入者は共有者全員の共有持分を取得できるので、単独名義の不動産を買うのとほぼ同じです。そのため、通常の不動産と同じくらいの価格で一般の個人相手に売却しやすくなります。
共有名義不動産の売却については、以下の関連記事にて詳しく解説しています。
共有持分の放棄の手続きをする
「現金化できなくてもよいから、とにかくすぐに共有持分を手放したい」という方は、共有持分の放棄の手続きを検討してみてください。
共有持分の放棄とは、民法第255条に基づく、共有持分の所有権を放棄する手続きです。
(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
e-Gov法令検索 民法第255条
放棄した共有持分は、実務上、贈与扱いで他の共有者へ共有持分割合に応じて引き渡されます。
共有持分の放棄のメリットは、他の共有者の同意が不要なうえに、売買契約などを締結する必要もない手軽さです。自分が放棄の意思表示をすれば、放棄手続きを進められます。
ただし、放棄した共有持分は共有者全員へ帰属するため、持分移転登記の際には共有者全員による共同申請が求められます。また、他の共有者の同意が必要ないとはいえ、今後の人間関係の悪化や共同申請の拒否などのトラブルを避ける意味でも、事前に話を通しておくのがよいでしょう。とくに、共有持分を受け取った人に帰属した共有持分の評価額分の贈与税が発生する点は、事前に説明しておいてください。
共有持分の放棄の手続きについては、以下の関連記事にて詳しく解説しています。
共有名義の土地なら分筆する
共有名義不動産が建物ではなく土地なら、分筆によって共有名義を解消できます。
分筆とは、登記上の土地を複数に分け、分けた土地をそれぞれ単独名義で登記し直す手続きです。共有名義不動産の場合だと、原則として共有持分割合に応じて土地を区分します。
分筆のメリットは、不動産を手放さなくても共有名義を解消できることです。共有者それぞれが分筆した土地の単独名義人として、自由に活用や処分ができます。
ただし、分筆には共有持分割合の過半数の同意が必要です。また、隣地との境界が曖昧だったり正確な測量ができてなかったりする場合は、土地家屋調査士に調査・測量・登記を依頼する必要があります。
共有名義の土地の分筆については、以下の関連記事にて詳しく解説しています。
話し合いが難しいなら共有物分割請求をおこなう
共有名義の解消について他の共有者がろくに取り合ってくれないときは、「共有物分割請求」をおこなうのが効果的です。
共有物分割請求とは、民法第256条に基づき、共有者の1人が共有状態の解消について他の共有者全員に対して求める手続きです。他の共有者は共有物分割請求を拒否できないため、必ず話し合いの場を作れるメリットがあります。
(共有物の分割請求)
第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
e-Gov法令検索 民法第256条
しかし、共有物分割請求はあくまで話し合いであるため、必ずしも結論が出るわけではありません。
そこで話し合いがまとまらないときは、裁判所にて「共有物分割請求訴訟」を提起し、裁判所の判断を仰ぐ方法があります。
(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
一 共有物の現物を分割する方法
二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
e-Gov法令検索 民法第258条
共有物分割請求訴訟なら、裁判所の決定や裁判上の和解をもって決着を付けられます。裁判では、以下3つの分割方法のうち、もっとも適切な解消方法はどれかを判断します。
- 土地を分割して分け合う「現物分割」
- 不動産全体を売却して売却益を分配する「換価分割」
- 共有者の1人がすべての共有持分を買い取る「代償分割」
ただし、共有状態の解消方法はあくまで審理や状況に応じた判断になるため、あなたが望む結果にならない可能性も考えられます。また、最終的な判断まで数年かかるケースもあるので注意が必要です。
共有物分割請求訴訟などについては、以下の関連記事にて詳しく解説しています。
相続前なら「遺産分割協議」「相続放棄」で対応
将来的に共有名義不動産を相続する予定の方は、「遺産分割協議」または「相続放棄」で対応できる可能性があります。
遺産分割協議とは、相続人全員で相続財産の分割方法や分割割合などを話し合い、合意を得ることです。遺産分割協議で決まった内容は、「遺産分割協議書」にまとめます。
この遺産分割協議時に、「不動産は誰かの単独名義にする」「自分は共有名義から外してもらい、代わりに他の相続財産を受け取る」などについて合意を得られれば、相続後に共有名義不動産を所有しなくてもよくなります。
「共有持分を含めて、相続争いそのものから抜け出したい」という方は、相続人としての権利をすべて放棄する「相続放棄」の手続きがよいでしょう。ただし相続放棄は、預金や金融資産など、他の財産もすべて相続できなくなるので注意が必要です。
共有名義の解消をスムーズに進めるためのコツ
