共有名義解消のための完全ガイド!解消方法一覧と解消しないリスクを解説

不動産を共有名義で所有している場合、「自由に使えないのに維持費や税金だけがかかる」「不仲な共有者と関わり続けるのがつらい」といった理由から、共有名義の解消を希望される方は少なくありません。

実際に弊社にも「所有している意味がないので売却したい」「共有者との関係が悪化して困っている」といったご相談が数多く寄せられています。

共有名義の解消方法はいくつかあり、共有者全員で不動産を売却する方法から、自分の持分だけを売却・譲渡・放棄する方法まで状況に応じて選択肢があります。どの方法を選ぶかは次のようなポイントを基準に判断すると良いでしょう。

  • 共有者全員の同意を得られるか:「不動産全体の売却」「共有者間の持分売買による単独名義化」「土地の分筆」を進められる
  • 共有者に登記の協力を得られるか:「共有持分の譲渡」「共有持分の放棄」を選択できる
  • 自分1人で解決したいか:「共有持分を第三者に売却」であれば、他の共有者の同意を得ずに進められる
  • 不動産の物理的分割が可能か:土地が広く、複数に分けやすい形状なら「土地の分筆」を検討できる
  • 裁判になっても決着をつけたいか:「共有物分割請求訴訟」という最終手段で共有名義を解消する
  • 費用や税金、時間の負担を許容できるか:「土地の分筆」では測量費や登記費用、「共有物分割請求訴訟」では裁判費用や長い期間が必要になる一方、「共有持分を第三者に売却」であれば比較的少ない負担で進められる

以下は、代表的な共有名義の解消方法と概要です。

共有名義の解消方法 概要
1.共有不動産全体を第三者に売却する 共有者全員で合意し、不動産全体を第三者に売却して現金を分配する方法。市場価格に近い金額で売却でき、共有者間で公平に分けやすい。
2.共有者から持分をすべて買い取って自分の単独名義にする 他の共有者の共有持分をすべて買い取り、自分1人の単独名義にする方法。買取資金が必要だが、不動産を所有し続けたい場合に向いている。
3.共有者間で持分を売買して他の共有者の単独名義にする 共有者同士で共有持分を売買し、いずれか1人の単独名義にする方法。共有者の中に不動産を所有し続けたい人がいる場合の選択肢となる。
4.共有名義の土地を分筆した後に所有権移転登記を行い単独名義にする 土地を物理的に分け、それぞれ単独名義にする方法。土地が広く、分筆しやすい形状の場合に向いている。
5.共有物分割請求訴訟を起こす 裁判所に申し立て、強制的に分割や売却を行う方法。どうしても共有名義を解消したいが他に方法がない場合の最終手段という位置づけ。

※各方法をタップ・クリックすることで詳しい解説を確認できます。

共有名義の解消は、共有者全員が売却の意向を持っていればスムーズに進められますが、誰かが不動産を残したいと考えている場合は別の選択肢を検討する必要があります。

また、上記の方法が難しい場合は、次のように自分の持分を手放し、共有状態から抜け出す方法もあります。

制度 概要
1. 自分の共有持分だけを第三者に売却する 自分の共有持分のみを、第三者に売却する方法。持分売却に関しては、他の共有者の同意は必要ないため、自分の意思だけで進められ、持分を現金化できる。
2. 自分の共有持分を譲渡する 自分の共有持分を他の共有者に無償で譲渡する方法。他の共有者に持分を受け取る意思があるのなら可能。
3. 自分の共有持分を放棄する 自分の共有持分を放棄し、他の共有者に持分を渡す方法。放棄であるため、現金化はできない。なお、放棄の際に行う「共有持分移転登記」には、他の共有者全員の協力が必要。

※各方法をタップ・クリックすることで詳しい解説を確認できます。

このなかで共有持分を現金化できるのは「自分の共有持分だけを第三者に売却する」方法のみです。ただし、持分を直接買い取る個人はほとんどいないため、実際には不動産買取業者が売却先となります。買取業者は直接共有持分を買い取ってくれるため、「すぐに共有名義を解消したい」「自分の持分を現金化したい」といった方に向いています。

また、譲渡や放棄と異なり、他の共有者の協力が不要であるため、自分の意思だけで進められます。共有者間の交渉や調整がうまくいかない場合の選択肢としておすすめです。

本記事では、不動産の共有名義を解消する代表的な方法に加え、離婚や認知症、行方不明者などの特殊事情がある場合の解消方法も紹介します。さらに、共有名義を解消しない場合に起こり得るリスクやトラブル事例、必要な費用についても解説していきます。

なお、「共有名義を解消したいものの、どうすれば良いかわからない」といった場合は、当サイトを運営する「株式会社クランピーリアルエステート」にご相談ください。

弊社は、共有持分や訳あり不動産の買取を専門に扱っており、年間3,000件以上のご相談に対応しています。全国の弁護士や税理士と連携しているため、共有不動産にありがちな法律や税務の問題にも柔軟に対応可能です。共有者間のトラブルや複雑な事情を抱えている物件も対応できるので、ぜひ無料相談・無料査定をご活用ください。

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目次

不動産の共有名義を解消する方法一覧

共有名義不動産とは、1つの不動産を複数人で所有している状態を指します。共有名義になる主なきっかけは、相続や夫婦での共同購入などが挙げられます。

共有名義不動産は、自分の意思だけで売却することができず、売却の際には共有者全員の同意が必要となります。リフォームや賃貸契約を行う場合にも、共有持分の過半数による合意が求められます。

不動産の活用・売却に際し、他の共有者との協議や調整が必要となるため、単独名義とは異なる不便さがあります。そのため、共有状態を解消したいと考える人は少なくありません。

弊社にも「固定資産税や維持費ばかりかかる」「共有者と連絡が取れず売却が進まない」といった相談が数多く寄せられています。

そこで、ここからは共有名義を解消する代表的な方法と、それぞれの向いているケースを紹介します。

共有名義の解消方法 概要 向いているケース
1.共有不動産全体を第三者に売却する 共有者全員で合意し、不動産を第三者に売却して現金を分配する方法。 ・共有者全員が売却に同意している場合
             ・市場価格に近い金額で売却したい場合
             ・相続財産を現金化して公平に分けたい場合
             ・不動産を利用する予定が誰にもない場合
2.共有者から持分をすべて買い取って自分の単独名義にする 他の共有者の共有持分をすべて買い取り、自分1人の単独名義にする方法。 ・自分が不動産を引き続き利用したい場合(居住や事業用など)
・他の共有者が現金化を望んでいる場合
・自分に十分な買い取り資金がある場合
・共有者との関係が良好で話し合いがスムーズに進む場合
3.共有者間で持分を売買して他の共有者の単独名義にする 共有者同士で共有持分を売買し、いずれか1人の単独名義にする方法。 ・共有者の中に不動産を引き続き利用したい人がいる場合(居住や事業用など)
・不動産を売却せずに残したいという共有者がいる場合
・買い取る共有者に十分な資金がある場合
・共有者同士の関係が良好で、価格交渉がスムーズに進みそうな場合
4.共有名義の土地を分筆した後に所有権移転登記を行い単独名義にする 土地を物理的に分け、それぞれ単独名義にする方法。 ・土地に十分な広さがあり、平等に分けられる形状の場合  
・共有者それぞれが独自に土地を利用したいと考えている場合
・今後も不動産を保有し続けたいが、共有状態だけは解消したい場合
・共有者同士で協力して測量や登記費用を負担できる場合
5.共有物分割請求訴訟を起こす 裁判所に申し立て、強制的に分割や売却を行う方法。 ・共有者との関係が悪化し協議が難しい場合
・どうしても共有名義を解消したいが他に方法がない場合
・裁判所に判断を任せたい場合

※各方法をタップ・クリックすることで詳しい解説を確認できます。

1.共有不動産全体を第三者に売却する

共有名義不動産全体の売却

共有名義を解消するシンプルな方法の1つが、不動産全体を第三者に売却する方法です。相続や夫婦での共同購入によって複数人で所有している不動産を現金化し、その代金を分配することで共有関係を解消します。

売却で得た代金は、各共有者の持分割合に応じて分けられます。この仕組みを専門用語で「換価分割(かんかぶんかつ)」と呼びますが、要するに「不動産を売って現金で分ける方法」と考えるとわかりやすいでしょう。

具体例を見てみましょう。

 
・市場価格4,000万円の不動産を夫婦で1/2ずつ所有している
・夫婦で合意して4,000万円で売却した

この場合、売却代金4,000万円を持分割合に応じて分けるため、それぞれが2,000万円ずつ受け取ることになります。換価分割は現金を平等に分けられるので、不公平感が生まれにくい方法です。

ただし、この方法には大前提があります。それは、共有者全員が売却に同意していることです。民法第251条でも「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない」と定められているため、誰か一人でも反対すると売却は成立しません。逆に言えば、全員が同意していればスムーズに現金化でき、共有状態を整理しやすい有力な手段といえます。

メリット ・市場価格に近い金額で売却できる
・売却金額を公平に分配できる
デメリット ・共有者全員からの同意がなければ売却できない
・不動産を手放す必要がある
適しているケース ・共有者全員が売却に同意している場合
・相続財産を現金化して公平に分けたい場合
・不動産を利用する予定が誰にもない場合
・市場価格に近い金額で売却したい場合
適していないケース ・共有者の一部が売却に反対している場合
・共有者の中にその不動産を利用し続けたい人がいる場合
・思い出の詰まった自宅など、手放したくない事情がある場合
・住み替え先や代替資産の準備が整っていない場合

不動産全体を売却して共有名義を解消するメリット

不動産を共有名義のまま所有し続けると、売却や活用の自由度が制限されます。そのため、不動産全体を売却して共有状態を解消することには、大きなメリットがあります。

主なメリットは次のとおりです。

  • 市場価格に近い金額で不動産を売却できる
  • 売却金額を公平に分配できる

共有名義のまま一部の持分だけを売却しようとしても、買主にとっては利用に制限があるため、価格は相場より安くなりがちです。例えば、自分の持分を売却しても、買主は他の共有者の同意がなければ住んだり貸したりできません。そのため「使いにくい不動産」と判断され、評価額が下がってしまうのです。

これに対して、不動産全体をまとめて売却すれば、市場価格に近い金額での売却が期待できます。買主から見ても通常の不動産と変わらず、住むことも貸すことも自由にできるため、購入希望者が集まりやすいのです。

また、不動産全体の売却金額を持分割合に応じて分配する「換価分割」なら、共有者間で不公平が生じないため「分配時にほかの共有者とのトラブルが起きづらい」というメリットもあります。特に、相続で取得した不動産を複数人で分ける場面では有効な方法といえます。

不動産全体を売却して共有名義を解消するデメリット

共有不動産全体を売却するデメリットは以下のとおりです。

  • 共有者全員からの同意がなければ売却できない
  • 不動産を手放す必要がある

民法第251条で定められているように、共有不動産全体を売却するには、共有者全員から同意を得る必要があります。

(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
引用元:民法第二百五十一条|e-Gov法令検索

民法で定められている「変更」には、共有物の売却も該当します。そのため、共有者のうち誰か1人でも売却に反対する人がいれば、共有不動産全体の売却はできません。

また、当然ですが、換価分割をした場合は共有名義の不動産を手放さなければなりません。思い出のある実家や、生活の拠点として利用している不動産の場合には、共有者に同意してもらえない可能性があります。

共有名義の解消で不動産全体の売却が適している・適していないケース例

「不動産全体の売却」が最適かどうかは状況によって異なります。具体的に、適しているケースと適していないケースを整理すると次のとおりです。

適しているケース 適していないケース
・共有者全員が売却に同意している場合
・市場価格に近い金額で売却したい場合
・相続財産を現金化して公平に分けたい場合
・不動産を利用する予定が誰にもない場合
・共有者の一部が売却に反対している場合
・共有者の中にその不動産を利用し続けたい人がいる場合        ・思い出の詰まった自宅など、手放したくない事情がある場合

