私道の共有持分の名義変更の方法は?必要書類や費用・税金、手続きを放置するリスク

相続や離婚、売買、贈与などで不動産を取得した際、その敷地に接する道路が、複数人で所有する「共有私道」のケースがあります。その場合は、建物や土地と同様に、私道の共有持分についても名義変更が必要です。

私道の共有持分の名義変更は、次の流れで進めます。

1.必要書類を準備する 以下の書類を準備する。
■共通書類
・登記識別情報または登記済証
・現名義人の印鑑登録証明書
・新名義人の住民票
・固定資産評価証明書
・委任状(司法書士に依頼する場合)
■相続の場合の追加書類
・遺言書もしくは遺産分割協議書
・相続人全員の印鑑登録証明書
・相続人全員の戸籍謄本
・被相続人の出生〜死亡の戸籍謄本
・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
■財産分与(離婚)の追加書類
・離婚の記載がある戸籍謄本
・離婚協議書や財産分与協議書など
■売買の追加書類
・売買契約書
■贈与
・贈与契約書
■持分放棄の追加書類
・持分放棄証書
2.登記申請書を作成する 「持分全部移転」もしくは「持分一部移転」を登記目的として、登記申請書を作成する。
3.法務局に登記申請をする 私道の所在地の法務局の窓口もしくは郵送で申請する。
「登記・供託オンライン申請システム」によるオンライン申請も可能。

必要書類の準備や申請書の作成が不安な場合は、司法書士に依頼して進めることも可能です。費用は手続き内容によって異なりますが、一般的には 5〜15万円程度で依頼できます。

なお、私道の共有持分の名義変更を怠ると、私道の権利を第三者に主張できず、以下のようなトラブルが起こるリスクがあります。

  • 接道義務を満たせず、再建築できなくなる
  • 私道に接する家の売却が難しくなる
  • 相続が発生すると共有者が増え、名義変更が困難になる

そのため、私道の共有持分を取得した場合は、建物・土地とあわせて早めに名義変更を行うことが重要です。

本記事では、私道の共有持分の名義変更が必要となる理由、手続きが必要なケース、具体的な手続きの流れ、想定される費用・税金について解説します。さらに、名義変更を放置するリスクや、弊社が対応したトラブル事例にも触れていきます。

私道の共有持分付きの不動産を手放す予定であれば、弊社「株式会社クランピーリアルエステート」にご相談ください。弊社は、全国の弁護士や司法書士、税理士と連携しており、必要に応じて適切な専門家をご紹介できます。

名義変更などの法的手続きは専門家が担当し、その後の不動産買取は弊社が引き継ぐため、手続きから売却までスムーズに進められます。売却をご検討中の方は、ぜひ無料査定・無料相談をご利用ください。

目次

私道の共有持分を取得したら名義変更が必要な理由

私道の共有持分とは、複数人で所有する「共有私道」の権利割合です。相続や離婚、売買などで家を取得し、その家に接する私道の権利も引き継ぐ場合には、この共有持分についても名義変更を行う必要があります。

共有私道には「共同所有型」「相互持合型」の2種類があり、それぞれの特徴は次のとおりです。

共同所有型 相互持合型
仕組み 1つの私道を複数の所有者が共有持分を持って、共同所有している状態。 私道を複数区画に分割し、それぞれの区画を各所有者が単独所有している状態。各区画がつながることで、1本の私道として機能している。
代表例 ・分譲宅地の中央に私道がある場合
・旗竿地などの奥まった土地の通路部分を複数人で共有している場合
・各宅地の各所有者が、自分の敷地に面した私道部分を所有している場合
・旗竿地の通路を隣地同士で半分ずつ所有している場合
登記 共有名義 単独名義
通行 共有者は基本的に自由に通行可能。 他人の所有区画部分を通行する際は、通行地役権の設定または所有者の承諾が必要になる場合がある。

共同所有型の場合は私道の共有持分の名義変更が必要であり、相互持合型の場合は各所有者が単独で持つ私道区画の名義変更が必要です。

土地や建物の名義変更だけを行い、私道部分の名義変更を忘れてしまうケースも多いため、家を取得した際は敷地に接する道路が私道か公道かをまず確認し、必要に応じて名義変更の手続きを進めましょう。

また、相続した不動産の名義変更である「相続登記」は、2024年4月1日に義務化されています。正当な理由なく手続きを怠ると、10万円以下の過料が科されるリスクがあるため、すみやかに手続きを済ませましょう。

さらに、私道の共有持分の名義変更を済ませていない場合、自分が所有している権利を第三者に主張できません。

その結果、道路の使用方法をめぐって近隣とトラブルになる、将来自宅を売却する際に「私道の権利を含めて売却できない」ため取引が進まないなど、さまざまな問題が発生するおそれがあります。

私道の権利は、日常の生活動線だけでなく将来の資産価値にも関わる重要なものです。家の取得とあわせて、私道の共有持分や私道区画の名義変更も忘れずに行うことが大切です。

