共有持分の売却を弁護士に依頼するメリットは?依頼すべきケースや費用も解説
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不動産における共有持分とは、共有状態にある不動産のうち、それぞれの所有者が持つ割合のことです。
不動産の共有状態が長く続くと、以下のようなトラブルに発展する恐れがあります。
- 共有者間で不動産の利用方法が決まらない
- 共有者間で決めた不動産利用時のルールが守られない
- 他の共有者と連絡が取れない、所在がわからない
- 共有者が認知症になり法律行為が行えない など
これらのトラブルを避けるためにも、弁護士に相談した共有持分の売却を進めるのがおすすめです。
弁護士に依頼して売却を進めれば、共有者間での協議や交渉を代行してもらえるほか、交渉や売却に必要な書類の収集や作成、手続きの代行を依頼できます。
疎遠な共有者と交渉する必要がなく、トラブルにも対応してもらえて、訴訟に発展した場合もサポートしてもらえます。
そのため、自分1人で対応するよりも、スムーズに共有持分を売却でき、共有状態を解消できるでしょう。
今回は共有持分の売却を弁護士に依頼するメリットや費用について解説します。共有持分の売却を弁護士に依頼する流れも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
共有持分とは
共有持分が発生するのは、夫婦や親族、複数名で資金を出して不動産を購入したケースや、相続が発生して1つの不動産を複数の相続人が相続したケースです。
共有状態にある不動産全体は、共有者全員の合意がなければ売却できません。一方、自分の共有持分のみを売却するには、他の共有者の合意は不要です。
ここでは、不動産の共有持分について詳しく解説します。
共有不動産における共有者の所有権割合
1つの不動産を複数人が共同で所有することを共有といい、共有中の不動産を共有不動産といいます。
共有不動産においては、それぞれの共有者が保有する所有権の割合が決められています。この所有権の割合が共有持分です。
持分の割合は自由に決めることはなく、その不動産を購入した際の費用の割合や、相続した際の相続人としての割合に応じて決められるのが原則です。
例えば、7,000万円の不動産物件を夫が5,000万円、妻が2,000万円を出して購入した場合の共有持分は以下の通りです。
夫の共有持分 | 妻の共有持分 |
---|---|
5,000万円÷7,000万円=71.4% | 2,000万円÷7,000万円=28.6% |
また、遺産相続が発生した際、遺言によって相続方法が決められていない場合は、基本的に不動産は法定相続人によって共有されます。例えば、被相続人の配偶者と子ども2人が評価額8,000万円の不動産を相続した場合の共有持分は以下の通りです。
配偶者の共有持分 | 子ども1の共有持分 | 子ども2の共有持分 |
---|---|---|
8,000万円×1/2=4,000万円 | 8,000万円×1/4=2,000万円 | 8,000万円×1/4=2,000万円 |
※相続によって共有状態となった不動産の共有持分の割合は法定相続分に従う
なお、持分の割合は登記事項証明書に、所有者の住所や氏名とともに表示されており、所有の手数料を支払えば誰でも確認可能です。
共有持分が発生するケース
不動産の共有状態によって共有持分が発生するのは、以下のようなケースです。
- 夫婦や親族と資金を出し合って1つの不動産を購入したケース
- 遺産相続の発生によって被相続人が保有していた不動産を複数の相続人が相続したケース
- 複数名で資金を出し合って1つの不動産を買い取ったケース
- 第三者が誰かの共有持分を購入した場合
夫婦で1つの不動産を共同で購入した場合、共有名義となります。
例えば、夫婦のいずれか単独名義で住宅ローンを組めなかった場合、夫婦が共有でローンを組むペアローンであれば、住宅ローンを組めて住宅を購入できる場合があります。
この場合、購入住宅は夫婦の共有名義となり、購入資金の支出割合によって共有持分が決まります。
また、遺産である不動産を複数名の相続人で分割した場合でも、不動産の共有状態が発生します。持分割合は基本的に法定相続分に従います。
さらに、血縁関係がない人同士が資金を出し合って1つの不動産を購入した場合も、購入した人すべてが所有者となる不動産の共有状態が発生します。
他にも、共有者の誰かが自分の共有持分を売却した場合、赤の他人が共有者になる可能性があります。
共有不動産の売却は共有者全員の合意が条件
共有不動産の共有者ができることは以下の通りです。
できること | 内容 | 条件 |
---|---|---|
変更行為(処分や売却) |
不動産の売却や贈与、増改築、分筆、長期の賃貸借契約など ※民法第251条にて規定 |