全員が売却に前向きであれば、不動産をまとめて売却することでスムーズに現金化でき、持分割合に応じて公平に分けられます。さらに、不動産を一部の持分だけで売却する場合に比べ、全体を売却する方が市場価格に近い金額で取引できる傾向があります。そのため、経済的なメリットも大きいといえるでしょう。

一方で、共有者のうち一人でも売却に反対すれば、この方法は実現できません。共有者の中に不動産を使い続けたい人がいる場合や、思い入れが強く手放したくない事情がある場合には、合意形成が難しくなります。

2.共有者から持分をすべて買い取って自分の単独名義にする

共有者間の売買
不動産を手放さず、今後も自由に使いたいと考えている場合には、他の共有者から持分をすべて買い取り、自分1人の名義にまとめる方法があります。

民法第251条・252条では、修繕や賃貸借契約の締結といった管理行為には共有持分の過半数の同意、売却などの処分・変更行為には共有者全員の同意が必要と定められていますが、共有者から持分を買い取り単独名義になれば、これらの制約から解放されます。つまり、自分だけの判断で売却やリフォーム、賃貸などを行えるようになるのです。

具体例は以下のとおりです。

 
・市場価格3,000万円の不動産を兄弟3人で共有している
・持分はそれぞれ1/3ずつ(1,000万円相当)
・次男が「その不動産を使いたい」と考え、長男・三男が持分を売却することに同意した

この場合、次男は2人分の持分を合計2,000万円で買い取り、単独名義で不動産を所有できるようになります。こうすることで、不動産を手放さず自由に活用でき、他の兄弟は現金を受け取れるため公平な解決につながります。

ただし持分を買い取るのであれば、当然資金が必要です。また、他の共有者に売却の意思がなければ成立しません。買い取るための資金があり、他の共有者も買い取ってほしいと思っているケースに限り実行できる方法といえるでしょう。

メリット ・不動産を自由に利用できる
・不動産を手放さずに済む
デメリット ・まとまった資金が必要
・他の共有者に売却する気がなければ実行できない
・価格のことでトラブルになる可能性がある
適しているケース ・自分が不動産を引き続き利用したい場合(居住や事業用など)
・他の共有者が現金化を望んでいる場合
・自分に十分な買い取り資金がある場合
・共有者との関係が良好で話し合いがスムーズに進む場合
適していないケース ・買い取り資金に不安がある場合
・共有者の一部が売却に応じない場合
・不動産の維持費や固定資産税の負担が大きすぎて、単独名義での所有が現実的でない場合
・不動産の将来価値に不安がある場合(空き家リスクや利用予定がない土地など)

共有者から持分を買い取るメリット

共有者から持分を買い取り、自分の単独名義にできれば次のようなメリットがあります。

  • 不動産を自由に利用できる
  • 不動産を手放さずに済む

共有者から持分を買い取り自分の単独所有にできれば、不動産を自由に利用できるようになります。賃貸に出すのも売却するのも、自分の意思さえあれば実行可能です。

ことあるごとに共有者から同意を得る必要がなくなるのは大きなメリットといえます。

また、不動産を手放さずに済む点もメリットです。資金に余裕があり、「共有状態を解消したいが大切な不動産は残したい」という場合には、この方法は現実的な解決策となります。相続で受け継いだ自宅や、生活の拠点となる不動産などを守りたいケースに向いています。

共有者から持分を買い取るデメリット

共有者から持分を買い取るデメリットは以下のとおりです。

  • まとまった資金が必要
  • 他の共有者に売却する気がなければ実行できない
  • 価格のことでトラブルになる可能性がある

他の共有者から持分を買い取るためには、まとまった資金が必要です。いくら持分を買い取って単独所有にしたくても、資金が用意できなければ実行できません。

資金調達の方法として、住宅を担保にするローンを利用する手もあります。なかには共有持分を担保にできるタイプもありますが、不動産全体を担保にする場合と比べて評価額が低く見積もられるため、希望額をすべて借りられるとは限りません。

また、他の共有者に売却する気がなければ買い取れない点もデメリットです。当然ですが、売却のない共有者から強引に買い取ることはできません。

さらに、いくらで売買するかという価格面でトラブルになることも少なくありません。持分の評価額は「不動産全体の市場価格 × 持分割合」で算出するのが基本です。

例えば、市場価格3,000万円の不動産を兄弟3人で均等に共有している場合、持分割合はそれぞれ1/3です。このとき、1人分の持分評価額は「3,000万円 × 1/3 = 1,000万円」となります。

しかし、実際の取引では「その金額で納得できるかどうか」は共有者同士の合意次第です。買い取りを希望する側と売却する側で価格の認識がずれると、交渉が長引いたりトラブルに発展したりすることがあります。

こうした場合は、不動産会社に査定を依頼して客観的な金額を把握するか、弁護士などの専門家に間に入ってもらうとスムーズに話が進みやすくなります。

共有者から持分を買い取るのが適している・適していないケース例

共有者から持分を買い取って単独名義にする方法は、不動産を手放さずに共有状態を解消できます。ただし、すべてのケースに向いているわけではなく、資金力や共有者の意向によっては実行できないこともあります。

適しているケース 適していないケース
・自分が不動産を引き続き利用したい場合(居住や事業用など)
・他の共有者が現金化を望んでいる場合
・自分に十分な買い取り資金がある場合
・共有者との関係が良好で話し合いがスムーズに進む場合
・買い取り資金に不安がある場合
・共有者の一部が売却に応じない場合
・不動産の維持費や固定資産税の負担が大きすぎて、単独名義での所有が現実的でない場合
・不動産の将来価値に不安がある場合(空き家リスクや利用予定がない土地など)

持分を買い取る方法は「不動産を手放したくないが、共有状態は解消したい」という人に向いています。例えば、相続で取得した実家に住み続けたい場合や、事業用の土地を確保したい場合に有効です。他の共有者が現金化を望んでいるときには、双方にとって納得できる解決策となりやすいでしょう。

また、資金力があり、共有者との関係が良好であれば、スムーズに話がまとまる可能性が高まります。

一方で、資金が不足している場合には、この方法は現実的ではありません。また、共有者の中に売却に反対する人がいれば、話し合いが進まず成立しません。

さらに、単独名義にしたとしても維持費や固定資産税の負担が大きい場合や、将来の資産価値に不安がある不動産では、かえって負担が増えてしまう可能性があります。

3.共有者間で持分を売買して他の共有者の単独名義にする

自分以外の共有者が不動産を引き続き所有したいと考えている場合には、その人が他の共有者の持分をすべて買い取り、単独名義にまとめる方法があります。

最終的に所有者が1人になることで共有状態は解消され、買い取った共有者は不動産を自由に利用・処分できるようになります。

具体例は以下のとおりです。

 
・市場価格3,000万円の不動産を兄と弟の2人で共有している
・持分割合はそれぞれ1/2ずつ
・弟が不動産を引き続き利用したいと考え、兄の持分を買い取ることにした

この場合、弟は兄に対して1,500万円を支払い、兄は現金を受け取ります。結果として弟が不動産全体を単独で所有できるようになり、共有関係は解消されます。

もちろん、共有者の中に買取の意思があり、資力がともなっている人物がいなければ成立しません。そのような共有者がおり関係も良好なら、買取を提案してみてもよいでしょう。

メリット ・持分を手放す共有者は、持分割合に応じた現金を得られる
・持分を買い取る共有者は、不動産を単独で所有できるため自由に活用できる
デメリット ・買い取る共有者にまとまった資金が必要
・他の共有者に売却する気がなければ実行できない
・価格のことでトラブルになる可能性がある
適しているケース ・共有者の中に不動産を引き続き利用したい人がいる場合(居住や事業用など)
・不動産を売却せずに残したいという共有者がいる場合
・買い取る共有者に十分な資金がある場合
・共有者同士の関係が良好で、価格交渉がスムーズに進みそうな場合
適していないケース ・共有者全員の意思が分かれており、誰も不動産を買い取りたくない場合
・資金不足で買い取りを希望しても実行できない場合
・価格の折り合いがつかず交渉が長引いている場合
・不動産の利用予定がなく、将来的な維持費や固定資産税が負担になりそうな場合

共有者間で持分を売買して単独名義にするメリット

自分の持分を共有者に売却するメリットは以下のとおりです。

  • 持分を手放す共有者は、持分割合に応じた現金を得られる
  • 持分を買い取る共有者は、不動産を単独で所有できるため自由に活用できる

自分の持分を手放す共有者は、持分割合に応じた現金を手に入れられます。利用予定がない不動産である場合は、現金化できるのは大きなメリットといえるでしょう。

一方で、買い取る共有者にとっては、単独名義にできることがメリットです。共有名義のままでは売却や賃貸、リフォームなどに他の共有者の同意が必要ですが、単独名義になれば自分の判断だけで自由に活用できます。

共有者間で持分を売買して単独名義にするデメリット

共有者間で持分を売買して単独名義にする場合には、次のようなデメリットがあります。

  • 買い取る共有者にまとまった資金が必要
  • 他の共有者に売却する気がなければ実行できない
  • 価格のことでトラブルになる可能性がある

まず、買い取る側には多額の資金が必要です。住宅ローンを利用できる場合もありますが、融資を断られた場合は、手持ちの資金と金利の高いフリーローンなどを組み合わせて資金調達する必要があります。

また、売却する側に「持分を手放したい」という意思がなければ成立しません。共有者の中に不動産を残したい人がいると、交渉自体が進まないケースもあります。

さらに、売買価格の決定をめぐってトラブルになる可能性があります。一般的には「不動産全体の市場価格 × 持分割合」で目安を算出しますが、共有者同士の認識が異なると話がまとまらないことがあります。このような場合には、不動産会社の査定を活用し、その金額を基準に協議することで、公平な落としどころを見つけやすくなります。

共有者間で持分を売買して単独名義にするのが適している・適していないケース例

共有者同士で持分を売買し、最終的に1人に所有権を集約する方法は、不動産を残したい人と現金化したい人の双方にメリットがある解決策です。ただし、資金力や共有者同士の関係性によっては成立が難しいケースもあります。そこで、この方法が向いているケースと向いていないケースを整理しました。

適しているケース 適していないケース
・共有者の中に不動産を引き続き利用したい人がいる場合(居住や事業用など)
・不動産を売却せずに残したいという共有者がいる場合
・買い取る共有者に十分な資金がある場合
・共有者同士の関係が良好で、価格交渉がスムーズに進みそうな場合
・共有者全員の意思が分かれており、誰も不動産を買い取りたくない場合
・資金不足で買い取りを希望しても実行できない場合
・価格の折り合いがつかず交渉が長引いている場合
・不動産の利用予定がなく、将来的な維持費や固定資産税が負担になりそうな場合

不動産を使い続けたい共有者がいる場合、その人が他の持分を買い取ることで、共有状態を解消しながら不動産を残せます。特に、実家を相続した兄弟のうち誰かが住み続けたい場合などに有効です。また、資金力があり交渉がスムーズに進む関係性であれば、公平な形で解決しやすい方法といえるでしょう。

一方で、共有者の意思がそろわない場合や資金不足がある場合には、この方法は現実的ではありません。さらに、不動産を誰も利用する予定がなく将来的に空き家リスクが高い場合には、単独名義にしても維持費や税負担だけが残るおそれがあります。

4.共有名義の土地を分筆した後に所有権移転登記を行い単独名義にする

土地の分筆

共有不動産が土地であれば、「分筆」という手続きで1つの土地を物理的に区切り、所有権移転登記を行って単独名義にする方法があります。このように現物を分けて共有を解消する方法を「現物分割」といいます。

分筆後に所有権移転登記を行えば、共有関係を完全に解消でき、それぞれが自分の土地を自由に活用できるようになります。売却や建築、賃貸などを他人の同意なしに行えるため、共有特有の不便さから解放される点が大きな特徴です。

