共有持分の放棄はもったいない!持分の放棄よりも売却がおすすめな理由

共有持分の放棄はもったいない!持分の放棄よりも売却がおすすめな理由

共有持分の放棄とは、自分が持つ不動産の共有持分をすべて手放すことです。共有持分の放棄に必要な手続きは口頭や書面を通じて「放棄の意思表示をすること」のみであり、他の共有者の同意が必要ありません。そのため、簡単に共有持分を手放したい人にとっては進めやすい手続きだと言えます。

しかし、共有持分の放棄にはいくつか注意点が存在します。まず共有持分の放棄は「タダで共有持分を手放す」ということであり、売却のように対価としてお金を受け取れません。共有持分の資産価値が高いほど、「タダで手放したのはもったいない」と後悔する可能性があります。

次に放棄は売却・贈与と比べて、譲渡に関する自由度が低い点にも注意が必要です。放棄した共有持分は他の共有者が持つ共有持分割合に応じて振り分けるのが一般的であり、なおかつ自分が持つ共有持分はすべて放棄しなければなりません。「兄弟のうち弟だけに渡したい」「一部だけ放棄してちょっと残したい」といった柔軟な対応を望むなら、売却や贈与のほうが向いています。

また、放棄は意思表示のみで進められる一方で、共有持分移転登記(共有持分を移転する所有権移転登記)をしなければ法的に放棄したことが証明できません。登記しないままだと、トラブルがあったときに放棄したと主張できなかったり、固定資産税を支払い続けることになったりします。そして登記は共同申請が求められるため、他の共有人に協力を依頼する必要が出てきます。

さらに、共有持分を放棄したときには、共有持分を譲り受けた相手は贈与税や不動産取得税の納税義務を負う可能性があることも認識しておきましょう。もし勝手に共有持分を放棄すると、他の共有者は突然高額の支出が発生することになり、人間関係などで大きなトラブルになるリスクがあります。

このように、共有持分の放棄は手続きが簡易な反面、注意すべき部分が数多く存在します。もし共有持分を手放したいなら、放棄よりも売却のほうがおすすめです。とくに「共有持分を取り扱う専門の買取業者」の利用を推奨します。買取業者への売却をおすすめする理由は次の通りです。

  • 放棄するだけでは得られない現金を、スピーディーに得られる
  • 顔を合わせたくない共有者に、所有権移転登記を協力してもらわなくていい
  • 一般的には需要が低い共有持分でも買取に対応している

弊社株式会社クランピーリアルエステートでは、共有持分を含めた「訳あり物件」を専門に買取をおこなっています。年間3,000件を超えるご相談と豊富な買取実績を基に、共有持分を適正に査定しスムーズに買取いたします。ぜひ無料相談・無料査定から気軽にご利用ください。

この記事では、共有持分の放棄の概要や、共有持分の放棄よりも売却を勧める理由について解説します。また、共有持分の放棄に関する注意点、放棄に必要な手続き、放棄で発生する税金や費用などもまとめました。「共有持分を手放したいけど、放棄にすべきか迷っている」という人は、ぜひ参考にしてください。

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共有持分の放棄とは

共有持分の放棄は自分1人の意思だけで成立する反面、「譲渡相手や譲渡割合は選べない」「売却したときのような対価は得られない」といった注意点が存在します。放棄で手放した共有持分は、特定の誰かではなく他の共有者同士で分け合います。

相続時に共有持分の放棄するケースで考えられるのは、「相続後に共有持分を放棄する」「相続放棄の手続きをする」の2パターンです。同じ放棄手続きでも方法や結果がまったく異なるので、どちらが選ぶべきかは慎重に検討しましょう。

以下では共有持分の放棄とは何か、概要を解説します。

共有者の一人が自己の持分を放棄すること

共有持分の放棄とは、2人以上に所有権がある共有不動産において、共有者の1人が自己の持分を放棄することです。放棄された共有持分は、他の共有者へ帰属します。売却・贈与とも異なり、放棄した人がお金といった何かしらの対価を得ることはありません。

共有持分の放棄は、民法第255条にて規定されています。

第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
e-Gov法令検索 民法

共有者が2人だけなら放棄した共有持分のすべてが1人へ帰属し、不動産が単独名義になります。共有者が3人以上いる場合は1人が放棄すると、他の共有者の共有持分割合に応じ、放棄された共有持分を分割するのが一般的です。

放棄後の共有持分の扱いは、「自己持分を他共有者に無償で譲渡したい場合は放棄ではなく贈与が向いている」にて詳細を解説しています。

持分放棄をするときに他の共有者の承諾は不要

自分が持つ共有持分の放棄を進めるときに、他の共有者からの承諾は不要です。放棄は、自分の意思表示だけで成立するからです。民法第206条にて「自分の所有物は自由に使ったり処分したりできる」との記載もあります。

