共有不動産のトラブルは弁護士に相談!利用のメリットを事例別に解説
共有不動産(共有名義不動産)は複数の所有者がそれぞれの所有権に応じた権利を有しており、売却や管理方法の扱いについてトラブルになるケースがよくあります。共有不動産関係で、トラブルに発展する具体的な理由は次の通りです。
- 共有不動産の売却や賃貸に共有者の同意が必要になる
- 共有持分の相続で所有権が分かれすぎて複雑になる
- 固定資産税や維持管理費の負担で揉める
- 共有者の連絡先や住所が不明になる
- 共有者が認知症になって法律行為ができない
- 共有者による不法占拠が起こる
- 家賃に関するトラブルが発生する
上記が起因となるトラブルはいずれも、複雑な権利関係のせいでスムーズな解決が難しい事案です。状況によっては、共有物分割請求訴訟などの裁判所を通じた対応が必要になります。そこで、共有不動産にまつわるトラブルの解決には、弁護士への依頼がおすすめです。
共有不動産問題に強い弁護士なら、専門性の高さから適切なアドバイスをくれます。また他の共有者と法的根拠を基に交渉する、職務上請求や相続関係など弁護士にしかできない手続きを代行できる、調停や訴訟にも対応できるなど、弁護士に依頼するさまざまなメリットがあります。
ただし弁護士へ依頼するときは、高額の弁護士報酬の準備が必要です。弁護士報酬は数十万円は必要になるため、もし弁護士なしの話し合いや売却で解決できるなら、そちらの方法も模索してみましょう。
自分の共有持分を売却する方法なら、他の共有者の同意なしに所有権を手放せます。専門の買取業者への売却なら、スピーディーかつ適正価格での現金化も可能です。
この記事では、共有不動産問題に弁護士が必要な理由、弁護士に依頼するメリット、弁護士に依頼する際の費用の目安、ケース別の弁護士の対応内容、弁護士に依頼するときの流れ、共有持分を専門の買取業者へ売却して共有状態を解除するメリットなどを解説します。ぜひ最後までチェックしてみてください。
目次
【7つの事例】共有不動産問題に弁護士が必要な理由は「権利関係が複雑になるから」
共有不動産問題で弁護士が必要になる理由は、「共有持分を持つ複数人に権利が発生し、権利関係が複雑になるから」です。
共有不動産とは、1つの不動産を複数人が所有している状態の不動産です。共有持分とは、共有不動産における、共有者ごとの所有権の割合を表しています(共有持分に応じた共有者の権利は共有持分権と呼ぶ)。
所有する不動産に共有持分が発生するケースは次の通りです。
- ペアローンを組んで購入したマイホームが夫婦の共有名義になる
- 実家の相続が発生したときに実家の所有権を相続人で均等に分けた
- 複数人で事業用の土地や建物を購入して共同で運営している
- 住宅の前に通っている道路が、近隣住民で所有している共有私道になっている
たとえば不動産の所有権を均等に3つに分けて登記すると、登記名義人となった共有人の共有持分は、それぞれ3分の1ずつです。購入や相続の場合は、支払った費用や相続分に応じて持分が決定します。つまり、3人がそれぞれ不動産の権利を主張できる状況が生まれます。
単独名義の不動産なら所有者の意思で自由に活用できるところを、共有不動産だと共有持分割合に応じた権利に制限されます。不動産全体にかかわる処遇を決めるときは、他の共有人の同意を得られなければ進められません。
実際に民法では、共有物(共有不動産を含む2人以上が所有しているもの)の取り扱いに関して、他の共有者の同意の有無や使用制限を定めています。具体的に見ていきましょう。
行為 | 規定 | 具体例 |
---|---|---|
変更(処分)行為 民法第251条 |
共有不動産の性質、形状、用途などを変える行為は 共有者全員の同意が必要になる |
売却 贈与 増改築 分筆 長期の賃貸借契約(建物なら3年超など)の締結・解消 抵当権の設定 |
管理行為 軽微な変更 (民法第252条) |
変更には至らない利用や改良、軽微変更は 共有持分価格の過半数の同意が必要になる |
賃料の減額 改造に至らないレベルの改装 宅地の整地 短期間の賃貸借契約の締結・解消 |
保存行為 (民法第252条) |
共有物の現状維持のための行為なら 共有者の単独の判断での実行で問題ない |
修繕 不法占有者に対する排除・損害賠償請求 不法な登記を有する第三者に対する登記の抹消請求 法定相続による所有権移転登記 |
共有物の使用・処分 (民法第206条など) |
自分が所有権を有しているものなら 単独の判断で使用・収益化・処分できる |
自分が持つ共有持分のみの売却 自分が持つ共有持分のみの放棄 |
参考:e-Gov法令検索「民法」
このように共有不動産は共有持分に応じて、できること・できないことが法的に細かく決められています。この複雑さが共有不動産に関するトラブルが多い原因であり、ときに弁護士の介入が必要な法的事案に発展します。
共有不動産を所有するうえで権利関係のトラブルに発展しやすい事例は、次の7つです。
- 共有不動産の売却や賃貸に共有者の同意が必要になる
- 共有持分の相続で所有権が分かれすぎて複雑になる
- 固定資産税や維持管理費の負担で揉める
- 共有者の連絡先や住所が不明になる
- 共有者が認知症になって法律行為ができない
- 共有者による不法占拠が起こる
- 家賃に関するトラブルが発生する
それぞれの詳細を解説します。
1.共有不動産の売却や賃貸に共有者の同意が必要になる
共有不動産全体の売却・取り壊しや、共有不動産を活用した賃貸契約などをおこなうには、他の共有者の同意が必須です。
たとえば売却や取り壊しといった変更行為に該当するものは、共有者全員が同意しなければ進められません。共有者5人中4人が取り壊しに賛成しても、1人が反対していれば、その1人を無視して勝手に取り壊すのは不法行為に当たります。
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
e-Gov法令検索 民法
またリフォーム・リノベーションといった管理行為は、「各共有者の共有持分価格の過半数の同意」が必要です。たとえば3,000万円の共有不動産の共有持分を3人で均等に持つ場合なら、2人の賛成があれば管理行為が可能です。一方で共有持分割合がA2,000万円、B500万円、C500万円だと、BとCが賛成してもAが反対すれば管理行為がおこなえません。
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
e-Gov法令検索 民法
共有不動産は変更行為・管理行為に制限がかかることから、高額売却や資産価値・生活環境向上のためのリフォーム・リノベーションが自由にできないため、共有不動産の活用方法が決まらず放置されるケースも珍しくありません。
また共有不動産においては、法律的に制限されても個人の感情では納得できない共有者がいると、勝手に部屋を壊したり占有したりといった不法行為に及ぶケースがあります。不法行為がエスカレートするほど、共有者同士の人間関係の悪化や、無断売却・改築などの大きなトラブルに発展するでしょう。
たとえば「1人は不動産の取り壊しと売却を希望しているが、もう1人は物件に愛着があり、リフォームや手直しをして住み続けたいと考えている」といったケースが挙げられます。また、夫婦の離婚後に片方が勝手に売却・賃貸などを行おうとする、財産分与で揉める、ペアローン違反になるなどのトラブルも想定されます。
上記のトラブルは「自分が他の共有者の共有持分を買い取って単独名義にする(代償分割など)」といった解決策があるものの、共有持分を買い取る資金、共有持分を売ってもらうための交渉などが必要です。自己の共有持分の売却だけなら交渉は必要ないものの、事前に他の共有者に相談しておかないと別のトラブルが発生する可能性があります。
しかし共有不動産においては、権利関係が複雑になりすぎて把握しきれなかったり、共有者の所在がわからなかったりなど、共有者だけでは問題解決が難しい事案も珍しくありません。もし共有持分の契約関係で疑問点や相談があるときは、専門家である弁護士の力を借りることをおすすめします。
