共有名義から単独名義に変更する方法は?注意点や必要な費用や税金を解説

共有名義不動産とは、複数人が1つの不動産を共同で所有している不動産のことを指します。
不動産を共有名義のままにすると、不動産活用の制限や権利関係の複雑化など、共有者間でのトラブルの種になりやすいです。
共有名義不動産を専門に買取を行う弊社には、共有名義のままにしていたことでトラブルが起こってしまった方からの相談が寄せられることもあり、その場合には共有名義の解消を提案させていただく場面もあります。
解消方法の1つには「共有名義から単独名義への変更」があります。
単独名義になれば所有者が維持管理の責任を負ったうえで、物件の売却や建て替え、賃貸などを自由に行えるようになるため、共有名義状態による権利関係のトラブルは起こりません。
共有名義から単独名義に変更する方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- 他の共有者の持分を買い取る
- 他の共有者に自分の持分を売却する
- 共有持分を贈与する
- 共有持分を放棄する
- 共有名義の不動産が土地の場合は分筆する
なお、共有名義の不動産の名義を変更するには、共有者全員の同意が必要になるほか、登記申請書の記入方法が複雑になります。また、対応を司法書士に依頼した場合の報酬や、登録免許税・印紙税・不動産取得税・贈与税といった税金が課せられる場合があります。
今回は、共有名義不動産から単独名義に変更について詳しく解説します。また注意点や必要な費用や税金もあわせて紹介するので、単独名義に変更したい方はぜひチェックしてみてください。
目次
共有名義から単独名義に変更する方法
不動産を共有名義から単独名義にする方法にはさまざまなものがあります。まずは、共有名義から単独名義に変更する具体的な方法をまとめましたので、参考にしてみてください。
共有名義不動産を単独名義に変更する方法 | 検討するべきケース |
---|---|
他の共有者に自分の持分を売却する |
・自分は不動産を利用する予定がなく、持分を現金化したい場合 ・他の共有者に資金力があり、不動産を残すことを希望している場合 |
他の共有者の持分を買い取る |
・資金力があり、自分が不動産を手元に残したい場合 ・交渉や売却自体に応じてくれるほど、他の共有者との関係が良好な場合 |
共有持分を贈与する |
・共有者に対して金銭的な対価を求めない場合 ・相続や生前整理を目的とする場合 |
共有持分を放棄する |
・税金や管理費の負担が大きく、持分の価値が低い場合 ・他の共有者に持分を引き継ぐ意思がある場合 |
共有名義の不動産が土地の場合は分筆する |
・共有名義なのが土地のみの場合 ・整形地のように土地の形や広さが分けやすい場合 ・分けたあとに単独で所有・売却したい場合 |
共有名義不動産を所有している場合、共有者それぞれはその不動産を使用する権利が法的に認められています。その所有権の割合を「共有持分」といい、共有持分については所有者が単独で所有しています。
つまり、共有持分だけであれば所有者が自由に売買・譲渡することが可能であり、共有名義から単独名義に変更する方法としては「共有者間で持分を売買・譲渡する方法」が挙げられるのです。
なお、共有名義の不動産が土地の場合であれば、「分筆」という方法で単独名義に変更することもできます。そのため、土地を共有名義から単独名義に変更する場合には、「持分の売買・譲渡」以外にも分筆という選択をすることも可能です。
ここからは、共有名義から単独名義に変更する方法について、それぞれ詳しく解説していきます。
他の共有者に自分の持分を売却する
前提として、共有名義の不動産には共有者それぞれに所有権がありますが、共有持分についてはその所有者が単独で保有するものです。民法では下記のように、自身の所有物であれば自由に使用できることが認められています。
第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
そのため、自身の共有持分であれば自由に売買が可能なのです。
そして、共有持分は共有者以外の第三者に売却することも可能ですが、その場合には共有名義状態は解消できません。そのため、不動産を共有名義から単独名義に変更する目的で共有持分を売却するのであれば、売却先は他の共有者のみに絞られます。
