共有不動産が危険だと言われる8つの理由!危険性を回避する7つの方法も解説

共有不動産が危険だと言われる8つの理由!危険性を回避する7つの方法も解説

「共有不動産にすると、どんな危険があるの?」「共有名義にするデメリットは?」
不動産を共有名義にしようか悩んでいる人の中には、このように考えている人もいるでしょう。

共有不動産とは、複数人で共有している不動産のことです。共有不動産には、住宅ローン審査に通りやすくなったり、住宅ローン減税を共有者ごとに適用できたりするなどのメリットがあります

一方、共有物は自分の一存だけではできないことが多かったり、相続で共有者が増えてトラブルになったりするなど多大なデメリットがあります。そのため、不動産を共有で購入することは、おすすめできません

すでに共有名義で不動産を持っていて共有状態を解消したい場合は、他の共有者と協力して不動産全体を売却したり、自身が他の共有者の持分を買い取って単独名義とする方法があります。ただしこういった方法には他の共有者の同意が必要であったり、他の共有者の持分を購入する資金が必要だったりするため、個人ではハードルの高い選択肢とも言えるでしょう。

一方で共有不動産全体の売却ではなく、自己の持分のみを第三者に売却するのであれば、他の共有者の同意を得る必要はないため、少ない労力で共有状態を解消できます。

中でも共有持分の買取業者に売却依頼すれば、一般的な不動産会社よりも高くスピーディーに買い取ってくれるでしょう。

本記事では、共有不動産が危険だと言われる理由を解説します。不動産を共有名義にするメリットや共有不動産の危険性を回避するための方法もまとめました。不動産を共有名義にするか悩んでいる人や、共有不動産の危険性について調べている人は、ぜひ参考にしてください。

共有不動産が危険だと言われる7つの理由

共有不動産が危険だと言われる理由は、次の7つです。

  • 共有物については自分の一存だけではできないことが多い
  • 離婚時の財産分与が難しくなる
  • 他共有者の利用を阻止できない
  • 価格が下がる可能性が高い
  • 相続により共有者が増えてトラブルになる場合がある
  • 贈与税が発生してしまうケースがある
  • ローンなどの諸費用が2倍かかる

それぞれについて解説します。

共有物については自分の一存だけではできないことが多い

1つ目の理由は、共有物について自分の一存だけではできないことが多いことです。

共有物全体に対してできる行為と範囲は、以下のとおりです。

 

行為 内容 具体例 行為の範囲
変更行為(軽微な変更) 形状(外観、構造等)や効用(機能や用途など)の著しい変更を伴わない行為 ・砂利道のアスファルト舗装
・建物の外壁・屋上防水などの修繕
各共有者の持分価格に従い、過半数で決定
変更行為(軽微な変更以外) 共有物の管理の範囲を超えてその性質を変える行為 ・共有建物の増改築
・共有建物を取り壊す
・共有不動産全体を第三者に売却する
・共有不増産全体に担保権(抵当権等)を設定する
共有者全員の同意が必要
管理行為 共有物の性質を変えない範囲内で、その利用や改良を目的とする行為 ・共有建物の改装
・共有宅地の整地
・共有不動産の賃貸
各共有者の持分価格に従い、過半数で決定
保存行為 共有物の現状を維持するための行為 ・不動産の修理や修繕
・不法占拠者への明け渡し請求
・法定相続登記
・地役権設定登記請求
・無権利者名義の抹消登記請求
各共有者が単独で行える

なお自分の持分だけであれば、ほかの共有者の同意がなくても売却が可能です。

ここでは、それぞれの行為について解説します。

共有不動産の「変更」行為は共有者全員の同意が必要

変更行為とは、共有物の主要な性質、用途などを変更する行為で、共有建物の増改築や共有不動産の売却などが該当します

共有不動産で増改築や売却などの変更行為を行う場合、不動産の持分割合にかかわらず、共有者全員の合意を得なければなりません。なぜなら、民法第251条に基づき、ほかの共有者の同意なく共有物に変更を加えられないためです。

たとえば夫9割、妻1割の持分で不動産を共有していた場合でも、不動産全体を売るためには、夫は妻に対して合意を得る必要があります。ただし自分の持分のみであれば、共有者の同意がなくても売却は可能です。

なお、2023年4月より、砂利道のアスファルト舗装や建物の外壁・屋上防水修繕などの軽微な変更については、持分価格の過半数で決定できるようになりました(民法第251条1項)また共有者自身や所在などが不明な人がいる場合、裁判所はほかの共有者の同意を得て共有物に変更を加える旨の裁判が可能です(民法第251条2項

共有不動産の「管理」行為は共有者過半数の同意が必要

管理行為とは、共有物を利用・改良する行為で、共有不動産の賃貸や共有建物の改装、共有宅地の整地などが該当します民法第252条に基づき、共有物の管理に関する事項は過半数の同意が必要です。

たとえば兄弟3人で1/3ずつの共有名義だとすると、共有不動産を第三者に貸し出したい場合は2人の合意を得なければなりません。

なお2023年の民法改正により、共有者同士の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響がある場合は、承諾が必要になりました民法第252条3項一部共有者の存在や所在が不明なときは、不明共有者以外の共有者の持分価格過半数で管理に関する事項を決定できる旨の裁判ができます民法第252条2項