すべての共有者の同意が必要 |
管理行為 | 短期の賃貸借契約、賃料の減額、リフォームなど |
持分割合の過半数の合意が必要 ※民法第252条にて規定 |
保存行為 |
不動産の修繕や法定相続による所有権移転登記、不法占拠者の追い出しなど ※民法第252条第5項にて規定 |
単独で実行可能 |
出典:共有持分の不動産も売却できる!4つの方法とかかる費用、トラブルへの対処法などを解説|不動産売却マスター不動産売却査定
共有状態にある不動産全体の売却や贈与を行う場合は、共有者全員の合意が必要になります。なお、共有者が自分の共有持分のみを売却する場合は、他の共有者の合意は必要なく、単独で行えます。
また、短期の賃貸借契約やリフォームといった管理行為を行う場合は、共有者の共有持分の割合に応じた過半数の同意が必要です。
一方、物件の状態を維持するための保存行為に関しては、単独で行うことができます。
上記のように、共有状態の不動産では何かを行うたびに他の共有者の合意を求めなければならないことに加え、各共有者の共有持分の割合が重要になることがあります。
参考:民法第251条 共有物の変更 民法第252条 共有物の管理|e-GOV 法令検索
自分の持分だけの売却は他の共有者の同意が不要
自分が所有する共有持分のみを売却する場合、他の共有者の合意は不要です。
自分の共有持分は自分だけの所有物であり、売却に際して他の共有者の意向は関与しないからです。
これは、民法第206条でも規定されており、適法行為となります。
ただし、一般の個人や不動産業者が、共有状態にある不動産の共有持分だけを購入するケースはほとんどありません。
不動産が共有状態にある場合、共有部分を購入したところで、その不動産を自由に取り扱ったり、活用したりするのが難しいためです。また、共有持分の購入によって、他の共有者との間でトラブルが発生する恐れもあります。
そのような場合は、他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう、もしくは他の共有者の持分を自分が買い取るよう持ちかけてみるといいでしょう。
例えば、ある所有者が共有状態の不動産に居住しており、他の共有者に対して家賃を知A払っているようなケースでは、有効な手段です。
居住している共有者は他の共有持分を買い取ることで、単独名義の不動産を所有できる他、家賃を支払う必要がなくなるからです。
また、共有持分の売却なら、専門の買取業者を利用するのもおすすめです。買取業者であれば共有持分の買取に積極的に対応してくれるため、共有状態を解消しやすいほか、まとまった現金も手にできます。
株式会社クランピーリアルエステートでは、共有持分の高価買取が可能です。買取実績も豊富で、多くのお客様からご相談いただいています。また、弁護士とも連携しており、共有者間でのトラブルにもしっかり対応できます。
詳しくは以下のURLをチェックしてください。
共有持分を高値買取!共有名義不動産買取の専門業者|クランピーリアルエステート
なお、共有持分の売却を巡って、他の共有者とトラブルになっている場合は、弁護士に相談するのが得策です。詳しくは共有持分の売却を弁護士に依頼するメリットを参照してください。
弁護士に依頼したほうが良い?共有持分のトラブル例
不動産の共有状態が続いた場合、他の共有者との間でトラブルが発生するケースが多くなります。
具体的にはトラブルの事例は以下の通りです。
- 不動産の利用方法が共有者間でまとまらない
- 共有者間での取り決めが守られない
- 共有者の連絡先が不明
- 離婚後も元の配偶者だけが共有物件に住み続けている
- 共有者が認知症で法律行為ができない
このようなトラブルに対応する、もしくはトラブルを避けるには、弁護士に対応を依頼することを検討してください。
それぞれ詳しく解説します。
また、共有持分のリスクについて詳しく知りたい場合は、以下の記事を参照してください。
不動産の利用方法が共有者間でまとまらない
不動産を複数人で共有している場合、不動産の利活用の方法がまとまらないケースがあります。
特に、遺産相続によって複数の相続人が不動産を取得した場合に起こりやすいトラブルです。
共有者によって不動産に対する考え方や希望が異なる場合、意見の相違が発生してトラブルとなります。
例えば、1人は不動産を取り壊しと売却を希望している、もう1人は物件に愛着があるのでリフォームや手直しをして住み続けたいと考えている、といったケースです。
この場合は、その不動産に住みたい人が、他の共有者の共有持分を買い取ったり、相続時に共有するのではなく、単独で相続したりすればトラブルには発展しにくいでしょう。
ただし、共有持分の評価額に相当する代償金を他の共有者に支払う必要があり、多額の出費に対応できないケースもあります。