たとえば、下記のシチュエーションで不動産を共有しているケースを想定します。
- 共有している不動産:戸建の家
- 共有者の人数:2人(兄・弟)
- 持分割合:それぞれ1/2ずつ
この条件であれば、弟が所有する1/2の共有持分を兄にすべて売却することで、兄が持分割合をすべて所有できます。結果、売却後は兄が戸建の家を単独名義で所有できるのです。
そのため、「不動産を利用する予定がなく現金化したい」「共有名義状態から抜け出したい」といった場合には、他の共有者に自分の持分を売却することも1つの方法になるのです。
ただし当然ですが、共有者に持分を売却する場合、売却先となる共有者からの同意が必要になります。また、共有持分を買い取るための資金も必要になるため、「他の共有者が持分の買取を希望しており、資金力がある場合」に限られてしまうため注意が必要です。
他の共有者の持分を買い取る
他の共有者に持分を売却する方法を解説しましたが、逆に他の共有者の持分を買い取ることで共有名義から単独名義に変更することも可能です。他の共有者の持分をすべて自分で買い取れば、単独名義の不動産にできます。
ただし、共有持分を買い取れるだけの資金を準備する必要があるほか、共有者が多いほど、交渉にかかる時間や手間が増えるデメリットがあります。
たとえば、下記の状況を想定してシミュレーションします。
- 共有している不動産:戸建の家
- 不動産評価額:4,000万円
- 共有者の人数:4人(兄・弟・姉・妹)
- 持分割合:それぞれ1/4ずつ
この状況では、すべての共有者は4,000万円の戸建における1/4の共有持分を所有しています。金額に直せば、共有者それぞれが1,000万円の共有持分を所有している状態です。
そして、仮に兄の単独名義とする場合、兄は他の共有者3人の共有持分を全て買い取る必要があります。つまり、3人の共有者と交渉をする手間がかかるほか、3,000万円の資金を用意する必要があるのです。
そのため、他の共有者の持分を買い取って単独名義に変更する方法は、「他の持分を買い取るほどの資金力がある」「交渉や売却自体に応じてくれるほど、他の共有者との関係が良い」という状況であれば向いている方法といえるでしょう。
共有持分を贈与する
共有状態にある不動産を単独の名義に変える方法として、共有持分を贈与するという手段もあります。
例えば、親と子どもが不動産を共有している場合、親は自分の持分を子どもに贈与することで、不動産は子どもの単独名義にできます。
不動産を贈与するには、関係者との話し合いが必要になるほか、贈与契約書を作成して所有権移転登記を行う必要があります。
ただし、贈与を受け取った側(受贈者)には贈与税が課されます。贈与税の詳細については後述します。そのため、共有者と相談しながら決めた方がいいでしょう。
共有持分を放棄する
共有名義から単独名義に変更するには、共有持分の放棄という方法もあります。
不動産の放棄とは、共有者が共有不動産の持分を放棄して、他の共有者に帰属させるための手続きのことです。
例えば、2人で共有する不動産があった場合、どちらか片方が持分を放棄することで単独名義にできます。
贈与や売却と異なる点は、放棄は共有者の独断で行えるということです。ただし、放棄を選択した後の登記は、他の共有者とともに行う必要があります。
また、税務上ではみなし贈与と判断されることになり、単独名義になった受贈者に対して贈与税の支払い義務が発生します。
放棄によって共有状態から抜け出せますが、後からトラブルにならないよう共有者同士で話し合っておいた方が無難です。
共有名義の不動産が土地の場合は分筆する
共有名義不動産が土地のみの場合は、分筆によって各共有者の単独名義にすることも可能です。
分筆とは、登記簿上の1つの土地を、複数の土地に分けて登記する手続きのことです。
例えば、300㎡の土地を2人で共有していて、それぞれ150㎡で分筆すれば、各共有者の単独名義となります。
このように、実際に分割して共有者間で分配することを現物分割といいます。
ただし、土地の分け方によっては土地の価値が下がったり、どちらかの共有者が不利を被ったりすることがあるため、専門家に相談しながら分筆することをおすすめします。
共有名義不動産から単独名義に変更が必要な場面
