共有名義不動産から単独名義に変更する方法は?注意点や必要な費用や税金を解説

共有名義不動産から単独名義に変更する方法は?注意点や必要な費用や税金を解説

共有名義不動産とは、複数人が1つの不動産を共同で所有している状態を指します。

不動産を共有名義のままにすると、不動産活用の制限や権利関係の複雑化など、共有者間でのトラブルになりやすいため、できるだけ早く共有状態を解消するとよいでしょう。

解消方法の1つが単独名義への変更で、自分の意志のみで共有持分を売却できるほか、トラブルが発生しなくなります。

共有名義の不動産を単独名義に変更する場合、以下のような方法をとりましょう。

  • 他の共有者の持分を売買する
  • 共有物分割請求訴訟をする
  • 共有持分を贈与する
  • 共有持分を放棄する
  • 共有名義の不動産が土地の場合は分筆する

なお、共有名義の不動産の名義を変更するには、共有者全員の同意が必要になるほか、登記申請書の記入方法が複雑になります。

また、対応を司法書士に依頼した場合の報酬や、登録免許税・印紙税・不動産取得税・贈与税といった税金が課せられる場合があります。

今回は、共有名義不動産から単独名義に変更について詳しく解説します。また注意点や必要な費用や税金もあわせて紹介するので、単独名義に変更したい方はぜひチェックしてください。

目次

共有名義不動産を単独名義に変更する方法

共有名義不動産を単独名義に変更方法は、以下の5つのです。

  • 他の共有者の持分を売買する
  • 共有物分割請求訴訟をする
  • 共有持分を贈与する
  • 共有持分を放棄する
  • 共有名義の不動産が土地の場合は分筆する

それぞれ詳しく解説します。

他の共有者の持分を売買する

共有名義の不動産を単独の名義に変える方法の1つが、他の共有者の持分を売買するというものです。

例えば、他の共有者の持分をすべて自分で買い取れば、単独名義の不動産にできます。

ただし、共有持分を買い取れるだけの資金を準備する必要があるほか、共有者が多いほど、交渉にかかる時間や手間が増えるデメリットがあります。

また、自分の単独名義にしなくても、自分の持分を他の共有者や第三者に売却すれば、不動産の共有状態から抜け出す方法もあります。

共有物分割請求訴訟をする

共有状態の不動産を単独の名義にしたい場合、共有物分割請求訴訟を起こす方法もあります。
共有物分割請求訴訟とは、裁判所を通じて共有状態の解消を行うための訴訟です。

裁判所に適切な分割方法を裁定してもらい、その方法に従って共有物を分割します。

共有者同士での話し合いでは、共有状態の解消方法について話がまとまらないケースも多々あります。そのような場合に、有効な手段となるのが、共有物分割請求訴訟です。なお、共有物分割請求訴訟は、他の共有者の同意がなくても訴訟の申し立てが可能です。

裁判を起こすことで、共有状態を抜け出すための方法を提示してもらえるほか、裁判所の裁定であれば、他の共有者も従いやすくなるでしょう。

ただし、分割方法は訴訟を起こした人が決められるのではなく、あくまでも裁判所の判断によります。そのため、自分が希望していない方法が提示される場合があるほか、すべての共有者にとって望まない結果となるケースもあります。

なお、共有物分割請求訴訟について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参照してください。

共有持分を贈与する

共有状態にある不動産を単独の名義に変える方法として、共有持分を贈与するという手段もあります。
例えば、親と子どもが不動産を共有している場合、親は自分の持分を子どもに贈与することで、不動産は子どもの単独名義にできます。

不動産を贈与するには、関係者との話し合いが必要になるほか、贈与契約書を作成して所有権移転登記を行う必要があります。

ただし、贈与を受け取った側(受贈者)には贈与税が課されます。贈与税の詳細については後述します。そのため、共有者と相談しながら決めた方がいいでしょう。

なお、共有持分の移転登記費用について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参照してください。

共有持分を放棄する

共有不動産を単独名義にするには、共有持分の放棄という方法もあります。
不動産の放棄とは、共有者が共有不動産の持分を放棄して、他の共有者に帰属させるための手続きのことです。
例えば、2人で共有する不動産があった場合、どちらか片方が持分を放棄することで単独名義にできます。