また借地借家法が適用される賃貸借契約は、共有不動産の変更行為に該当することがあり、この場合、全員の同意が必要です。

ただし、以下の賃借権において記載してある期間を超えない賃借権の設定であれば、持分価格の過半数で決定できると定めています(民法第252条4項

  • 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等:10年
  • 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等:5年
  • 建物の賃借権等:3年
  • 動産の賃借権等:6ヵ月

もっとも建物賃貸借の普通借家契約は、契約期間が3年以内の場合でも合意更新、または法定更新により長期間存続すると見込まれます。よって、3年を超えない期間の賃借権の設定とは認められず、変更に該当すると考えられています

そのほか、共有名義の不動産に対する軽微でないリフォーム工事には、共有者持分の過半数の合意が必要です。軽微でないリフォーム工事とは、不動産の価値を高める目的で行う修繕や増改築です。

共有者間で意見が合わなければ、不動産の老朽化に対する適切な修繕が行えない可能性が高くなります。そのため不動産の価値が低下し、将来売却する際に安値でしか売れなくなるリスクがあるでしょう。

共有不動産の「保存」行為は共有者の同意は必要ない

保存行為とは、物理的な現状を維持しほかの共有者に不利益が及ばない行為で、不動産の修理や修繕、不法占拠者への明け渡し請求が該当します

保存行為は共有者全員の利益になるため、個別に同意をとる必要はありません。不動産が傷んでいる場合の修理や修繕は保存行為に該当するため、各共有者が単独の判断で対応できます。

しかし、各共有者が自由にリフォームやリノベーションをできるわけではありません。不動産が傷んでいないのに「オシャレにしたい」「高級感を出したい」などと考えて、自分の趣味でリノベーションを行う行為は保存行為になりません。この場合は不動産に変更を加える行為といえるため、共有者全員の合意が必要になる可能性があります。

また共有不動産が第三者によって不法占拠されている場合は、各共有者が単独で明け渡し請求できます。たとえば賃貸借契約を解約したのに賃借人が居座っている場合の明け渡し請求は、ほかの共有者の同意は必要ありません。

無権利者名義の抹消登記請求も共有者全員の利益になるので、共有者が単独で請求できます

なお不動産の相続が発生した際、法定相続分に従った共有登記を行うなら、法定相続人であれば1人で申請できます。相続登記をせずに放置しておくと、法定相続人全員の共有状態とみなされるため、単独で不動産を売却したり活用したりできません。

年月が経ち、また相続が発生して共有者が増えると、権利関係が複雑化していきます。トラブルを避けるため、相続が発生して遺産分割協議を終えたら、早めに単独名義の登記申請をしましょう

そのほか地役権設定登記請求も保存行為にあたります。地役権とは、自分の土地を利用するために、一定の範囲で他人の土地を使わせてもらう権利です。

地役権を登記すると地役権を第三者にも主張できます。要役地(通らせてもらう方の土地)の所有者にとっては有益なため、共有者なら誰でも可能です。

保存行為と管理行為や処分行為との境界はあいまいな場合もあります。権利侵害すると、ほかの共有者から原状回復請求や損害賠償請求される可能性があります。自己判断で保存行為と決めつけて行動すると権利侵害になってしまう恐れがあるため、迷ったときには弁護士などに相談するとよいでしょう。

離婚時の財産分与が難しくなる

2つ目の理由は、離婚時の財産分与が難しくなることです。

夫婦共有名義の不動産は、離婚時の財産分与が難しくなるデメリットがあります。

離婚時の財産分与では、購入当初の持分割合がそのまま適用されるわけではありません。婚姻期間が短い場合は持分割合どおりの財産分与もありえます。しかし婚姻期間が長い場合は、財産形成に寄与した割合が同程度とみなされ基本的に1/2ずつの割合で分与します。

なお離婚後、元夫婦は別居するのが一般的ですが、金融機関に黙って夫婦の片方が家から出ていく行為は契約違反とみなされる恐れがあります。なぜなら、ペアローンや連帯債務型は、夫婦の両方が融資の対象物件に住んでいることが契約条件の場合が多いためです。

そのため契約違反が発覚した場合、金融機関からローンの一括返済を請求される可能性が高いでしょう。

またペアローンや連帯債務型で住宅ローンを組んでいる場合、債務者のどちらかが長期にわたり滞納すると、もう一方が取り立てにあいます。夫婦双方がローン返済ができなければ、物件を競売にかけられ、家を追い出されるリスクもあります。

夫婦共有で新居を購入する場合は、離婚時の問題を把握したうえで検討しましょう。

他共有者の利用を阻止できない

3つ目の理由は、他共有者の利用を阻止できないことです。

各共有者は、持分割合に関係なく、不動産の全部を使用できると民法第249条で定められています。よって、共有名義の不動産を特定の共有者が占拠しても、無理やり追い出すことはできません。そのため「占有されているけど本当は賃貸に出したい」など共有者同士で意見に食い違いがあると、公平性がなくなりトラブルになる可能性もあるでしょう。

なお占拠者以外の共有者は、明け渡し請求はできませんが賃料を請求する権利があります。賃料を請求しても占拠者が賃料を支払わない場合、裁判に発展する可能性もあります。ただし裁判に発展しても、占有者の賃料支払が認められるとは限らないでしょう。