共有状態の不動産を単独の名義にするやり方を解説しました。単独名義にしたい理由はさまざまですが、共有名義から単独名義への変更が必要なケースが存在します。
例えば、以下のようなケースです。
- 離婚後に夫婦共同名義の不動産を単独の名義にする時
- 親子で共有名義の不動産を子供名義にする時
- 相続によって共有名義となったが単独の名義にする時
離婚後に夫婦共同名義の不動産を単独の名義にする時
夫婦共同で不動産を所有していて、その夫婦が離婚することになった場合は、単独の名義に変更が必要になります。
離婚後に共有状態を解消していなければ、トラブルの原因になるケースがあるためです。
夫婦の収入を合算してローンを組んだり、ペアローンを利用したりしていて、ローンの残債が残っている場合、離婚した夫婦のどちらかが支払いを滞納すると、連帯債務者が債務を負担しなければなりません。
これは、固定資産税の支払いについても同じです。
このような状況が続いた場合、家を競売にかけられたり、財産として差し押さえられたりする恐れがあります。
そのため、離婚後には共有状態を解消しておく必要があるのです。
単純な方法として、不動産を売却して財産分与をする方法がありますが、ローンの残債が残っている場合は、売却金を利用してローンを支払う必要があります。
また、夫婦のいずれかが不動産に住む場合は、住む方の単独名義にするという方法も有効です。
住まない方の単独名義にしないのは、ローンの返済などを滞納した場合に、住んでいる方に迷惑をかけることになるからです。
なお、住宅ローンの残債が残っていて、ローン債務者となっている場合は、残債の一括返済や債務者の変更、他のローンへの借り換えなどが必要になることもあります。
この場合、金融機関の承諾が必要になるほか、単独で返済できるかどうかを判断するための審査を受けなければなりません。
ちなみに、離婚時に共有状態にある不動産の名義を変える場合、財産分与の対象となります。そのため、贈与税や譲渡所得税などの税負担はありません。
親子で共有名義の不動産を子供名義にする時
親と子どもが不動産を共有していて、その不動産を子どもの名義にする場合も、名義変更が必要です。
例えば、親と子どもで費用を出し合って二世帯住宅を建てた場合などは、親子の共有名義となるのが一般的です。
しかし、親が要介護状態になったり、認知症を発症したりした場合に備えて、子どもの単独名義にしたいと考えるケースも多々あります。
このケースでは、親から子どもへの贈与もしくは譲渡として扱われることになるため、子どもが贈与税や不動産取得税の課税対象となります。
また、住宅ローンの返済が残っているなら、ローンの名義の変更も行わなければなりません。
さらに、贈与となる場合でも、生前贈与と相続では税金も異なります。子どもの単独名義にする場合は、慎重な判断が必要です。
関連記事:【家の名義変更】親から子に変更する際の費用や手続き、必要書類|ツナグ相続
相続によって共有名義となったが単独の名義にする時
相続によって不動産の共有状態となったものの、特定の共有者の単独名義にするケースもあります。
相続において法定相続分に従う形で遺産を分割して、共有名義で不動産登記すると、その後の管理や不動産の活用が難しくなることがあります。
一例を挙げると、共有者が不動産の所在から遠くはなれた場所に住んでいるケースや、相続後にさらに相続が発生して、かかわりの薄い親族と共有状態になったケースなどです。
共有状態にある不動産に対して売却や賃貸借契約など、何らかの行為を行う場合、共有者の合意が必要になり、そのたびに協議しなければなりません。
また、そのまま不動産を放置していると、所有権関係がより複雑になるケースもあるため、できるだけ早く所有権を移転する必要があります。
関連記事:実家の土地相続でよくある兄弟トラブルと解決方法!分け方や注意点を紹介
共有名義不動産を単独名義に変更する注意点
共有名義の不動産を単独名義に変える場合、いくつかの注意点があります。具体的な注意点は以下のとおりです。
- 共有者全員の同意を得る
- 登記申請書の記入方法が単独名義と異なる
それぞれ詳しく解説します。
共有者全員の同意を得る
共有状態にある不動産を単独名義にする際、他の共有者全員の同意を得なければなりません。