贈与や売却と異なる点は、放棄は共有者の独断で行えるということです。ただし、放棄を選択した後の登記は、他の共有者とともに行う必要があります。

また、税務上ではみなし贈与と判断されることになり、単独名義になった受贈者に対して贈与税の支払い義務が発生します。

放棄によって共有状態から抜け出せますが、後からトラブルにならないよう共有者同士で話し合っておいた方が無難です。

共有名義の不動産が土地の場合は分筆する

共有不動産が土地のみの場合は、分筆によって各共有者の単独名義にすることも可能です。

分筆とは、登記簿上の1つの土地を、複数の土地に分けて登記する手続きのことです。

例えば、300㎡の土地を2人で共有していて、それぞれ150㎡で分筆すれば、各共有者の単独名義となります。

このように、実際に分割して共有者間で分配することを現物分割といいます。

ただし、土地の分け方によっては土地の価値が下がったり、どちらかの共有者が不利を被ったりすることがあるため、専門家に相談しながら分筆することをおすすめします。

なお、共有持分の土地の分筆の流れや費用について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参照してください。

また、相続した土地の名義変更の方法を知りたい場合は、以下の記事を参照してください。

関連記事:相続した土地の名義変更をする方法は?必要書類や費用も解説|ツナグ相続

共有名義不動産から単独名義に変更が必要な場面

共有状態の不動産を単独の名義にするやり方を解説しました。単独名義にしたい理由はさまざまですが、単独名義への変更が必要なケースが存在します。

例えば、以下のようなケースです。

  • 離婚後に夫婦共同名義の不動産を単独の名義にする時
  • 親子で共有名義の不動産を子供名義にする時
  • 相続によって共有名義となったが単独の名義にする時

それぞれ詳しく解説します。

離婚後に夫婦共同名義の不動産を単独の名義にする時

夫婦共同で不動産を所有していて、その夫婦が離婚することになった場合は、単独の名義に変更が必要になります。

離婚後に共有状態を解消していなければ、トラブルの原因になるケースがあるためです。

夫婦の収入を合算してローンを組んだり、ペアローンを利用したりしていて、ローンの残債が残っている場合、離婚した夫婦のどちらかが支払いを滞納すると、連帯債務者が債務を負担しなければなりません。