また、不動産をリフォームしたり、賃貸借契約によって誰かに貸したりしたい場合でも、他の共有者の同意が必要になるため、共有者同士の意見がまとまっていないと活用が難しくなります。
不動産の活用方法や売却について、共有者間で意見が異なりまとまらないケースは、共有不動産で発生するトラブルの代表例といえるでしょう。
このような場合は、弁護士に代理人として協議を代行してもらうのがおすすめです。共有持分の売却や解消に精通した弁護士なら、こちらの考えを主張しつつ、法的な観点から交渉をまとめてくれる可能性が高いでしょう。
共有者間での取り決めが守られない
共有者間での約束事が守られないのも、共有不動産において発生しやすいトラブルの1つです。
例えば、親族や兄弟姉妹で不動産を共有している状態で、共有者のうちの1人がその不動産を使用している場合に良く発生します。
他の共有持分相当の家賃の支払いを条件に不動産の使用許可を出しているものの、経済状況や生活環境の変化などが原因で、家賃を滞納されたり、支払いに応じてもらえなくなったりする場合があります。
不動産を貸している側の共有者からすれば、実際に住んでいない不動産の家賃を支払ってもらえず、年ごとに固定資産税の支払いが行われなければならなくなります。
また、共有者が元から使用料を支払うつもりがなく、共有不動産の独占を考えているケースや、修繕費・固定資産税を支払わない共有者もいます。
さらに、事業用物件を共有している場合、ある共有者や利益を独占して他の共有者に収益を支払わないといったケースもあります。
このような場合でも、共有者同士の関係が悪化してトラブルに発展してしまうのです。
共有者間での取り決めが守られない場合も、弁護士に相談した方がいいでしょう。取り決めを守らない共有者が違法行為または不法行為を働いている場合に、法的な視点から指摘して解決策を提示してくれます。
万が一、調停や訴訟に発展した場合でも対応してもらえるでしょう。
共有者の連絡先が不明
複数名いる共有者の誰かの連絡先がわからない場合も、トラブルに発展するケースがあります。
共有者の連絡先が不明になるのは、以下のようなケースが考えられます。
- 共有者の家族から共有持分を相続した場合
- 共有者がすでに死亡している場合
- 共有している不動産が古く、一部の共有者と音信不通になっている場合
共有不動産の変更や管理には、他の共有者の同意が必要になります。しかし、連絡が付かないため同意確認が取れず、不動産の変更や管理ができなくなってしまうのです。
このような場合、かつては家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申請して、対応する必要がありました。
しかし、令和5年4月1日に施行された改正民法によって、共有者不明の不動産が少し扱いやすくなっています。
特に、所在がわからない共有者がいる場合、裁判所が一定期間の広告を行ったうえで、所在不明となっている共有者以外の共有者全員の同意、もしくは持分の過半数によって、共有不動産の変更・管理に関わる決定ができるようになりました。
ただし、この場合でも、家庭裁判所への申し立てや証拠の提出を行い、1ヶ月以上の異議届出期間や広告を実施しなければならず、手間や時間が掛かります。
他にも、固定資産税の納付に関わるトラブルが発生する場合もあります。
共有不動産の固定資産税を納付する場合、共有者の1人が代表して固定資産税を支払い、残りの共有者に対して共有持分に応じた固定資産税額を請求することが認められています。
しかし、所在がわからない共有者が存在する場合、その共有者から固定資産税を回収できなくなってしまうのです。
結果的に、連絡が付かない共有者が支払うべき固定資産税を、代表者が負担し続けることになります。
共有者の所在がわからなくなり、トラブルになるケースも多いため、不動産の共有状態はできるだけ早く解消すべきといえるでしょう。
また、所在がわからない共有者がいる場合も弁護士に相談してみましょう。
上述した民法の改正によって、共有不動産の共有者の所在が分からない場合の対応がこれまでとは変わっています。
他の共有者の申し立てによって、裁判所が所在不明共有者の持分を他の共有者に取得させるための裁判を行える制度が新設されていますが、制度の利用には条件があるほか、訴訟手続きが必要になります。
個人で適切に対応するのは難しいため、弁護士に相談して対応してもらうのがおすすめです。
離婚後も元の配偶者だけが共有物件に住み続けている
夫婦で一緒に購入した共有不動産に、離婚してからもいずれかの配偶者が住み続けている場合も、トラブルに発展する可能性があります。
そもそも、共有名義の不動産に離婚した夫婦の一方が住み続けることは可能です。
夫婦間で協議して決まった結果であれば、共有持分の割合や住宅ローンの返済割合などに関係なく、共有状態にある不動産に住むことに何ら問題がないためです。