上記で解説した共有名義を解消する方法は、いずれも他の共有者が深くかかわってきます。そのため、共有名義をスムーズに解消できるかは、他の共有者とのコミュニケーションを取れるかが重要です。
また、共有名義の解消に関する話し合いや法手続きには知識も必要になるので、弊社の経験上、不動産に強い弁護士・司法書士へ相談しておくのがおすすめです。以下では、共有名義の解消をスムーズに進めるためのコツを解説します。
他の共有者との話し合いを軽視せず積極的におこなう
共有名義の解消は、自分だけはなく他の共有者も大きな影響を受ける手続きです。共有持分単独の売却や放棄などを含め、共有名義の解消を求めるときは、他の共有者との話し合いを軽視せず積極的におこなうことを推奨します。
事前に共有者との話し合いをしておくメリットは、次の通りです。
- 売却や分筆などで必要な同意を得やすくなる可能性がある
- 共有状態を解消した後も良好な人間関係を保ちやすくなる
- 他の共有者の要望などを聞いたうえで、全員にメリットがある解消方法を選択しやすくなる
- 解消に関する手続きを手伝ってくれる可能性がある
共有者と話し合うときは、「不動産評価額を基にした売却価格の目安」「共有名義を解消する具体的なメリット・デメリット」などの、客観的なデータや事例を提示できれば相手側も納得してくれやすくなります。
不動産に強い弁護士や司法書士に相談する
共有名義の解消をスムーズに進めたいなら、不動産に強い弁護士や司法書士に相談するのがおすすめです。
弁護士なら、他の共有者との交渉や共有物分割請求全般の対応を任せることが可能です。専門家の客観的な目線が入るので、当事者同士で協議するよりも双方が納得する決着を目指しやすくなります。相続や離婚が関係して権利関係が複雑化しているケースでも、問題なく対応してくれるでしょう。
司法書士なら、持分移転登記や抵当権抹消登記などの対応を一任できます。また司法書士によっては、相続関係の相談や少額訴訟にも対応してくれます。
複雑化した権利関係や法的トラブルが存在する共有名義の問題は、当事者同士だけでは解決が長期化しやすく、数年以上継続することも珍しくありません。共有名義に関する問題の早期解決を目指すなら、専門家への相談を推奨します。
全国1,700以上の士業と連携する共有持分専門の買取業者「クランピーリアルエステート」は、さまざまな問題を抱える共有名義不動産・共有持分についての買取対応や無料相談を受け付けています。共有名義不動産に関してお悩みであれば、ぜひ一度お問い合わせください。
共有名義を解消するなら買取業者への売却も1つの手
共有名義を解消する方法のなかで、一般の方でもスムーズに進めやすいのが「買取業者への共有持分売却」です。とくに、共有名義不動産や共有持分を専門とする買取業者への依頼を推奨します。
買取業者への共有持分売却で共有名義を解消するメリットは、次の通りです。
- 他の不動産会社に断られた共有持分でも売却できる
- 法律に強い買取業者ならトラブルがある物件でも対応してくれる
- 売却後に瑕疵が見つかっても責任を負わなくて済む
- 数日~1週間とスピーディーに売却できる
他の不動産会社に断られた共有持分でも売却できる
共有持分は不動産のなかでも活用や処分が難しく、普通の不動産会社からも扱いを断られるケースも珍しくありません。しかし、共有持分を専門とする買取業者なら、他の不動産会社に断られた共有持分でも買い取ってくれます。
なぜ専門の買取業者になら売却できるのか、その理由を以下で紹介します。
- 共有持分を活用するノウハウと独自の販売ルートを確立しているため、買取後に収益化して利益を出せる
- 共有持分に関する豊富な専門知識と活用実績によって、共有持分を適切に査定できる
依頼予定の買取業者の専門性が高いかどうかは、「共有持分の買取実績を公開しているか」「士業との提携など法律問題への対応力があるか」などについて、公式サイトで確認してみてください。たとえば弊社クランピーリアルエステートでは、「5,000万円未満から1億円以上の共有持分の買取事例」や「提携する法律事務所名」を公開しています。
法律に強い買取業者ならトラブルがある物件でも対応してくれる
買取業者のなかには、弁護士や司法書士などの専門家と提携しているなど、法律問題に強いところが存在します。法律に強い買取業者なら、法的トラブルを抱える共有持分でもしっかりと対応できます。
たとえば弊社クランピーリアルエステートは、全国1,700以上の士業との提携や権利関係が複雑化した共有持分の取扱実績を基に、さまざまな共有持分の買取対応を実施しました。実際の買取実績の一部を、以下でご紹介します。
共有持分買取実績 | 概要 |
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愛知県豊明市の共有持分を3,100万円で買取 | 共有者の弟から持分売却の相談を見送ったところ、弟が第三者に共有持分を売却。新しい共有者から売却の打診を受けていたものの、相談者様は不動産会社を通じた売却を希望したため、弊社が不整形地かつセットバックが必要なエリアにあった土地を調査・対応して買取実施。 |