共有不動産を単独名義に変えるための登記では、共有者全員の印鑑登録証明書が必要だからです。
そのため、事前に名義変更について話をしておかないと、協力してもらえない可能性があります。
申請を行う前に共有者同士で協議して、単独名義にすることへの同意を得ておきましょう。
登記申請書の記入方法が単独名義と異なる
共有不動産を単独名義として登記する場合、登記申請書の書き方に注意が必要です。
登記申請書には登記の目的を記載する欄があり、共有名義から単独名義に変更するには、移転前と移転後の持分を明確に記載する必要があるからです。
例えば、夫婦が2分の1ずつを共有する不動産があり、夫の持分を妻に移転する場合では、それぞれの持分を記載したうえで「持分1/2を移転する」といった内容を記載しなければなりません。
登記申請書への記入方法が、単独名義の不動産の移転とは大きく異なるため、事前に確認するか、司法書士に対応を依頼しましょう。
共有名義不動産から単独名義に変更に必要な費用と税金
共有名義の不動産を単独の名義にする場合、司法書士に対応を依頼するのが一般的です。登記の申請や書類の作成が複雑になるためです。
そのため、名義変更には司法書士に支払う報酬を支払う必要があります。
また、名義変更の状況によって、不動産を取得することになる人(名義人となる人)に対して何らかの税金が発生します。
ここでは、名義変更に必要な費用や税金を紹介します。具体的には、以下の費用や税金の支払いが必要です。
必要な費用 | 金額 |
---|---|
司法書士への報酬 | 4万円から16万円程度 |
登録免許税 | 固定資産税評価額の1.5%(軽減税率適用時) |
印紙税 | 200円から48万円(契約金額によって異なる) |
不動産取得税 | 土地と家屋は固定資産税評価額の3% |
譲渡所得税 | 譲渡所得の20.315%か39.63%(不動産の所有期間によって異なる) |
贈与税 | 不動産価格の10%~55%(贈与した不動産の価格によって異なる) |
それぞれ詳しく解説します。
司法書士への報酬|4万円から16万円程度
共有状態にある不動産の単独名義への変更に関する手続きを司法書士に依頼すると、司法書士への報酬が発生します。
司法書士事務所によって金額は異なりますが、報酬の一般的な目安は以下のとおりです。
登記内容 | 報酬の目安 |
---|---|
所有権移転登記 | 2万円~10万円 |
抵当権抹消登記 | 1万円~3万円 |
住所変更登記 | 1万円~3万円 |
自分で登記手続きをすればこれらの費用を節約できますが、登記に関する手続きは司法書士に依頼するのが無難です。基本的には上記の費用がかかるものとして考えておいた方がいいでしょう。
登録免許税|固定資産税評価額の1.5%(軽減税率適用時)
税額は不動産の固定資産税評価額に税率をかけて算出します。固定資産税評価額とは、固定資産税を決める際の基準となる評価額のことで、各自治体が管理している固定資産課税台帳に記載されています。
なお、固定資産税課税台帳に価格の登録がない(新築住宅)の場合は、法務局の登記官が認定した課税標準額に対して税率をかけて登録免許税を計算するため、共有不動産を管轄する法務局に問い合わせる必要があります。
また、登記の種類によって税額の算出方法が異なります。具体的な算出方法は以下のとおりです。
項目 | 算出方法 |
---|---|
・売買による土地の所有権移転登記 | 固定資産税評価額×1.5% ※軽減税率適用、通常は2.0% |
・売買による土地以外の不動産の所有権移転登記 ・贈与による所有権移転登記 ・財産分与による所有権移転登記 ・放棄による所有権移転登記 |
固定資産税評価額×2.0% |
・抵当権設定登記 | 固定資産税評価額×0.1% |
・抵当権抹消登記 ・住所変更登記 |
不動産1つにつき1,000円 |
売買による土地の所有権移転登記の税率は基本的に2.0%ですが、令和8年3月31日までは軽減税率が適用されており、登録免許税の税率は1.5%となっています。
印紙税|200円から48万円(契約金額によって異なる)
売買契約や贈与契約による単独名義への変更の場合は、印紙税も必要です。
なお、不動産の贈与契約書では、契約書に記載された評価額に関係なく、一律200円の収入印紙を貼付します。