第四節 準占有
第二百五条 この章の規定は、自己のためにする意思をもって財産権の行使をする場合について準用する。
(所有権の内容)
第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
e-Gov法令検索 民法

ただし持分放棄に同意が必要ないからといって、他の共有者を完全に無視してよいわけではありません。共有持分の放棄にともなう所有権移転登記(以下、共有持分移転登記)をする際には、他の共有者との共同申請が求められるからです。

共同申請とは、登記行為において「登記義務者」と「登記権利者」が協力して申請することです。不動産登記法第60条においては、共有持分を放棄する人が「登記義務者」、他の共有者は「登記権利者」に該当します。

つまり持分放棄について登記するときに、結局のところ他の共有者に共同申請をお願いする必要があります。

(共同申請)
第六十条権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
e-Gov法令検索 不動産登記法

一方で売却や贈与は、単独行為ではなく、当事者双方の意思表示の合致で権利・義務が発生する「契約行為」に該当します。相手の承諾がなければ成立しないものの、放棄ではできない柔軟な対応ができるのが売却・贈与の強みです。

たとえば共有持分の放棄は自分の意思だけで対応できる反面、取得させる相手を選んだり現金を得たりなどはできません。しかし売却や贈与なら、合意さえあれば共有持分の取得先を自分で選べます。共有持分を手放したいときは、自分の意思や状況に合わせた方法を選ぶのがよいでしょう。

以下では、共有持分の放棄・売却・贈与の違いをまとめました。

放棄 売却 贈与
他の共有者からの同意 ・不要
・登記時には協力が必要
・自分の共有持分のみを売却するなら不要
・売却先が他の共有者なら買主となる共有者との契約内容の同意が必要
・共有不動産すべてを売却するときは全員同意が必要
贈与する側・される側の合意が必要
現金化 不可 不可
共有持分を譲渡する相手 選べない 売却相手として選べる 贈与相手として選べる
手放す側にかかる費用 ・意思表示のみはなし
・共有持分移転登記にかかる登録免許税(受ける側が費用を負担することもある)
・放棄しても移転登記をしなければ固定資産税の通知が来る可能性あり
売却で得た譲渡所得に対する税金 共有持分移転登記に関する登録免許税など
他の共有者が譲受側だった場合にかかる費用 固定資産税や不動産取得税など ・固定資産税、不動産取得税など
・共有持分移転登記の費用は買主側負担が一般的
贈与税、固定資産税、不動産取得税など
その他補足事項 ・放棄した人の不動産取得日・取得費は引き継がない
・取得費は概算取得費(売却金額の5%等)とする
贈与した人の不動産・取得費を引き継ぐ

なお放棄時は他の共有者の同意が必要ないとはいえ、事前に他の共有者に話を通したり事実を書面に残したりするのが実情です。詳細は「持分放棄の意思表示を行う」をご覧ください。

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共有持分の放棄と相続放棄は全く違う

共有持分の放棄と似た言葉として、「相続放棄」があります。相続放棄とは、相続が発生したときにすべての財産や権利、義務を引き継がないことです。もし相続財産のなかに不動産の共有持分が含まれていれば、他の相続財産ごと一緒に放棄します。

相続放棄は、共有持分の放棄とはまったく異なります。相続放棄は「被相続人から受け取れる財産を相続人が受け取らない」という流れであり、始めから共有持分を所有していないことになるからです。一方で共有持分の放棄は、もともと所有していた共有持分を手放す手続きになります。

共有持分の放棄 相続放棄
放棄する範囲 共有持分のみの放棄になる 共有持分以外の相続財産も一緒にすべて放棄する
放棄するための手続き 意思表示のみで成立する 家庭裁判所での申述をおこなう
放棄時の他の関係者とのやり取り 原則として必要ないが、実情としては事前に話をまとめておく ・原則として必要なく、放棄後に相続人となる人へ連絡する義務もない
・相続をスムーズに進めてもらいたいときには、次の相続人へ相続権が移ったことを連絡するのもよい
放棄できる期限 他に共有者が残っているなら好きなタイミングで放棄できる 相続開始を知ってから3か月以内におこなう
放棄が成立するタイミング 登記されている共有持分を手放す 相続登記前に共有持分を受け取らない
単独でできるか否か 単独行為なので1人で可能 単独行為なので1人で可能