東京都世田谷区の共有持分を1,500万円で買取 | 相談者様は共有持分を1/7所有していたものの、共有者の1人が行方不明で相続登記が進まず困っていた。他の共有者との関係も良好ではなかったため、弊社が調査と査定に対応して早期の資産整理を実現。 |
神奈川県横浜市の共有持分を1億円で買取 | 「遺言で土地を取得したが、土地上に親族所有の家屋があり、土地を活用できない状況で困っている」という相談者様で、固定資産税の負担に加えて共有者とは強い遺恨あり。さらに遺留分侵害請求を受けている状況。このような複雑な状況下でも、弊社が弁護士と連携して対応し依頼から2週間で買取を実施。 |
参考:クランピーリアルエステート「共有持分を高値買取!共有不動産の持分買取専門の業者」
売却後に瑕疵が見つかっても責任を負わなくて済む
仲介を利用して不動産を売却する場合、もし売却後に瑕疵が発覚すると、民法第562~564条における「契約不適合責任」を負う必要が出てきます。具体的には、買主に対して契約解除や損害賠償の対応を迫られるかもしれません。
一方で買取業者は、原則として契約不適合責任免責を付した取引になるのが通例です。売却後に瑕疵が見つかっても責任を負わずに済むので、老朽化した建物の共有持分でも安心して売却できます。弊社クランピーリアルエステートも、契約不適合責任免責での買取を実施しています。
ただし、事前に瑕疵の存在を知っていたにもかかわらず、その事実を隠して売却したときは契約不適合責任免責は無効とするのが原則です。
数日~1週間とスピーディーに売却できる
買取業者は共有持分を直接買い取ってくれるため、仲介のように広告掲載や内覧対応など対応が必要ありません。そのため3~6か月以上かかる仲介と比較し、現金化まで数日~1週間と非常にスピーディーです。
とくに、スピード買取を売りにしている買取業者なら、査定後即日または翌日に入金してくれるところも存在します。弊社クランピーリアルエステートなら、お問い合わせ・ご依頼から最短12時間で金額査定、最短48時間での現金化に対応いたします。
まとめ
共有名義不動産を所有する場合、以下のデメリットに注意が必要です。
- 共有者全員の同意がなければ売却や建て替えができない
- 共有持分割合の過半数の同意がなければリフォームができない
- 自分が使っていなくても金銭面・管理面を負担しなければならない
- 特定の共有者が共有名義不動産を占有し追い出せない
- 他の共有者が支払いや税金を滞納し負担増や揉め事になる
- 特定の共有者が家賃を独り占めする
- 子ども・孫の代への相続でトラブルが発生する
- 離婚時の財産分与で住み続けるか売るかで争いになる
- 誰かが共有持分を手放して顔も知らない第三者が共有者になる
- 共有者同士の感情的なトラブルに巻き込まれる
「共有者全員に住宅ローン控除や3,000万円の控除が適用できる」「維持管理費や税金の負担が軽くなる」などのメリットがあるものの、自分にとって本当にメリットになるかは状況によります。
「自分は共有名義を持つデメリットが大きいかも」と判断したときは、自己持分・共有名義不動産全体の売却や、共有物分割請求などの方法で、共有名義の解消を検討してみてください。
共有持分専門の買取業者である弊社「クランピーリアルエステート」なら、他の不動産会社で取り扱いを断られた共有持分でも買取対応いたします。共有持分に関する高い専門性や全国1,700以上の士業との提携によって適切に査定し、最短48時間以内のスピーディーな現金を実現します。
5,000万円の高額買取から100万円未満の低額買取まで、幅広く対応が可能です。今なら毎月先着10名まで、共有持分買取金額10%アップのキャンペーンを実施しています。まずは、無料相談からぜひお問い合わせください。
よくある質問
不動産が共有名義になる理由は?
「ペアローンや共同出資など、夫婦でマイホームを購入する」「共同経営者複数人で、賃貸アパートを購入する」「相続人2人以上で不動産を相続する」などの理由が挙げられます。
民法の「変更行為」と「管理行為」を見分ける明確な基準はある?
法律上の見分け方では、以下の違いが挙げられます。
概要 | |
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変更行為 | ・共有物の形状、用途、性質などを大きく変更する行為 ・原則として「建築物の主要構造部((壁、柱、床、はり、屋根または階段)の一種以上について行う過半の修繕」に該当するリフォームは変更行為 |
管理行為 | ・共有物の主要な性質を変えず、価値の現状維持や改良による価値向上をおこなう行為 ・大規模修繕に該当しないリフォームは、管理行為と判断されやすい |
共有者に所在不明者や認知症がいるときはどうすればよい?
共有者のうち所在不明者がいるときは、民法第262条に基づく「所在等不明共有者の持分取得制度」や「所有等不明共有者の持分譲渡制度」を活用すれば対応できます。他には、不在者財産管理人の選任、失踪宣告などの方法があります。認知症で判断能力がなくなっているときは、成年後見人制度を利用しましょう。