売却価格が低い可能性が高い

4つ目の理由は、売却価格が低い可能性が高いことです。

共有持分のままでは、所有不動産の価値が低くなります。1/2の権利を持つ人が自分の持分だけを売却する場合、売却価格は不動産全体を売却した場合の1/2以下になることが一般的です。

市場価格×持分割合×1/2〜1/3と言われることがありますが、それ以下の場合もありえます。なぜなら共有持分を購入しても、通常の不動産の使用よりも制限が多いため、買い手にとってリスクがあるからです。

たとえば投資家が賃貸収入を得る目的で共有持分を取得した場合、共有不動産を貸し出すためには、ほかの共有者の同意を得なければなりません。また賃貸収入も、共有者全員で分ける必要があります。

共有持分だけを所有するメリットは少ないため、一般の個人や不動産会社が買い取ることはありません。そのため共有持分の売却は、共有持分買取業者が買主になる場合が多いです。

共有不動産を買い取った買取業者が、ほかの共有者に共有持分を売却するよう持ちかけるケースが多いでしょう。

ただし、ほかの共有者に周知せずに自分の持分のみ売却すると、トラブルになる可能性が高くなります。自分の持分を売却する際は、ほかの共有者に事前に知らせるようにしましょう。

相続により共有者が増えてトラブルになる場合がある

5つ目の理由は、相続により共有者が増えてトラブルになる場合があることです。

不動産の購入時に連帯債務型ローンやペアローンを組むと不動産は共有名義になります。また、相続が起きた場合にも共有状態が発生してしまいます

共有者の1人が亡くなると持分が複数の相続人へ受け継がれるため共有者が増え続け、売却などの合意形成が困難になってしまうのです。度重なる相続で共有者が大人数になると、ほかの共有者の顔や名前も分からなくなることもあります

たとえば夫が死亡し相続が発生した場合、子どもがいれば夫の持分を相続するのは妻と子どもです。子どもがいない場合は、妻と夫の親、または兄弟姉妹が相続人となります。

相続が発生する前は夫婦だけの共有名義だったのに、相続が起きると予期せぬ共有関係ができてしまうのが、共有名義不動産の特徴です。相続が発生するたびに共有者同士の関係が遠くなってしまい、売却や処分を行う際に同意を取るのが難しく、活用しにくい不動産となってしまいます。

共有名義不動産は、自分の死後、子どもや孫などがトラブルに巻き込まれる可能性があることを念頭に入れておきましょう。

贈与税が発生してしまうケースがある

6つ目の理由は、贈与税が発生してしまうケースがあることです。

購入資金の負担割合と登記上の持分割合が異なる場合、贈与税が発生することがあります

たとえば4,000万円の家を建てた際、夫が3,500万円、妻が500万円ずつ出資したとします。それなのに、登記上の持分割合が1/2ずつの場合は、夫から妻に1,500万円の贈与があったとみなされてしまうのです。

また離婚時の財産分与は通常、贈与税の対象外ですが、分与が過当と認められる場合110万円を超える部分に贈与税が発生します(相続税法基本通達9-8)仮に共有不動産の持分が、夫8/10、妻2/10だったとして、夫が妻に対して不動産評価額の8割を財産分与した場合は、過当として贈与税が発生する恐れがあるでしょう。

なお贈与税や相続税を免れるために偽装離婚をするなど財産分与を悪用した場合は、全額に贈与税が課されます。離婚協議書がない場合、財産分与として認められない可能性もあります。

そのほか、次のような場合も贈与税がかかる可能性があるため、注意が必要です。

  • 共有持分の割合を変更した場合
  • リフォームや増改築費用を特定の共有者だけが負担した場合
  • 単独で所有している不動産を共有名義にする場合
  • 共有持分を放棄した場合
  • 特定の共有者が住宅ローンを完済した場合
  • 共有不動産を分筆し、単独名義にしようとした場合

共有不動産の処分で贈与税が課税されると、売却時の所得税と二重課税される場合があるため、確認してから行うことが大切です。

ローンなどの諸費用が2倍かかる

7つ目の理由は、ローンなどの諸費用が2倍かかることです。

不動産を夫婦共有名義にする際のローンの組み方は、ペアローンと連帯債務型のローンがあります

連帯債務型のローンとは、1つの住宅ローンを夫婦や親子など2人で借り入れ、各々が全額の債務を負うものでローン契約は1つです。一方ペアローンは、1つの物件に対して夫婦が同じ金融機関でそれぞれローンを組む方法で、ローン契約は2つあります。

そのためペアローンの場合は、住宅ローンの契約に対する諸費用が通常の2倍かかってしまいます

ペアローンを組むと負担額が増える主な諸費用は、以下のとおりです。

  • 契約事務手数料
  • 融資事務手数料
  • 印紙税
  • 抵当権設定時の登録免許税
  • 保証会社事務手数料

繰り上げ返済をしたりローンの借り換えを行ったりする場合も、費用は各々の契約に対して発生します。ローン完済時の事務手数料や売却抵当権抹消の登録免許税、司法書士への報酬なども同じく2倍となります。