これは、固定資産税の支払いについても同じです。

このような状況が続いた場合、家を競売にかけられたり、財産として差し押さえられたりする恐れがあります。

そのため、離婚後には共有状態を解消しておく必要があるのです。

単純な方法として、不動産を売却して財産分与をする方法がありますが、ローンの残債が残っている場合は、売却金を利用してローンを支払う必要があります。

また、夫婦のいずれかが不動産に住む場合は、住む方の単独名義にするという方法も有効です。

住まない方の単独名義にしないのは、ローンの返済などを滞納した場合に、住んでいる方に迷惑をかけることになるからです。

なお、住宅ローンの残債が残っていて、ローン債務者となっている場合は、残債の一括返済や債務者の変更、他のローンへの借り換えなどが必要になることもあります。

この場合、金融機関の承諾が必要になるほか、単独で返済できるかどうかを判断するための審査を受けなければなりません。

ちなみに、離婚時に共有状態にある不動産の名義を変える場合、財産分与の対象となります。そのため、贈与税や譲渡所得税などの税負担はありません。

なお、離婚する際の共有名義不動産の住宅ローンへの対処法やリスクについて詳しく知りたい場合は、以下の記事を参照してください。

また、共有者が固定資産税を滞納した場合に起こることや対処法を知りたい場合は、以下の記事を参照してください。

親子で共有名義の不動産を子供名義にする時

親と子どもが不動産を共有していて、その不動産を子どもの名義にする場合も、名義変更が必要です。

例えば、親と子どもで費用を出し合って二世帯住宅を建てた場合などは、親子の共有名義となるのが一般的です。

しかし、親が要介護状態になったり、認知症を発症したりした場合に備えて、子どもの単独名義にしたいと考えるケースも多々あります。

このケースでは、親から子どもへの贈与もしくは譲渡として扱われることになるため、子どもが贈与税や不動産取得税の課税対象となります。

また、住宅ローンの返済が残っているなら、ローンの名義の変更も行わなければなりません。

さらに、贈与となる場合でも、生前贈与と相続では税金も異なります。子どもの単独名義にする場合は、慎重な判断が必要です。

また、家の名義を親から子どもに変更する際の費用や手続きについて詳しく知りたい場合は、以下の記事をチェックしてください。

関連記事:【家の名義変更】親から子に変更する際の費用や手続き、必要書類|ツナグ相続

相続によって共有名義となったが単独の名義にする時

相続によって不動産の共有状態となったものの、特定の共有者の単独名義にするケースもあります。

相続において法定相続分に従う形で遺産を分割して、共有名義で不動産登記すると、その後の管理や不動産の活用が難しくなることがあります。

一例を挙げると、共有者が不動産の所在から遠くはなれた場所に住んでいるケースや、相続後にさらに相続が発生して、かかわりの薄い親族と共有状態になったケースなどです。

共有状態にある不動産に対して売却や賃貸借契約など、何らかの行為を行う場合、共有者の合意が必要になり、そのたびに協議しなければなりません。

また、そのまま不動産を放置していると、所有権関係がより複雑になるケースもあるため、できるだけ早く所有権を移転する必要があります。

なお、実家の土地相続において兄弟間で発生しやすいトラブルや解決方法を知りたい場合は、以下の記事を参照してください。

関連記事:実家の土地相続でよくある兄弟トラブルと解決方法!分け方や注意点を紹介

共有名義不動産を単独名義に変更する注意点

共有名義の不動産を単独名義に変える場合、いくつかの注意点があります。具体的な注意点は以下のとおりです。

  • 共有者全員の同意を得る
  • 登記申請書の記入方法が単独名義と異なる

それぞれ詳しく解説します。

共有者全員の同意を得る

共有状態にある不動産を単独名義にする際、他の共有者全員の同意を得なければなりません。

共有不動産を単独名義に変えるための登記では、共有者全員の印鑑登録証明書が必要だからです。

そのため、事前に名義変更について話をしておかないと、協力してもらえない可能性があります。

申請を行う前に共有者同士で協議して、単独名義にすることへの同意を得ておきましょう。

登記申請書の記入方法が単独名義と異なる

共有不動産を単独名義として登記する場合、登記申請書の書き方に注意が必要です。

登記申請書には登記の目的を記載する欄があり、共有名義から単独名義に変更するには、移転前と移転後の持分を明確に記載する必要があるからです。

例えば、夫婦が2分の1ずつを共有する不動産があり、夫の持分を妻に移転する場合では、それぞれの持分を記載したうえで「持分1/2を移転する」といった内容を記載しなければなりません。

登記申請書への記入方法が、単独名義の不動産の移転とは大きく異なるため、事前に確認するか、司法書士に対応を依頼しましょう。

共有名義不動産から単独名義に変更に必要な費用と税金

共有名義の不動産を単独の名義にする場合、司法書士に対応を依頼するのが一般的です。登記の申請や書類の作成が複雑になるためです。

そのため、名義変更には司法書士に支払う報酬を支払う必要があります。

また、名義変更の状況によって、不動産を取得することになる人(名義人となる人)に対して何らかの税金が発生します。

ここでは、名義変更に必要な費用や税金を紹介します。具体的には、以下の費用や税金の支払いが必要です。

必要な費用 金額
司法書士への報酬 4万円から16万円程度
登録免許税 固定資産税評価額の1.5%(軽減税率適用時)
印紙税 200円から48万円(契約金額によって異なる)
不動産取得税 土地と家屋は固定資産税評価額の3%
譲渡所得税 譲渡所得の20.315%か39.63%(不動産の所有期間によって異なる)
贈与税 不動産価格の10%~55%(贈与した不動産の価格によって異なる)

それぞれ詳しく解説します。

司法書士への報酬|4万円から16万円程度

共有状態にある不動産の単独名義への変更に関する手続きを司法書士に依頼すると、司法書士への報酬が発生します。

司法書士事務所によって金額は異なりますが、報酬の一般的な目安は以下のとおりです。

 
登記内容 報酬の目安
所有権移転登記 2万円~10万円
抵当権抹消登記 1万円~3万円
住所変更登記 1万円~3万円

自分で登記手続きをすればこれらの費用を節約できますが、登記に関する手続きは司法書士に依頼するのが無難です。基本的には上記の費用がかかるものとして考えておいた方がいいでしょう。