しかし、ライフステージやライフプランに変更があった場合、勝手に売却したり、賃貸に出したりできません。
共有不動産であるため、変更行為を行うためには、相手の元配偶者の合意が必要になるからです。
そのため、共有不動産の変更行為や管理行為などを行うために、離婚した相手との関係を継続しなければならず、相手が合意しない場合は、売却もできません。
また、共有状態を継続していると、その不動産に住んでいなくても維持費が発生する他、配偶者が死亡した場合は、相続関係が複雑になります。
さらに、不動産をペアローンで購入し、完済前に離婚した場合、ローンの契約違反となることがあります。住宅ローンは契約者が居住することが条件で融資されるケースがほとんどで、契約者以外が居住したり、契約者が居住しなかったりする場合はルールに反するためです。
不動産が夫婦の共有名義となっており、その夫婦が離婚する場合、共有状態を継続するのはデメリットやリスクが大きくなります。離婚時の財産分与によって、夫婦いずれかの単独名義にするか、換金してから分与するなどの対策が必要になるでしょう。
このような場合も弁護士に相談すれば、元配偶者への連絡や交渉、合意の取り付けなどの対応を委託できます。トラブルを避けるためにも、専門家の力を借りることを検討してください。
共有者が認知症で法律行為ができない
不動産の共有者が認知症になった場合、法律行為が行えなくなるため、トラブルになりやすいといえます。
民法において、認知症と診断された人は意思能力がない者として扱われ、その人が行った法律行為が無効になります。
法律行為にはさまざまなものがありますが、不動産の売買や賃貸借契約の締結、介護施設への入居契約などができない他、委任状を作成して第三者に法律行為の代行を委任した場合でも、法律行為は無効になるのがほとんどです。
不動産の共有者が認知症になった場合は、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立て、不動産の売却などに対応する必要があります。
成年後見人には、親族を候補者にできますが、第三者である弁護士や司法書士などが選任されるケースが多いといえます。
注意したいのは、成年後見人制度を利用して共有状態の不動産を売却できたとしても、その後も成年後見を継続しなければならないということです。
親族が成年後見人となった場合、将来的に発生する契約行為や財産管理などにも対応する必要があり、時間や手間が掛かるでしょう。
また、弁護士など第三者が成年後見人になった場合、被後見人が死亡するまで成年後見人に報酬を支払う必要があります。
成年後見人が通常の後見事務を行った場合は、報酬の目安は月額2万円程度となる他、財産管理額が1,000万円超え5,000万円以下の場合は月額3万円~4万円、5,000万円を超える場合は月額5万円~6万円程度となります。
さらに、成年後見人は、一度選任されたら、勝手に変更・交代したり、辞任させたりできず、家庭裁判所の許可が必要です。
共有者が認知症になった場合、成年後見制度の申し立てや誰を成年後見人にするのかを協議する必要があります。また、共有者で合意した候補者が後見人に選任されるとも限りません。
そのため、共有者が認知症になる前に、共有状態を解消しておいた方が賢明です。早めに弁護士に相談しておけば、共有状態を解消でき、共有者の認知症によるトラブルを避けられるでしょう。
共有持分の売却を弁護士に依頼するメリット
共有持分を売却する場合、何らかのトラブルが発生する恐れがある他、時間や手間が掛かりやすいといえます。また、共有者との協議が必要な場合、精神的な負担が大きくなる恐れもあります。
そのため、個人で売却を進めるのではなく、弁護士に売却を依頼するのがおすすめです。ここでは、共有持分の売却を弁護士に依頼するメリットを解説します。
具体的なメリットは以下の通りです。
- 共有状態をスムーズに解消できる
- 疎遠な共有者と交渉する必要がない
- 共有者とトラブルが発生したら対応してもらえる
それぞれ詳しく解説します。
共有状態をスムーズに解消できる
共有持分の売却を弁護士に依頼するメリットの1つが、スムーズに共有状態を解消できることです。
弁護士に対応を依頼することで、最適な解決策を提案してもらえるためです。
共有者によって、共有に至った経緯や共有者同士の関係性、共有者自身の希望が異なります。法律の専門家である弁護士に依頼すれば、共有者の状況に応じた解決方法を提示してもらえるため、共有状態を解消しやすくなるのです。
また、共有者間での協議の代理も依頼できるため、他の共有者と直接話し合う必要がなく、関係性が悪化するのを避けられるメリットもあります。