弁護士であれば、法知識に基づいた適切な権利関係の整理、職務上請求による書類の取り寄せ、実務経験からくる交渉の取りまとめなどが可能です。共有不動産における共有者ができること、できないことを明確にし、問題解決のための道を示してくれるでしょう。
共有持分の売却を巡って他の共有者とトラブルに発展しているときも、知識と経験を持つ弁護士に交渉サポートや取りまとめを依頼するのが得策です。詳しくは「共有持分の売却トラブルで弁護士に相談するメリット」を参考にしてください。
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2.共有持分の相続で所有権が分かれすぎて複雑になる
単独名義の不動産から共有名義の不動産になると、相続が発生したとき所有権がさらに分割されて、権利関係がより複雑化するリスクがあります。
共有持分割合が判断できないときは、民法第250条にて「共有持分は共有者で等しいものと推定される」と定められています。一方で実際には「不動産購入時の出資割合」「相続割合」といった判断基準があり、「どれくらいお金を出したのか」「どれくらいの割合を受け取ったのか」で共有持分が決まるのが通常です。
たとえば7,000万円の不動産物件を夫が5,000万円、妻が2,000万円出資して購入した場合の共有持分は以下の通りです。
夫の共有持分 | 妻の共有持分 |
---|---|
5,000万円÷7,000万円=71.4% | 2,000万円÷7,000万円=28.6% |
もし上記のケースで「夫婦で共有持分割合を50%ずつにする」といった出資割合に合わない設定をすると、「夫から妻へ共有持分21.4%の1,498万円の贈与があった」とみなされ、妻に贈与税がかかる可能性があります。
購入の場合だと、事前に共有持分の発生を踏まえたうえで手続きを進めるので対処はしやすいでしょう。複雑化しやすいのは、相続が発生したときです。
遺産相続の際、遺言によって相続方法が指定されていなければ、不動産はいったん法定相続人が共有で引き継ぎます。たとえば、被相続人Aの配偶者と子ども2人が評価額8,000万円の不動産を相続した場合の共有持分は以下の通りです。
配偶者の共有持分 | 子ども1の共有持分 | 子ども2の共有持分 |
---|---|---|
8,000万円×1/2=4,000万円 | 8,000万円×1/4=2,000万円 | 8,000万円×1/4=2,000万円 |
※相続によって共有状態となった不動産の共有持分の割合は法定相続分に従います。
上記のケースだと、1度の相続で3人分の共有持分が発生しています。もし相続人が「遠方に住んでいる子ども」や「疎遠になった兄弟姉妹」だった場合、連絡を取るのが難しい間柄にもかかわらず、同じ共有不動産を所有することになります。取り壊しや売却のために共有人の同意を得たくても、連絡が取りづらかったり拒否されたりなどで、思うように進まない可能性も出てくるでしょう。
しかし、対応が億劫だからとこの状態で放置すると、次の相続のときに共有持分がさらに分割されます。たとえば子ども1に配偶者と2人の子ども(被相続人Aの孫2人)がいるとき、子ども1が亡くなって相続が発生した場合、子ども1が持つ共有持分は次の通りです。
子ども1の配偶者の共有持分 | 子ども3の共有持分 | 子ども4の共有持分 |
---|---|---|
2,000万円×1/2=1,000万円 | 2,000万円×1/4=500万円 | 2,000万円×1/4=500万円 |
被相続人Aの配偶者と子ども2がどちらも亡くなっていないと仮定すると、被相続人Aの不動産の共有持分は次のようになります。
- 被相続人Aの配偶者:4,000万円
- 被相続人の子ども2:2,000万円
- 子ども1の配偶者:1,000万円
- 子ども3:500万円
- 子ども4:500万円
このように、共有持分の相続が続いていくと同じ不動産の共有者が増え続けます。共有不動産の変更行為・管理行為に必要な同意を集めることが一層困難となり、望まぬままに共有者同士の争いに巻き込まれるケースもあるでしょう。
上記のような共有不動産の権利分散に関しても、弁護士なら力になってくれます。相続が絡んだ場合でも、相続順位や共有持分割合に応じた正確な権利関係を明らかにしてくれます。共有持分割合や共有持分割合に応じた評価額の計算は、共有不動産の所有権問題の重要な部分であるため、自力での対応が難しいときは弁護士の力を借りるのがよいでしょう。
たとえば登記完了後であれば「登記識別情報通知」や「登記事項証明書」を取得する手続きのサポートや、リーガルチェックなどに対応可能です
所有権移転登記後に法務局から発行される、従来の「権利証」に代わる書類。「登記識別情報」と呼ばれる番号のほか、不動産の情報や不動産番号、登記名義人が記載されている。
法務局に備わっている登記の情報を確認できる書類。法務局の証明書発行窓口やオンラインで請求でき、手数料を支払えば誰でも取得できる。なお、費用は取得方法によって異なる。
・窓口請求・窓口受取:600円
・オンライン請求・郵送:500円
・オンライン請求・窓口受取:480円
共有持分の割合の決め方や計算方法については、以下の記事で解説しています。
3.固定資産税や維持管理費の負担で揉める
民法第253条では、共有不動産で発生する固定資産税(地域によっては都市計画税も含む)や維持管理費といった管理の費用は、共有持分に応じて負担すべきと定められています。1年以内に負担を履行しない共有者がいたときは、他の共有者が償金を支払って負担を滞納する共有者の持分を取得可能です。
(共有物に関する負担)
第二百五十三条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
e-Gov法令検索 民法
また地方税法第10条の2第2項には、共有物に発生する固定資産税などの地方税は、連帯して納税する必要があるという「連帯納税義務」が定められています。
第十条の二 共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。
e-Gov法令検索 地方税法
しかし民法や地方税法の定めがあるにもかかわらず、固定資産税や維持管理費の負担を共有者に拒まれるトラブルは後を絶ちません。負担を拒む共有者がいるからといって納税や支払いを止めるわけにもいかないので、他の共有者全員や代表者が代わりに負担することになります。
自治体へ「代表者指定届」を提出し代表者になった者は、他の共有者から先に徴収したり一旦立て替えたりなどして、固定資産税の納税対応をします。つまり負担を拒む共有者のせいで立て替えや共有者への求償などの負担を一番強いられるのが、共有不動産の代表者です。
そのため、代表者と共有者の間で協議や法的措置などに関するトラブルに発展する可能性があります。
4.共有者の連絡先や住所が不明になる
共有不動産の共有者のなかで連絡先や住所が不明な人がいると、トラブルに発展するケースが多いです。なぜなら連絡が取れない場合であっても、連絡が取れない共有者の同意なしで共有不動産全体の売却や取り壊しは、原則として認められないからです。
また、連絡先がわからないままだと、固定資産税や維持管理費の負担で揉めるで解説した通り、共有不動産の代表者や他の共有者が不明者の固定資産税や管理維持費を負担しなければなりません。
共有者の連絡先や住所が不明になる原因には、以下のことが考えられます。
- 共有者の家族から共有持分を相続した
- 共有者がすでに死亡している
- 共有している不動産が古く、共有者と交流がない
所在がわからない「所在不明共有者」がいる場合、以前は家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申立てる必要がありました。しかし、令和5年4月1日施行の改正民法によって、共有者不明の不動産が扱いやすくなっています。また民法改正によって、共有不動産の不明共有者の固定資産税未払問題にも対応しやすくなっています。
2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