登録免許税|固定資産税評価額の1.5%(軽減税率適用時)

登録免許税とは、登記手続きの際に支払う税金のことです。

税額は不動産の固定資産税評価額に税率をかけて算出します。固定資産税評価額とは、固定資産税を決める際の基準となる評価額のことで、各自治体が管理している固定資産課税台帳に記載されています。

なお、固定資産税課税台帳に価格の登録がない(新築住宅)の場合は、法務局の登記官が認定した課税標準額に対して税率をかけて登録免許税を計算するため、共有不動産を管轄する法務局に問い合わせる必要があります。

また、登記の種類によって税額の算出方法が異なります。具体的な算出方法は以下のとおりです。

 
項目 算出方法
・売買による土地の所有権移転登記 固定資産税評価額×1.5%
※軽減税率適用、通常は2.0%
・売買による土地以外の不動産の所有権移転登記
・贈与による所有権移転登記
・財産分与による所有権移転登記
・放棄による所有権移転登記
固定資産税評価額×2.0%
・抵当権設定登記 固定資産税評価額×0.1%
・抵当権抹消登記
・住所変更登記
不動産1つにつき1,000円

売買による土地の所有権移転登記の税率は基本的に2.0%ですが、令和8年3月31日までは軽減税率が適用されており、登録免許税の税率は1.5%となっています。

印紙税|200円から48万円(契約金額によって異なる)

売買契約や贈与契約による単独名義への変更の場合は、印紙税も必要です。

印紙税とは、売買契約書に貼付する印紙代を指します。

なお、不動産の贈与契約書では、契約書に記載された評価額に関係なく、一律200円の収入印紙を貼付します。

一方、不動産の売買契約(譲渡)に関連する書類を作成する場合に必要な印紙税額は以下のとおりです。

 
作成する書類 印紙税額
・不動産の譲渡に関する契約書
(不動産売買契約書、不動産交換契約書、不動産売渡契約書等など)
・地上権や土地の賃借権の設定、譲渡に関する契約書
(土地賃貸借契約書、土地賃料変更契約書など)
・1万円未満:非課税
・10万円以下:200円
・10万円を超え50万円以下:400円
・50万円を超え100万円以下:1,000円
・100万円を超え500万円以下:2,000円
・500万円を超え1,000万円以下:1万円
・1,000万円を超え5,000万円以下:2万円
・5,000万円を超え1億円以下:6万円
・1億円を超え5億円以下:10万円
・5億円を超え10億円以下:20万円
・10億円を超え50億円以下:40万円
・50億円を超えるもの:60万円

ただし、令和9年3月31日までに作成される不動産の譲渡に関する契約書のうち、契約金額が10万円を超える場合に関しては、印紙税額が以下のように軽減されます。

 
契約書に記載された契約金額 税額
10万円超50万円以下 200円
50万円超100万円以下 500円
100万円超500万円以下 1,000円
500万円超1,000万円以下 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 1万円
5,000万円超1億円以下 3万円
1億円超5億円以下 6万円
5億円超10億円以下 16万円
10億円超50億円以下 32万円
50億円超 48万円

※不動産譲渡に関する契約書に記載された契約金額が10万円以下の場合は軽減税率の対象外(税額200円)、契約金額が1万円未満は非課税
※不動産の譲渡に関する契約書のうち、平成26年4月1日から令和9年3月31日まで作成される場合の軽減税率