共有不動産のトラブルを弁護士に依頼する場合、その多くが共有状態の解消を理由にしたものです。できるだけスムーズに不動産の共有状態を解消したい場合は、弁護士に依頼すること検討しましょう。
疎遠な共有者と交渉する必要がない
共有持分の売却を弁護士に依頼することで、疎遠になっている共有者と交渉する必要がなくなります。
弁護士に共有持分の売却を依頼すれば、他の共有者との交渉の代理人となってもらえるためです。
共有者との親交が深く、普段から連絡を取り合っているような間柄であれば、自分で対応できる可能性があります。
しかし、疎遠な親族や赤の他人が共有者となっている場合、共有不動産の変更行為や管理行為について交渉するのは難しく、手間や時間が掛かる他、精神的な負担も大きくなるでしょう。
弁護士に共有持分の売却を依頼すれば、当人に代わって共有者との交渉を代行してもらえるため、関わりの少ない共有者と直接顔を合わせて交渉する必要がありません。
また、交渉相手からしても弁護士が対応している場合、安心して話し合いが進められるため、交渉がスムーズに進みやすくなります。
共有不動産でトラブルとなるのは、共有者があまり関わりのない親族や第三者であるケースが圧倒的に多いといえます。自分で交渉するのが難しい場合は、弁護士に対応を依頼しましょう。
共有者とトラブルが発生したら対応してもらえる
共有持分の売却を弁護士に依頼すれば、共有者とトラブルが発生しても対応してもらえるメリットがあります。
弁護士は法律の専門家であり、共有持分の売却に関する法律を熟知しているためです。
共有状態が続く不動産があった場合、不動産全体の売却には共有者全員の合意が必要ですが、共有持分のみを売却する場合、他の共有者の合意を得る必要がありません。
ただし、場合によっては共有者に相談することなく、共有持分を売却したことを非難されるケースがあるかもしれません。
共有持分の売却を弁護士に依頼していた場合、売却後に他の共有者から難癖をつけられても、法的根拠に基づいてフォロー・サポートしてもらえるでしょう。
仮に裁判沙汰となった場合でも、弁護士が対応してくれるため、トラブルの原因となっている相手と直接話す必要もありません。
また、依頼者によって共有持分を持つ経緯や、共有不動産に対する希望は異なります。弁護士であれば、法律はもちろん、過去の判例などから、依頼者の事情に応じて対応してもらえます。
トラブルが発生しやすい共有持分の売却を、しっかりサポートしてもらえるのは、弁護士に売却を依頼する大きなメリットといえます。
共有物分割訴訟になってもサポートしてもらえる
共有物分割訴訟となった場合でもサポートしてもらえるのが、共有持分の売却を弁護士に依頼するメリットです。
通常の裁判のように、原告と被告の勝訴・敗訴を決めるものではなく、裁判所による合理的な判断を仰ぐ性質がある裁判といえます。
なお、共有物分割請求には、協議・調停・訴訟の3段階があります。まずは当事者同士の話し合い(協議)での問題解決を目指し、できなければ調停に、さらに問題が解決しなければ訴訟に移行します。
ただし、協議が済んでいる場合は、そのまま訴訟を起こすことも可能です。
共有持分の売却を弁護士に依頼した場合、仮に共有物分割訴訟に発展した場合でも、弁護士のサポートを受けられます。
訴訟となった場合、裁判所からの呼出状に合わせて口頭弁論に出席して、自分の主張を述べなけれ場なりません。弁護士に売却を依頼していれば、代理人として口頭弁論へ出席したり、こちらの考えを論理的に主張してもらえたりするなど、訴訟にも対応してもらえます。
また、弁護士に依頼した場合は、共有持分を取引価格に近い金額で売却できる可能性があります。
例えば、他の共有者が不動産を買い取るお金があるのに、不動産の買い取りを拒んだ場合、訴訟によって市場価格に近い金額で買い取りを迫られるケースがあります。
そのため、共有持分は業者に買い取ってもらうよりも、弁護士に依頼して他の共有者に買い取るように求めた方が高く売れる可能性があります。
共有持分の売却を弁護士に依頼するときの費用
共有持分の売却を弁護士に依頼する場合、弁護士費用が発生します。依頼者や不動産の状況、規模などによって具体的な金額は異なりますが、一般的な目安として以下の費用が必要です。
- 相談料|5,000円〜1万円程度
- 着手金|20万円〜30万円程度
- 報酬金|経済的利益の6〜10%程度
それぞれ詳しく解説します。
相談料|5,000円〜1万円程度
共有持分の売却を弁護士に依頼する場合、相談料が発生します。
相談料は、30分で5,000円から1万円程度が相場です。また、弁護士によっては初回相談を無料に設定しているケースもあります。
相談料を抑えたい場合は、相談するにあたって不動産に関する書類や協議内容をまとめた書面などを準備しておき、スムーズに相談できるようにしておくことが大切です。
着手金|20万円〜30万円程度
共有持分の売却を弁護士に依頼する場合は、着手金が必要です。