このように、所在がわからない共有者がいるときは、所在不明共有者以外の同意、もしくは持分の過半数によって、共有不動産の変更・管理に関わる決定ができるようになりました。
とはいえこの場合でも、以下のような手間や時間がかかります。
- 家庭裁判所への申立て
- 証拠の提出
- 1カ月以上の異議届出期間や広告の実施
他の共有者の申し立てによって、裁判所が所在不明共有者の持分を他の共有者に取得させるための裁判を行える制度が新設されています。しかし制度の利用には条件があるほか、訴訟手続きが必要です。
自力での対応は難しいため、所在不明共有者がいるとわかった時点で弁護士への相談が必要なトラブルとなる可能性が高くなります。
5.共有者が認知症になって法律行為ができない
共有者が認知症になった場合も、弁護士が必要なトラブルに発展するケースの1つです。認知症になると法律行為が行えなくなり、トラブルになりやすいためです。
民法において、認知症と診断された人は「意思能力がない者」として扱われ、行った法律行為が無効になります。
たとえば、法律行為には以下のようなものがあります。
- 不動産の売買
- 賃貸借契約の締結
- 介護施設への入居契約
たとえ第三者に法律行為の代行を委任しても、意思能力がない状態で作成した委任状には効力が認められず、無効になることがほとんどです。
不動産の共有者が認知症になった場合は「成年後見制度」を利用し、不動産の売却や管理などに対応する必要があります。
認知症や精神上の障害などによって、判断能力が不十分と認められる人を保護するための制度。家庭裁判所に「成年後見人」の選任を申立て、成年後見人に選任された人は契約や財産の管理、身上監護などを代行する。
成年後見人の候補者には親族を指名できますが、多くの場合、弁護士や司法書士などの専門家が選任されます。
注意したいのは、成年後見人制度を利用して共有不動産を売却しても、そこで成年後見が終わるわけではない点です。被後見人の判断能力が不十分であることに変わりはないため、不動産売却後も成年後見を継続しなければなりません。
親族が成年後見人となった場合、将来的に発生する契約行為や財産管理などにも対応する必要があり、大きな負担がかかるでしょう。
また、弁護士や司法書士が成年後見人になったケースでは、被後見人が死亡するまで成年後見人に報酬を支払う必要があります。成年後見人への報酬の目安は以下のとおりです。
基本報酬 | 月額2万円程度 |
---|---|
財産管理額が1,000万円超5,000万円以下 | 月額3万円~4万円程度 |
財産管理額が5,000万円超 | 月額5万円~6万円程度 |
参照:成年後見人等の報酬額のめやす|大阪家庭裁判所・大阪家庭裁判所堺支部・大阪家庭裁判所岸和田支部
さらに成年後見人は、一度選任されたら勝手に変更・交代したり、辞任させたりできません。変更・後退したいなら、家庭裁判所の許可が必要です。
共有者が認知症になった場合、成年後見制度の申し立てや誰を成年後見人にするのかを協議する必要があります。また、共有者で合意した候補者が後見人に選任されるとも限りません。
そのため、共有者が認知症になる前に、共有状態を解消しておいたほうが賢明です。共有者に認知症の兆候があるにもかかわらず、弁護士に相談せず放置していると、認知症に関するトラブルに巻き込まれる確率が上がります。
6.共有者による占有が起こる
特定の共有者が共有不動産を占有している場合、弁護士の介入が必要なトラブルに発展する可能性が高いです。
共有不動産における占有とは、共有持分を持たない賃借人による第三者の不法占拠ではなく、共有人の誰かが共有不動産を占有している状態を主に指します。
しかし共有者が共有不動産を占有していたとしても、その共有者を追い出すことは非常に困難です。第三者による不法占拠に有効な「明け渡し請求(訴訟して賃借人に物件の明け渡しを求める訴訟)」は、共有者に対して起こせないからです。
共有者は自身が持つ共有持分割合の大小にかかわらず、共有持分の全部について、共有持分割合に応じて使用できると定められています。
(共有物の使用)
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
e-Gov法令検索 民法
そのため、共有者が共有不動産を占有していても「共有者は自分の持分通りに物件を使用しているだけ」と判断されます。過去の最高裁判所の判例でも、正当な理由なしに共有者へ明け渡し請求はできないと判断されました。
しかし一方で、「共有人全員で決めた使用方法を無視する」「バリケード設置や無断の家財処分など力付くで占有している」といった「占有に正当な理由がないこと」を立証できれば、共有者であっても追い出しは可能です。むしろ占有状態を許したままだと、「共有持分の時効取得」によって所有権が認められてしまう可能性もゼロではありません。
法的対応が必要になるときは、弁護士に相談するのがよいでしょう。
参考:裁判所「最高裁判所判例集」
7.家賃に関するトラブルが発生する
「共有不動産を貸し出して家賃収入を得ている」、「共有者が自分の共有持分割合を超えて不動産を使用している」といった場合、家賃に関するトラブルに発展するケースがあります。
共有不動産を第三者に貸し出して家賃収入を得ている場合、家賃収入は共有者の持分割合に応じて分配するのが通常です。しかし、特定の共有者が家賃収入を独占し、他の共有者へ収入を渡さないことがあります。もし家賃収入を独占している共有者へ家賃の返還を求めるには、「不当利得返還請求」が必要です。
また、特定の共有者が自身の共有持分割合を超えて共有不動産を使用(占有するなど)しているときは、他の共有者の使用を妨害しているとして、妨害分を家賃請求できます。家賃請求も、不当利得返還請求で対応します。
不当利得返還請求は、以下の流れで進めましょう。
- 相手が不当利得(自分の持分を超える家賃関係の利益)を得た証拠を集める
- 証拠を基に相手と交渉をおこない返還する旨の合意を取り付ける
- 合意に至らないときは裁判所で不当利得返還請求訴訟を提起する
相手が不当利得を得ている証拠として、「相手へ渡る利得が不当である法的根拠」「相手の口座への入金や引き出しの記録」「家賃を使い込んだ自覚を証明する音声データやメール」などの準備が必要です。しかし、証拠集めや精査を共有者のみで集めるのは時間や労力がかかります。さらに、家賃についての交渉、交渉が決裂したときは訴訟提起まで対応しなければなりません。
家賃関係のトラブルの解決にも、相手との協議や法的手続きが必要です。そのため、弁護士に対応を依頼するケースが多々あります。
共有不動産の問題を弁護士に依頼するメリット
【7つの事例】共有不動産問題に弁護士が必要な理由は「権利関係が複雑になるから」で解説した共有不動産に関するトラブルに対応には、問題が起こる前や早い段階で弁護士へ相談するのがおすすめです。
まず共有不動産に関する問題で、弁護士に依頼できる内容をまとめました。
弁護士に依頼できる内容 | 概要 |
---|---|
交渉代行 | ほかの共有者との交渉や書面のやり取りの代行 |
職務上請求 | 職務の範囲内で戸籍謄本、住民票などを取得 |
書類作成代行 | 合意書や契約書といった協議内容をまとめた書面の作成代行 裁判所での手続きに必要な書類関係の作成代行 |
手続き代行 | 裁判所での手続きや登記申請の代行※ |
弁護士照会 | 預金口座の問い合わせ 勤務先への問い合わせ その他官公庁・民間企業への問い合わせ |
※登記は司法書士のほうが実務経験が豊富なケースが多い
共有不動産のトラブルは時間や手間がかかるうえに、時間が経つほど問題が大きく複雑になりやすいからです。また、共有者との協議が必要なときは、精神的な負担が大きくなるおそれもあります。そこで弁護士に相談することで、問題の早期解消や負担減などのメリットがあります。
共有持分の売却トラブルで弁護士に相談する具体的なメリットは以下のとおりです。
- 共有状態をスムーズに解消できる
- 疎遠な共有者と交渉する必要がない
- 共有者とトラブルが発生したら対応してもらえる
- 共有物分割訴訟や不当利得返還請求訴訟になってもサポートしてもらえる