具体例は以下のとおりです。

 
・兄弟3人で300㎡の土地を1/3ずつ共有している
・それぞれの持分は100㎡に相当する

この場合、土地を100㎡ずつに分筆し、切り分けた土地をそれぞれの共有者が単独所有するための「所有権移転登記」を行い、それぞれの単独名義にします。結果として、全員が自分の土地を自由に使えるようになり、共有状態は解消されます。

ただし、分筆はすべての土地で可能とは限りません。土地の形状や面積によっては分けられない場合があり、測量や登記の費用も必要になります。さらに、分筆後に一方の土地が道路に接していないと「再建築不可」となる恐れがあるため注意が必要です。

また、「分筆」は2023年4月1日の民法改正により、持分の過半数を持つ共有者の同意があれば可能になりましたが、「所有権移転登記」については共有者全員の同意が必要です。つまり、分筆だけを先に進めても共有状態が解消されるわけではありません。

分筆を過半数の同意で強行した場合、後から所有権移転登記の段階で他の共有者とトラブルになるリスクがあります。したがって、この方法で円滑に共有状態を解消するには、分筆の段階から共有者全員で十分に話し合い、合意形成を図りながら進めることが重要です。

メリット ・共有者それぞれが自分の土地を自由に活用できる
・公平に分けられれば、共有者間のトラブルを避けやすい
デメリット ・建物は対象にならない
・分筆のために測量や登記の費用がかかる
・分け方によっては利用価値に差が出て、不公平感が残ることがある
・道路に接していない土地が生じると「再建築不可」となるリスクがある
適しているケース ・土地に十分な広さがあり、平等に分けられる形状の場合
    ・共有者それぞれが独自に土地を利用したいと考えている場合
・今後も不動産を保有し続けたいが、共有状態だけは解消したい場合
・共有者同士で協力して測量や登記費用を負担できる場合
適していないケース ・土地が狭小で分筆すると利用価値が下がってしまう場合
・分筆後に一方の土地が道路に接しなくなり、再建築不可になる恐れがある場合
・共有者間で分け方について合意できない場合
・分筆や登記の費用負担に合意できない場合

分筆した後に所有権移転登記を行い単独名義にするメリット

分筆した後に所有権移転登記を行い、単独名義にするメリットは、以下のとおりです。

  • 共有者それぞれが自分の土地を自由に活用できる
  • 公平に分けられれば、共有者間のトラブルを避けやすい

最大の利点は、共有者がそれぞれ自分の土地を自由に扱えるようになる点です。共有名義のままでは売却や建築、賃貸借契約を行う際に他の共有者の同意が必要ですが、単独名義にすればそうした制約はなくなります。

例えば、自分の区画に住宅や物置を建てることもできますし、第三者に売却して現金化することも可能です。また、駐車場や貸地として利用すれば安定した収益を見込める場合もあります。

さらに、分筆によって権利関係が明確になるため、「誰がどの土地を使うのか」で揉める心配が少なくなります。特に相続で複数人が土地を持ち合っている場合には、現物で分け合うことで公平性を実感しやすく、トラブル防止につながります。

分筆した後に所有権移転登記を行い単独名義にするデメリット

土地を分筆した後に所有権移転登記を行い、単独名義にするデメリットは以下のとおりです。

  • 建物は対象にならない
  • 分筆のために測量や登記の費用がかかる
  • 分け方によっては利用価値に差が出て、不公平感が残ることがある
  • 道路に接していない土地が生じると「再建築不可」となるリスクがある

まず注意すべき点は、分筆できるのはあくまで土地だけであり、建物は対象外であるということです。建物が建っている場合には、分筆しても建物の権利関係はそのまま残るため、共有関係の解消にはつながらないケースもあります。

さらに、分筆した土地は元の土地より小さくなるため、一般的に資産価値が下がりやすい傾向にあります。公平に分けたつもりでも、立地条件や形状によって利用価値に差が出ることがあります。

例えば、分筆後の一方は南向きで日当たりが良いのに対し、もう一方は北側で日当たりが悪く住宅用地として不利になるケースがあります。

また、分筆には「土地家屋調査士」への依頼が必要です。現地調査や測量、隣地所有者との境界確認、境界標の設置、分筆登記の申請など専門的な作業が伴い、費用は土地の状況にもよりますが一般的に50万円から100万円程度かかります。費用の内訳については、「土地の分筆にかかる費用
で詳しく解説します。

加えて、分筆後の土地の一部が道路に接していない場合には「再建築不可」となり、建物の建て替えや新築ができなくなるリスクもあります。将来の活用を考えるうえで、分筆によって土地の利用価値が下がらないかを慎重に確認する必要があります。

共有名義の解消で土地を分筆するのが適している・適していないケース例

土地を分筆して単独名義にする方法は、共有関係をすっきり整理できる一方で、すべてのケースに向いているわけではありません。土地の広さや形状、共有者同士の合意状況によっては、現実的に分筆が難しい場合もあります。そこで、分筆が適しているケースと適していないケースを整理しました。

適しているケース 適していないケース
・土地に十分な広さがあり、平等に分けられる形状の場合
・共有者それぞれが独自に土地を利用したいと考えている場合
・今後も不動産を保有し続けたいが、共有状態だけは解消したい場合
・共有者同士で協力して測量や登記費用を負担できる場合
・土地が狭小で分筆すると利用価値が下がってしまう場合
・分筆後に一方の土地が道路に接しなくなり、再建築不可になる恐れがある場合
・共有者間で分け方について合意できない場合
・分筆や登記の費用負担に合意できない場合

十分な広さや形状がある土地であれば、分筆後も住宅や駐車場などとして活用しやすくなります。また、共有者それぞれが「自分の土地」として管理できるため、将来的な売却や活用も自由に行えます。相続で受け継いだ土地を公平に分けたい場合にも有効です。

一方で、狭小地を分筆すると、建築に適さない土地や日当たりの悪い土地が生じてしまう可能性があります。特に、道路に接していない区画ができると再建築不可となり、資産価値が大幅に下がります。さらに、測量や登記には50~100万円の費用がかかるため、その負担について共有者同士で合意できない場合には現実的に実行が難しくなります。

5.共有物分割請求訴訟を起こす

「共有物分割請求訴訟」とは、裁判所に申し立てを行い、共有状態を強制的に解消する方法です。共有者同士の話し合いがまとまらない場合でも、裁判所が判断して分割方法を決定するため、共有関係を放置せずに解消できます。

裁判所は不動産の状況や共有者の事情を踏まえて、次のいずれかの方法を選択します。

  • 現物分割:土地を実際に分け、それぞれの共有者が単独で所有する方法
  • 代償分割:一部の共有者が土地や建物を取得し、取得しなかった共有者には代償として金銭を支払う方法
  • 換価分割(競売分割):不動産を競売にかけ、その売却代金を共有者の持分割合に応じて分配する方法

たとえば、兄弟3人で相続した土地を分割する場合、土地の形状が整っていれば現物分割が選ばれる可能性があります。不動産を1人が利用し続けたい場合には代償分割が適用されることもあり、どうしても分けられない場合は換価分割(競売)が選択されるケースもあります。

ただし、競売では市場売却よりも安い価格になることが多いため、結果的に不利になる可能性がある点には注意が必要です。

訴訟には時間と費用がかかり、解決までに1年以上かかることも珍しくありません。そのため、自分の希望通りの結果にならないリスクも含め、他の方法で解決できない場合の最終手段として考えるのが現実的です。

ただし、訴訟には時間や費用がかかり、最終的な判断は裁判所に委ねられるため、自分の希望通りの結果にならないことも多くあります。そのため、他の方法で解決できない場合の最終手段として位置付けるのが現実的です。

なお、費用については「共有物分割請求訴訟にかかる費用」で詳しく説明します。

メリット ・共有者間の話し合いがまとまらなくても、裁判所の判断で強制的に共有関係を解消できる
              ・専門家による鑑定を踏まえて判断が下されるため、公平性を保ちやすい
デメリット ・弁護士費用や訴訟費用、不動産鑑定費用などの費用がかかる
・裁判所の判断に従わなければならず、自分の希望通りの結果にならない場合がある
・手続きが長期化し、解決までに時間がかかることが多い
・共有者同士の関係が悪化するリスクが高い
適しているケース ・共有者との関係が悪化し協議が難しい場合
・どうしても共有名義を解消したいが他に方法がない場合
・裁判所に判断を任せたい場合
適していないケース ・共有者同士で協議できる余地がある場合
・不動産の規模が小さく、訴訟にかける費用や時間が割に合わない場合
・共有者同士の人間関係をできるだけ悪化させたくない場合

共有物分割請求訴訟のメリット

共有物分割請求訴訟を起こすメリットは、次のとおりです。

  • 共有者間の話し合いがまとまらなくても、裁判所の判断で強制的に共有関係を解消できる
  • 専門家による鑑定を踏まえて判断が下されるため、公平性を保ちやすい

この手続きでは、裁判所が最終的な解決方法を決めてくれるため、共有者の一部が強く反対していたり、人間関係が悪化して協議が進まない場合でも、共有状態を解消できます。

さらに、裁判所は必要に応じて「不動産鑑定士」を選任し、その鑑定額を基準に判断を下します。

例えば、共有状態にある不動産の所有者を1人にまとめる場合、共有持分の査定額が適切かどうかを判断するのは難しいでしょう。共有物分割請求訴訟では、裁判所が選任した国家資格者「不動産鑑定士」が鑑定を行うため、共有者間での公平さが保たれやすくなります。

共有物分割請求訴訟のデメリット

共有物分割請求訴訟を起こすデメリットは以下のとおりです。

  • 弁護士費用や訴訟費用、不動産鑑定費用などの費用がかかる
  • 裁判所の判断に従わなければならず、自分の希望通りの結果にならない場合がある
  • 手続きが長期化し、解決までに時間がかかることが多い
  • 共有者同士の関係が悪化するリスクが高い

共有物分割請求訴訟を起こしても、自分の思い通りの結果になるとは限りません。

裁判所は中立の立場から、「共有名義の最適な解消方法」を決定するためです。裁判所の判断次第では、不動産が競売に出され安値で売却されてしまうケースも少なくありません。

また、弁護士費用や訴訟費用、不動産鑑定費用などの費用が発生するのもデメリットです。

共有物分割請求訴訟を個人で進めることは難しいため、弁護士に依頼するのが一般的です。この場合、弁護士費用だけでも30万円〜100万円程度の費用がかかります。

そのほか、不動産鑑定士への鑑定料が必要です。不動産の性質によって金額は変動するものの、20万円〜30万円程度になるケースが多いです。

さらに、裁判所の判決が出るまでに時間がかかる点も、共有物分割請求訴訟を起こすデメリットといえます。訴訟を提起してから判決が出るまでは短くても半年程度、場合によっては数年かかります。

時間がかかればかかるほど精神的な負担が増すことを理解したうえで、訴訟を起こすかどうかを検討してみてください。

共有物分割請求訴訟を起こすのが適している・適していないケース例

共有物分割請求訴訟は、共有名義をどうしても解消したいときの「最後の手段」といえる方法です。裁判所が強制的に判断を下してくれる一方で、費用や時間がかかり、人間関係の悪化リスクも伴います。そのため、向いているケースとそうでないケースを理解しておくことが重要です。

適しているケース 適していないケース
・共有者との関係が悪化し協議が難しい場合
・どうしても共有名義を解消したいが他に方法がない場合
・裁判所に判断を任せたい場合
・共有者同士で協議できる余地がある場合
・不動産の規模が小さく、訴訟にかける費用や時間が割に合わない場合
・共有者同士の人間関係をできるだけ悪化させたくない場合

共有者間の対立が激しく、話し合いでは解決の糸口が見えない場合には、訴訟によって裁判所に判断を委ねるのも1つの方法です。例えば、長年にわたり共有関係を解消できず、固定資産税や維持費の負担だけが重なっているような場合は、強制的に解消できる点は大きなメリットといえます。