私道の共有持分の名義変更が必要となるケース

私道の共有持分は土地や建物と同じく「不動産の権利」であり、所有者が変わる場合は名義変更が必要です。相続や離婚、売買など、権利の引き継ぎが発生したときは、私道部分についても忘れずに手続きを行いましょう。

私道の共有持分の名義変更が必要となる具体的なケースは次のとおりです。

  • 「相続」で私道の共有持分を引き継いだ場合
  • 「離婚の財産分与」で私道の共有持分の名義を移す場合
  • 「売買」で私道の共有持分付きの家・土地を取得した場合
  • 「贈与」で私道の共有持分を受け取った場合
  • 「他の共有者の持分放棄」で私道の共有持分を引き継いだ場合
  • 「共有物分割請求」で私道の共有持分の調整が必要になった場合

「相続」で私道の共有持分を引き継いだ場合

相続で私道の共有持分を引き継いだ場合は、土地や建物と同様に名義変更(相続登記)を行う必要があります。

相続によって自宅の土地や建物を引き継ぐ際、前面の道路が私道だった場合には、その私道の共有持分も一緒に相続していることがあります。ところが、土地や建物とは異なり、私道の共有持分は普段から意識されにくいため、実務では「親が私道の権利を持っていたことを知らなかった」というケースも珍しくありません。

2024年4月1日から相続登記は義務化されており、不動産を相続したことを知った日、または遺産分割協議の成立日から3年以内に申請しなければなりません。正当な理由なく手続きを怠ると10万円以下の過料が科されるおそれがあります。

そのため、不動産を相続した際には、前面道路が公道か私道か、私道の場合は共有持分を持っているのかを必ず確認し、漏れのないように名義変更を進めることが重要です。

共有持分の相続登記については、以下の記事も参考にしてみてください。

「離婚の財産分与」で私道の共有持分の名義を移す場合

離婚に伴う財産分与で自宅や土地の所有者が変わる場合には、私道の共有持分についても忘れずに名義変更を行う必要があります。

住宅ローンの返済状況によって、名義変更の進め方は変わります。すでにローンを完済している場合は、所有者間の合意があれば問題なく名義変更が可能です。

一方、住宅ローンが残っている状態で金融機関に無断で名義を変更すると契約違反となり、一括返済を求められるおそれがあります。そのため、名義変更をしたい場合は、まず金融機関へ相談し、必要な手続きを確認することが重要です。

後々のトラブルを防ぐためにも、ローンの有無を確認しながら、適切な手続きで進めていきましょう。

離婚時に問題になりやすい共有名義不動産の扱いについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

「売買」で私道の共有持分付きの家・土地を取得した場合

私道の共有持分付きの家や土地を購入した場合は、売主から買主へ名義を移す手続きが必要です。

売買で不動産を取得する際、前面道路が私道であれば、その共有持分も物件と合わせて引き継ぐことになります。売買契約の決済日には司法書士が立ち会い、買主が購入代金を支払ったことを確認のうえ、土地・建物とあわせて私道の共有持分も一括で名義変更するのが一般的です。

売買の場合は司法書士が名義変更手続きを進めることが多いため、相続や離婚と比べると手続き漏れが生じにくい傾向があります。名義が適切に移されれば、購入後に権利関係で困る可能性が少なく、安心して不動産を利用できます。

「贈与」で私道の共有持分を受け取った場合

家や土地を贈与として受け取った際、その不動産に私道の共有持分が付いている場合は、共有持分についても贈与者から受贈者へ名義を移す手続きが必要です。

親から子へ家や土地を譲る場面では、「私道もまとめて渡したつもり」でいるケースもみられます。しかし、私道の共有持分は名義変更をしてはじめて法的に権利が移るため、手続きをしなければ親名義のままです。そのため、贈与契約書を作成し、その内容に基づいて法務局で名義変更を行う必要があります。

名義変更をせずに放置すると、後から贈与を受けた事実を証明しにくくなります。また、名義人が亡くなった場合は、私道の共有持分が相続財産として扱われ、相続人同士での調整が必要になるといったトラブルにつながるリスクもあります。

贈与は当事者同士の合意だけで成立するため、売買と違って名義変更が後回しになりやすい傾向があります。確実に名義変更を済ませておくことで、後々のトラブルを防ぎ、安心して不動産を利用できるようになるでしょう。

贈与契約書の作成方法については、以下の記事を参考にしてみてください。

「他の共有者の持分放棄」で私道の共有持分を引き継いだ場合

他の共有者が私道の共有持分を放棄した場合も、名義変更の手続きを行う必要があります。持分放棄は本人が権利を手放しただけでは完了せず、登記によって新しい所有者を明確にする必要があるためです。

民法第255条では、共有者の1人が持分を放棄すると、その持分は残りの共有者に帰属するとされています。

たとえば、3人で共有している私道において、共有者の1人が持分を放棄した場合、残りの共有者2人がその持分を引き継ぐことになります。持分放棄による名義変更の申請は、放棄した共有者と、持分を取得する共有者が共同で手続きを行います。