- 売買契約書の内容をチェックしてもらえる
それぞれ詳しく解説します。
共有状態をスムーズに解決できる
共有持分の売却に関するトラブルを弁護士に相談するメリットの1つは、スムーズに共有状態を解消しやすくなることです。弁護士に対応を依頼することで、法的根拠や専門知識に基づいた最適な解決策を提案してもらえます。
共有不動産のトラブルの内容や解決方法は、共有に至った経緯や共有者同士の関係性、共有者自身の希望は異なります。共有不動産に強い弁護士に依頼すれば、共有者の状況に応じた解決方法を提示してもらえるため、共有者同士で対応するより共有状態を解消しやすくなるでしょう。
また、共有者間での協議も弁護士に代行してもらえるため、他の共有者と直接話し合う必要がありません。関係性が悪い共有者、暴言・暴力の恐れがある共有者など、直接顔を合わせたくない相手との接触を避けられるのもメリットです。お互いに感情的になって、問題がさらにこじれる事態も防げます。
できるだけスムーズに不動産の共有状態を解消したいなら、弁護士に相談することをおすすめします。
共有名義の解消方法と解消しない場合のリスクについては、以下の記事で解説しています。ぜひあわせてご確認ください。
疎遠な共有者との交渉や書類作成・手続きをしなくてもよくなる
共有持分の売却トラブルを弁護士に相談することで、疎遠になっている共有者と交渉する必要がなくなります。弁護士に相談すれば、他の共有者との交渉を代行してもらえるためです。
共有者との親交が深く、普段から連絡を取り合っているような間柄であれば、自分で対応できる可能性があります。
しかし、疎遠な親族や赤の他人が共有者となっている場合、共有不動産の変更行為や管理行為について交渉するのは難しく、手間や時間、精神的な負担がかかるでしょう。弁護士に共有者との交渉を代行してもらえば、関わりの少ない共有者と直接交渉する必要がありません。
交渉相手からしても、弁護士が間に入ることで安心して話し合いができるため、交渉をスムーズに進めやすくなります。
さらに弁護士なら、不当利得返還請求やその他協議・訴訟関係の書類作成や手続き、相手へ送付する内部証明郵便の作成なども代行してくれます。弁護士の職務上請求なら、職務上請求による戸籍謄本といった必要書類の収集も代行が可能です。
共有不動産でトラブルになりやすいのは、共有者があまり関わりのない親族や第三者であるケースが大半です。自分で交渉や書類作成、書類収集をするのが難しいなら、弁護士に対応を依頼しましょう。
共有持分をもめずに売る方法については以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。
共有者とトラブルになったら対応してもらえる
弁護士に相談すれば、共有者とトラブルになったときに対応してもらえます。弁護士は法律の専門家であり、共有持分の問題や解決方法に関する法律を熟知しているためです。
たとえば共有不動産全体ではなく「共有持分のみ」を売却するなら、他の共有者の同意は必要ありません。ただし共有者によっては、相談せず共有持分を売却したことについて非難してくる可能性があります。
そのような場合でも、弁護士がついていれば法的根拠に基づいてフォロー・サポートしてもらえるでしょう。仮に裁判沙汰になっても、弁護士が対応してくれるため相手と直接話す必要はありません。
依頼者によって共有持分を取得した経緯や、共有不動産に対する希望は異なります。法律はもちろん、過去の判例などから依頼者の事情に応じて柔軟に対応してもらえるのは、弁護士に相談する大きなメリットといえます。
共有物分割訴訟や不当利得返還請求訴訟になってもサポートしてもらえる
共有物分割訴訟や不当利得返還請求訴訟などの裁判沙汰になってもサポートしてもらえるのが、弁護士に相談するメリットです。
共有物分割訴訟とは、裁判所に共有状態の解消や適切な分割方法を裁定してもらうための裁判のことです。通常の裁判のように、原告と被告の勝訴・敗訴を決めるものではなく、裁判所による合理的な判断を仰ぐ性質があります。
たとえば共有物分割請求には「協議」「調停」「訴訟」の3段階があります。まずは当事者同士の話し合い(協議)で問題解決を目指し、できなければ調停に、さらに問題が解決しなければ訴訟に移行します。
ただし調停は必須ではなく、協議が済んでいるならそのまま訴訟を起こすことも可能です。
訴訟となった場合、口頭弁論に出席して自分の主張を述べなければなりません。弁護士に代行を依頼すれば、口頭弁論へ出席したり、依頼者の考えを論理的に主張してもらえたりなど、訴訟にも対応してもらえます。
そのほか、共有持分を取引価格に近い金額で売却できる可能性がある点もメリットの1つです。他の共有者が不動産を買い取るお金があるにもかかわらず、不動産の買い取りを拒んだ場合、訴訟によって市場価格に近い金額で買い取りを迫られるケースがあります。
そのため、共有持分は業者に買い取ってもらうよりも、弁護士に相談して他の共有者に買い取るように求めた方が高く売れる可能性があります。
売買契約書の内容をチェックしてもらえる
売買契約書の内容をチェックしてもらえる点も、弁護士に相談するメリットとして挙げられます。
不利な内容が記載されていても、法律の知識や経験がなければ気づかずサインしてしまう可能性がありますが、弁護士がついていれば、売買契約書に不利な条項がないか確認してもらえます。トラブルのリスクを抑えられるため、安心して契約できるでしょう。
売買契約書のチェックだけなら数万円程度で済むケースが多いため、費用が気になる場合におすすめです。
弁護士への依頼のデメリットは高額費用!おおまかな相場を解説
共有不動産のトラブルに関して弁護士に依頼する大きなデメリットは、弁護士へ支払う高額費用の存在です。相談料、着手金、報奨金などを全額合わせると、30万円以上かかる可能性があります。
また高額費用を支払って弁護士に依頼した場合でも、必ずしも希望通りの結果になるとは限りません。
たとえば共有物分割請求訴訟に発展して「単独名義にしたい」と望んでいても、裁判所が「換価分割(不動産を競売にかけ、売却金を共有者で分ける方法)で解決せよ」と判決を下せば、共有不動産は競売にかけられるでしょう。もし裁判まで移行すると、弁護士と言えども解決まで半年~数年の時間がかかってしまうこともあります。
「とにかく早く共有持分を手放したい」「共有状態を解消したい」という場合は、買取業者への相談を検討することをおすすめします。
とはいえ、弁護士に依頼せずに共有者同士だけで共有不動産の問題に対処しようとすると、より問題が大きくなって弁護士費用を超える不利益を被る可能性が高いです。ケースによっては共有不動産問題の解決に弁護士は必要ないのケースに該当しない限りは、早めの弁護士への相談を推奨します。
以下では、実際に弁護士への依頼でかかる費用の目安を見ていきましょう。
相談料|5,000円〜1万円程度
共有持分の売却に関するトラブルを弁護士に相談する場合、相談料が発生します。
相談料とは、弁護士に法律相談をする際にかかる費用です。費用相場は30分で5,000円〜1万円程度です。事務所によっては初回相談を無料に設定しているところもあります。
相談料を抑えたいなら、無料相談を実施している事務所を選ぶとよいでしょう。
ただし無料相談でも制限時間を過ぎると費用が発生することがあるため、あらかじめ不動産に関する書類や協議内容をまとめた書面などを準備しておき、スムーズに相談できるように工夫することが大切です。
着手金|20万円〜30万円程度
弁護士に相談する場合、ほとんどの事務所で着手金がかかります。
弁護士に正式な依頼をした場合にかかる費用のこと。結果に関わらず発生するため、希望通りの結果にならなかったとしても基本的には返金されない。
着手金の相場は20万円〜30万円程度です。
なお、「第二東京弁護士会」では、法律相談センターで法律相談を受けたあと、相談を担当した弁護士に民事事件を依頼する際の着手金の目安を公開しています。弁護士報酬は自由に設定できるためあくまでも一例にすぎませんが、参考にはなるでしょう。
経済的利益の金額 | 着手金の目安 |
---|---|
300万円以下の部分 | 8% |