住宅ローンを単独で組んだときに必要な諸費用と比べながらペアローンにするか検討するとよいでしょう。

不動産を共有名義にする4つのメリット

不動産を共有名義にするメリットは、以下の4つです。

  • 住宅ローン審査に通りやすくなる
  • 不動産が勝手に売却されるのを防ぐことができる
  • 住宅ローン減税を共有者ごとに適用できる
  • 売却時の3,000万円特別控除を共有者ごとに適用できる

それぞれ解説します。

住宅ローン審査に通りやすくなる

1つ目のメリットは、住宅ローン審査に通りやすくなることです。

住宅ローンの審査は契約者の資産や収入などの属性に左右されます。そのため単独名義で不動産を購入する場合、契約者個人の収入が安定していないとローン契約が困難です。

共働きの夫婦の場合、不動産を共有名義にすると夫婦2人分の資産・収入で審査を受けられるため、借入がしやすくなります。夫婦2人の収入を合算して1つの住宅ローンを組む連帯債務型の住宅ローンや2つの住宅ローンを契約するペアローンが利用される場合もあります。

また共有名義で住宅ローンを組むと、ローン契約者それぞれの収入を合算できるため、単独名義に比べて高額なローンを契約することが可能です。

具体的に計算してみましょう。

共働き夫婦(夫の年収450万円、妻の年収200万円)
住宅ローンの金利は、年利1.65%として算出
返済期間は30年として算出
返済方法は、元利金均等返済
住宅ローンの返済負担率(収入に占める年間の返済額の割合)は25%

夫の単独名義でマイホームを購入しようとすると、年収450万円に対しての金額しか借りられないため、借入可能額は約2,600万円です。

借入条件 年収450万円

※参照:住宅金融普及協会「借入可能額の計算」

しかし、夫婦の共有名義で住宅を購入する場合は、年収を合算した650万円に対しての金額を借入できるため、借入可能額は約3,700万円となります。

借入条件 年収650万円

※参照:住宅金融普及協会「借入可能額の計算」

ただし夫婦共有で住宅ローンを組む場合、夫婦双方の収入を前提にするため月々の返済額が高額になります。休業や離職をすると生活が苦しくなる恐れがあるため、返済計画に余裕をもたせたり働けなくなったときの備えとして貯金をしたりしておきましょう。

不動産が勝手に売却されるのを防ぐことができる

2つ目のメリットは、不動産が勝手に売却されるのを防げることです。

共有名義の不動産すべてを売却する場合は、共有者全員の同意が必要なため、一方的に不動産を売却されることはありません民法第251条)そのため、不動産の持分を所有していれば勝手に所有物件のすべてを売却される心配はないといえます。

たとえば夫が単独名義の場合、離婚後にすぐ家を売却する可能性があり、妻が追い出されるリスクがあります。しかし妻が少しでも不動産の持分を所有していれば、所有者として権利の主張が可能です。

ただし、不動産すべての売却は無理でも、各自の共有持分だけであれば自由に売却できます

共有者が第三者に自分の持分を売却してしまった場合、自分の持分を売却してほしいと交渉されたり、共有物分割請求訴訟を起こされたりする可能性があります。共有物分割請求訴訟とは、共有となっている不動産の共有状態を解消するための請求です。

共有物分割請求訴訟では裁判所が中立な立場で判決を下します。判決の内容によっては、強制的に不動産を手放さなければならないケースもあるでしょう。

住宅ローン減税を共有者ごとに適用できる

3つ目のメリットは、住宅ローン減税を共有者ごとに適用できることです。

夫婦2人の共有名義で3,000万円の不動産を購入した場合、それぞれに住宅ローン控除が適用されます住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、10~13年間にわたり住宅ローン年末残高の0.7%を所得税から控除する制度です(租税特別措置法第41条

所得税から控除しきれない場合は、住民税からも差し引きできます(前年度課税所得×5%、最高9万7,500円まで)

共有名義で住宅ローンを契約すると、契約者それぞれの収入を合算して審査に望めるため、単独名義よりも借入可能額が増加します。

なお令和6年度税制改正により、住宅ローン減税の制度内容が変更されました。

住宅ローン減税の概要は、以下のとおりです。

住宅ローン減税の概要について(令和6年度税制改正後)

画像引用:住宅ローン減税 – 国土交通省

2024年〜2025年に入居したときの1年あたりの控除限度額は、新築住宅および買取再販の住宅の場合14万〜35万円、中古住宅の場合14万円または21万円です。

夫婦2人の共有名義で不動産を購入した場合、各々に住宅ローン控除が適用されます。これにより住宅購入時に納付すべき税金から年間で28〜70万円の住宅ローン控除が受けられ、税負担が軽減されます

たとえば、夫婦で2,500万円ずつ、合計5,000万円のペアローンを組んで認定住宅を購入したときの年間控除額は1人あたり「2,500万円×0.7%=17.5万円」です。夫婦2人分では最大で35万円の控除を受けられます。

注意点として、2024年以降に新築の住宅を購入する場合は、一定の省エネ性能基準を満たした家でなければ住宅ローンの控除が受けられなくなります。「その他の住宅」に当てはまる省エネ性能基準を満たさない家では住宅ローン控除が適用できません

ただし、次の場合は省エネ基準を満たさなくても住宅ローン控除を適用できます。

  • 2023年中に建築確認を受けている場合(確認済証または検査済証の写しを提出)
  • 2024年6月30日以前に建築された場合(登記事項証明書を提出)