共有者同士で連絡が取れない場合や、協力が得られない場合には手続きが滞る可能性があるため、事前に連絡や意思確認をしながら進めることが重要です。

とはいえ、私道の共有持分の放棄が起こるのは稀で、相続で共有者が増えすぎた場合や、遠方に住んでいて私道を利用しない場合など、特定の事情があるときの選択肢です。

共有持分の放棄については、以下の記事でも詳しく解説しています。

「共有物分割請求」で私道の共有持分の調整が必要になった場合

共有者の1人が共有物分割請求を行い、私道の共有状態を解消することになった場合には、共有持分の調整に伴って、名義変更が必要になることがあります。

共有物分割請求とは、共有者の1人が「共有状態を解消したい」と申し出て、土地などの共有関係を解消するための手続きです。民法第256条では、各共有者はいつでも共有物の分割を請求できると定められています。

話し合いで分割方法が決まればその内容に従いますが、合意できない場合には裁判で分割方法が決められます。共有物分割には主に次の3つの方法があります。

  • 現物分割:共有物を物理的に分割する方法
  • 代償分割:特定の共有者が共有物を取得し、他の共有者へ金銭を支払う方法
  • 換価分割:共有物を競売などで売却し、代金を持分に応じて分配する方法

ただし、私道は通路として一体で機能する必要があるため、物理的に分割する現物分割は適しません。また、私道だけを単独で売却することは現実的ではないため、換価分割も採用されにくいのが実情です。

結果として、私道では特定の共有者に権利をまとめる代償分割が選ばれることが多く、その場合、取得者の単独名義に変更するための手続きが必要です。

共有物分割請求の手順や費用などを詳しく知りたい場合は、以下の記事も参考にしてみてください。

私道の共有持分の名義変更の方法と流れ

私道の共有持分を取得した場合は、その権利を正しく引き継ぐために法務局で名義変更(登記)の手続きを行う必要があります。基本的な流れは次のとおりです。

  1. 必要書類を準備する
  2. 登記申請書を作成する
  3. 法務局に登記申請をする

必要書類を準備する

私道の共有持分を名義変更する際は、まず必要書類をそろえます。相続や離婚、売買などの名義変更の理由によって準備する書類が異なるため、共通書類に加えて、ケースごとの必要書類も確認しておきましょう。

【共通書類】

書類名 内容・取得方法 取得費用の目安
登記識別情報または登記済証 登記完了時に交付される書類。登記識別情報は12桁の英数字。登記済証(権利証)は2005年以前のもの。紛失時は再発行不可。 無料
紛失時の代替手続きは1〜7万円程度
現名義人の印鑑登録証明書 市区町村窓口、またはマイナンバーカードでコンビニ取得。 1通300円前後
新名義人の住民票 市区町村窓口、またはマイナンバーカードでコンビニ・オンラインでの取得。 1通300円前後
固定資産評価証明書 不動産所在地の市区町村で取得。自治体によってはオンライン対応可。 1通300〜400円程度
委任状 司法書士へ手続きを依頼する場合に必要な書類。司法書士が書類を用意するのが一般的。 無料

【相続の必要書類】

書類名 内容・取得方法 取得費用の目安
遺言書もしくは遺産分割協議書 被相続人が残した遺言書がない場合は、相続人全員が署名・捺印した遺産分割協議書を用意する。自作することも可能だが、司法書士に依頼する方法もある。 自作の場合は無料
司法書士に依頼する場合は3〜8万円程度
相続人全員の印鑑登録証明書 市区町村窓口、またはマイナンバーカードでコンビニ取得 1通300円前後
相続人全員の戸籍謄本 各相続人の本籍地の市区町村役場で取得。広域交付制度により、一部の古い戸籍を除き、最寄りの役所で取得することも可能。 1通450円前後
被相続人の出生〜死亡の戸籍謄本 戸籍が複数自治体にまたがる場合は複数取得が必要。広域交付制度により、一部の古い戸籍を除き、最寄りの役所で取得することも可能。 1通450円前後
被相続人の住民票の除票または戸籍の附票 被相続人の住所地または本籍地の市区町村役場で取得。 1通300円前後

【財産分与(離婚)の必要書類】

書類名 内容・取得方法 取得費用の目安
離婚の記載がある戸籍謄本 広域交付制度により、一部の古い戸籍を除き、最寄りの役所で取得することも可能。 1通450円前後
離婚協議書や財産分与協議書など 離婚による財産分与の内容をまとめた書類。自作することも可能だが、弁護士や行政書士、司法書士などの専門家に依頼すること方法もある。 自作の場合は無料
専門家に依頼する場合は2~10万円程度

【売買の必要書類】

書類名 内容・取得方法 取得費用の目安
売買 売買契約書 売買取引の内容を記録した書類で、売主・買主で作成。司法書士立ち会いが一般的。

【贈与の必要書類】

書類名 内容・取得方法 取得費用の目安
贈与 贈与契約書 贈与内容を記録した書類で、贈与者と受贈者で作成。自作することも可能だが、行政書士や司法書士などの専門家に依頼する方法もある。