一方で、共有者間の関係が良く、話し合いができる余地があるのなら、まずは協議による解決を優先した方が良いでしょう。訴訟は時間や費用がかかるだけでなく、競売となった場合には市場より安値での売却になる可能性も高いためです。

さらに、親族間の相続不動産などの場合、裁判に持ち込むことで関係が決定的に悪化するリスクもあります。

特殊な事情がある場合に共有名義を解消する方法

離婚、共有者の認知症や行方不明、未成年者の存在、相続などの特殊な事情がある場合、これまでに紹介した解消方法を活用できない可能性があります。そのような場合には、状況に応じて法律で定められた特別な制度や手続きを活用することが必要です。

具体的には、次のように整理できます。

特殊な事情 活用できる方法・手続き
共有者同士で離婚した場合 「財産分与」で共有不動産を分割する。分割方法は主に以下の3つ。
現物分割:共有財産の価値を1/2に折半する
代償分割:代償金で均等に分割できない分を清算する
換価分割:不動産全体の売却金額を均等に折半する
他の共有者が認知症になった場合 「成年後見制度」を活用する。共有者の判断能力によって、以下の2つから選択する。
本人に判断能力がある場合:任意後見制度
本人の判断能力が低下してる場合:法定後見制度
他の共有者が行方不明の場合 以下のいずれかの制度を利用する。
所在等不明共有者の持分取得制度:所在等不明共有者の持分をそれ以外の共有者が相応の金銭を供託する代わりに取得する
所有等不明共有者の持分譲渡制度:行方不明者以外の共有者が自分の持分を第三者に譲渡することを条件に、不明共有者の持分を譲渡する権限を取得する
共有者に未成年者がいる場合 以下のいずれかの方法で共有状態を解消する
・法定代理人が同意した上で未成年者本人が売却する
・法定代理人が未成年者の代理人として売却する
・未成年者の共有持分を購入する
複数人で1つの不動産を相続する場合 「遺産分割協議」で共有になるのを防ぐ

共有者同士で離婚した場合は「財産分与」で共有不動産を分割する

不動産の共有者同士が離婚した場合、「財産分与」を行い夫婦間で共有不動産を分割します。

【財産分与とは】
婚姻中に夫婦が協力して築いた共有財産を、離婚時に分配すること。民法第768条で定められているとおり、離婚の当事者は相手に対して財産分与を請求する権利が認められている。

(財産分与)
第七百六十八条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
引用元:民法第七百六十八条|e-Gov法令検索

婚姻中に築いた財産はすべて財産分与の対象です。たとえば、夫婦が資金を出し合って購入したマイホームも該当します。

財産分与では「ほぼ1:1になるように分配する」のが一般的です。そのため、配偶者の片方が専業主婦(主夫)でも共働きでも、基本的には1/2ずつ分け合います。

とはいえ、あくまで一般的な考え方であり、どのように分けるかは夫婦間で自由に決められます。「離婚後は自分が共有不動産に住みたい」「慰謝料や養育費などの支払いも必要」といった事情があるときのように、1:1で分配するのが難しいケースもあるでしょう。

なお、財産分与の方法には以下の3種類があります。このうち、もっとも夫婦で公平に分配できる方法を選択するのが得策です。

現物分割 共有財産の価値を1/2で折半する
代償分割 均等に分割できない場合に「代償金」を支払う
換価分割 不動産全体を売却して得たお金を均等に折半する

ここからは、財産分与の方法別にそれぞれ詳しく解説します。

「現物分割」で共有財産の価値を2分の1に折半する

前述したように、財産分与では「ほぼ1:1になるように分配する」のが一般的です。この考え方どおりに財産分与を行う場合、共有財産の価値を1/2に折半する「現物分割」の方法をとります。

現物分割では、共有不動産を含めたすべての共有財産を均等に分けます。たとえば以下のケースを例に考えてみましょう。

【離婚した夫婦の共有財産】
・資産価値2,000万円の共有不動産
・1,500万円の預貯金
・500万円の自動車

上記のケースで現物分割をするには、夫妻それぞれの取り分が2,000万円ずつになるよう分配しなければなりません。具体的には、以下のパターンが考えられます。

  • 片方が2,000万円の共有不動産を取得する
  • もう片方が1,500万円の預貯金と500万円の自動車を取得する

「代償分割」で代償金で均等に分割できない分を清算する

財産分与では、共有財産を均等に分けられないケースも少なくありません。その場合は不足分を「代償金」として相手に支払い、均等に分割できない分を清算する「代償分割」の方法をとります。

たとえば、以下のケースを例に考えてみましょう。

【離婚した夫婦の共有財産】
・資産価値2,000万円の共有不動産
・1,500万円の預貯金

【共有財産の分配方法】
・離婚後は妻が単独で共有不動産を所有する
・預貯金はすべて夫が取得する

妻が単独で共有不動産を所有する場合、それぞれの取り分に500万円の差額が生じます。このままでは不公平が生じるため、妻が夫に代償金として250万円を支払います。

妻:2,000万円ー250万円=1,750万円
夫:1,500万円+250万円=1,750万円

代償金を支払うことで、それぞれの取り分が均等になります。

「換価分割」で不動産全体の売却金額を均等に折半する

財産分与には、共有不動産全体を売却し、その売却金を均等に折半する「換価分割」という方法もあります。不動産のように物理的に分配するのが難しい共有財産でも、換価分割であれば均等に分配できます。

たとえば、市場価格2,000万円の共有不動産全体を換価分割するケースを例に考えてみましょう。

・売却金:2,000万円
・夫の取り分:1,000万円
・妻の取り分:1,000万円

このように、そのままでは分配できないものでも、換価分割を行うことで公平な財産分与が可能です。

なお、以下の記事では、離婚時に共有不動産の住宅ローンが残っている場合の対処法について解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

他の共有者が認知症になった場合は「成年後見制度」を活用する

共有名義の不動産を所有している場合、他の共有者が認知症を患うケースもあるでしょう。

認知症を患っている人は、不動産の売買契約や賃貸契約などの法律行為が行えません。共有不動産全体を売却するための同意を得るのも難しくなるため、共有状態が解消できなくなる可能性もあります。

そのようなときは、「成年後見制度」を活用することで共有状態を解消できます。なお、共有者が障がい者の場合も、成年後見制度を利用することで共有状態の解消が可能です。

【成年後見制度とは】
認知症や精神疾患などのさまざまな理由から判断能力が低下した人を、支援したり保護したりするための制度。

成年後見制度で選任された成年後見人は、認知症を患っている人の代わりに法律行為を行えるため、共有者は成年後見人から同意を得れば共有関係を解消できる。

成年後見制度には以下の2種類があり、認知症を患っている人に「判断能力があるかどうか」によって利用できる制度が変わります。

本人に判断能力がある 任意後見制度
本人に判断能力の低下が見られる 法定後見制度

それぞれ解説します。

本人に判断能力がある場合は「任意後見制度」

本人に判断能力があるなら「任意後見制度」が利用できます。

【任意後見制度とは】
判断能力があるうちに、本人自ら財産の保護・管理をしてくれる「任意後見人」を決めておく制度のこと。「将来認知症になるおそれがある」「認知症を患っているが、現段階では本人に判断能力がある」という場合に利用できる。

任意後見制度を利用する場合は、以下の手順で手続きします。

  1. 「本人」と「任意後見人を引き受けた人」が成年後見制度の利用に同意する
  2. 任意後見契約書の内容を確認し、公証役場で「任意後見契約公正証書」を作成する
  3. 作成された公正証書に署名して任意後見契約を成立させる
  4. 公証人が任意後見登記を法務局に申請し「任意後見受任者」が登記される
  5. 本人の判断能力が低下したら「任意後見監督人選任の申立て」を行う
  6. 家庭裁判所から適性と判断されれば「任意後見監督人」が選任され決定通知が行われる
  7. 任意後見人が正式に選任され、契約書の内容に従って後見人が仕事を始める

簡単にまとめれば、まずは認知症を患った人と任意後見人を引き受けた人で公正証書を作成し、「任意後見契約」という契約を結びます。

そして、実際に本人の判断能力が低下し後見人が必要になったら、家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任を申し立て、任意後見人に選ばれた人が法律行為の代行を行う流れです。

なお、「任意後見契約公正証書の作成」や「任意後見監督人選任の申立て」など、任意後見制度の申請における手続きには、専門的な知識が必要です。すべて個人で行うのは困難なケースが多いため、弁護士や司法書士といった法律の専門家に依頼するのがおすすめです。

多くの事務所では無料相談に対応しています。任意後見制度を利用したい場合、まずは無料相談を活用して弁護士や司法書士に相談してみましょう。

本人の判断能力が低下しているなら「法定後見制度」

すでに本人の判断能力が低下しているなら、「法定後見制度」を検討しましょう。

【法定後見制度とは】
本人の判断能力が低下している場合に、本人の財産を保護・管理してくれる「法定後見人」を家庭裁判所が選定する制度のこと。認知症や精神疾患の進行によって本人の判断能力が低下している場合に利用できる。

法定後見制度を利用する際は、以下の手順で手続きします。

  1. 家族・四親等内の親族の誰かが申立人として、家庭裁判所に「後見開始の申立て」を行う
  2. 家庭裁判所の調査官によって申立人・法定後見人の候補者への面談調査が行われる
  3. 家庭裁判所の裁判官が申立てについての審判を行い、申立人と法定後後見人に決定内容が通知される
  4. 選任された法定後見人が仕事を始める

前述した「任意後見制度」とは異なり、認知症を患った本人には後見人を選べません。多くの場合、家庭裁判所の裁判官によって弁護士や司法書士といった法律の専門家が選任されます。

後見開始の申し立ては、本人の親族が家庭裁判所に対して行います。手続きに関する不明点は最寄りの公証役場で相談できるため、日本公証人連合会の公式サイトを参考に公証役場を探してみるとよいでしょう。

他の共有者が行方不明の場合は複数の対処法がある

他の共有者が行方不明になると、その人から同意を得られないため管理や処分が難しくなります。このような場合、以前は「不在者財産管理制度」「失踪宣言」を利用する必要がありましたが、2023年の民法改正によって以下のことが認められるようになりました。

  • 行方不明者以外の共有者全員の同意があれば、共有不動産を売却できる
  • 行方不明者以外の共有者が所有する持分の過半数の同意があれば、賃貸などの管理行為も決定できる

(共有物の管理者)
第二百五十二条の二 共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
参照元:民法第二百五十二条の二|e-Gov法令検索

また、2023年の民法改正では、所在のわからない共有者がいる場合の対処として、以下の制度が導入されています。

所在等不明共有者の持分取得制度 所在等不明共有者の持分をそれ以外の共有者が相応の金銭を供託する代わりに取得する
所有等不明共有者の持分譲渡制度 行方不明者以外の共有者が自分の持分を第三者に譲渡することを条件に、不明共有者の持分を譲渡する権限を取得する

従来は「不在者財産管理人の選任」「失踪宣告」といった煩雑な手続きしか選択肢がありませんでしたが、現在はこれらの制度により、比較的スムーズに共有状態を整理できる可能性が生まれています。

「所在等不明共有者の持分取得制度」を使う

「他の共有者がわからない」または「その所在がわからない」ときに、所在等不明共有者の持分を共有者が取得できる「所有等不明共有者の持分取得制度」が民法改正によって導入されました。

(所在等不明共有者の持分の取得)
第二百六十二条の二 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。
引用:民法第二百六十二条の二|e-Gov法令検索

たとえば、「他の共有者の持分を取得して不動産を単独で所有したいが、共有者の中に所在がわからない人がいる」というケースに有効です。

制度を利用するには、地方裁判所に対して「所在等不明共有者持分取得申立て」を行う必要があります。公告や所在等不明共有者以外の共有者への通知、供託金の支払いをし、持分取得の裁判にて取得が認められれば所在等不明共有者の持分を取得できます。