一方、不動産の売買契約(譲渡)に関連する書類を作成する場合に必要な印紙税額は以下のとおりです。
作成する書類 | 印紙税額 |
---|---|
・不動産の譲渡に関する契約書 (不動産売買契約書、不動産交換契約書、不動産売渡契約書等など) ・地上権や土地の賃借権の設定、譲渡に関する契約書 (土地賃貸借契約書、土地賃料変更契約書など) |
・1万円未満:非課税 ・10万円以下:200円 ・10万円を超え50万円以下:400円 ・50万円を超え100万円以下:1,000円 ・100万円を超え500万円以下:2,000円 ・500万円を超え1,000万円以下:1万円 ・1,000万円を超え5,000万円以下:2万円 ・5,000万円を超え1億円以下:6万円 ・1億円を超え5億円以下:10万円 ・5億円を超え10億円以下:20万円 ・10億円を超え50億円以下:40万円 ・50億円を超えるもの:60万円 |
ただし、令和9年3月31日までに作成される不動産の譲渡に関する契約書のうち、契約金額が10万円を超える場合に関しては、印紙税額が以下のように軽減されます。
契約書に記載された契約金額 | 税額 |
---|---|
10万円超50万円以下 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 6万円 |
5億円超10億円以下 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 32万円 |
50億円超 | 48万円 |
※不動産譲渡に関する契約書に記載された契約金額が10万円以下の場合は軽減税率の対象外(税額200円)、契約金額が1万円未満は非課税
※不動産の譲渡に関する契約書のうち、平成26年4月1日から令和9年3月31日まで作成される場合の軽減税率
参考:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
参考:No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁
不動産取得税|土地と家屋は固定資産税評価額の3%、非住宅用の土地建物は4%
贈与や売買によって共有持分を取得した場合は、不動産取得税が課税されます。
税額は固定資産税評価額に税率をかけて算出します。税率は以下のとおりです。
取得する不動産の種類 | 税率 |
---|---|
宅地 | 3% ※令和9年3月31日までの軽減税率 |
住宅用の建物 | 3% ※令和9年3月31日までの軽減税率 |
住宅用以外の土地建物 | 4% |
なお、取得した不動産が土地か家屋かによって不動産取得税額の計算方法が異なります。
土地を取得した場合の計算方法は以下のとおりです。
納税額=当初税額-軽減額
取得すると土地が、住宅新築予定土地または中古住宅用土地(耐震基準適合既存住宅の場合)では、以下のいずれかのうち、低い方が軽減されます。
- 45,000円
- 土地1㎡当たりの固定資産税評価額×1/2×(課税床面積×2)×3%
※課税床面積の上限は200㎡
家屋を取得した場合の計算方法は以下のとおりです。
非住宅の納税額=固定資産税評価額×4%
取得した家屋が一定の要件を満たしている場合、築年数に応じて特別控除額が適用されます。特別控除が適用される一定の要件は以下のとおりです。
- 土地を取得してから3年以内に住宅を新築する場合
- 新築後1年以内に未使用の建売住宅を購入した方がその敷地を取得した場合
- 事故居住用の中古住宅とその敷地を取得した場合
※新築・購入する住宅の床面積は50㎡~240㎡
※中古住宅は昭和57年1月1日以降に新築されたもの
特別控除額は以下のとおりです。
新築された日 | 控除額 |
---|---|
昭和51年1月1日~昭和56年6月30日 | 350万円 |
昭和56年7月1日~昭和60年6月30日 | 420万円 |
昭和60年7月1日~平成元年3月31日 | 450万円 |
平成元年4月1日~平成9年3月31日 | 1,000万円 |
平成9年4月1日以降 | 1,200万円 |
譲渡所得税|譲渡所得の20.315%か39.63%(不動産の所有期間によって異なる)
単独名義への名義変更を行う場合、譲渡所得税がかかることがあります。