【持分放棄の必要書類】

書類名 内容・取得方法 取得費用の目安
持分放棄 持分放棄証書 放棄者が、持分を放棄する意思を示した書類。自作したものを使用可。

必要書類の準備に不安がある場合は、不動産登記に詳しい司法書士にサポートしてもらうのも手です。専門家の手を借りることで、不備なくスムーズに名義変更ができます。

売買契約書や遺産分割協議の作成について詳しく知りたい場合は、以下の記事でも詳しく解説しています。

登記申請書を作成する

必要書類を準備したら、法務局に提出する登記申請書を作成します。申請書と記載例は、法務局のホームページでダウンロード可能です。

登記申請書の書き方で注意したいのが「登記の目的」の欄です。私道の共有持分では、所有権そのものではなく持分だけを移すため、次のように記載します。所有権移転登記ではないため、注意しましょう。

  • 共有持分全部を移す場合:「〇〇(持分を手放す人の氏名)持分全部移転」
  • 一部の持分のみ移す場合:「〇〇(持分を手放す人の氏名)持分一部移転」

申請書の記載方法は、相続とその他の登記原因(財産分与・売買・贈与・放棄など)によって少し異なります。以下の記載例を参考に作成してみてください。

【登記申請書(相続)】

登記申請書
登記の目的  〇〇〇〇(被相続人の氏名)持分全部移転

原 因    令和〇年〇月〇日 相続

相続人    (被相続人 〇〇〇〇)

(申請人)  〇〇県〇〇市〇〇町〇丁〇番地(相続人の住所)
       持分〇分の〇 〇〇〇〇(相続人の氏名)

       氏名ふりがな 〇〇〇〇
       生年月日 昭和〇年〇月〇日
       メールアドレス 〇〇〇@〇〇〇
       連絡先の電話番号〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇

添付情報   登記原因証明情報、住所証明書、印鑑証明書

令和〇年〇月〇日申請 〇〇法務局

課税価格   移転した持分の価格 金〇〇万円

登録免許税  金〇万円

不動産の表示
 所在    〇〇
 地番    〇〇
 地目    公衆用道路
 地積    〇〇㎡
 不動産番号 〇〇

 不動産番号 〇〇
 所在    〇〇
 家屋番号  〇〇
 種類    〇〇
 構造    〇〇
 床面積   〇〇㎡

【登記申請書(相続以外)】

登記申請書

登記の目的  〇〇〇〇(持分を手放す人の氏名)持分全部移転

原 因    令和〇年〇月〇日 〇〇(財産分与・売買・贈与・放棄などを記載)

権利者(持分を取得する人)

〇〇県〇〇市〇〇町〇丁〇番地
持分〇分の〇 〇〇〇〇

氏名ふりがな 〇〇〇〇
生年月日 昭和〇年〇月〇日
メールアドレス 〇〇〇@〇〇〇

義務者(持分を手放す人)   
〇〇県〇〇市〇〇町〇丁〇番地
持分〇分の〇 〇〇〇〇

添付情報   登記識別情報、登記原因証明情報、印鑑証明書、住所証明書、代理権証書

令和〇年〇月〇日申請 〇〇法務局

申請人兼義務者代理人 
〇〇県〇〇市〇〇町〇丁〇番地
〇〇〇〇(持分を取得する人の氏名)
連絡先の電話番号〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇

課税価格   移転した持分の価格 金〇〇万円

登録免許税  金〇万円

不動産の表示
 所在    〇〇
 地番    〇〇
 地目    公衆用道路
 地積    〇〇㎡
 不動産番号 〇〇

 不動産番号 〇〇
 所在    〇〇
 家屋番号  〇〇
 種類    〇〇
 構造    〇〇
 床面積   〇〇㎡

共有持分の登記や登記申請書の書き方などについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

法務局に登記申請をする

登記申請書の作成が完了したら、私道の所在地の法務局で登記申請を行います。登記申請の方法は、法務局の窓口や郵送のほか、「登記・供託オンライン申請システム」によるオンライン申請も可能です。

オンライン申請は来庁の必要もなく便利ですが、申請データの作成に一定の慣れが必要です。不安がある場合は窓口または郵送で提出すると良いでしょう。

書類に不備がなければ、おおむね1〜2週間ほどで手続きが完了し、登記完了証と登記識別情報通知が交付されます。これで、私道の共有持分の名義変更が正式に完了します。

私道の共有持分の名義変更に必要な費用・税金

私道の共有持分の名義変更には、さまざまな費用・税金が発生します。まず、「必要種類の取得費用」「登録免許税」については、登記理由に関係なく、すべてのケースで必要です。司法書士へ依頼する場合はその報酬も加わります。

不動産取得税については、相続と離婚による財産分与の場合は発生しませんが、その他のケースでは課税されます。また、贈与では贈与税、相続では相続税、売買では印紙税が発生する可能性があります。