ただし、共有不動産が相続財産でまだ遺産分割協議が完了していない場合、相続開始から10年経過しなければ制度を利用できない点に注意が必要です。

参照:所在等不明共有者持分取得申立てについて|裁判所

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「所有等不明共有者の持分譲渡制度」を使う

「他の共有者がわからない」または「その所在がわからない」とき、所在等不明共有者の持分すべてを特定の第三者に譲渡することを条件に、他の共有者が不明共有者の持分を譲渡する権限を取得する「所在等不明共有者の持分譲渡権限付与制度」も、民法改正によって導入された制度の1つです。

(所在等不明共有者の持分の譲渡)
第二百六十二条の三 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。
引用:民法第二百六十二条の三|e-Gov法令検索

たとえばA・B・Cが共有する不動産全体の売却を検討しているものの、Aの所在がわからず連絡が取れない場合、通常であればAの同意が得られないため売却ができません。

しかし制度を利用することで、B・Cのみの同意だけで売却できるようになります。

制度を利用するには、地方裁判所に対し「所在等不明共有者持分譲渡の権限付与の申立て」が必要です。公告や供託金の支払いを行い、持分譲渡権限付与の裁判にて権限が認められれば、不明共有者の持分を譲渡する権限を得られます。

なお、裁判確定後は2カ月以内に共有不動産全体を第三者に譲渡しなければなりません。期限を過ぎてしまうと、決定が無効になるため注意しましょう。

参照:所在等不明共有者持分譲渡の権限付与の申立てについて|裁判所

共有者に未成年者がいる場合は法定代理人の同意・代理を得る

不動産の共有名義人の中に未成年者がいる場合、通常の共有名義とは異なり、特別な手続きが必要になります。未成年者は単独で法律行為を行えないため、売却や持分の処分については、親権者や未成年後見人といった法定代理人が関与しなければなりません。

共有名義を解消する方法としては、主に次の3つが考えられます。

法定代理人が同意した上で未成年者本人が売却する

未成年者は単独で契約できませんが、親権者や未成年後見人の同意があれば売却に参加できます。この場合は、法定代理人の署名押印がある「同意書」を用意する必要があります。ただし、未成年者が14歳以下で印鑑登録ができない場合には、この方法は利用できません。
法定代理人が未成年者の代理人として売却する 未成年者に代わって、親権者や未成年後見人が契約を進める方法です。この場合、未成年者本人の同意は不要ですが、代理人の本人確認書類や戸籍謄本など、複数の書類を揃える必要があります。
未成年者の共有持分を購入する 他の共有者が未成年者の持分を買い取り、単独名義にする方法です。ただし、法定代理人である親が子どもの持分を買い取ろうとする場合は、「親が売主・買主双方になる」という利益相反が生じるため、家庭裁判所で「特別代理人」の選任が必要です。

このように、未成年者が共有名義人の場合は、通常より手続きが煩雑になりやすいのが特徴です。法定代理人や特別代理人の同意・代理が不可欠であり、必要な書類も多くなるため、専門家に相談しながら進めるのが安心です。

複数人で1つの不動産を相続する場合は「遺産分割協議」で共有になるのを防ぐ

複数人で1つの不動産を相続すると、そのままでは共有名義になり、売却や管理のたびに相続人全員の同意が必要となります。この状態はトラブルや手続きの遅れにつながりやすいため、相続人全員で遺産分割協議を行い、共有を回避することが重要です。

遺産分割協議とは、相続人全員で話し合い、遺産を誰がどのように取得するかを決める手続きです。不動産が含まれている場合、以下のような方法を選べば共有状態を防ぐことができます。

  • 相続人のうちの誰か1人が不動産を取得して単独名義にする
  • 不動産を売却して、相続人全員で売却益を分け合う

相続人が複数人いる場合でも、協議で「誰か1人が不動産を取得する」と決めておけば、共有名義を避けられます。その際、他の相続人には不動産以外の資産(預貯金や株式など)を分けて公平に調整することが一般的です。

もし他に分けられる資産が少ない場合は、不動産を取得した相続人が他の相続人に現金を支払う形(代償分割)でバランスを取ることもあります。こうした調整をすることで、不動産を共有せずに済み、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。

また、特に不動産を残したいという想い入れがない場合には、不動産を売却して現金化し、その売却益を相続人全員で分け合う方法もあります。この場合は資産をすぐに平等に分配できるため、将来的な維持管理や固定資産税の負担も避けられます。

協議の結果は「遺産分割協議書」として文書にまとめ、相続人全員が署名・押印します。その協議書をもとに相続登記を行えば、不動産を正式に単独名義にできます。なお、2024年4月から相続登記の申請は義務化されているため、協議がまとまったら速やかに登記を行うことが求められています。

なお、遺産分割協議は必ず相続人全員で行わなければなりません。 誰か1人でも参加していない場合、その協議は無効となり、やり直しが必要です。相続人の中に未成年者や認知症の方がいる場合は、家庭裁判所で特別代理人や成年後見人を選任する必要もあります。

共有名義は解消せずに共有状態から抜け出す方法

不動産の共有名義を解消する代表的な方法には、共有不動産全体の売却や、共有者間での持分売買、土地を分筆する方法などがあります。

しかし、これらは共有者の同意が必要であったり、建物がある土地では分筆ができなかったりと、実行が難しいケースも少なくありません。共有物分割請求訴訟もありますが、裁判という最終手段になるため、できれば避けたいと考える人もいるでしょう。

こうした方法がうまく進められない場合でも、自分の持分を手放すことで「共有状態から抜け出す」ことは可能です。具体的には、次のような方法があります。

制度 概要 適しているケース
1. 自分の共有持分だけを第三者に売却する 自分の共有持分のみを、第三者に売却する方法。持分売却に関しては、他の共有者の同意は必要ないため、自分の意思だけで進められ、持分を現金化できる。 ・共有者との合意形成が難しく、他の方法で解消できない場合
・現金化を優先し、多少価格が下がっても構わない場合
・共有状態を早く解消したい場合
2. 自分の共有持分を譲渡する 自分の共有持分を他の共有者に無償で譲渡する方法。他の共有者に持分を受け取る意思があるのなら可能。 ・共有状態からすぐに抜けたいが、現金化にこだわらない場合
・他の共有者が不動産を引き続き利用したいと考えている場合
・共有者同士の関係が良好で、贈与税の負担についても理解がある場合
3. 自分の共有持分を放棄する 自分の共有持分を放棄し、他の共有者に持分を渡す方法。放棄であるため、現金化はできない。 ・他の共有者と協議はできるものの処分方法で意見が割れる場合
・金銭的な余裕がある場合

※各方法をタップ・クリックすることで詳しい解説を確認できます。

これらはいずれも「共有名義そのものを完全に解消する方法」ではありませんが、自分自身は不動産の共有から離れられます。その結果、固定資産税や管理維持費といった負担から解放されます。また、第三者への売却に関しては、共有持分を現金化できる点もメリットといえます。

1.自分の共有持分だけを第三者に売却する

共有名義不動産の中で「自分の持分」だけを第三者に売却すれば、不動産自体は共有名義のまま残りますが、自分は共有関係から抜け出せます。

不動産全体を売却する場合には共有者全員の同意が必要ですが、持分のみであれば他の共有者の同意は不要です。

例えば、夫婦で1/2ずつ所有している不動産でも、自分の持分だけなら配偶者に相談せず売却できます。相続で兄弟姉妹と共有になった場合でも同様で、他の共有者が反対していても、自分の持分に限って売却することは法律上認められています。

ただし、仲介業者を通じて一般の買主を探すのはほとんど不可能で、多くの場合は共有持分を専門に扱う不動産買取業者への売却となります。実際、弊社への相談でも「仲介で買主が見つからなかったので、買取業者に相談した」という声は多いです。

なお、買取業者への売却相場は「不動産全体の市場価格 × 自分の持分割合 × 1/3~1/2程度」が目安です。

メリット ・共有者の同意が必要なく、自分の意思だけで売却できる
・専門の買取業者であれば数日〜1週間程度で売却できる
デメリット ・仲介業者で買主を探すのは難しい
・「不動産全体の価格×持分割合×1/2~1/3」と売却価格が安い傾向にある
適しているケース ・共有者との合意形成が難しく、他の方法で解消できない場合
・現金化を優先し、多少価格が下がっても構わない場合
・共有状態を早く解消したい場合
適していないケース ・相場に近い価格で売却したい場合
・共有者同士の関係を悪化させたくない場合

自分の持分だけを売却するメリット

自分の持分だけを第三者に売却するメリットは以下のとおりです。

  • 共有者の同意が必要なく、自分の意思だけで売却できる
  • 専門の買取業者であれば数日〜1週間程度で売却できる

自分の持分であれば、他の共有者と話し合ったり同意を得たりする必要がなく、単独で売却を進められます。

また、共有持分を専門とする買取業者であれば、スピーディに手続きを進めてくれます。業者によって差はありますが、早ければ数日~1週間程度で現金化できます。また、売却後は、その持分を購入した業者が他の共有者と交渉を行うため、自分は共有関係から抜け出し、今後のやりとりを避けられます。

共有持分の売却を検討している方は、「株式会社クランピーリアルエステート」にご相談ください。弊社は共有持分や訳あり不動産の買取を専門に行っており、年間3,000件以上のご相談実績があります。また、全国の弁護士や税理士と連携しているため、共有不動産にありがちな法律や税務の問題にも柔軟に対応可能です。

売却後のトラブルはすべて弊社が対応するため、「共有者とトラブルになっているため売却できるか不安」「契約解除や損害賠償の心配をせず、安心して手放したい」とお考えの方にも、安心してご利用いただけます。ぜひ無料相談をご活用ください。

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自分の持分だけを売却するデメリット

自分の持分を第三者に売却するデメリットは以下のとおりです。

  • 仲介業者で買主を探すのは難しい
  • 「不動産全体の価格×持分割合×1/2~1/3」と売却価格が安い傾向にある

共有持分は、他の共有者の同意がなければ不動産を自由に活用できないため、一般の買主にとって魅力が乏しく、仲介業者での売却はほとんど成立しません。現実的な売却先は「共有持分を専門に扱う買取業者」となります。

買取業者に売却する場合の相場は、「不動産全体の市場価格 × 自分の持分割合 × 1/3~1/2程度」が目安です。

例えば、市場価格3,000万円の不動産を兄弟2人で1/2ずつ所有しているとします。この場合、自分の持分の評価額は1,500万円ですが、実際に買取業者へ売却するとおおよそ500万〜750万円程度にとどまる可能性があります。

このように価格が下がるのは、買取業者が買い取った後に他の共有者との交渉や、物件全体の取得・リフォームなど追加のコストを負担することを前提に査定するためです。そのため、共有者同士で売買するよりも安くなりやすいのです。

それでも、共有状態から早く抜け出したい人にとっては有効な選択肢といえます。専門業者に依頼すれば数日〜1週間程度で現金化でき、固定資産税や管理維持費の負担から解放されるメリットがあります。

共有持分を売却するのが適している・適していないケース例

共有者全員での合意が難しい場合でも、自分の持分だけを第三者に売却すれば共有関係から抜け出せます。ただし、売却価格が相場より低くなる傾向があるため、この方法が本当に向いているかどうかを見極めることが大切です。

以下に、適しているケースと適していないケースを整理しました。

適しているケース 適していないケース
・共有者との合意形成が難しく、他の方法で解消できない場合
・現金化を優先し、多少価格が下がっても構わない場合
・共有状態を早く解消したい場合
・相場に近い価格で売却したい場合
・共有者同士の関係を悪化させたくない場合

第三者への売却が適しているのは「早く共有関係から抜けたい」「現金化を最優先したい」といったケースです。特に、相続で共有になったものの利用予定がなく、維持費や固定資産税の負担から解放されたい人などに向いています。

一方で、「できるだけ高く売却したい」「共有者同士の関係を円満に保ちたい」といった場合には不向きです。そのような場合は、まず共有者同士での売却や分割の可能性を検討し、それが難しいときに持分売却を選ぶのが現実的です。