300万円超え3,000万円以下の部分 | 5% |
3,000万円超え3億円以下の部分 | 3% |
3億円を超える部分 | 2% |
「経済的利益」とは、弁護士に対応を依頼した紛争が解決した際に、依頼者が得る利益です。
例えば、依頼者が1,000万円の経済的利益を得る場合、着手金の目安は以下のようになります。
以下のサイトを利用すると、弁護士費用のシミュレーションが可能です。参考にしてください。
参考:弁護士費用の計算|ke!san 生活や実務に役立つ計算サイト
報酬金|経済的利益の6〜10%程度
弁護士に依頼した場合、結果に応じて報酬金の支払いが必要です。
依頼した事件が解決したときにかかる費用。失敗に終わった場合は発生しないが、一部でも「成功した」といえる結果を得たときは、成功の度合いに応じて報奨金を支払う。
報酬金の金額は事務所によって異なりますが、「経済的利益の一定の割合」となるケースが多く、経済的利益の6%〜10%程度が相場です。こちらも、東京第二弁護士会のWebサイトに報酬金の目安が記載されているため紹介します。
経済的利益の金額 | 報酬金額の目安 |
---|---|
300万円以下の部分 | 16% |
300万円超え3,000万円以下の部分 | 10% |
3,000万円超え3億円以下の部分 | 6% |
3億円を超える部分 | 4% |
例えば、経済的利益が1,000万円の場合、報酬金の目安は以下のとおりです。
以下のサイトでは、報酬金のシミュレーションも可能です。ぜひ参考にしてください。
参考:弁護士費用の計算|ke!san 生活や実務に役立つ計算サイト
その他の費用
相談料や着手金、報酬金以外にも、弁護士に依頼した場合に発生する費用があります。
詳細は以下のとおりです。
費用 | 内容 |
---|---|
日当 | ・弁護士が法廷への出頭や交渉などで出張したときに発生する ・半日3〜5万円、1日5〜10万円が相場 ・弁護士によって金額は異なる ・着手金に含まれる場合もある |
実費 | ・業務を遂行するうえで実際にかかった費用 ・収入印紙代や切手代、交通費、宿泊費、交付手数料など |
共有物分割請求での弁護士費用について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参照してください。
関連記事:共有物分割請求の弁護士費用はどれくらい?算出方法と節約術を詳しく解説|共有持分の教科書
【事例別】共有不動産問題で弁護士が解決できる問題
共有不動産の問題を弁護士へ相談する際、「弁護士に相談したら、実際にどのような問題に対応できるのか」が気になる人も多いと思われます。ここからは共有不動産問題で弁護士が解決できる問題を、以下の事例別で解説します。
- 【共有不動産全般】共有者と連絡が取れない・話し合いにならないケース
- 【共有持分売買】ほかの共有者が売却や買取に応じないケース
- 【共有持分放棄】ほかの共有者が共同申請などに協力しないケース
- 【共有物分割請求訴訟】話し合いでは共有状態の解消ができないケース
- 【共有持分相続】共有持分の相続問題が多すぎて対処しきれないケース
【共有不動産全般】共有者と連絡が取れない・話し合いにならないケース
共有者と連絡が取れない、または共有者が話し合いに応じないケースなら、弁護士を通じた交渉を試みてみましょう。弁護士を通した交渉なら相手へ本気度が伝わり、無視を決め込んだりはぐらかしたりされる確率は下がります。
2023年4月1日から施行された改正民法のおかげで、所在がわからない共有者がいても対応がしやすくなりました。弁護士を通じて正しく申立できれば、不明共有者問題を以前よりスムーズに解決できるでしょう。
具体的には現行制度だと、弁護士への相談で以下の対応について代行・サポートを期待できます。
- 職務上請求によって、居場所がわからない共有者の所在を調べられる
- 裁判所に「不在者財産管理人選任」の申し立て手続きを代行してくれる
- 不明共有者がいる場合、「不明共有者以外の全員の同意による変更行為の決定」について裁判所での手続きを代行してくれる
- 不明共有者がいる場合、「不明共有者以外の過半数の同意による管理行為の決定」について裁判所での手続きを代行してくれる
- 不明共有者の共有持分を取得する手続きを裁判所にて申し立てられる
しかし改正民法で不明共有者への対応がやりやすくなった一方、法的知識がなければ改正民法の制度を活用するのは難しいのが実情です。弁護士へ早期に相談して現行制度を素早く活用できれば、すぐに問題解決に向かう可能性が高まります。
共有人に認知症の傾向が見えるときも、法律行為ができなくなる前に弁護士へ相談して対応策をおこなうとよいでしょう。たとえば家族信託の契約を締結しておけば、共有者が認知症になったときも受託者の判断で共有持分を処分できます。
参考:イエコン「共有持分を家族信託するメリット・デメリットは?トラブル回避の例も解説」
【共有持分売買】ほかの共有者が売却や買取に応じないケース
ほかの共有者が共有持分の売却や買取に応じないときも、弁護士を通じた交渉が効果的に働く可能性が高くなります。自分の共有持分の売却や相手への買取請求を求めるとき、弁護士できる対応は次の通りです。
- 弁護士からの内容証明郵便によって、売買について本格的な協議をした意思を示せる
- 弁護士を通じた論理的な協議ができれば、共有持分の売買について相手に納得してもらいやすくなる
- 共有持分の売却や買取請求をするとき、契約内容に問題がないかリーガルチェックしてくれる
- 自分の共有持分を手放した後の共有者とのトラブルを法的根拠を基にフォローしてくれる
- 相手が法外な金銭要求や話し合い拒否を続けるときでも、そのまま共有物分割請求訴訟へ移行しやすい
逆に、あなたが他の共有者から売却・買取を強要されている立場でも弁護士は力になってくれます。第三者である弁護士を通じて共有者同士で話し合えば、解決に向かう可能性が上がります。
【共有持分放棄】他の共有者が共同申請などに協力しないケース
共有持分放棄は自分の意思表示のみで可能ではあるものの、第三者対抗要件を具備するには、共有持分に関する移転登記が必要です。共有持分の放棄は別の人への権利移動に当たるため、登記するには放棄者は登記義務者、他の共有者は登記権利者として共有者全員での共同申請が求められます。
(共同申請)
第六十条権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
e-Gov法令検索 不動産登記法
もし他の共有者が共同申請に協力しないときは、弁護士を通じた対応が有効です。弁護士と作成した内容証明郵便で放棄の意思表示を書面で残しておけば、強力な法的根拠になります。内容証明郵便を送っても相手が登記に協力しないときは、そのまま「登記引取請求訴訟」へ移行できます。登記引取請求訴訟で勝訴すれば、単独での登記が可能です。
【共有持分割合の家賃請求】共有者が占有・家賃未払するケース
共有者が共有不動産を占有したり占有している分の家賃未払いをを続けたりするときは、弁護士を通じた法的措置を検討しましょう。第三者の不法占拠に有効な明け渡し請求はできないものの、不当利得返還請求による家賃請求は可能です。
弁護士に不当利得返還請求に関する書類作成や交渉を任せることで、共有持分に応じた家賃を回収しやすくなります。そのまま自分の共有持分を手放したいときは、占有者に対して共有持分の買取請求を求めることも可能です。弁護士を通じた交渉なら、相手も納得して買取に応じる可能性も高くなるでしょう。
もし相手が正当な理由なく共有不動産を占有しているときは、弁護士と協力して法的証拠を集めることで、合法的に共有不動産から追い出せる可能性があります。
【共有物分割請求】話し合いでは共有状態の解消ができないケース
話し合いで共有状態がなかなか解消できない場合、弁護士に協力を仰ぐことをおすすめします。共有物分割請求は法的手続きや交渉ごとが多く、争う姿勢を見せる共有者相手では問題がこじれるケースが多いからです。