税額は、譲渡所得に税率をかけて計算します。譲渡所得の計算方法は以下のとおりです。
譲渡価額とは不動産の売却金額、取得費とはその不動産の購入金額、譲渡費用は売却にかかった諸費用を指します。
なお、取得費に含まれるのは以下の費用です。
- 土地・建物の購入時に納めた登録免許税や不動産取得税、特別土地保有税、印紙税
- 借主を立ち退かせるための立ち退き料
- 土地の埋め立てや土盛り、地ならしのための造成費用
- 土地の取得に支払った測量費用
- 所有権などの確保のための訴訟費用
- 当初から土地の利用が目的と認められる場合の建物の購入代金や取り壊し費用
- 土地や建物の購入に借り入れや資金の利子のうち、土地・建物を実際に使用する日までの期間の利子
- 土地の購入契約を解除して、他の物件を取得した場合の違約金
なお、・売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、譲渡所得税の税率が以下のように異なります。
所得税 | 復興所得税 | 住民税 | 合計税率 | |
---|---|---|---|---|
短期譲渡所得(所有期間が5年以下) | 30% | 0.63% | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得(所有期間が5年超) | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
贈与税|不動産価格の10%〜55%(贈与した不動産の価格によって異なる)
共有者間の贈与によって不動産を取得した場合は、贈与税が課せられることがあります。
贈与税額は、贈与された不動産の時価から計算されます。詳しい計算式は以下のとおりです。
基礎控除後の課税価格=不動産価格-110万円
贈与税額=基礎控除後の課税価格×税率-控除額
なお、贈与税の税率は特例税率と一般税率の2種類があります。
特例税率とは、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の方が、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与を受ける場合に適用される税率です。
一方、一般税率とは特例税率に該当しない場合に適用される税率です。
一般税率での贈与税率と控除額は以下のとおりです。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超え | 55% | 400万円 |
次の、特例税率での贈与税率と控除額は以下のとおりです。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超え | 55% | 640万円 |
不動産を単独名義に変更せずに共有名義のままでいるリスク
弊社には「不動産を単独名義にせずに共有名義のままにしていてもいいのか」という相談が寄せられることもあります。
「共有者が死亡したことで相続があった」という場合は除きますが、法律上は不動産を単独名義にしなければならないというわけではありません。とはいえ、共有名義状態にはリスクがあるため、実務上は単独名義に変更した方がよいケースがほとんどです。
たとえば、不動産を単独名義に変更せずに共有名義のままでいるリスクとしては下記が挙げられます。
- 不動産の活用に制限がある
- 不動産の権利関係が複雑化する
- 固定資産税などの支払い負担について共有者間でトラブルが起こりやすい
- 離婚時にトラブルになりやすい
ここからは、弊社に寄せられた相談・買取の事例も紹介しつつ、不動産を単独名義に変更せずに共有名義のままでいるリスクについて解説していきます。
不動産の活用に制限がある
前提として、共有名義不動産においてすべての共有者は、その不動産を使用する権利が法的に認められています。すべての共有者に権利がある以上、共有者の誰か1人が独断で勝手に共有名義不動産を活用することは認められていません。
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
e-Gov法令検索 民法第249条