この場合、借入限度額は2,000万円、控除期間は10年となります。

夫婦それぞれが控除を適用するためには、個別で住宅ローンを組む、またはどちらかが連帯債務者となって住宅ローンを契約しなければなりません。しかし退職や休職で収入がなくなった場合は、所得税が発生しないため、ローン控除は受けられなくなります

住宅ローン控除の適用を受けるためには、入居した翌年の間に確定申告をしなければなりません。確定申告をしないと、納め過ぎた所得税を還付してもらうための還付申告ができなくなり住宅ローン控除の適用が受けられなくなるので忘れずに行いましょう。

2年目以降は、会社の年末調整で住宅ローン控除の手続きができます。フリーランスや個人事業主など源泉徴収対象外の人は1年目と同じく確定申告が必要です。

売却時の3,000万円特別控除を共有者ごとに適用できる

4つ目のメリットは、売却時の3,000 万円特別控除を共有者ごとに適用できることです。

3,000 万円特別控除とは、居住用財産を譲渡・売却して得た譲渡所得から3,000万円を控除する特例です。この特例により、不動産を売却した際の譲渡所得が3,000万円以内であれば、税金の負担はありません。

夫婦や親子共有名義で所有している自宅を売却した場合には、各々の持分割合に応じた譲渡所得に対して特例が利用できるため、最大6,000万円まで控除できる可能性があります

具体例を見てみましょう。

例)住宅およびその敷地が夫と妻の共有である場合で、これらを売却して譲渡益が4,000万円となった場合

夫の持分が住宅およびその敷地の3/4、妻の持分が1/4の場合、譲渡益計算は以下になります。

  • 夫:譲渡益3,000万円-特別控除額3,000万円=譲渡所得額0円
  • 妻:譲渡益1,000万円-特別控除額1,000万円=譲渡所得額0円

3000万特別控除の適用要件は以下のとおりです。

  1. 自分が居住している家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売却すること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地などの場合は、居住しなくなった日から3年目の12月31日までに売却すること
    また、家屋を解体した場合は、次の2つの要件に該当すること
    ・家屋を解体した敷地の譲渡契約が、家屋解体から1年以内に結ばれ、かつ、居住しなくなった日から3年目の12月31日までに売却すること
    ・家屋を解体してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などに利用していないこと
  2. 売却した年の前年や前々年に3,000 万円特別控除の特例(「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」によりこの特例の適用を受けている場合を除く)またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例を受けていないこと
  3. 売却した年、その前年や前々年にマイホームの買換えや交換の特例を受けていないこと
  4. 売却した家屋や敷地などが、収用等の場合の特別控除など、ほかの特例を受けていないこと
  5. 災害により滅失した家屋の場合は、その敷地に居住しなくなった日から3年目の12月31日までに売却すること
  6. 土地や建物の売主と買主が、親族や夫婦、内縁関係にある人や同族会社など特別な関係でないこと

次のような家屋を売却した場合は、3,000万円特別控除の特例は適用できません。

  • 3,000万円特別控除の特例を受けるためだけに入居した家屋
  • 居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使用した家屋など、一時的な目的で入居した家屋
  • 別荘などのような趣味・娯楽・保養のために所有している家屋

参照:マイホームを売ったときの特例|国税庁

ただし居住用財産の3,000万円控除は、住宅を売却したときに適用できる控除です。そのため「夫が土地、妻が建物」「父親が土地、娘が建物」などのように不動産の所有者を分けている場合は、建物の所有者しか控除を適用できません

また居住用財産の3,000万円特別控除は、住宅ローン控除との併用できない点に注意が必要です。共有名義の住宅を売却し、新たに住まいを購入する予定の人は、居住用財産の3,000万円特別控除と住宅ローン控除のどちらのほうが節税効果が高いかシミュレーションしておきましょう。

なお、3,000万円特別控除の適用を受けるためには、個別で確定申告をする必要があるため忘れずに行いましょう。

共有不動産の危険性を回避するための8つの方法

不動産の共有名義には、多大なデメリットがあるため、回避したほうがよいでしょう。すでに共有名義で不動産を持っている場合、早期に共有状態を解消するべきです。

ほかの共有者とトラブルが発生している場合でも、単独で行える共有状態の解消方法があります。

共有名義の解消方法は、以下のとおりです。

  • 初めから共有状態にしない
  • 土地を分筆によって現物分割する
  • 他共有者と交渉して不動産全体を売却する
  • 自分が不動産全体を買い取る
  • 自分の共有持分を他共有者に売却する
  • 自分の共有持分を第三者に売却する
  • 持分放棄を行う
  • 共有物分割請求で単独名義にする

それぞれ解説します。

初めから共有状態にしない

1つ目は、初めから共有状態にしない方法です。

共有にしない方法は、以下のとおりです。

  • 新規の不動産購入では共有名義を避ける
  • 相続の際には共有名義にしないよう協議する

それぞれ解説します。

新規の不動産購入では共有名義を避ける

住宅を新たに夫婦で購入する際は、できる限り単独名義(1人の収入)で購入可能な物件を探すとよいでしょう。単独名義で不動産を購入すれば、共有名義のデメリットを回避できるためです。