着手金の相場は、20万円から30万円程度になるのが一般的です。
また、第二東京弁護士会では、法律相談センターで法律相談を受け、その後相談を担当した弁護士に民事事件を依頼する場合の着手金の目安を公開しています。
弁護士報酬は各弁護士が自由に設定できるため、あくまでも一例となりますが、以下のようになります。
経済的利益の金額 | 着手金の目安 |
---|---|
300万円以下の部分 | 8% |
300万円超え3,000万円以下の部分 | 5% |
3,000万円超え3億円以下の部分 | 3% |
3億円を超える部分 | 2% |
例えば、依頼者が1,000万円の経済的利益を得る場合、着手金の目安は以下のようになります。
また、以下のサイトを利用すると、弁護士費用のシミュレーションが可能です。参考にしてください。
参考:弁護士費用の計算|ke!san 生活や実務に役立つ計算サイト
報酬金|経済的利益の6〜10%程度
共有持分の売却を弁護士に依頼した場合は、報酬金の支払いが必要です。
依頼した事件が全くの不成功に終わった場合は、支払い義務はありませんが、全面的に成功した場合や一部成功した場合は、成功の度合いに応じて報奨金を支払います。
報酬金は、事件の解決によって依頼者が取得した経済的利益の一定の割合となるケースが多く、一般的な相場は経済的利益の6%から10%程度になります。
こちらも、東京第二弁護士会のWebサイトに報酬金の目安が記載されているので、紹介します。
経済的利益の金額 | 報酬金額の目安 |
---|---|
300万円以下の部分 | 16% |
300万円超え3,000万円以下の部分 | 10% |
3,000万円超え3億円以下の部分 | 6% |
3億円を超える部分 | 4% |
例えば、経済的利益が1,000万円の場合、報酬金の目安は以下のようになります。
また、以下のサイトでは報酬金のシミュレーションも可能ですので、参考にしてください。
参考:弁護士費用の計算|ke!san 生活や実務に役立つ計算サイト
その他の費用
相談料や着手金、報酬金以外にも、弁護士に対応すると発生する費用があります。
具体的な費用は以下の通りです。
費用 | 内容 |
---|---|
日当 |
・弁護士が出張や法廷への出頭で拘束される場合に発生する費用 ・半日3万円や1日5万円など ・弁護士によって金額は異なる ・着手金に含まれる場合もある |
実費 |
・弁護士業務の遂行に必要な費用 ・収入印紙代や切手代、交通費、宿泊費、交付手数料など |
共有物分割請求での弁護士費用について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参照してください。
共有物分割請求の弁護士費用はどれくらい?算出方法と節約術を詳しく解説
共有持分の売却を弁護士に依頼するときの流れ【共有物分割請求訴訟】
共有持分の売却を弁護士に依頼する場合の流れを解説します。一般的な流れは以下の通りです。
- 1.事前に共有者間で売却についての話し合いをする
- 2.話し合いがまとまらないときは弁護士に相談する
- 3.共有者間で調停を行う
- 4.共有物分割請求訴訟の申立てをする
- 5.共有者全員に裁判所から「呼出状」が送られてくる
- 6.弁護士が「口頭弁論」に出席
- 7.裁判所の判決
それぞれ詳しく解説します。
1.事前に共有者間で売却についての話し合いをする
共有持分の売却に関して、まずは共有者同士で協議をするのが基本です。
話し合いによって解決するのが、最も簡単である他、調停や裁判に発展した場合にデメリットが多くなるためです。
共有者が親族同士である場合は、自分の共有持分を買い取ってもらえないか相談してみるといいでしょう。
また、話し合いによって共有状態の解消に合意が得られた場合は、書面を交わしておくことが大切です。
なお、共有者同士での協議が難しい場合は、弁護士に依頼して協議を代行してもらうことも可能です。
2.話し合いがまとまらないときは弁護士に相談する
共有者同士での話し合いがまとまらない場合は、弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談すれば、仲介に入ってもらって協議を継続したり、代理人として協議に参加してくれたりします。また、調停や訴訟に移行する場合、裁判所への手続きなども代行してもらえます。
弁護士に相談する場合は、弁護士費用がどれくらいになるか、自分が希望する状況になる見込みがあるかを確認しておくことが大切です。
また、相談後は、弁護士の指示に従って行動するのが基本となります。
3.共有者間で調停を行う
弁護士に相談しても不動産の共有状態を解消できなかった場合は、共有物分割請求調停に進みます。