共有名義不動産を活用するのであれば、他の共有者から同意が必要になります。どのように活用するのかによって同意がどれほど必要になるのかは、民法で下記のように定められています。
行為の種類 | 共有者の同意 | 行為の具体例 |
---|---|---|
変更行為 | 共有者全員の同意が必要になる | ・家屋の取り壊しや建て替え ・増改築 |
管理行為 | 共有持分の過半数の同意が必要になる | ・賃貸に出す ・リフォームする |
保存行為 | 共有者の同意は不要 | ・建物滅失登記 ・壁紙の交換 ・その他の修理 |
例えば、共有名義の不動産全体を売却するには、共有者全員からの同意が原則必要です。誰か1人でも反対する共有者がいれば売却することはできません。
また、不動産について何かの行為を行うたびに共有者と協議する必要があり、その際には共有者同士で意見が対立してしまいトラブルに発展することも珍しくありません。
実際に弊社にはこのようなトラブルが起きてしまった方から相談が多々寄せられており、例としては下記のようなケースがありました。
そこで弊社がご紹介者様からご紹介いただき、相談者の共有持分を買い取る形で成約となりました。
不動産の有効活用を検討している場合は、共有状態の解消を目指したほうがいいでしょう。
不動産の権利関係が複雑化する
不動産が共有名義のままの場合、権利関係が複雑化する恐れがあります。
共有者の1人が死亡して相続が発生した場合、その持分は相続人に引き継がれることになります。相続人が複数名いる場合は、共有持分がさらに分割され、権利の所在が複雑になってしまうのです。
なかには疎遠な親族が新たな共有者となるケースもあり、意思疎通が難しくなるほか、不動産への分割や活用、売却のための協議がまとまらなくなる場合もあるでしょう。
結果的に、不動産が放置される状況になりやすく、トラブルの解決が先送りされることになります。
実際に弊社へ寄せられた相談のなかには、相続によって権利関係が複雑になってしまった方の事例があります。
相続人は3世代・20名近くに上り、それぞれ居所の都道府県が異なっていました。売却に非協力的な共有者もおり、相続手続きが難航していたところで弊社への相談に至ったようです。
「関係が悪い共有者がいる」「認知症の共有者がいる」などの理由から、相続人全員での売却は困難だったため、弊社が共有持分を買い取りいたしました。
トラブルの回避のためにも、共有不動産への対処を早めに検討することが大切です。
固定資産税などの支払い負担について共有者間でトラブルが起こりやすい
不動産の共有状態が続いた場合、固定資産税などの支払い負担について共有者間でトラブルに発展するケースもあります。
前提として、共有名義不動産ではすべての共有者がそれぞれの持分割合に応じて固定資産税などの費用を負担しなければなりません。
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
e-Gov法令検索 民法第253条
法律上はこのように定められていますが、実務上は「共有者の誰かが費用を払わない」「代表者1人だけが負担している」といったケースも少なくありません。税金や管理費を負担しない共有者がいる場合、費用を負担している共有者とトラブルに発展してしまうこともあるのです。
弊社に寄せられた相談の中には、下記のように固定資産税などの負担でトラブルが起きてしまった事例もあります。
自身が使用していない物件の管理費を負担している状況が続いたため売却を提案したようですが、弟から返事はもらえなかったようです。
自分も高齢のため、売却して子供たちに負動産を相続させたくないとのご相談をいただき、ご相談から2週間で、弊社が共有持分を買取りいたしました。
共有者間でのいざこざがトラブルに発展すれば、共有者間の関係性が悪化する可能性があるため、不動産の共有状態は早めに解決したいところです。
離婚時にトラブルになりやすい
夫婦同士で不動産を共有している場合、離婚時にトラブルが起こる恐れがあります。
夫婦が離婚する場合、財産分与を行います。財産分与とは、婚姻中に協力して築いた財産を、夫婦で分配することです。
共有名義の不動産も財産分与の対象となり、分配する必要がありますが、不動産は等しく2分割できない場合がほとんどのため、夫婦のどちらかの単独名義に変更して処理するケースも多く見られます。