登記理由によって発生する費用・税金、税率が異なるため、どの費用がどのくらい必要になるのかを事前に把握しておきましょう。

種類 費用の目安
必要書類の取得費用 数千円~1万円
登録免許税 相続:固定資産税評価額 × 持分割合 × 0.4%
財産分与(離婚):固定資産税評価額 × 持分割合 × 2%
売買:固定資産税評価額 × 持分割合 × 2%(令和8年3月31日まで、土地は1.5%)
贈与:固定資産税評価額 × 持分割合 × 2%
放棄:固定資産税評価額 × 持分割合 × 2%
司法書士への報酬 司法書士に依頼する場合に発生
5~15万円程度
不動産取得税 相続・財産分与(離婚):課税なし※
売買・贈与:固定資産税評価額 × 持分割合 × 4%(軽減税率3%)
放棄:本来課税だが自治体により非課税の例外あり。
贈与税 贈与や放棄の場合に、私道の共有持分を受け取る側に発生
贈与額 × 10~55%
相続税 相続財産の合計が、基礎控除額「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の人数)」を超えた分に対して発生
(相続財産 - 基礎控除額) × 10~55%
印紙税 売買で売買契約書を作成する場合に発生
1,000円~3万円程度(契約金額で変動)

※財産分与は内容(清算目的か、慰謝料等の性質を含むか)により課税関係が変わることがあるため、都道府県税事務所等への確認が安全です。

必要書類の取得費用:数千円~1万円

「必要書類を準備する」で解説した書類の取得費用は、総額で数千円~1万円程度です。

相続の場合は、費用が高くなる傾向があります。被相続人の戸籍が複数の自治体に分かれているケースや、相続人の人数が多くて必要書類が増えるケースでは、取得枚数が多くなるためです。

また、登記識別情報を紛失している場合は再発行ができず、事前通知制度や司法書士による本人確認情報の作成など、代替手続きが必要となり、別途1〜7万円程度の費用が発生する場合があります。

登録免許税:固定資産税評価額 × 持分割合 × 0.4%~2%

登録免許税は、不動産の権利(所有権や持分)を移すときに課税される税金で、通常は持分を取得する人が負担します。

登録免許税の金額は、次の式で計算できます。

固定資産税評価額 × 持分割合 × 税率

固定資産税評価額は、市区町村で取得できる「固定資産評価証明書」で確認できます。税率は、名義変更の理由によって以下のように異なります。

  • 相続:固定資産税評価額 × 持分割合 × 0.4%
  • 財産分与(離婚):固定資産税評価額 × 持分割合 × 2%
  • 売買:固定資産税評価額 × 持分割合 × 2%(2026年3月31日まで、土地は1.5%)
  • 贈与:固定資産税評価額 × 持分割合 × 2%
  • 放棄:固定資産税評価額 × 持分割合 × 2%

参考:国税庁|No.7191 登録免許税の税額表

【計算例】
固定資産税評価額1,000万円の私道について、共有持分1/4の名義変更を行う場合の登録免許税は以下のとおりです。
課税標準(持分評価額):1,000万円 × 1/4 = 250万円
相続:250万円 × 0.4% = 1万円
財産分与:250万円 × 2% = 5万円
売買:250万円 × 1.5%(軽減税率)= 3万7,500円
贈与:250万円 × 2% = 5万円
放棄:250万円 × 2% = 5万円

司法書士への報酬:5~15万円

司法書士に依頼して、私道の共有持分の名義変更を進める場合には、司法書士報酬として5~15万円程度の費用が発生します。

相続人が多い、依頼内容が複雑などの場合や、登記に必要な遺産分割協議書、離婚協議書、売買契約書、贈与契約書などの契約書の作成も依頼した場合は、その分費用が高くなる傾向です。

司法書士の費用は事務所ごとに異なるため、事前に見積りを取り、複数の事務所を比較して依頼することをおすすめします。

司法書士へ依頼すると費用はかかりますが、必要書類の準備から登記申請書の作成、法務局への提出まで代行してもらえるため、手続き負担を大きく減らせます。

また、法務局の窓口は平日しか開いていないため、忙しい人にとっては 仕事を休まずに手続きを進められる という利点もあります。

共有持分の登記費用や計算方法については、以下の記事でも解説しています。

不動産取得税:固定資産税評価額 × 持分割合 × 4%(軽減税率3%)

私道の共有持分を購入したり、贈与を受けたりした場合は、持分を取得した人に不動産取得税が発生します。

一方、相続や離婚による財産分与では課税されません。また、持分放棄の場合は自治体によって扱いが異なるため、事前確認が必要です。

不動産取得税の金額は、次の式で計算できます。

固定資産税評価額 × 持分割合 × 4%
※2027年3月31日までは軽減税率3%が適用されます。

固定資産税評価額は、市区町村が発行する「固定資産税評価証明書」で確認できます。

参照:総務省|不動産取得税

【計算例】
固定資産税評価額1,000万円の私道について、共有持分1/4の名義変更を行う場合の不動産取得税は以下のとおりです。
課税標準(持分評価額):1,000万円 × 1/4 = 250万円
原則税率:250万円 × 4% = 10万円
軽減税率:250万円 × 3% = 7万5,000円

贈与税:贈与額 × 10~55%

私道の共有持分を贈与によって取得した場合は、受け取った人に贈与税がかかる可能性があります。また、共有者の持分放棄が行われた場合も、残りの共有者が「無償で財産を取得した」とみなされるため、贈与税が課される可能性があります。