2.自分の共有持分を譲渡する

自分の共有持分を他の共有者に無償で譲渡する方法もあります。譲渡を受ける共有者にとっては追加の持分を取得できるメリットがあり、譲渡する側にとっては共有状態から抜け出せる点が特徴です。

例えば、兄弟A・B・Cの3人で1/3ずつ共有持分を所有しており、AがBに持分を譲渡した場合は、最終的にBの持分が2/3、Cの持分が1/3になります。譲渡と放棄の違いは、持分を渡す人を決められる点です。

ただし、この方法には注意点もあります。まず、他の共有者に譲渡を受ける意思がなければ成立しません。また、無償譲渡は「贈与」とみなされるため、譲渡を受けた側に贈与税が課されます。

メリット ・他の共有者にとっては持分が増え、単独名義にできる可能性がある
・譲渡する側はお金のやり取りをせずに共有状態を解消できる
デメリット ・他の共有者に譲渡を受ける意思がなければ成立しない
・譲渡する側は、共有持分という財産を無料で手放すことになる
・無償譲渡は贈与とみなされ、譲渡を受けた側に贈与税がかかる
適しているケース ・共有状態からすぐに抜けたいが、現金化にこだわらない場合
・他の共有者が不動産を引き続き利用したいと考えている場合
・共有者同士の関係が良好で、贈与税の負担についても理解がある場合
適していないケース ・持分を現金化したい場合
・他の共有者が持分を引き取りたがらない場合
・贈与税の負担をめぐって共有者間でトラブルになる可能性がある場合

共有持分を譲渡するメリット

共有持分を譲渡するメリットは以下のとおりです。

  • 他の共有者にとっては持分が増え、単独名義にできる可能性がある
  • 譲渡する側はお金のやり取りをせずに共有状態を解消できる

共有持分を無償で譲渡すれば、譲渡する側は現金を得られない代わりに、共有状態から抜け出せます。管理や固定資産税などの負担から解放されるため、「とにかく共有名義から抜けたい」という人には有効な手段です。

一方で、譲渡を受ける側にとっては持分が増えることで、不動産を自由に使える可能性が広がります。

例えば、共有者が自分を含めて2人しかいない場合は、持分を譲り受けた人が単独所有者となり、不動産を売却したり賃貸に出したりと、通常の所有不動産と同じように活用できます。共有者が3人以上の場合でも、譲渡を受けることで持分割合が増え、過半数を超えればリフォームや短期の賃貸契約など「管理行為」を単独で決定できるようになります。

共有持分を放棄するデメリット

共有持分を譲渡するデメリットは以下のとおりです。

  • 他の共有者に譲渡を受ける意思がなければ成立しない
  • 譲渡する側は、共有持分という財産を無料で手放すことになる
  • 無償譲渡は贈与とみなされ、譲渡を受けた側に贈与税がかかる

まず、共有持分を譲り渡すには、受け取る側の共有者にその意思がなければ成立しません。関係が悪化している場合や相手にメリットがないと判断された場合は、話が進まないこともあります。

また、譲渡する側にとっては現金を一切得られないため、財産的な価値を無償で手放すことになります。そのため「とにかく共有名義から抜けたい」という強い意志がある人向けの方法といえるでしょう。

無償譲渡は「贈与」とみなされるため、受け取る側に贈与税がかかります。贈与税には年間110万円の基礎控除がありますが、それを超える場合は10~55%の税率が課されます。例えば、評価額が500万円なら、110万円を差し引いた390万円が課税対象となり、53万円の贈与税が課されます。

このように、譲渡を受ける側の負担が大きくなるため、事前に税理士へ相談して税額を確認しておくことが重要です。場合によっては、形式上の「贈与」ではなく、実際に売買契約を結んで代金を支払う形にした方が双方にとって安心なケースもあります。

自分の共有持分を譲渡するのが適している・適していないケース例

共有持分を他の共有者に無償で譲渡する方法は、現金化はできないものの、共有状態から早く抜け出せる点で有効です。ただし、譲渡を受けた側には贈与税が発生する可能性があり、その点を理解してもらえるかどうかがポイントとなります。以下に、向いているケースと向いていないケースを整理しました。

適しているケース 適していないケース
・共有状態からすぐに抜けたいが、現金化にこだわらない場合
・他の共有者が不動産を引き続き利用したいと考えている場合
・・共有者同士の関係が良好で、贈与税の負担についても理解がある場合
・持分を現金化したい場合
・他の共有者が持分を引き取りたがらない場合
・贈与税の負担をめぐって共有者間でトラブルになる可能性がある場合

譲渡が適しているのは、「とにかく共有から抜けたい」という場合です。現金を得ることはできませんが、管理負担や固定資産税の支払いから解放されます。

一方で、現金化を希望する場合や、共有者が持分を引き取る意思を示さない場合には不向きです。特に、贈与税の負担を巡って共有者間で意見が食い違うとトラブルに発展しかねません。事前に税額をシミュレーションし、税理士などの専門家に相談しておくと安心です。

3.自分の共有持分を放棄する

共有持分の放棄
共有名義を解消するには、自分の共有持分を放棄する方法もあります。

持分の放棄は民法で認められている行為です。共有者の誰かが持分を放棄した場合、その持分は共有割合に応じて他の共有者に帰属します。

(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
引用元:民法第二百五十五条|e-Gov法令検索

例えば、兄弟3人で1,200万円の土地をそれぞれ1/3ずつ所有している場合、1人が持分を放棄すると、その持分(400万円分)は残りの2人に持分割合に応じて移転します。結果として、2人がそれぞれ600万円分ずつを持つ形になり、共有者の数が減ることで不動産の管理や意思決定がスムーズになります。

持分を放棄する際の注意点は、自分の意思があればできる一方で、登記を行うには他の共有者の協力が必要になる点です。持分を放棄するために行う「共有持分移転登記」は、共有者全員で申請しなければならないためです。また、持分を放棄すると、受け取った共有者には贈与税がかかる場合があります。

他の共有者に登記を拒否された場合は、「登記引取請求訴訟」を検討する必要があるでしょう。登記引取請求訴訟を裁判所に申立て、請求が認められると、持分を放棄したい人が単独で登記を申請できるようになります。

メリット ・共有状態を解消できる
・共有不動産の維持費を負担する必要がなくなる
デメリット ・不動産や持分に応じた金額が手元に残らない
・他の共有者の協力が必要になる
・「みなし贈与」と判断され、共有者に贈与税が課税される
適しているケース ・他の共有者と協議はできるものの処分方法で意見が割れる場合
・金銭的な余裕がある場合
適していないケース ・持分を現金化したい場合
・他の共有者と関係が悪く、登記協力を得られない場合

共有持分を放棄するメリット

共有持分を放棄するメリットは以下のとおりです。

  • 共有状態を解消できる
  • 共有不動産の維持費を負担する必要がなくなる

共有持分を放棄すると、自分はその不動産の所有者ではなくなるため、共有状態から解放されます。これにより、売却や管理の同意を求められることもなくなり、不動産に関わる煩わしさから離れることができます。

さらに、共有不動産を所有している限りは固定資産税や修繕費、火災保険料といった維持管理費を持分割合に応じて負担しなければなりません。持分を放棄すれば、これらの費用からも解放される点は大きなメリットです。

例えば、老朽化した空き家や利用予定のない土地などを共有しているケースでは、放置するほど税金や管理コストが重くのしかかります。このような不動産については、現金化を望まない代わりに負担から完全に解放される手段として、持分放棄が有効に機能します。

共有持分を放棄するデメリット

共有持分を放棄するデメリットは以下のとおりです。

  • 不動産や持分に応じた金額が手元に残らない
  • 他の共有者の協力が必要になる
  • 「みなし贈与」と判断され、持分が帰属される共有者に贈与税が課税される

持分を放棄すると、自分の手元には不動産も金銭も残りません。「共有持分を換金したい」「共有不動産を資産運用に活かしたい」という場合は、他の共有者の持分を買い取る方法や逆に他の共有者に持分を買い取ってもらう方法などを検討したほうがよいでしょう。

また、「持分移転登記」が必要になる点もネックです。他の共有者の協力が必要であるため、共有者同士の関係がよくなければ手続きを行うことすら難しいでしょう。

さらに、共有持分の放棄は「みなし贈与」に該当しうる行為です。持分を取得する共有者に対して贈与税が課税される可能性がある点もデメリットの1つです。

【みなし贈与とは】
当事者の間に贈与の意識がなくても、贈与を行ったのと同じ利益が生じた場合に、贈与を行ったものとみなすこと。「年間110万円」の基礎控除が設けられており、持分の評価額がその金額を超えるときに課税される。

贈与税は、放棄された持分割合に応じて他の共有者に課せられます。たとえば、不動産を3名で33%ずつの持分で共有しており、そのうち1人が共有持分を放棄した場合、共有持分の33%の評価額に対して贈与税がかかります。

自分の共有持分を放棄するのが適している・適していないケース例

共有持分の放棄は、売却のようにお金を得られるわけではありませんが、維持費や管理負担から解放される点で有効な方法です。ただし、他の共有者の協力や贈与税の問題が絡むため、状況によって向き不向きがあります。

以下に適しているケースと適していないケースを整理しました。

適しているケース 適していないケース
・他の共有者と協議はできるものの処分方法で意見が割れる場合
・金銭的な余裕がある場合
・持分を現金化したい場合
・他の共有者と関係が悪く、登記協力を得られない場合

放棄が適しているのは、「とにかく共有名義から抜けたい」「維持費の負担を減らしたい」と考える人です。特に、空き家や利用予定のない土地のように、所有していてもメリットが少なく負担ばかりが重いケースでは有効です。

一方で、持分を売却して現金を得たい場合や、他の共有者と協力関係を築けない場合には不向きです。放棄を登記に反映させるには他の共有者の協力が欠かせないため、関係が悪化していると現実的に進めにくいためです。

共有名義の解消にかかる費用

共有名義を解消するには、以下のような費用がかかります。

不動産の売却 ・印紙税
・譲渡所得税
・登録免許税
・司法書士報酬
・仲介手数料(不動産会社を通して売却する場合)
・土地家屋調査士への報酬
・不動産取得税
土地の分筆 ・登録免許税
・土地家屋調査士への報酬
・司法書士への報酬
共有持分の放棄 ・登録免許税
・司法書士への報酬
共有物分割請求訴訟 ・弁護士費用
・不動産鑑定費用
・裁判費用

それぞれ解説します。

不動産の売却にかかる費用

不動産の売却には以下の費用がかかります。

印紙税 売買契約書に対して課税される。

【課税額】
売却金額に応じて1,000円〜数万円
※売却金額別の税額は下表のとおり
譲渡所得税 不動産の売却で利益が出たときに売主が課税される。

【譲渡所得税の計算方法】
譲渡所得税=課税譲渡所得×税率

【課税譲渡所得の計算方法】
・譲渡所得=売却金額ー取得費(購入費ー減価償却費)ー譲渡費用
・課税譲渡所得=譲渡所得×持分割合ー特別控除

※この時点で0もしくはマイナスになった場合は譲渡所得税は非課税になる

【税率】
・不動産の所有期間が5年超:20.315%
・不動産の所有期間が5年以下:39.63%
登録免許税 登記申請の際に課税される。

【抵当権抹消登記】※売主が支払うのが一般的
不動産1棟・1筆につき1,000円

【持分移転登記】※買主が支払うのが一般的
・土地:固定資産税評価額×1.5%
※令和8年3月31日まで
・建物:固定資産税評価額×0.3%
※令和6年3月31日までの売買
司法書士報酬 登記申請を依頼した場合にかかる。