参考:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで

参考:No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁

不動産取得税|土地と家屋は固定資産税評価額の3%、非住宅用の土地建物は4%

贈与や売買によって共有持分を取得した場合は、不動産取得税が課税されます。

不動産取得税とは、土地が建物を取得した人に課せられる税金のことです。

税額は固定資産税評価額に税率をかけて算出します。税率は以下のとおりです。

取得する不動産の種類 税率
宅地 3%
※令和9年3月31日までの軽減税率
住宅用の建物 3%
※令和9年3月31日までの軽減税率
住宅用以外の土地建物 4%

なお、取得した不動産が土地か家屋かによって不動産取得税額の計算方法が異なります。

土地を取得した場合の計算方法は以下のとおりです。

当初税額=固定資産税評価額×3%
納税額=当初税額-軽減額

取得すると土地が、住宅新築予定土地または中古住宅用土地(耐震基準適合既存住宅の場合)では、以下のいずれかのうち、低い方が軽減されます。

  • 45,000円
  • 土地1㎡当たりの固定資産税評価額×1/2×(課税床面積×2)×3%

※課税床面積の上限は200㎡

家屋を取得した場合の計算方法は以下のとおりです。

住宅の納税額=(固定資産税評価額-特別控除額)×3%
非住宅の納税額=固定資産税評価額×4%

取得した家屋が一定の要件を満たしている場合、築年数に応じて特別控除額が適用されます。特別控除が適用される一定の要件は以下のとおりです。

  • 土地を取得してから3年以内に住宅を新築する場合
  • 新築後1年以内に未使用の建売住宅を購入した方がその敷地を取得した場合
  • 事故居住用の中古住宅とその敷地を取得した場合

※新築・購入する住宅の床面積は50㎡~240㎡
※中古住宅は昭和57年1月1日以降に新築されたもの

特別控除額は以下のとおりです。

 
新築された日 控除額
昭和51年1月1日~昭和56年6月30日 350万円
昭和56年7月1日~昭和60年6月30日 420万円
昭和60年7月1日~平成元年3月31日 450万円
平成元年4月1日~平成9年3月31日 1,000万円
平成9年4月1日以降 1,200万円

参考:不動産取得税の軽減制度について|東京主税局

譲渡所得税|譲渡所得の20.315%か39.63%(不動産の所有期間によって異なる)

単独名義への名義変更を行う場合、譲渡所得税がかかることがあります。

譲渡所得税とは、不動産の購入時よりも高値で売却できて利益が発生した場合に課せられる所得税や住民税、復興所得税のことです。

税額は、譲渡所得に税率をかけて計算します。譲渡所得の計算方法は以下のとおりです。

譲渡所得=譲渡価額-取得費+譲渡費用

譲渡価額とは不動産の売却金額、取得費とはその不動産の購入金額、譲渡費用は売却にかかった諸費用を指します。

なお、取得費に含まれるのは以下の費用です。

  • 土地・建物の購入時に納めた登録免許税や不動産取得税、特別土地保有税、印紙税
  • 借主を立ち退かせるための立ち退き料
  • 土地の埋め立てや土盛り、地ならしのための造成費用
  • 土地の取得に支払った測量費用
  • 所有権などの確保のための訴訟費用
  • 当初から土地の利用が目的と認められる場合の建物の購入代金や取り壊し費用
  • 土地や建物の購入に借り入れや資金の利子のうち、土地・建物を実際に使用する日までの期間の利子
  • 土地の購入契約を解除して、他の物件を取得した場合の違約金

なお、・売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、譲渡所得税の税率が以下のように異なります。

 
所得税 復興所得税 住民税 合計税率
短期譲渡所得(所有期間が5年以下) 30% 0.63% 9% 39.63%
長期譲渡所得(所有期間が5年超) 15% 0.315% 5% 20.315%

贈与税|不動産価格の10%〜55%(贈与した不動産の価格によって異なる)

共有者間の贈与によって不動産を取得した場合は、贈与税が課せられることがあります。

贈与税額は、贈与された不動産の時価から計算されます。詳しい計算式は以下のとおりです。

基礎控除額=110万円
基礎控除後の課税価格=不動産価格-110万円
贈与税額=基礎控除後の課税価格×税率-控除額

なお、贈与税の税率は特例税率と一般税率の2種類があります。

特例税率とは、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の方が、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与を受ける場合に適用される税率です。