贈与税は、年間110万円の基礎控除を超えた部分に対して課税され、以下の式で計算します。

贈与税 = (贈与額 − 110万円) × 税率(10〜55%)

基礎控除を超える場合は、「贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日」の期間に、受贈者の住所地の税務署で贈与税の申告をします。

なお、贈与税の税率は「特例贈与(親や祖父母などの直系尊属からの贈与)」「一般贈与(直系尊属以外からの贈与)」で異なります。

【特例贈与の税率表】※親・祖父母など直系尊属からの贈与

課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

【一般贈与の税率表】※兄弟・配偶者・その他からの贈与

課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

参考:国税庁|No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

【計算例】
固定資産税評価額1,000万円の私道について、共有持分1/4の名義変更を行う場合の不動産取得税は以下のとおりです。
課税標準(持分評価額):1,000万円 × 1/4 = 250万円
特例贈与:(250万円 - 110万円) × 10% = 14万円
一般贈与:(250万円 - 110万円) × 10% = 14万円

共有持分の税金については、以下の記事も参考にしてみてください。

相続税:(相続財産 - 基礎控除額) × 10~55%

私道の共有持分を相続し、名義変更する場合は、相続税への配慮も必要です。相続財産の合計額が基礎控除額を超える場合は、相続税がかかります。相続財産は、私道の共有持分だけでなく、預貯金や不動産、株式など、亡くなった人が持っていた財産すべての合計額をもとに計算します。

基礎控除額と相続税は、以下の計算式で求められます。

基礎控除額:3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の人数)
相続税:(相続財産の合計額 - 基礎控除額) × 税率(10~55%)

たとえば、父が亡くなり、法定相続人が母(配偶者)と子どもの場合、基礎控除額は4,200万円です。相続財産の合計額が、4,200万円以下であれば、相続税が発生しません。

一方、相続財産の合計額が4,200万円を超える場合は、その超えた分の金額に対して相続税が課せられます。

相続税の税率は、以下のように金額に応じて変動します。

金額 税率 控除金額
1,000万円以下 10%
1,000万円超3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超1億円以下 30% 700万円
1億円超2億円以下 40% 1,700万円
2億円超3億円以下 45% 2,700万円
3億円超6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

参照:国税庁|相続税の税率

【計算例】
相続財産の合計額が5,000万円で、法定相続人が母(配偶者)と子どもの場合の相続税は以下のとおりです。
基礎控除額:3,000万円 +(600万円 × 2人)= 4,200万円
相続税:(5,000万円 - 4,200万円) × 10% = 80万円

共有名義不動産の相続税や計算方法は、以下の記事でも詳しく解説しています。

印紙税:1,000円~3万円程度

私道の共有持分を売買で取得する場合は、売買契約書の作成に印紙税が必要です。印紙税は契約書に貼付する「収入印紙」で納める仕組みで、金額は契約金額によって変わります。

印紙税が必要となる理由は、売買契約書が課税文書として扱われるためです。契約書の金額区分ごとの税額は、以下のとおりです。

売却金額 税額
100万円超500万円以下 1,000円
500万円超1,000万円以下 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 1万円
5,000万円超1億円以下 3万円

参照:国税庁|No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置

【計算例】
固定資産税評価額1,000万円の私道について、共有持分1/4を売買する場合の印紙税は以下のとおりです。
課税標準(持分評価額):1,000万円 × 1/4 = 250万円
印紙税区分:100万円超〜500万円以下
印紙税額:1,000円

私道の共有持分の名義変更を放置するリスク

私道の共有持分は、家の出入りや将来の売却に大きく関わる重要な権利です。共有持分を取得したにもかかわらず、名義変更せずに放置してしまうと、次のようなトラブルを招くリスクがあります。

  • 接道義務を満たせず、再建築できなくなる
  • 私道に接する家の売却が難しくなる
  • 相続が発生すると共有者が増え、名義変更が困難になる

接道義務を満たせず、再建築できなくなる

私道の共有持分の名義変更を放置すると、接道義務を満たせず、将来的に家の建て替えや新築ができなくなる可能性があります。

接道義務とは「幅4m以上の建築基準法上の道路に、敷地が2m以上接していなければならない」という決まりです。私道の場合は、特定行政庁(市区町村)から道路として認められた「位置指定道路」であることが求められます。

ところが、敷地が接している私道の共有持分を所有していないと、その私道を通路として使う権利があると認められず、事実上「接道義務を満たしていない土地」と判断されてしまうリスクがあります。

その結果、「現在は家が建っていても、建て替え時に再建築が認められない」「増築や用途変更の申請が通らない」といった深刻な問題につながることがあります。

私道に接している土地の場合、資産価値を守るうえでも、共有持分の名義変更を確実に済ませておくことが重要です。

接道義務を満たせない「再建築不可物件」やそのリスクについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

私道に接する家の売却が難しくなる

私道の共有持分の名義変更を放置すると、将来、家の売却が難しくなります。買主にとって「家に接する私道が、安心して利用できるか」は購入判断のポイントであるためです。

私道は自治体が管理する公道と異なり、あくまで個人の所有物です。共有持分を持っていない状態では、買主はその私道を自由に通行できる保証がなく、舗装工事や上下水道・ガスの引き込みといった将来の工事でも、誰に許可を取るべきか判断できません。