共有名義で住宅ローンを組んだ場合、共有者同士で協力できなくなると、返済が不可能になるリスクがあります。返済を滞納すれば不動産を競売にかけられたり、競売を避けるために任意売却をしなければいけない事態になったりする場合も少なくありません

また夫婦の一方がもう片方のローンを支払えたとしても、ローンを支払ってもらった人に贈与税が課税されます

1人の収入だけでは資金が足りず共有で不動産を購入する場合は、共有名義のデメリットを把握したうえで、検討するようにしましょう。

相続の際には共有名義にしないように協議する

相続の際には、共有名義にしないように協議しましょう。不動産の新規購入時は共有者が少ないですが、遺産相続時は世代を経るごとに共有者が増える恐れがあります。

共有者が増えると、不動産の管理や売却のための合意形成が困難になります。そのため遺産分割協議では「不動産を売却して現金化する」か「特定の相続人の単独名義にする」などの方法を検討しましょう。

遺産分割が完了しない限り、不動産は法定相続人間の共有名義とみなされます。相続人同士の共有名義だとみなされると、相続不動産の売却ができなかったり、不動産の管理責任が相続人全員に生じたりするリスクがあります。

遺産分割協議で話し合っても合意できない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、遺産分割を進めるのもよいでしょう。

なお、相続人同士のトラブルに巻き込まれたくないから財産はいらない、遺産分割協議にも参加したくないのであれば、相続放棄も1つの選択肢です。相続放棄とは、相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内に申請すると、相続財産の所有権を放棄できる制度です。

ただし相続放棄をすると、不動産以外の財産もすべて相続できないため、慎重に検討しましょう。

土地を分筆によって現物分割する

2つ目は、土地を分筆によって現物分割する方法です。

分筆とは、共有不動産を物理的に分割する方法です。分筆は土地が広大で、分筆後も各筆の土地が利用できる広さを有する場合に有効といえます。

共有不動産を現物分割できた場合、それぞれの共有者の単独所有となるため、分割した土地を自由に活用・運用できます。ただし分筆によって各土地が狭小になる場合や、現物分割をすると共有不動産の価値が著しく減少する場合は原則分筆できません。土地の形状によっては、現物分割すると接道がない土地になってしまったり、建ぺい率や容積率が建物を建てるための法的要件を満たさない土地になったりする可能性もあります。

なお相続財産が土地ではなく建物の場合も分筆は困難ですが、マンションなど区分所有しやすいものであれば建物でも分割相続が可能です。

他共有者と交渉して不動産全体を売却する

3つ目は、他共有者と交渉して不動産全体を売却する方法です。

換価分割とは、不動産すべてを第三者に売却し、得た金銭を相続人同士で分配する方法です。全員が同等に金銭を受け取るため最も公平な方法と考えられますが、相続人の誰かが不動産の保有を希望する場合には無効となります。

不動産会社を介して売却すると、相続人全員にそれぞれの相続割合に応じて金銭を分配できるため、裁判などのリスクが低く、現実的によく用いられる解決法です。たとえば5,000万円の不動産を兄弟2人が共有しているとき、自宅を売却して得た5,000万円を2人で2,500万円ずつ分配するのが換価分割です。

換価分割に反対する人がいる場合は、その人の取り分をほかの人より増やすなど、換価分割の合意が得られるよう交渉を行います

なお換価分割を行う場合、相続が確定するまでに売買契約書を交わしてしまうと、新たな相続人がいたときに売却を反対される可能性があります。

売買契約をしたのに売却できないと、違約金トラブルが起こる場合があるため、相続登記が終了し相続人が確定するまでは売買契約を締結しないようにしましょう

また換価分割を行う際は、誰に相続させるかで売却の手間が変わります。

不動産を共有で相続した場合、共有不動産を売却するには、共有者全員が売主と関わらなければなりません。しかし不動産を相続人の中の代表者1名に変更後、現金を分割する単独登記を行えば、必要書類の準備や売却手続きは代表の相続人のみが行えばよく手続きが簡単です。

ただし単独登記の場合、みなし贈与とみなされ、贈与税がかかることがあります。みなし贈与とは、意図した贈与ではないものの、結果的に贈与とみなされる行為です。

贈与税がかかるのを避けるためには、遺産分割協議書に「換価分割のために便宜上名義変更する」と明記しておく必要があります。遺産分割協議書に上記の記載があっても、代表者が不動産を長期に渡って売らずに放置した後で売却した場合は、換価分割とみなされず代表者に贈与税が課税される可能性があります。

単独登記を行った際は、できるだけ早く不動産を売却するようにしましょう。

自分が不動産全体を買い取る

4つ目は、自分が不動産全体を買い取る方法です。

ほかの共有者の持分を自分がすべて買い取れば、共有物全体を単独所有にできます

単独所有になれば管理負担が大幅に軽減され、土地などの活用や処分をすべて自分で決定できます。

ただし単独名義にするためには、ほかの共有者から持分を買い取る資金が必要です。

ほかの共有者が共有持分の売却に合意してくれない場合は、共有不動産の持分があるときの不都合や売却した場合のメリットなどを説明し、売却に応じてもらわなければなりません。また、持分を売却する人から不当に高額な金額を提示されないよう、客観的な資料を集めておきましょう