調停委員は、社会生活における豊富な経験や専門的な知識を持つ人、地域社会で幅広く活動してきた人のなかから、裁判所が選任します。
調停は、裁判所による判決ではなく、共有者同士での合意を目指すものです。調停で話し合いがまとまった場合、裁判にならずに共有状態を解消できます。
なお、共有者間での協議が住んでいる場合、調停を行わずに直接訴訟を申し立てることもできます。
4.共有物分割請求訴訟の申立てをする
協議や調停によって、共有状態の解消に至らない場合は、共有物分割請求訴訟を申し立てます。
共有物分割請求訴訟によって裁判所が下す判決は、以下の分割方法のいずれかとなります。
分割方法 | 内容 |
---|---|
現物分割 |
・共有物を物理的に分割する方法 ・原則的に現物分割の方法を取られるケースが多い ・分筆できない不動産を所有する場合は選択されにくい ・分筆によって土地の資産価値が毀損するリスクがある |
代償分割(価格賠償) |
・特定の共有者が不動産の権利を取得して、他の共有者に対して代償金を支払って清算する方法 ・部分的価格賠償と全面的価格賠償の2種類がある ・部分的価格賠償は、現物分割で共有者間の取得金額に差が出る場合、持分価格の不足分を一部現金で清算する方法 ・全面的価格賠償は、教諭者1人が単独で不動産を取得し、他の共有者の持分に対して、相当額を現金で支払い清算する方法 ・他の共有者に金銭的な余力がないと選択されにくい |
換価分割(代金分割) |
・不動産を競売に掛けて売却し、売却代金を持分割合に応じて分配する方法 ・競売に掛けた場合、通常の市場価値よりも下がり不利益を講じることもある |
共有物分割請求は、共有者間の協議であれば1年程度で解決するケースが多いですが、状況が複雑化した場合は解決までに2年近く掛かることもあります。
なお、共有物分割請求訴訟を申し立てるのは、共有状態にある不動産の所在地、もしくは被告の住所地を管轄する地方裁判所です。
また、訴訟の申し立てに必要な書類は以下の通りです。
- 訴状の正本と副本
- 固定資産評価証明書
- 登記簿謄本(全部項証明書)
- 収入印紙
訴状は弁護士が作成し、収入印紙を貼付して正本を裁判所へ提出、副本は自分を除く共有者全員に送付します。
また、固定資産評価証明書は市区町村の役場で、登記簿謄本は法務局で取得します。
5.共有者全員に裁判所から「呼出状」が送られてくる
共有物分割請求訴訟を提起してから1ヶ月程度が経過した時点で、共有者全員に呼出状が送付されます。
呼出状は、特別送達という郵便物で配送され、受け取る際は本人への手渡しとなります。訴訟の当事者(他の共有者)は、呼出状が届くことで訴訟が起こされていることを確認することになります。
呼出状が送付された当事者は、記載された日に口頭弁論もしくは答弁書を提出しなければなりません。
訴訟の申し立て人が作成した訴状の内容に間違いがないかも確認されます。
仮に、呼出状に記載された期日に法廷へ出席できない場合、必要事項を記載した答弁書を期日の一週間前までに裁判所へ提出する必要があります。
6.弁護士が「口頭弁論」に出席
裁判の期日には、弁護士が口頭弁論に出席し、あなたに代わって主張や立証を行います。
なお、裁判に出席したい場合は、弁護士とともに裁判所へ行っても構いません。
他の共有者から反論がある場合や、事実確認が必要な場合は、複数回の口頭弁論が実施されます。
1回目の口頭弁論が終わった際に次回の期日が提示されます。一般的には1ヶ月程度のスパンで口頭弁論が実施されます。
7.裁判所の判決
口頭弁論や答弁書の内容から、裁判所は共有者の主張をまとめて審理し、総合的に判断して共有状態の解消方法を決定します。
なお、裁判官から和解勧告を受けて、和解によって訴訟が終結することもあります。
和解を選択した場合、共有状態を早く解消できる他、共有者が主張した分割方法で不動産を分けられる可能性が高いなど、メリットが多くなります。
和解できない場合は、裁判所の判決を待ち、内容に従った分割方法で共有状態を解消します。
共有物分割請求訴訟を起こした場合でも、申立人が希望した通りの判決が出るとは限りません。なお、判決内容に不服がある場合は、控訴の申し立てが可能です。
共有持分を買取会社に売却するメリット
共有持分の売却は、弁護士ではなく、専門の買取会社に依頼することもできます。ここでは、共有持分を買取会社に売却するメリットを紹介します。
具体的なメリットは以下の通りです。
- 早めに売れる
- 共有関係を解消できる
- 仲介手数料がかからない
- 第三者に知られず共有持分を売却できる
- 自分の相続人に迷惑をかけない
それぞれ詳しく解説します。
なお、買取会社に共有持分を売却することについて詳しく知りたい場合は、以下の記事を参照してください。
共有持分の売却相場は「市場価格よりも安め」が基本?売却先によっても共有持分の相場感は変わる理由について解説