弁護士に依頼すれば、話し合いの段階である共有物分割協議の段階から第三者の冷静な意見を取り入れられます。とくに相続関係が絡む共有物分割なら、相続関係の専門知識を持った弁護士のアドバイスは非常に有用です。弁護士なら離婚による共有不動産を含めた財産分与、共有者全員の同意が必要な売却・取り壊しを目指す協議などにも対応してくれるでしょう。
たとえば弁護士なら、以下の共有物分割のなかからもっとも状況に合う方法を選び、実施するためのサポートをしてくれます。
分割方法 | 内容 |
---|---|
現物分割 | ・共有物を物理的に分割する方法 ・原則的に現物分割の方法を取られるケースが多い ・分筆できない不動産を所有する場合は選択されにくい ・分筆によって土地の資産価値が毀損するリスクがある |
代償分割(価格賠償) | ・特定の共有者が不動産を取得する代わりに、他の共有者に対して代償金を支払う方法 ・「部分的価格賠償」と「全面的価格賠償」の2種類がある 【部分的価格賠償】 【全面的価格賠償】 ・他の共有者に金銭的な余力がないと選択されにくい |
換価分割(代金分割) | ・不動産を競売にかけて売却し、売却代金を持分割合に応じて分配する方法 ・競売にかけた場合、通常の市場価値よりも売却金額が下がる可能性がある |
協議がまとまったときに「共有物分割協議書(合意書)」を弁護士に作成してもらっておけば、共有者が後から合意内容を守らなかったときに、法的な反撃が可能です。
協議がまとまらないときでも、弁護士ならその後に共有物分割請求調停、共有物分割請求訴訟まで発展しても、一貫して対応してくれます。
【共有持分相続】共有持分の相続問題が多すぎて対処しきれないケース
共有持分の相続が発生したときは、相続税や相続後の管理などを含めた共有持分の話し合い(遺産分割協議など)が必要になるため、共有不動産の問題がより複雑化しやすくなります。そのため、相続全般の対応を含めたトータルサポートを、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士になら、生前贈与や遺言書作成といった相続発生前の相続対策についても相談できます。ただでさえトラブルが多い共有持分および相続の対応も、弁護士と協力すれば対応しやすくなるはずです。以下では、共有持分の相続トラブルを解決する方法として、弁護士に依頼できる「生前の遺言書の作成」と「遺産分割協議」のサポートについて解説します。
生前の遺言書の作成
遺言書なら、相続時の共有持分の相続割合を被相続人の意思で決められます。遺言者の意思が大きく優先される相続において、遺言書の効力は遺産分割協議や相続人順位よりも優先されるからです。
法的に有効な遺言書を作成するには、財産調査を基にした正確な財産目録、不備のない遺言書、相続トラブル回避のための具体案などが必要です。弁護士なら、遺言書の内容のアドバイスや遺言書作成、遺言執行者の代行などを依頼できます。
遺産分割協議
遺産分割協議は、遺産の分割割合について相続人全員で話し合うことです。遺産分割協議のサポートを弁護士になら、遺産分割協議の進行サポート、財産調査を基にした遺産分割についてのアドバイス、遺産分割協議書の作成などを依頼できます。
【共有物分割請求】話し合いでは共有状態の解消ができないケースで解説した、現物分割・代償分割・換価分割のなかでもっとも有効な解決策を提案してくれるでしょう。
共有不動産問題で最適な弁護士を選ぶには?探し方やチェックポイント
共有不動産問題をスムーズに解決するには、依頼する弁護士の選定も大切です。弁護士にもそれぞれ得意分野が存在しており、共有不動産や相続関係の依頼実績がない弁護士事務所だと、思うような対応をしてくれない可能性があります。
共有不動産問題で最適な弁護士を選ぶには、以下の探し方・チェックポイントを確認しておいてください。
- 共有持分や相続関係の実績があるか
- 複数の弁護士に見積もりをお願いしているか
- 誠実に対応してくれる弁護士かどうか
それぞれ詳細を解説します。
共有持分や相続関係の実績があるか
依頼予定の弁護士が、これまで共有持分や相続関係の実績があるかは必ず確認しておきましょう。
共有不動産に関する問題は、権利関係が複雑かつ相続や離婚なども絡むことも珍しくありません。そのため、共有者・相続人などとの交渉や情報収集の経験がある弁護士のほうが、スムーズかつスピーディーな対応を期待できます。
弁護士の得意分野や実績を見るときは、弁護士事務所の公式ページなどで確認してください。
誠実に対応してくれる弁護士かどうか
誠実に対応してくれる弁護士かどうかを見極めるのは、共有不動産問題を解決するためにも非常に重要な要素です。
あなたのニーズに沿う形で共有不動産問題を解決するには、あなたの状況をしっかりヒアリングしたうえで、ヒアリング内容を基に協議・訴訟で主張してくれる弁護士が必要です。「時間がないから手短に」「素人だから自分の言うことを聞けばよい」とこちらの意見を聞かない弁護士だと、望まない形での問題決着となる可能性が高くなります。
また、依頼着手前にリスクについても話してくれる弁護士かどうかも見ておきましょう。成果報酬や着手金優先の弁護士は、リスクを隠してあたかも必ず成功するかのように話して契約しようとします。事前にリスクを共有してくれる弁護士はそれだけでも誠実であり、信頼に値すると言えるでしょう。
複数の弁護士に見積もりをお願いしているか
弁護士へ本格的に依頼する前に、複数の弁護士に見積もりをお願いすることを推奨します。理由は次の通りです。
- 弁護士費用の高さや、金額に対するコストパフォーマンスを比較できる
- サービス内容、弁護士の態度、弁護士事務所の雰囲気など金額以外の部分も比較できる
1つだけに絞って依頼してしまうと、その弁護士事務所に問題があったとき、高額の弁護士費用だけがなくなってしまう可能性があります。複数の弁護士を比較検討したうえで、あなたが抱える共有不動産問題を解決に導けるところを選べるようにしましょう。
共有不動産問題で弁護士に依頼する主な流れ
共有不動産問題で弁護士に依頼する際の、主な流れは次の通りです。
- 共有者間の話し合いで解決できないか手を尽くす
- 解決できない問題が明確になったら弁護士に相談する
- 「共有物分割調停」に進むときは家庭裁判所へ申し立てる
- 調停でも解決しないときは「共有物分割請求訴訟」などを提起する
- 裁判で勝訴・和解すれば共有状態は解消できる
当記事では、「共有物分割請求をおこなう場合」を想定して解説します。以下では、それぞれのセクションの詳細を見ていきましょう。
共有者間の話し合いで解決できないか手を尽くす
共有不動産の問題を解決するために、まずは共有者同士で話し合います。話し合いによる解決がもっとも簡単であるほか、最終的に訴訟を申立てるためにも協議した事実が重要になるからです。
共有者間の話し合いで解決できるのなら、高額の弁護士費用や法的手続きにかかる労力が必要なくなります。たとえば共有者が親族で関係性が悪くないなら、自分の共有持分を買い取ってもらえないか相談してみるといいでしょう。
話し合いによって共有状態の解消に合意が得られた場合は「共有物分割協議書(合意書)」を作成し、内容を書面化しておくことをおすすめします。訴訟に発展したときや、共有者があとから「同意した覚えがない」などと言いだしたときに、合意の事実を証明できます。
共有者同士での協議が難しいときは、協議の時点で弁護士に交渉を代行してもらうことも可能です。話し合いがスムーズなら、共有物分割協議書の作成のみを依頼するのもよいでしょう。
解決できない問題が明確になったら弁護士に相談する
話し合いがまとまらないときは、こじれてしまう前に弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談すれば、仲介に入ってもらって協議を継続したり、代理人として協議に参加してもらえたりといったことが可能です。また、調停や訴訟に移行する場合、裁判所への手続きや対応なども代行してもらえます。
弁護士に相談するなら、以下の点を確認しておくことが大切です。
- 弁護士費用がどれくらいになるか
- 自分が希望する状況になる見込みがあるか
正式に依頼したあとは、弁護士の指示に従って行動するのが基本です。