不動産の価格評価方法には、市場価格や固定資産税評価額、路線価や公示価格などがありますが、不動産買取の際に基準にするのは市場価格です。不動産全体の市場価格を持分価格で割り、だいたいの相場の金額を算出し話し合いで調整するとよいでしょう。

ほかの共有者と交渉し売却価格の合意ができたら、売買契約書を作成します。売買契約書には、どの不動産の持分を買い取るのか、売却価格や支払期限、支払方法や契約不適合責任などの重要事項について条項を設ける必要があります。売買契約書の作成は、あとからトラブルが起きないように、専門家のサポートを受けるとよいでしょう。

売買契約書の内容にしたがって決済をしたら、ほかの共有者の持分を自分に移転するため不動産登記を行います。共有持分が売買されると、共有持分が変更されるため共有持分移転登記をしなければなりません。共有持分移転登記を行う際に登記費用がかかりますが、買取した人が負担するのが一般的です。

不動産登記が完了すれば、自分だけの判断で不動産を売却や活用できます。

自分の共有持分を他共有者に売却する

5つ目は、自分の共有持分を他共有者に売却する方法です。

不動産を相続したけれども管理や保有をするつもりがない場合や、共有物を処分して金銭を得たい場合は、ほかの共有者に売却するのも選択肢の1つです。1人がほかの共有者の持分をすべて買い取るのが望ましいですが、共有者の数を減らすために売却する場合もあるでしょう。

共有者に不動産を買い取ってもらえないか相談する場合は、成約価格でのトラブルを回避するために不動産鑑定を受けることが大切です。不動産鑑定とは、不動産鑑定士が不動産の適正な価格を判断することです。不動産鑑定は有料ですが、国が定める不動産評価に基づいて鑑定するため、公的な証拠資料として利用できます。

なお、ほかの共有者が不動産に住み続けたいなど活用したいために売却を持ちかけてきた場合は、市場価格で売却できる可能性が高くなります。一方、自分が不動産ではなく現金で相続したいと考えて売却する場合は、市場価格より安い価格で売却しなければらないケースもあるでしょう。

自分の共有持分を第三者に売却する

6つ目は、自分の共有持分を第三者に売却する方法です。

相続で共有持分を所有することになった場合、共有者全員が継続して保有を望まない不動産は早く売却するのが望ましいといえます。なぜなら、不動産を所有し続けると、その間の固定資産税やその他の維持費がかかるからです。また、その不動産が原因で起きた問題に関しても責任を負う必要があります。

なお共有持分そのものを売買の対象にもできるため、第三者に売却して共有状態から外れることも可能です。

自分の持分を売却する場合、ほかの共有者の合意は不要です。しかし、持分は自由利用が制限される権利のため、一般市場では買い手がいません。そのため、持分を専門に買い取る不動産業者に相談する価値があるでしょう。

共有持分を買い取ってもらうのは、次のような方におすすめです。

  • ほかの共有者と話し合いができない
  • ほかの共有者とかかわりたくない
  • ほかの共有者と音信不通で連絡がとれない
  • ほかの共有者が誰かわからない

上記に該当する人は、共有持分を専門に扱う買取業者への売却を検討するとよいでしょう。

ただし、買取価格は市場相場より割安になってしまう可能性が高いです。買取業者が数年単位で時間をかけて、権利関係を整理してから再販などの方法で活用するためです。

また共有者が近い親族の場合は、持分の売却が原因でトラブルが起きることもあるため、事前に相談しておくとよいでしょう。

持分放棄を行う

7つ目は、持分放棄を行う方法です。

持分放棄とは、共有者が共有関係から離脱を希望することで、民法第255条に基づき行われます契約とは異なり「単独行為」と呼ばれる法律行為のため、放棄の意思表示をすれば、相手の同意がなくても実行可能です。

持分放棄をしたい場合は、ほかの共有者に対して口頭で伝えた後、意思表示した事実を残すため内容証明郵便で再度意思表示をします。ほかの共有者に口頭で伝える前に内容証明郵便を送ってしまうと、受取側が気分を害してしまい、その後のやりとりがスムーズに進まない場合があるため、必ず事前に口頭で伝えておきましょう。

内容証明は、持分放棄をめぐって訴訟に発展した場合の証拠書類となるため、自分で送らず弁護士や司法書士などに依頼するのがおすすめです。

持分放棄をするためには、登記変更をする必要があります。共有持分を放棄する人と、それ以外の人が用意する必要書類は、以下のとおりです。

共有持分放棄をする人の必要書類 ・登記申請書
・登記原因証明情報
・登記済証または登記識別情報通知
・印鑑証明書(発行日から3ヶ月以内のもの)
・固定資産税評価証明書
・実印
・本人確認書類
・委任状 ※代理人が申請する場合
放棄する人以外の必要書類 ・住民票
・認印
・本人確認書類

必要書類を準備したら、放棄する不動産を管轄している法務局へ提出します。共有持分放棄の登記は共同申請になるため、放棄する人とその他の共有者全員で法務局へ出向かなければなりません。

全員で法務局に来訪できない場合、委任状があればほかの人に手続きを代行してもらうことも可能です。この場合、委任状には印鑑証明書が付された実印の押印が必要です。

ほかの共有者が登記申請の協力をしてくれない場合は、登記引取請求を利用すれば単独での持分移転の登記手続きができます。裁判を起こすには費用も時間もかかるため、どうしても持分放棄以外の選択肢がないときの最終手段として考えておくとよいでしょう。