早めに売れる
共有持分を買取会社に売却するメリットは、共有持分をスピーディに売却できることです。
買取会社に依頼し、相手の提示した金額に納得できれば、共有持分をすぐに売却できるためです。
共有持分は一般的な不動産とはことなり、自由に活用したり、処分したりするのが難しいため、簡単に売却できません。不動産会社に買い取りを依頼しても断られるケースもあり、売却できるまでに相当な時間が掛かることもあります。
このような場合は、共有持分の買い取りを専門に行う業者の利用がおすすめです。できるだけ早く共有状態から脱したい場合や、早急な現金化が必要な場合は、専門の買取業者に相談しましょう。
ただし、共有持分の買取価格は、一般的な相場価格からかなり低くなります。本来の価値に対して半分程度の査定額となると理解しておきましょう。できれば、複数の業者に査定を依頼し、高値で買い取ってくれる業者を選択することが重要です。
なお、株式会社クランピーエステートでは、共有不動産を高値で買い取りできます。訳ありの不動産でも、士業と連携して対応するため、安心してご利用いただけます。
詳しくは以下のURLをご覧ください。
共有関係を解消できる
共有持分の売却を買取業者に依頼すれば、早期に共有関係を解消できます。
前述の通り、共有持分のみを売却する場合は、他の共有者から合意を得る必要がありません。
つまり、買取業者に迅速に買い取ってもらうことで、共有状態を一方的に解消できるのです。
夫婦で共有名義の不動産を購入したものの、離婚してしまった場合や、共有者との話し合いが進まずに精神的なストレスが大きい場合など、相手との関係を清算したい場合におすすめの方法です。
仲介手数料がかからない
不動産の売却に仲介手数料が掛からないのも、買取業者に売却するメリットです。
共有持分を売却したい共有者と、共有持分を買い取る専門業者が直接売買契約を締結するためです。
不動産の売却方法は、売却を不動産会社に依頼し、不動産会社が買主を見つけてくるのが一般的です。この場合、不動産会社は売り手と買い手を仲介しているため、仲介手数料が発生します。
仲介手数料は、法令によって上限金額が以下のように決められています。
取引物件価格 | 仲介手数料の上限額 |
---|---|
400万円超えの場合 | 取引物件価格×3%+6万円+消費税 |
200万円超え400万円以下の場合 | 取引物件価格×4%+2万円+消費税 |
200万円以下の場合 | 取引物件価格×5%+消費税 |
※取引物件価格はいずれも税込
例えば、不動産の共有部分が1,000万円で売却できた場合、39万6,000円(税込)の仲介手数料が発生します。
共有持分の買い取りを専門に行う業者に依頼すれば、仲介手数料は掛からないため、コストカットが可能です。
第三者に知られず共有持分を売却できる
共有持分の買取業者を利用する場合、第三者に知られることなく共有持分を売却できます。
買取業者に売却する場合、一般のユーザーから買い手を探す必要がないためです。
通常の不動産の売却では、不動産会社が買い手を探すため、広告を打ったり、ポータルサイトで売却情報を宣伝したりします。
そのため、他の共有者や近隣の住民に不動産を売りに出していることが知られてしまうことがあります。
一方、共有持分を買取業者に売却する場合、業者が買い手となるため、広告や宣伝を行う必要がありません。そのため、不動産の売却を誰にも知られずに進められるのです。
そもそも、共有不動産のうち、自分の持分に関しては共有者の合意なく売却が可能なため、買取業者を利用すればスムーズに共有状態から抜け出せます。
自分の相続人に迷惑をかけない
共有持分の買取業者を利用すれば、自分の相続人に迷惑を掛けずに済むというメリットがあります。
不動産の共有状態が続いている状況で、共有者が死亡して相続が発生する場合、不動産の権利関係はさらに複雑になります。
共有者が増加すれば、コミュニケーションが取りづらくなるため、不動産の変更行為や管理行為について協議は難航しやすくなるでしょう。
共有不動産は自分の希望だけでは売却できないため、うまく活用するのが難しい他、住んでもいないのに固定資産税や維持費だけ負担し続けることになります。
仮に、自分が死亡して配偶者や子どもが相続する場合、相当な迷惑を掛けてしまう恐れがあります。不動産の共有状態はできるだけ早く解消するべきでしょう。
まとめ
不動産の共有状態が続いている場合、意見の相違やルール違反、共有者の所在不明など、さまざまなトラブルに発展する恐れがあります。
そのため、できるだけ早く共有状態を解消することをおすすめします。
また、共有持分を売却する場合は、弁護士に依頼することを検討しましょう。共有状態のスムーズな解消が期待できる他、交渉の代行やトラブル・訴訟への対応も可能です。
本記事を参考に、共有持分の売却を進めていきましょう。