しかし、不動産は売却して現金化しなければ分配することが難しい財産であるため、実務上は共有名義のまま離婚をするケースも多々あります。
弊社に寄せられた相談の中には、離婚後も元配偶者と共有状態が続いたことで不動産の売却ができずに悩んでいたからの事例があります。
共有状態を解消し、元夫との関係も完全に断ち切りたいとのご相談を受け、弊社が売主様の持分を買取ることで問題を整理いたしました。
このようなトラブルを未然に防ぐためにも、離婚の際には不動産の共有名義を解消しておくことが得策です。
単独名義への変更以外に不動産の共有名義から抜け出す方法
不動産の共有名義から抜け出す方法は、単独名義に変更することだけではありません。他にも下記のような方法で共有名義から抜け出すことが可能です。
- 共有持分を第三者に売却する
- 共有物分割請求訴訟をする
なお、詳しくは後述しますが、共有物分割請求訴訟は裁判所の判断で強制的に共有状態を解消する方法です。最終手段とも言えるため、「他に方法がない」という場合に検討するのが良いでしょう。
共有持分を第三者に売却する
前述したように、共有持分であれば所有者が自由に売却できます。売却先は共有者に絞られるのではなく、購入を希望する人であれば誰にでも売却可能です。
そのため、不動産の共有名義から抜け出す方法としては、共有持分を第三者に売却することも1つの手です。
ただし、共有持分はあくまで所有権の一部に過ぎず、所有したとしても不動産全体を自由に使えるわけではないため、居住目的の一般の人が購入することはまずありません。実務経験上でも、仲介で共有持分を売却できるケースはごく稀です。
そこで、共有持分を第三者に売却する場合、専門の買取業者に依頼するのが得策です。専門の買取業者であれば買い取った共有持分を活用して利益を出す仕組みを整えているため、共有持分だけであっても売却に期待できます。
なお、弊社は共有持分を専門とする買取業者です。弁護士などの士業と連携しながら買取を行うため、「共有者とトラブルが起きている」という場合も買取が可能です。
共有物分割請求訴訟をする
不動産の共有状態を解消する方法として、共有物分割請求訴訟を起こす方法もあります。
共有物分割請求訴訟とは、裁判所を通じて共有状態の解消を行うための訴訟です。裁判所に適切な分割方法を裁定してもらい、その方法に従って共有物を分割します。
共有者同士での話し合いでは、共有状態の解消方法について話がまとまらないケースも多々あります。そのような場合に、有効な手段となるのが、共有物分割請求訴訟です。なお、共有物分割請求訴訟は、他の共有者の同意がなくても訴訟の申し立てが可能です。
裁判を起こすことで、共有状態を抜け出すための方法を提示してもらえるほか、裁判所の裁定であれば、他の共有者も従いやすくなるでしょう。
ただし、分割方法は訴訟を起こした人が決められるのではなく、あくまでも裁判所の判断によります。そのため、自分が希望していない方法が提示される場合があるほか、すべての共有者にとって望まない結果となるケースもあります。
共有者間の協議がまとまらない場合は専門家(弁護士、司法書士)に相談しよう
共有不動産の処理や活用について、共有者同士での話し合いがまとまらない場合は、弁護士や司法書士といった専門家に相談することをおすすめします。
意見がかみ合わず、不動産を自由に活用できなくても、維持管理費用や固定資産税などのコストが発生します。また、その状態で不動産を放置すると、自分の子どもや孫の世代まで、トラブルの解消を先送りすることにもなりかねません。
共有持分のトラブルに対しては、法律の知識や交渉スキルも必要になります。
そのため、共有者同士での協議がまとまらない場合は、弁護士や司法書士に相談した方がいいでしょう。
株式会社クランピーリアルエステートでは、共有持分の高価買取が可能です。買取実績も豊富で、多くのお客様からご相談いただいています。また、弁護士とも連携しており、共有者間でのトラブルにもしっかり対応できます。
まとめ
共有名義の不動産を単独名義に変更すれば、不動産を活用しやすくなるほか、トラブルを避けられます。
ただし、共有者全員の同意が必要になるほか、費用や税金が発生するため、慎重な判断が求められます。
弁護士や司法書士といった専門家に相談して、不動産の共有状態を解消できるよう対処していきましょう。