たとえば、弁護士に依頼したにもかかわらず弁護士に相談なく自分で勝手に交渉すると、弁護士の計画が崩れてしまったり、共有者間の関係が悪化したりなどのトラブルが発生し、平和に解決できるはずの問題が大きくなってしまうリスクがあります。
ただし、こちら側の意見を一切言わずに弁護士の言いなりになるのも避けたほうが無難です。自分が望む共有不動産問題の解決のためには、状況や希望を弁護士にヒアリングしてもらい、共有した内容を基に動いてもらう必要があるからです。
基本は弁護士にまかせつつ、希望を通したいところや不満があるところは、都度相談するのがおすすめです。仮にこちらが無茶な要求をした場合でも、弁護士が法的根拠を基に、なぜ無茶なのかを納得できる形で解説してくれるでしょう。
「共有物分割調停」に進むときは家庭裁判所へ申し立てる
弁護士を入れた共有物分割協議でも話がまとまらないときは、「共有物分割調停」に進みます。
当事者だけでなく、家庭裁判所の「調停委員」に立ち会ってもらい、共有状態を解消するための話し合いを行うこと。
調停委員は、以下の人の中から、裁判所が選任します。
- 社会生活における豊富な経験や専門的な知識を持つ人
- 地域社会で幅広く活動してきた人
たとえば弁護士や医師、不動産鑑定士といった専門家や、地域に根ざした活動を行ってきた人などが、調停委員に選ばれる傾向にあります。
調停は、裁判所による判決ではなく、あくまでも「共有者同士での合意」を目指すものです。調停で話し合いがまとまると、裁判によることなく共有状態を解消できます。
なお、共有物分割協議が済んでいる場合は、調停を行わず直接訴訟を申立てられます。
参照:調停委員|裁判所
調停でも解決しないときは「共有物分割請求訴訟」などを提起する
協議や調停を行っても共有状態が解消できない場合は、「共有物分割請求訴訟」を申し立てます。共有物分割請求訴訟では、原則として現物分割・代償分割・換価分割のいずれかの分割方法をおこなう旨を、裁判所が判決します。
共有物分割請求訴訟を申し立てるのは、共有状態にある不動産の所在地、もしくは被告の住所地を管轄する地方裁判所です。
訴訟の申し立てに必要な書類は以下のとおりです。
訴状の正本と副本 | 弁護士が作成する
・正本:裁判所に提出 |
---|---|
共有物分割協議が不調に終わったことを証明できるもの | 協議を申し入れた際の内容証明郵便・議事録など |
固定資産評価証明書 | 市区町村役場で取得 ※手数料は200〜300円程度 |
登記簿謄本(登記事項証明書) | 法務局またはオンラインで取得 ※手数料は480〜600円 ・法務局の窓口請求・窓口受取:600円 ・オンライン請求・郵送:500円 ・オンライン請求・窓口受取:480円 |
収入印紙 | 不動産の固定資産評価額によって異なる ※3〜5万円程度が一般的 |
郵便切手代 | 共有者の人数によって異なる ・共有者が1人なら6,000〜8,000円程度 ・2人目以降は1人につき+2,000円程度 |
共有物分割請求訴訟の提起から1カ月程度が経過した時点で、共有者全員に呼出状が送付されます。
裁判の当事者全員に裁判の期日を通知するための書面。裁判所から送付される。
呼出状は「特別送達」という郵便物で配送され、受け取る際は本人に手渡されます。訴訟の当事者(他の共有者)は、呼出状が届いてから訴訟が起こされていることを知るケースがほとんどです。
呼出状が送付された当事者は、記載された日時に裁判所に出向き「口頭弁論」に出席するか、「答弁書」を提出しなければなりません。
口頭弁論 | 法廷で意見を述べる機会のこと。訴状の内容に間違いがないかどうかの確認も行われる。 |
---|---|
答弁書 | 裁判に関する認否や意見を記載した書面。裁判所に提出すると、「口頭弁論」への出席の代わりとしてみなされる。 |
口頭弁論に出席できないときは、必要事項を記載した答弁書を「期日の1週間前まで」に提出する必要があります。
答弁書を提出せず、口頭弁論にも出席しなかった場合は「主張を放棄した」と判断され、申立人の主張がそのまま通る可能性があります。
弁護士に依頼しているときは、裁判の期日に弁護士が口頭弁論に出席し、依頼人に代わって主張や立証を行います。弁護士に一任することも可能ですが、裁判に出席したいなら、弁護士とともに裁判所に出向いても構いません。
他の共有者から反論があるときや事実確認が必要な場合は、1回目の口頭弁論が終わったタイミングで次回の期日が提示され、口頭弁論が複数回実施されます。なお、1カ月程度のスパンで行われるのが一般的です。
裁判で勝訴・和解すれば共有状態は解消できる
裁判所は共有者の主張をまとめて審理し、総合的に判断して共有状態の解消方法を決定します。ただし、判決が下る前に裁判官から和解勧告を受け、和解によって訴訟が終結することもあります。
和解を選択した場合のメリットは以下のとおりです。
- 共有状態を早く解消できる
- 共有者が主張した分割方法で不動産を分けられる可能性が高い
和解できないときは裁判所の判決を待って、内容に従った分割方法で共有状態を解消します。
注意点は、共有物分割請求訴訟を起こしても、「申立人が希望したとおりの判決が下るとは限らない」点です。
ただし、判決内容に不服があるなら、控訴の申立てが可能です。より不利な結果になる可能性もありますが、判決に納得できない場合は「判決から2週間以内」に申立てましょう。
以下の記事では、共有物分割請求訴訟についてわかりやすく解説しています。共有物分割請求訴訟について詳しく知りたい場合はぜひ参考にしてください。
ケースによっては共有不動産問題の解決に弁護士は必要ない
「共有不動産問題は弁護士に依頼したほうがよい」とここまで解説してきましたが、ケースによっては弁護士に依頼せずとも解決できる可能性があります。具体的には以下の2ケースです。
- 共有者同士の話し合いだけでまとまりそう
- 自分の共有持分だけ売却する
もし上記に該当するなら、弁護士費用や訴訟の時間などを使わずとも、トラブルが解消できるかもしれません。以下で詳細を見ていきましょう。
共有者同士の話し合いだけでまとまりそう
共有者同士の話し合いで解決が可能なケースなら、弁護士に依頼する必要がない可能性があります。弁護士が登場することで他の共有者が警戒したり、かえって問題が大きくなったりする可能性があるためです。
また、他の共有者とまだ何も話し合っていないにもかかわらず、突然弁護士に依頼するのもあまりおすすめできません。他の共有者から不信感を持たれ、良好だった関係が悪くなってしまうおそれがあります。
関係がこじれてしまってからでは遅いですが、かといって問題にもなっていないうちから弁護士に依頼するのは逆効果です。相談のタイミングは慎重になる必要があるでしょう。
自分の共有持分だけ売却する
単に共有持分の現金化や共有関係からの脱却が目的なら、弁護士への相談より先に、自分の共有持分を売却できないかを確認してみましょう。
売却先としては、「他の共有者」「不動産仲介会社を通じた第三者」「不動産の買取専門業者」などが挙げられます。たとえば共有者の中に良好な関係を築いている人がおり、その共有者が持分買取に積極的であれば、弁護士に依頼せずとも問題を解決できる可能性があります。
1.共有不動産の売却や賃貸に共有者の同意が必要になるで解説した通り、自分の共有持分だけを売却するなら、他の共有人の同意が必要ありません。共有持分の放棄という手もありますが、現金化や共同申請の手間などを考えると、売却のほうがおすすめです。
ただし以下のようなケースであれば、やはり弁護士に相談すべきです。
- 共有者との仲が険悪
- 持分を買い取ってくれる共有者がいない
- すでにトラブルが発生している
上記のような状況でなければ、まず他の共有者や業者に相談してみることをおすすめします。
なお、共有持分を売却することについて詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:共有持分の売却相場は「市場価格よりも安め」が基本?売却先によっても共有持分の相場感は変わる理由について解説|イエコン
共有持分の売却で対応するなら弁護士よりも買取業者へ相談!