一方、一般税率とは特例税率に該当しない場合に適用される税率です。

一般税率での贈与税率と控除額は以下のとおりです。

 
基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超え 55% 400万円

次の、特例税率での贈与税率と控除額は以下のとおりです。

 
基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超え 55% 640万円

共有名義のままでいるリスク

不動産が共有名義となっている状態を放置していると、トラブルに発展する可能性が高いといえます。

特に、以下のようなトラブルが起こるリスクがあります。

  • 不動産の活用に制限がある
  • 不動産の権利関係が複雑化する
  • 共有者間でトラブルが起こりやすい
  • 離婚時にトラブルになりやすい

それぞれどのようなリスクなのか、詳しく解説します。

不動産の活用に制限がある

不動産の共有状態が続くと、不動産の活用に制限が生まれます。

共有状態にある不動産に対して何か行う場合、他の共有者の同意が必要になるケースがあるためです。

共有不動産に対する行為の種類は以下のとおりです。

 
行為の種類 共有者の同意 行為の具体例
変更行為 共有者全員の同意が必要になる ・家屋の取り壊しや建て替え
・増改築
管理行為 共有持分の過半数の同意が必要になる ・賃貸に出す
・リフォームする
保存行為 共有者の同意は不要 ・建物滅失登記
・壁紙の交換
・その他の修理

例えば、不動産全体の売却を考えていても、他の共有者の同意がなければ売却はできません。また、何かの行為を行うたびに共有者と協議する必要があり、時間や手間がかかるほか、自分の想定通りにはいかない可能性もあります。

不動産の有効活用を検討している場合は、共有状態の解消を目指したほうがいいでしょう。

不動産の権利関係が複雑化する

不動産が共有名義のままの場合、権利関係が複雑化する恐れがあります。

共有者の1人が死亡して相続が発生した場合、その持分は相続人に引き継がれることになります。相続人が複数名いる場合は、共有持分がさらに分割され、権利の所在が複雑になってしまうのです。

なかには疎遠な親族が新たな共有者となるケースもあり、意思疎通が難しくなるほか、不動産への分割や活用、売却のための協議がまとまらなくなる場合もあるでしょう。

結果的に、不動産が放置される状況になりやすく、トラブルの解決が先送りされることになります。

トラブルの回避のためにも、共有不動産への対処を早めに検討することが大切です。

共有者間でトラブルが起こりやすい

不動産の共有状態が続いた場合、共有者間でトラブルに発展するケースもあります。

前述したように、共有不動産に対して何らかの行為を行う場合、共有者の合意が必要です。

そのため、共有者間で協議を行いますが、不動産の活用方法に対する意見の相違が発生したり、税金や管理費を負担しない共有者が出てきたりするケースがあります。

共有者間でのいざこざがトラブルに発展すれば、共有者間の関係性が悪化する可能性があるため、不動産の共有状態は早めに解決したいところです。

離婚時にトラブルになりやすい

夫婦同士で不動産を共有している場合、離婚時にトラブルが起こる恐れがあります。

夫婦が離婚する場合、財産分与を行います。財産分与とは、婚姻中に協力して築いた財産を、夫婦で分配することです。

共有名義の不動産も財産分与の対象となり、分配する必要がありますが、不動産は等しく2分割できない場合がほとんどのため、夫婦のどちらかの単独名義に変更して処理するケースも多く見られます。

ただし、金融機関の了承を得ずに単独名義に変更した場合、住宅ローンの規約違反となることがあり、住宅ローンの材債の一括返済が求められてしまいます。

住宅ローンの残債の有無を確認したり、金融機関へ相談したりして、トラブルにならないよう振る舞うことが大切です。

共有者間の協議がまとまらない場合は専門家(弁護士、司法書士)に相談しよう

共有不動産の処理や活用について、共有者同士での話し合いがまとまらない場合は、弁護士や司法書士といった専門家に相談することをおすすめします。

意見がかみ合わず、不動産を自由に活用できなくても、維持管理費用や固定資産税などのコストが発生します。また、その状態で不動産を放置すると、自分の子どもや孫の世代まで、トラブルの解消を先送りすることにもなりかねません。

共有持分のトラブルに対しては、法律の知識や交渉スキルも必要になります。

そのため、共有者同士での協議がまとまらない場合は、弁護士や司法書士に相談した方がいいでしょう。

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まとめ

共有名義の不動産を単独名義に変更すれば、不動産を活用しやすくなるほか、トラブルを避けられます。

ただし、共有者全員の同意が必要になるほか、費用や税金が発生するため、慎重な判断が求められます。

弁護士や司法書士といった専門家に相談して、不動産の共有状態を解消できるよう対処していきましょう。

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