【抵当権抹消登記】※売主が支払うのが一般的
1件あたり1〜2万円程度

【持分移転登記】※買主が支払うのが一般的
持分1人分につき3〜5万円程度
仲介手数料 不動産会社を通して売却する場合に売主・買主両方に対してかかる。

【手数料額】
売却金額による
※手数料額の上限は下表のとおり
土地家屋調査士への報酬 測量・境界確定を依頼した場合にかかる。

【費用相場】
・現況測量:10〜20万円程度
・境界立会:10〜30万円程度
・境界確定:40〜50万円程度
・分筆登記:5〜10万円程度
※土地・隣地の状況によって異なる
不動産取得税 不動産を購入した際に買主が課税される。

【計算方法】
固定資産税評価額×3%
※土地・家屋の場合

参照:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

印紙税の税額は以下のように定められています。

▼印紙税額

共有不動産(持分)の売却金額 税額
100万円超500万円以下 1,000円
500万円超1,000万円以下 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 1万円
5,000万円超1億円以下 3万円

参照:No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁

仲介手数料には上限があります。売却金額別の上限額は以下のとおりです。

▼仲介手数料

共有不動産(持分)の売却金額 手数料額の上限
200万円以下 売却金額×5%+消費税
200万円超400万円以下 売却金額×4%+2万円+消費税
400万円超 売却金額×3%+6万円+消費税

共有持分を売却した場合の費用例は以下のとおりです。

 
市場価格3,000万円の不動産を兄弟2人で1/2ずつ所有しており、そのうち1人の持分を売却するケースを想定します。

売却金額:持分1,500万円
仲介手数料(上限):1,500万円 × 3% + 6万円 = 51万円 + 消費税 = 約56万円
印紙税:売却金額が1,000万円超~5,000万円以下のため1万円
登録免許税:土地1.5%、建物0.3%(固定資産税評価額により変動、ここでは売主負担なし)
譲渡所得税:購入価格や控除によって異なるが、利益が出なければ課税なし

【合計費用(売主負担分)】
仲介手数料 約56万円 + 印紙税1万円 = 約57万円

このように、実際には仲介手数料や印紙税などで数十万円単位の費用がかかります。測量や境界確定が必要な場合はさらに費用が上乗せされるため、事前に司法書士や不動産会社に見積もりを確認しておくことが大切です。

土地の分筆にかかる費用

土地の分筆には以下の費用がかかります。

登録免許税 分筆登記申請時に課税される。

【課税額】
分筆後の土地1筆につき1,000円
土地家屋調査士への報酬 分筆登記申請を依頼した場合にかかる。

【費用相場】
・分筆登記:5〜10万円程度

※境界未確定の場合は以下の費用もかかる

・現況測量:10〜20万円程度
・境界立会:10〜30万円程度
・境界確定:40〜50万円程度
※土地・隣地の状況によって異なる
司法書士への報酬 持分移転登記申請を依頼した場合にかかる。

【費用相場】
持分1人分につき3〜5万円程度

土地を分筆した場合の費用例は以下のとおりです。

 
100㎡の土地を兄弟2人で共有し、2筆に分筆するケースを想定します。

登録免許税:1筆につき1,000円×2筆=2,000円
分筆登記:8万円
現況測量+境界立会:合計30万円
司法書士報酬:4万円

【合計費用】約42万円程度
【1人あたりの負担額】兄弟2人で折半する場合は約21万円

分筆費用は土地の条件によって大きく変わります。特に相続や売却を前提とした分筆では、測量の精度や境界確定の有無が重要になるため、土地家屋調査士に事前相談して見積もりを取るのがおすすめです。

共有持分の放棄にかかる費用

共有持分の放棄には以下の費用がかかります。

登録免許税 持分放棄の登記申請時に課税される。

【計算方法】
共有持分の固定資産税評価額×2%
司法書士への報酬 持分放棄の登記申請を依頼した場合にかかる。

【費用相場】
3〜7万円程度

共有持分を放棄する際の登録免許税は、全体ではなく「放棄する持分」のみを支払います。

共有持分を放棄した場合の費用例は以下のとおりです。

共有不動産の固定資産税評価額が3,000万円で、3人の兄弟が1/3ずつ共有しているケースを想定します。そのうち1人が持分を放棄する場合の費用を計算してみましょう。

・共有名義不動産の固定資産税評価額:3,000万円
・所有している持分割合:1/3

登録免許税:3,000万円 × 1/3 × 2% = 20万円
司法書士報酬:3〜7万円程度

【合計費用の目安】
23〜27万円程度

持分放棄は法律上「贈与」とみなされる場合があり、その場合は受け取る共有者に贈与税が課される可能性があります。上記のケースで贈与税を計算すると以下のようになります。

持分評価額:3,000万円 × 1/3 = 1,000万円
基礎控除:110万円
課税価格:1,000万円 − 110万円 = 890万円


890万円は「600万円超〜1,000万円以下」に該当するため、税率40%・控除125万円を適用します。


890万円 × 40% − 125万円 = 231万円

つまり、受け取った共有者には 231万円の贈与税がかかります。実際の課税有無や金額はケースによって異なるため、持分放棄を検討する際には、税理士など専門家に相談してから進めることをおすすめします。

共有物分割請求訴訟にかかる費用

共有物分割請求訴訟には以下の費用がかかります。

弁護士費用 60万円~数百万円程度
不動産鑑定費用 20〜30万円程度
※一般的な住宅の場合
裁判費用(印紙代) 訴額(請求の対象となる金額)に応じて変動
【訴額の計算方法】
・土地:固定資産税評価額×1/6×持分割合
・建物:固定資産税評価額×1/3×持分割合
【印紙代の目安】
訴額が100万円なら約1万円
訴額が500万円なら約3万円
裁判費用(郵便切手代) 相手方の人数に応じて変動

【目安】
相手方が1人の場合:5,000〜6,000円程度
相手方が2人目以降:1人あたり+2,000〜2,500円

参照:裁判所|手数料早見表
参照:裁判所|東京地方裁判所への民事訴訟事件又は行政訴訟事件の訴え提起における郵便切手の予納額について

共有物分割請求訴訟の費用例は以下のとおりです。

 
固定資産税評価額が土地2,000万円、建物500万円の不動産を兄弟2人で1/2ずつ共有しており、そのうち1人が共有物分割請求訴訟を起こすケースを想定します。

【訴額の計算】
土地部分:2,000万円 × 1/6 × 1/2 = 約166万円
建物部分:500万円 × 1/3 × 1/2 = 約83万円
合計訴額:約249万円
【裁判費用(収入印紙代)】
1万7,000円(裁判所の民事訴訟費用額表による)
【郵便切手代】
約5,000〜6,000円
【弁護士費用】
40〜60万円
【不動産鑑定費用】
20〜30万円


【合計費用の目安】
約62万円~92万円程度

「不動産鑑定費用」は、不動産鑑定士に不動産の正確な価値を査定してもらうための費用です。不動産鑑定が必要かどうかはケースによって異なり、鑑定が不要であれば鑑定費用はかかりません。
いずれにせよ、共有物分割請求訴訟は数十万円〜100万円以上かかる可能性があるため、コスト面から見ても「最終手段」と位置づけるのが現実的です。

共有名義を解消しないことによるリスク

共有名義を解消する場合、どのような方法であっても何かしらの手続きは必要です。また、登記や訴訟が必要になれば費用もかかるため、ケースによっては「共有名義のままにしておこう」と考えるかもしれません。

しかし共有名義のまま放置をすることには、さまざまなリスクがあります。

  • 共有名義不動産の売却・賃貸などをするには共有者全員からの同意が必要
  • リフォームをするにも共有者からの同意が必要になる
  • 維持費や税金を負担し続ける必要がある
  • 親族以外が共有者になる可能性がある
  • 相続によって権利関係が複雑になっていく
  • 共有者が認知症・行方不明になるおそれがある

このようなリスクがあるため、可能であれば共有状態を解消しておくべきでしょう。ここでは、共有名義を解消しないことによるリスクを弊社の事例をまじえて解説します。

共有名義不動産の売却・賃貸などをするには共有者全員からの同意が必要

不動産を共有名義のままにしておくと、自由に売却や活用ができなくなります。売却や賃貸、建物の建て替えなどは、共有者全員の同意がなければ進められないため、1人でも反対する人がいると手続きが止まってしまうのです。

具体的には、以下のような制約を受けます。

  • 売却が必要な場合でも自由に売却できない
  • 持分割合の過半数の賛成がなければ自由に貸し出せない
  • 「変更」に該当する規模のリフォームができない

この制約のせいで、実際にトラブルになることは少なくありません。以下は弊社に寄せられたご相談事例の1つです。

 
【相談事例1.売却・建て替えに同意が得られないケース】
親から相続した戸建てを兄弟3人で共有していた方から「老朽化した建物を建て替えて売却したい」とのご相談をいただきました。

兄弟の1人が「思い出があるから壊したくない」と強く反対し、話し合いが進まない状況に。共有名義不動産は売却や建て替えに全員の同意が必要なため、1人でも反対すれば手続きを進められません。

その結果、物件は放置され資産価値が下がってしまい、依頼者様は頭を悩ませていました。

このように、共有名義不動産を放置することは「不動産の価値を下げてしまうリスク」を抱えることになります。特に建物は築年数が経つほど市場価値が下がるため、解消のタイミングを逃すと損失が大きくなる可能性があります。

特別な事情によって売却をあえてしないケースは別として、共有不動産の売却を検討しているのであれば、可能な限り早めに共有名義を解消するための手続きを進めることをおすすめします。

また、賃貸に出す場合も注意が必要です。民法第252条で定められているとおり、共有名義不動産の賃貸は「管理行為」にあたり、持分割合の過半数の同意が必要です。例えば、3人でそれぞれ1/3を所有しているなら、少なくとも2人の賛成がなければ賃貸に出すことはできません。

(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
引用元:民法第二百五十二条|e-Gov法令検索

さらに、賃貸借期間が長期に及ぶ場合は共有者全員の同意が必要です。具体的には、土地は5年超、建物は3年超の賃貸借では全員の同意がなければ契約できません。したがって、共有不動産を賃貸に出すハードルは一段と高くなり、活用できず「もったいない」状態に陥るリスクがいっそう高まります。

リフォームをするにも共有者からの同意が必要になる

「変更」行為に該当する規模のリフォームも、不動産が共有状態にあるうちは自由に行えません。民法第251条で定められているとおり、共有物に「変更」を加える場合は共有者全員の同意が必要であるためです。

(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
引用元:民法第二百五十一条|e-Gov法令検索

リフォームが軽微なものであり、単に「不動産の価値を維持する」ためのものであれば変更にあたらない場合もあります。

しかし、リフォーム=現在の状態よりもよくするために行うものであると考えられるため、変更にあたらなくても「管理行為」には該当し、どちらにしても他の共有者の同意が必要です。

共有者が同意していなければ、いくら「資産価値を高めるためにリフォームをしたい」と思っても実行できません。

この制約のため、実際にトラブルとなるケースも少なくありません。

 
【相談事例2.リフォームができず資産価値が下がったケース】
築年数が40年を超える実家を姉と共有している方からのご相談です。

依頼者様は雨漏りが悪化していたため修繕を希望されましたが、過半数の持分を有する姉が「高額な費用をかける必要はない」と反対。共有不動産におけるリフォームは持分の過半数の同意が必要なため、依頼者様単独では修繕を決断できませんでした。

その結果、建物は傷みが進み、最終的には売却価格にも大きく影響する見通しとなり、依頼者様は非常に困惑されていました。

このように、共有名義を解消しないまま放置すると、必要なリフォームができず資産価値が下がってしまうリスクを抱えることになります。

維持費や税金を負担し続ける必要がある

共有名義不動産は、たとえ自分が住んでいなくても維持費や税金を支払う義務が発生します。固定資産税や都市計画税などの地方税は、「共有者全員が連帯して納税義務を負う」と法律で定められています。

(連帯納税義務)
第十条の二 共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。
引用元:地方税法第十条|e-Gov法令検索