さらに、共有持分を所有していないことで接道義務を満たせず、再建築不可とみなされるリスクもあります。

権利関係が曖昧な物件はトラブルのリスクが高く、買主から敬遠されやすくなります。将来的に自宅の売却を考えている場合は、敷地が接する私道の共有持分についても、早めに名義変更を済ませておくことが重要です。

私道に面した土地・家の売却については、以下の記事でも詳しく解説しています。

相続が発生すると共有者が増え、名義変更が困難になる

私道の共有持分の名義変更を放置すると、相続のたびに共有者が増えてしまい、後から名義を整理することが難しくなるリスクがあります。

相続が発生すると、相続人全員で財産の分け方を決める「遺産分割協議」を行う必要があります。私道の共有持分も相続財産であり、誰が持分を引き継ぐかを決めて登記しなければなりません。

しかし、名義変更を先延ばしにしていると、相続が起きるたびに共有者が増え、「誰がどれだけの持分を持っているのか分からない」「連絡が取れない相続人がいる」など、権利関係が複雑化してしまいます。

実務では、共有者が10人以上に増えてしまい、名義変更が事実上不可能になるケースもみられます。こうしたトラブルを防ぐためにも、私道の共有持分を取得したら、早めに名義変更を済ませて権利関係を明確にしておくことが重要です。

私道の共有持分で起こりうるトラブルについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

私道の共有持分や名義変更に関するトラブル事例

私道の共有持分は、名義変更がされていない、共有者との調整が進まないといった理由から、思わぬトラブルにつながりやすいです。実際に、共有持分の買取相談をいただくなかでも、私道が原因で問題が複雑化しているケースは存在します。

以下は、弊社が対応したトラブル事例です。

  • 事例1.共有者が増えすぎて、名義変更が進まない
  • 事例2.ライフライン確保の堀削工事ができない
  • 事例3.共有者と私道の使用でトラブルになる
  • 事例4.他の共有者が固定資産税を支払わない

私道の共有持分の名義変更も済んでおり、私道の共有者との関係も良好であれば、問題なく私道を利用できます。しかし、相続で名義が放置されている場合や、共有者間の協議が難航している場合には、早期の対処が必要です。

「私道の共有持分をどう扱えば良いか分からない」「トラブルが多く、手放したい」といったお悩みがある方は、売却という選択肢もあります。まずは、お気軽に弊社の無料相談をご利用ください。

事例1.共有者が増えすぎて、名義変更が進まない

私道の共有者が増えすぎて、名義変更が進まなくなった事例です。
祖父名義の共有持分の私道が長年そのまま放置され、相続が繰り返されるうちに、共有者が増加。誰がどのくらいの持分を相続したのか整理されておらず、連絡先が不明な人もいました。その結果、名義変更に必要な関係者の確認ができない状況でした。

弊社では、まず提携する司法書士をご紹介し、司法書士が相続関係の調査や必要書類の整理を担当しました。名義が適切に整理された後、弊社が不動産(私道持分を含む)を買取し、問題解決につなげました。

共有持分の名義変更を放置すると、相続のたびに共有者が増え、誰が権利者なのか把握できず、手続きが進められなくなるケースが多くあります。私道の共有持分を相続した場合は、早めに名義変更を行い、権利関係を明確にしておくことが重要です。

弊社は、司法書士や弁護士、税理士など各専門家をご紹介できる体制を整えており、手続きは各士業が直接対応します。名義整理の完了後は、弊社が引き継いでそのまま買取するため、手続きから売却まで一気通貫でサポートできます。

弊社は、全国の弁護士や司法書士、税理士といった専門家と連携しています。相続や登記などの法的手続きは、各専門家が直接対応します。手続き完了後の不動産買取については、弊社が担当するため、登記整理から売却までスムーズに進められます。私道の共有持分でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

事例2.ライフライン確保の堀削工事ができない

相互持合型の私道で掘削工事ができず、家の活用が止まってしまった事例です。
相続した家を活用しようとしたところ、上下水道やガス管の引き込み工事に必要な掘削箇所が、隣地所有者の所有部分に該当していることが判明しました。承諾を得ようと試みましたが、所有者と連絡がつかず、工事が着手できない状態に。
ご依頼者様は活用が難しいと判断し、弊社へ相談。ご意向を踏まえ、最終的には弊社が不動産(私道持分を含む)を買取ることで問題が解決しました。

相互持合型の私道では、ライフラインの引き込みや修繕時に、他区画の私道部分を掘削しなければならないケースがあります。しかし、所有者の承諾が得られない場合、自治体の許可が下りず、工事が進まなくなる可能性があります。

自治体によっては掘削承諾を求められない場合もありますが、承諾を得られないまま工事を強行すると近隣トラブルに発展するリスクもあります。

相互持合型の私道を利用する場合は、「どの部分を誰が所有しているか」を正確に把握し、必要に応じて所有者への説明・承諾を得ておくことがトラブル予防につながります。

どうしても承諾を得られない場合は、私道の共有持分を含め、不動産を売却する選択肢もあります。弊社では、私道の共有持分付き物件の買取にも対応していますので、まずは無料査定・無料相談をご利用ください。