「とにかく共有不動産の共有持分を手放したい」「少しでも現金化したい」という場合は、弁護士よりも共有持分を取り扱っている専門の買取業者への相談を推奨します。買取業者への売却をおすすめする理由は次の通りです。
- 共有持分でも適正価格で買い取ってくれるから
- 買手を探す必要がなくなるから
- 提携している弁護士・司法書士がサポートしてくれるケースがあるから
- 契約不適合責任免責になることが多いから
- 第三者に知られることなく共有持分を売却できるから
- 自分の相続人に迷惑をかけずに済む
それぞれの詳細を見ていきましょう。
共有持分でも適正価格で買い取ってくれるから
共有持分に精通した買取業者なら、共有持分であっても適正価格で買い取ってくれるメリットがあります。
本来、共有持分は権利関係の複雑さや利用権の制限などが要因で、一般の不動産市場での需要が低いうえに更地価格の10~50%以下で取引されることも珍しくありません。そもそも買手が見つからないこともあるでしょう。
しかし、共有持分に精通した買取業者は共有持分の活用方法を熟知しているため、共有持分でもしっかりと査定して価値に見合った金額を掲示してくれます。「共有持分は売れない」という固定概念を、買取業者なら払拭してくれるでしょう。
また、不動産の売却に仲介手数料がかからずコストを抑えられるのも、買取業者に売却するメリットです。
不動産を売却するときは、不動産会社に売却を依頼し、不動産会社が買主を見つけてくるのが一般的です。この場合、不動産会社は売り手と買い手を仲介しているため、仲介手数料が発生します。
仲介手数料は、法令によって上限金額が以下のように決められています。
取引物件価格 | 仲介手数料の上限額 |
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400万円超えの場合 | 取引物件価格×3%+6万円+消費税 |
200万円超え400万円以下の場合 | 取引物件価格×4%+2万円+消費税 |
200万円以下の場合 | 取引物件価格×5%+消費税 |
※取引物件価格はいずれも税込です。
例えば、不動産の共有部分が1,000万円で売却できた場合、39万6,000円(税込)の仲介手数料が発生します。
しかし買取業者に売却すれば、仲介手数料がかからない分コストカットが可能です。
買手を探す必要がなくなるから
共有持分を買取会社に売却するメリットは、共有持分をスピーディに売却できることです。共有持分を売却したい共有者と、共有持分を買い取る専門業者が直接売買契約を締結するためです。
提示された金額に納得できれば、共有持分をすぐにでも売却できます。
共有持分は一般的な不動産とは異なり、自由に活用したり、処分したりすることが難しいため簡単に売却できません。一般の人に加えて不動産会社に買い取りを断られるケースも珍しくなく、売却できるまでに相当な時間がかかることもあります。
そのため共有持分は、共有持分の買い取りを専門に行う業者に売却するのがおすすめです。できるだけ早く共有状態から脱したいときや現金化を急ぐ場合は、専門の買取業者に相談しましょう。
提携している弁護士・司法書士がサポートしてくれるケースがあるから
買取業者のなかには、弁護士や司法書士と提携しているところがあります。士業と提携している買取業者なら、共有者同士の争いや売買時のトラブルなどにも、すぐに対応が可能です。他
たとえば弊社株式会社クランピーリアルエステートは、全国1,500以上の士業と提携する「法律に強い買取専門業者」です。共有持分の売買や売却後の法的トラブルにも、適切に対応できます。
契約不適合責任免責になることが多いから
買取業者の特徴の1つに、「契約不適合責任」が免責になるところが多いことが挙げられます。
売買契約などの契約後に、引き渡したものの種類、品質、数量に関して契約に適合しないものがあるとき、売主に対して発生する責任。見つかった不動産の瑕疵への対応や、損害賠償請求に応じる必要がある。
契約不適合責任を免責してくれる買取業者なら、売却した後に何かしらの責任が発生する可能性が極めて低くなります。安心して共有持分を売却できるでしょう。
第三者に知られることなく共有持分を売却できるから
共有持分の買取業者を利用する場合、第三者に知られることなく共有持分を売却できます。買取業者に売却する場合、一般のユーザーから買い手を探す必要がないためです。
通常の不動産売却では、不動産会社が広告を打ったりポータルサイトで売却情報を宣伝したりして買い手を探します。そのため、他の共有者や近隣住民に「不動産を売りに出している」と知られてしまうことがあります。
しかし買取業者に売却するなら、業者が買い手となるため広告や宣伝を行う必要がありません。「不動産の売却を誰にも知られずに進めたい」という場合におすすめです。
自分の相続人に迷惑をかけずに済むから
共有持分の買取業者を利用すれば、自分の相続人に迷惑をかけずに済むというメリットがあります。
共有不動産で相続が発生すると、不動産の権利関係がさらに複雑化します。相続によって共有者が増えればその分コミュニケーションが取りづらくなるため、変更行為や管理行為を行うための協議は難航しやすくなるでしょう。
共有不動産は、自分の希望だけでは売却できません。うまく活用するのが難しく、「住んでもいないのに固定資産税や維持費を負担し続けなければならない」という状況に陥る可能性が高いです。
もし自分が死亡して配偶者や子どもが相続すると、相当な迷惑をかけてしまうおそれがあります。不動産の共有状態はできるだけ早く解消することをおすすめします。
まとめ
共有持分を売却するにあたって、弁護士のサポートを受けたほうがよいケースについて解説しました。
不動産の共有状態が続いている場合、共有者同士の意見の相違やルール違反、共有者の所在不明など、さまざまなトラブルに発展するおそれがあります。そのため、できるだけ早く共有状態を解消することをおすすめします。
不動産の利用方法について共有者同士でもめているケースや共有者の中に所在不明者がいるときは、共有不動産に強い弁護士に相談することを検討しましょう。共有状態のスムーズな解消が期待できるほか、交渉の代行やトラブル・訴訟への対応も可能です。
ただし、共有者同士の話し合いで解決できる場合や、単に現金化や共有関係からの脱却が目的であるケースなど、弁護士に依頼しないほうがよいこともあります。ぜひ本記事を参考に、共有持分の売却を進めていきましょう。
弊社株式会社クランピーリアルエステートは、共有不動産の共有持分の買取を積極的におこなっています。無料査定・無料相談から対応いたしますので、共有不動産の売却を検討しているなら、ぜひ下記の電話窓口、無料査定フォーム、LINEの無料査定相談をご利用ください。