実務上は、各共有者が持分割合に応じて負担するのが一般的です。例えば、1/2ずつの共有であれば、税金も半分ずつ負担します。

また、固定資産税の納税通知書は共有不動産の代表者1人に送付され、いったんはその人がまとめて納税します。その後、代表者は他の共有者に対して、持分割合に応じた金額を請求できます。

しかし、実際には、他の共有者が支払いをせずに代表で納税している人がそのまま肩代わりを強いられるケースが少なくありません。

逆に、代表者が納税を怠り、他の共有者に督促状が届いてしまうこともあります。法律上は「連帯納税義務」があるため、誰かが滞納すれば自分にまで請求が及ぶ可能性があるのです。こうしたリスクは決して珍しいものではなく、弊社にも実際にご相談が寄せられています。

【相談事例3.税金の滞納で巻き込まれたケース】
依頼者様は兄弟と実家を共有していましたが、兄が経済的に苦しくなり税金を長期間滞納。役所からは共有者全員に督促状が届き、依頼者様の信用情報にも影響が及ぶ可能性がある状況でした。

共有不動産は連帯して納税義務を負うため、一人の滞納が他の共有者にも直接跳ね返ってきます。依頼者様は「自分はきちんと支払っているのに、兄の滞納で巻き込まれるのは納得できない」と強い不安を抱かれていました。

このように、共有名義を放置していると「本来は持分割合で負担すればよい」というルール以上に、他人の問題まで背負わされるリスクがあります。維持費や税金をめぐるトラブルは家族間の関係を悪化させやすいため、早めに共有名義の解消を検討することが大切です。

親族以外が共有者になる可能性がある

親族以外が共有者になるケースがあることを、念頭に置いておいたほうがよいでしょう。

共有持分のみの売却は他の共有者の同意がなくても単独で行えます。そのため、他の共有者が共有持分を売却し、結果的にまったく面識のない第三者が新たに共有者として加わることも考えられます。

当然ですが、見ず知らずの人と連絡をとるのは決して簡単なことではありません。新たな共有者が善良な人物であるとも限りません。中には税金や維持費を払わなかったり、同意を得るための交渉でさえできなかったりといったこともあるでしょう。

また、共有不動産に共有者が居住している場合、他の共有者は居住している共有者に対し、持分に応じた家賃を請求する権利があります。注意が必要なのは、自身が共有不動産に居住しているケースです。新たに加わった共有者から家賃を請求される可能性があるためです。

弊社にも、実際にこうしたトラブルに直面した方からのご相談が寄せられています。

【相談事例4.突然第三者が共有者になったケース】
依頼者様は兄弟で相続した土地を共有していましたが、兄が急に持分を第三者の業者に売却。結果として、全く面識のない不動産会社が共有者として加わることになりました。

依頼者様は「知らない人と権利を共有するなんて想像もしていなかった」と大きな不安を抱かれていました。親族であればある程度の話し合いは可能ですが、業者が入ると条件交渉が厳しくなり、利用や売却の自由度はさらに制限されます。

依頼者様は強引な営業を受けることもあり、「持分を売却するなら信頼できる業者にお願いしたい」との思いから弊社へ相談されました。

さらに注意すべきなのは、共有者の誰かが亡くなると、その持分は配偶者や子ども、孫といった相続人に引き継がれることです。元の共有者同士が顔見知りでも、その相続人と面識があるとは限りません。

【共有名義を放置すると自分の子どもや孫までトラブルに巻き込まれる可能性がある】
共有者の誰かが死亡した場合、所有していた持分は原則その配偶者や子ども、孫といった相続人に引き継がれます。

元の共有者同士が顔見知りでも、その相続人まで面識があるとは限りません。中には、「相続したものの、他の共有者の中に知っている人が1人もいない」といった状況に陥るケースも少なくありません。

面識のない人同士が共有者になる際の問題は、不動産を活用したくても、共有者の同意が得られず持て余してしまう可能性がある点です。

「同意を得たいのに連絡先がわからない」「面識のない人に対して交渉するのが難しい」といったケースも考えられます。子どもや孫にとって負の遺産となり得るため、可能であれば共有状態を解消しておくべきでしょう。

相続によって権利関係が複雑になっていく

事例:祖父の代から相続を重ねてきた土地について、登記をしないまま放置した結果、孫や甥姪など16人が権利を持つ状態になっていました。依頼者様は『誰と共有しているのかも把握できず、連絡すら取れない』と困惑。中には海外在住で連絡が取れない共有者もおり、合意形成が完全に不可能な状況でした。
相続によって、権利関係が複雑になっていくおそれがあります。共有者それぞれに複数の相続人がいると、共有者がどんどん増えていくためです。

例えば、元の共有者が2人でも、それぞれの相続人が5人いれば、相続発生後の共有者は10人です。元の共有者が多ければ、さらに大人数になる可能性もあります。

現在の共有者同士が良好な関係を保っていても、その次の世代で同じように合意形成できるとは限りません。実際、「連絡先がわからない」「返事をしてくれない」といったケースも珍しくなく、相続を重ねるほど話し合いが困難になっていきます。結果として、不動産を使うことも売却することもできず、資産価値を損なうおそれがあります。

弊社へのご相談でも、相続を重ねて共有関係が複雑になり、誰も対応できなくなってしまった事例があります。

【相談事例5.相続を重ねて16人が共有者になってしまったケース】
祖父の代から相続を繰り返してきた土地について、登記を放置していた結果、孫や甥姪など16人が権利を持つ状態になっていました。

依頼者様は「誰と共有しているのかも把握できず、連絡すら取れない」と困惑。中には海外在住の共有者もおり、全員の合意形成は完全に不可能な状況でした。

このように、共有名義を放置して相続が続くと、将来的に「関わっている人が多すぎて何も決められない」という状態に陥りかねません。子や孫の世代に負担を残さないためにも、できるだけ早いうちに共有名義を解消する取り組みが重要です。

共有者が認知症・行方不明になるおそれがある

共有状態を放置しているうちに、共有者が認知症を患ったり、行方不明になったりするリスクもあります。

不動産の売却や大規模なリフォームといった「重要な判断」には、共有者全員の同意が必要です。そのため、認知症などで意思能力を失った人がいると、話し合いがストップしてしまいます。成年後見制度を利用すれば代わりに判断してもらうことも可能ですが、家庭裁判所での申立てや後見人の選任には数ヵ月以上かかるうえ、後見人への報酬も必要になります。

また、共有者が行方不明の場合も同様に合意形成は困難です。「他の共有者が行方不明の場合は複数の対処法がある」で解説した「所在等不明共有者の持分取得制度」「所在等不明共有者の持分譲渡制度」を利用することになります。

実際に、こうした事情で不動産を動かせなくなったケースもあります。

【相談事例6.認知症によって売却が進められなくなったケース】
父から相続した実家を兄弟3人で共有していましたが、そのうちの一人が高齢で認知症を発症。重要な判断ができなくなり、売却の合意を得ることが極めて困難になってしまいました。

成年後見制度を利用するにも時間と費用がかかるため、依頼者様は「早急に売却して現金化したいのに動けない」と強い不安を抱かれていました。

このように、共有名義を解消せずに放置すると、認知症や所在不明といった事態で不動産の活用や売却が著しく制限される可能性があります。新制度を活用できる場合もありますが、いずれにせよ専門的な手続きが必要になるため、早い段階で共有名義の解消を検討しておくことが重要です。

弊社「株式会社クランピーリアルエステート」では、共有者間のトラブルを抱えた複雑な共有持分も買い取りを行っています。共有持分をはじめとした訳あり物件の買取実績が豊富な不動産会社であるため、買取後のコストを抑え、その分ご依頼者さまにご納得いただける査定額を提示いたします。共有持分の売却を検討されている方は是非ご相談ください。

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共有名義を解消しない場合は共有者間でトラブルが起きないための対策を応じておく

相続や離婚などでやむを得ず共有名義不動産を所有することになった場合、共有者同士で意見が食い違うとトラブルに発展するリスクがあります。共有状態をすぐに解消できない場合でも、事前にルールや仕組みを整えておくことで揉め事をある程度防ぐことが可能です。
以下に、共有不動産でトラブルを避けるための代表的な対策をまとめました。

対策 内容
公正証書でルールを残す 利用方法、費用負担、将来の方針などを共有者で話し合い、公正証書にして残す。法的効力があるため、口約束よりも強い抑止力になる。
定期的な話し合いを設ける 年1回など定期的に共有者間で話し合いの場を設け、管理負担の偏りや不満を確認する。ライフスタイルの変化に応じて、共有名義不動産の売却などを検討する共有者が出てくることもあり、結果的に共有状態の解消につながることもある。
管理会社へ委託する 誰も不動産を管理できない場合は、不動産管理会社や空き家管理サービスに委託する方法もある。点検や草刈りなどを依頼でき、空き家の管理に適している。
相続登記を速やかに行う 2024年4月から相続登記は義務化され、相続を知った日から3年以内に申請が必要。怠れば10万円以下の過料の可能性がある。

これらの対策を講じておけば、共有不動産に関する日常の管理や費用分担についての争いを未然に防げます。

ただし注意が必要なのは、どんなに工夫をしても「共有名義そのものがトラブルの火種」になりやすい点です。ルール作りや委託管理で一時的にトラブルを減らすことは可能ですが、根本的な解決には共有名義の解消が不可欠です。相続時にはできるだけ共有を避けること、すでに共有状態にある場合は早めに解消を検討することをおすすめします。

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まとめ

共有名義を解消する方法と、解消しないリスクについて解説しました。

不動産の共有名義を解消する方法はいくつかあります。それぞれメリット・デメリットがあるため、自身の状況に合わせた方法を選択するのがよいでしょう。

たとえば「すぐにでも共有名義を解消したい」なら、専門の買取業者に共有持分を売却する方法が向いています。専門の買取業者であれば、数日〜1カ月程度で買い取ってくれるのが一般的です。

また、不動産全体を売却すれば共有状態は解消されます。そのため「不動産全体の売却に他の共有者が同意している」のであれば、共有不動産全体を売却して共有状態を解消するのも1つの手段です。

ただし、「共有者同士で離婚した」「他の共有者が認知症になった」といった特殊な状況では、その状況に合わせた解消方法を取る必要があります。

特殊な状況下で共有名義を解消したい場合、当記事で解説した方法を参考にしながら手続きを進めてみてください。

共有名義の解消に関するよくある質問

共有者と関わらずに共有名義は解消できますか?

自身の持分のみを売却するのであれば、共有者に関わることなく単独で共有名義を解消できます。なお、共有不動産全体を売却する方法でも共有状態を解消できますが、共有者全員の同意が必要になるため、共有者と関わる必要があります。

共有名義は離婚の前に解消しておくべきでしょうか?

離婚後も元配偶者とのやり取りが必要になるケースがあるため、基本的には離婚の前に共有名義を解消しておいたほうがよいでしょう。

共有者が国内にいない場合は共有名義を解消できないのでしょうか?

共有持分の売却であれば、他の共有者が国内にいなくとも共有名義を解消できます。一方、共有不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要であるため、「一時的に帰国してもらう」「代理人を選定してもらう」といった対応が必要です。

共有者と揉めずに共有名義を解消するコツはありますか?

共有名義を解消する際は、親族や共有者同士の感情的な対立を避ける工夫が大切です。まず「感情」ではなく「事実」で話す準備をしましょう。

例えば、「老朽化で修繕が必要」「固定資産税の負担が続く」「相続が重なれば共有者が増えて将来さらに複雑になる」といった客観的なデメリットを提示すると、冷静に受け止めてもらいやすくなります。そのうえで「売却すれば公平に現金を分けられる」といった解消のメリットも伝えましょう。

また、弁護士や司法書士、不動産会社など第三者を間に入れることで、感情に左右されず客観的な交渉が可能になります。

さらに「年内に方針を決める」といった期限を設けると、結論を先延ばしにするのを防げます。居住している共有者がいる場合には代償金や転居サポートを提案するなど、解消後の生活に配慮することも重要です。

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