また、持分放棄をした場合、税金がかかるため注意が必要です。

放棄する本人には、登録免許税が課税されます。登録免許税とは登記をする際に必要な税金で、固定資産税評価額×2%×共有持分の割合で計算します共有持分を放棄する意思表示をしていても、登記の変更が完了していない場合や1月2日以降に変更を行っている場合は、固定資産税を支払わなければなりません

放棄した共有持分の価額が110万円(基礎控除額)を超える場合、共有者に贈与税が課税されます。

計算式は次のとおりです。

  • 土地:不動産価額×共有持分-110万円
  • 建物:固定資産税評価額×共有持分-110万円

土地の共有持分を放棄する場合、不動産の価額(路線価)を基準に課税額が計算されるため注意が必要です。

110万円を超過した分に関しては、法で定められている税率によって課税されます。

放棄した共有持分の価額 税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超~300万円以下 15% 10万円
300万円超~400万円以下 20% 25万円
400万円超~600万円以下 30% 65万円
600万円超~1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超~1,500万円以下 45% 175万円
1,500万円超~3,000万円以下 50% 250万円
1,500万円超~3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

※参照:贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁<一般贈与財産用>

不動産評価額によっては贈与税も高額になるため、不安な場合は税理士などに相談するとよいでしょう。

なお、ほかの共有者が先に持分放棄してしまい、自分が最後の1人になってしまった場合は持分放棄できません。最後に残ってしまった場合は、単独所有の状態のため、売却など別の方法も検討しましょう。

共有物分割請求で単独名義にする

8つ目は、共有物分割請求で単独名義にする方法です。

共有物分割請求(民法第256条)で共有状態を解消する方法があります。共有物分割請求とは、共有名義を単独名義にするよう裁判所に求めることです。

共有物分割請求は、原則として各共有者がいつでもほかの共有者に対して行なえます(民法第256条1項)当事者間で協議しても合意が得られない場合は、裁判所に対して分割の請求が可能です(民法第258条

共有物分割請求は、裁判所が共有状態の解消方法を強制的に決定するため、ほかの共有者の合意は必要ありません。そのため共有者同士で意見が対立し、協議がまとまらない場合でも共有状態の解消が可能です。

裁判では不動産鑑定士などによる適正価格に基づいて、裁判所が共有状態の解消方法を決定するため、納得感を持ちやすいでしょう。

ただ、共有物分割請求訴訟を申し立てても自分の望む結果になるとは限りません。裁判所が中立的な立場から、さまざまな条件を考慮して解消方法を決定するためです。判決によっては、不動産を手放すことになったり、共有者全員が金銭的に損をしたりする可能性もあります。

共有状態の解消までに半年~数年単位と時間がかかるため、時間をかけたくない人には不向きです。共有者間での話し合いから公に対立して争うことになるため、人間関係が修復できないほど悪化するリスクもあるでしょう。

また裁判所の判決は、3つの分割解消方法から選ばれます。

分割方法 概要 具体例
現物分割 不動産を分筆によって物理的に分割する方法 市場価格5,000万円・面積300㎡の土地をAとBとCで「1/3」ずつ共有
→土地を100㎡ずつに分筆し、それぞれAとBの単独所有にする
代償分割 不動産を共有者のうち誰か1人が取得し、ほかの共有者に対して持分割合に応じた代償金を支払って共有状態を解消する方法 3,000万円の不動産をAとBとCで「1/3」ずつ共有
→不動産をAの単独所有にして、AがBとCに対して1,000万円を支払う
換価分割 共有物を競売にかけて得た売却代金を持分割合で分配する方法 6,000万円の不動産をAとBとCで「1/3」ずつ共有
不動産が競売により3,000万円で落札。
AとBとCで1,000万円ずつ分配する

ただし、共有者同士で共有物不分割特約が結ばれている場合は、5年間の期間内で共有物分割請求が認められません民法第256条1項但し書)共有物不分割特約は5年を超えない範囲で、更新も認められています(民法第256条2項

なお比較的経済力のある共有者が、経済力のないほかの共有者に対して起こした訴訟は、裁判所に訴えを却下されてしまう可能性があります。たとえば夫から別居中の妻に対して訴訟を起こすと、権利濫用と判断される場合があります。妻に夫の持分を買い取る資力がなければ家を売却せざるを得なくなり、住む場所がなくなってしまうからです。

共有物分割請求は、協議や調停でまとまらない場合、最終的には訴訟を行うことになるため、弁護士に相談することをおすすめします

まとめ

共有不動産は、住宅ローン減税を共有者ごとに使えたり住宅ローン審査に通りやすくなったりなどのメリットがあります。しかし、共有物について自分の一存だけでできないことが多かったり相続により共有者が増えてトラブルになってしまったりなどデメリットも多いため、おすすめできません

不動産を共有で購入するか悩んでいる人は避けたほうがよいでしょう。

なお、すでに共有名義で不動産を持っている場合は、早期に共有状態を解消するべきです。ほかの共有者と話し合いができない人や、かかわりたくない人は共有持分を専門に扱う買取業者への売却を検討してみてください

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