事例3.共有者と私道の使用でトラブルになる

私道の使用をめぐり、共有者との関係が悪化してしまった事例です。
相続した実家を片付けるために車を一時的に私道へ停めたところ、隣地の共有者から「通行の妨げだ」と強く抗議され、口論に発展。相談者様は、私道が共有名義であることを相続後に初めて知り、どこまで使って良いのか分からない状態でした。
その後も、植木置き場や荷物の運搬など私道の使い方について頻繁に指摘され、精神的な負担が増大。活用や賃貸化も検討していましたが、共有者との関係悪化により断念され、弊社へ相談。最終的に弊社が、私道の共有持分を含めてご実家を買い取ることで問題が解決しました。

私道が共有名義の場合、「どこまで利用できるか」「何をすると迷惑になるか」が曖昧なまま利用してしまうことで、共有者とのトラブルに発展しやすくなります。こうしたトラブルを避けるには、利用ルールを共有者間で確認する、事前にコミュニケーションを取って誤解を防ぐことが大切です。

弊社では、近隣トラブルが起きている「訳あり不動産」も買取可能です。不動産トラブルでお悩みの方は、弊社にご相談ください。

事例4.他の共有者が固定資産税を支払わない

他の共有者が固定資産税を支払わず、負担が偏ってしまった事例です。

ご相談者様の実家は共同所有型の私道に面しており、4件の所有者が持分に応じて固定資産税を負担する形になっていました。しかし、そのうち1件が長期間にわたり税金を納付せず、結果として他の3件が立て替える状況に。
高齢のお母様は、共有者への連絡調整や税負担が精神的な負担となり住み替えを検討。弊社へご相談いただき、最終的には私道の共有持分を含め不動産を買取ることで、税金や管理の不安から解放される結果となりました。

共同所有型の私道の固定資産税は、共有者全員で負担する必要があります。とはいえ、固定資産税の納税通知書は代表者1人に届くため、立替え払いするケースもあります。他の共有者が支払ってくれない場合は、代表者1人に税負担がかかることもあります。

また、代表者が納税しなかった場合は、他の共有者に支払いの請求がいくため、支払いを免れることはできません。トラブルを避けるには、私道の管理方法や費用負担を事前に取り決め、共有者同士で連絡が取れる体制を整えておくことが大切です。

弊社では、私道の共有持分付き不動産の買取も対応可能です。共有者との私道の管理を負担に感じ、不動産を手放したいといった場合は、弊社にご相談ください。

共有名義不動産における固定資産税の扱いや、払わなかった場合のリスクについては、以下の記事で解説しています。

まとめ

私道の共有持分の名義変更は、建物や土地と比べて見落とされやすい手続きです。しかし、名義を変えないまま放置すると、私道を通行する権利を主張できず、再建築ができなくなったり、将来の売却が困難になったりと、思わぬトラブルにつながります。

相続・離婚・売買・贈与などで私道の共有持分を取得した場合は、権利関係を明確にするためにも、早めに名義変更の手続きを済ませることが大切です。適切に名義を整えておくことで、将来のリスクを避け、安心して不動産を管理・活用できます。

よくある質問

私道と公道の違いは?

私道と公道の大きな違いは、「誰が所有しているか」「誰が自由に通れるか」という点です。

公道は、国や自治体が所有・管理する道路で、誰でも自由に通行できます。一方、私道は個人や法人が所有する道路で、原則として所有者の許可がなければ通行できません。

ただし、行政から「位置指定道路」「みなし道路」として認められている私道は、一般の通行が認められるケースもあります。

また、私道の補修・管理費は所有者(共有者)が負担します。公道のように行政が整備してくれるわけではないため、老朽化した場合の補修や管理について、共有者同士で協議が必要になります。

私道の確認方法は?

私道か公道かは、次の方法で確認できます。

確認方法 取得方法や費用
公図を確認する 法務局で取得できる公図(450円)で確認する。
地番がある場合は私道、地番なしで、「道」と記載されている場合は公道と区別できる。
登記事項証明書を確認する 法務局で取得できる登記事項証明書(600円)で確認する。
公図で地番を調べてから、道路部分の登記を取得すれば、所有者名・共有持分の有無を確認できる。
役所の道路管理課で確認する 不動産所在地を管轄する市区町村役場の役所の道路管理課で、調べたい道路の「地番」を伝えると、公道か私道かを教えてもらえる。費用は無料。
名寄帳・課税台帳を確認する 不動産所在地を管轄する市区町村役場の税務課で取得できる名寄帳(300~400円)、課税台帳(300~400円)で確認する。
同一名義の不動産一覧から私道の有無を把握できる。
権利証(登記識別情報)を確認する 地目が「公衆用道路」や、複数名での共有形態になっている土地であれば、私道の可能性が高い。
売買契約書を確認する 不動産を購入した際の契約書。
公衆用道路の記載や共有持分の表示があれば、私道の可能性がある。

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