相続した共有不動産の共有持分を放棄する場合、「一旦相続してから共有持分の放棄をおこなうケース」と「相続放棄してそもそも受け取らないケース」の2パターンが存在します。どちらがよいかは、相続財産の金額や相続時の環境によって変わります。

たとえば相続財産が共有持分を含めてプラスになる場合は、相続放棄せずに後から共有持分を放棄したほうが資産が増えます。相続放棄すると、他のプラスの相続財産もまとめて相続できなくなるからです。一旦共有持分を相続した後で、共有持分を売却、贈与、放棄するかを決めるのがよいでしょう。

逆に共有持分以外が利用価値がない空き家や借金といったマイナスの財産ばかりのときは、相続放棄する選択肢も考えられます。また相続財産がプラスでも、「共有不動産の管理や売却について揉めそう」「他の相続財産について親族同士で争いが起きそう」といったケースなら、相続放棄でいち早くトラブルから抜け出すのも1つの手です。

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共有持分の放棄よりも買取業者への売却がおすすめ

共有持分の放棄は、言い換えれば資産価値がある不動産をタダで手放していることになります。手軽な反面、「もったいないかも…」と感じる人もいるのではないでしょうか。実は自分が持っている共有持分のみを売るときは、放棄と同じく自分の意思だけで進められます。共有不動産全体を売却するときのように、共有者全員の同意は必要ありません。

そのため「共有持分を手放せるなら方法は何でもいい!」と思う人には、共有持分の放棄よりも買取業者への売却がおすすめです。共有持分の買取実績がある買取業者なら、適正価格でスピーディーに買い取ってくれます。また、一般的には共有持分移転登記を買取業者側の専門家がサポートしてくれるため、自分が他の共有者とやり取りする必要がなくなるのもメリットです。

以下では、共有持分を買取業者へ売却するのがおすすめな理由を解説します。

放棄するだけでは得られない現金を得られる

共有持分を買取業者へ売却すれば、放棄では得られない現金が手元に入ってきます。

共有持分は、他の不動産会社や個人への売却も可能です。しかし共有持分は、以下の理由で第三者の買手が見つかりにくいというデメリットがあります。

  • 買手が知らない共有者と不動産を共有するため、トラブルのリスクがある
  • 共有持分の部分しか使えないので、不動産としての活用幅が狭まる

そこで共有持分といった「訳あり物件」を専門に買い取っている業者なら、共有持分割合にかかわらず、すぐに買い取ってくれます。買取業者へ売却する主なメリットは次の通りです。

  • 普通の不動産会社や個人だと買い取ってくれない共有持分買取に対応している
  • 買手が買取業者自身なので、第三者の買手を探す必要がなく売却がスピーディーになる
  • 豊富な専門知識や活用実績を基に査定するため、売却相場が低い共有持分でも適正価格で買い取ってくれる

共有持分の買取業者を探すときは、「共有持分の買取実績はあるのか」「他の業者と比較して査定額はどうなっているか」などを確認しておきましょう。

たとえば訳あり物件買取専門業者クランピーリアルエステートなら、共有持分を含めた数々の訳あり物件の高額買取実績が豊富にあります。また全国1,500以上の士業と提携しており、所有権移転登記、他の共有者との交渉、その他法的トラブルまでワンストップで対応が可能です。

共有者に所有権移転登記を協力してもらわなくていい

共有持分を放棄した後は、他の共有者に協力を依頼して共有持分移転登記をしなければなりません。しかし、「他の共有者との縁を切りたいし、話したくもない」という理由で共有持分を手放すと決めた人だと、結局は関わることになってしまい本末転倒です。

なかには非協力的な態度や嫌がらせによって、所有権移転登記に協力しない共有者も存在します。嫌がらせには「登記引取請求訴訟」を提起して裁判所に認められれば対処できるものの、手続きや裁判の手間があまりにもかかりすぎてしまいます。

もし買取業者へ売却すれば、買取業者が提携している司法書士や弁護士が登記手続きなどの法的手続きを代行するのが一般的です。そのため、放棄とは異なり他の共有者と直接かかわらなくて済むメリットがあります。

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共有持分の放棄に関する注意点

共有持分の放棄を検討するときは、以下の注意点をあらかじめ確認しておいてください。

  • 共有持分の放棄は「早い者勝ち」なので他の共有者が先に放棄する可能性もある
  • 自分の共有持分の一部のみは放棄できない
  • 自己持分を他共有者に無償で譲渡したい場合は放棄ではなく贈与が向いている

それぞれの詳細を見ていきましょう。

共有持分の放棄は「早い者勝ち」なので他の共有者が先に放棄する可能性もある

あなたが共有持分を放棄する権利を持つように、他の共有者も共有持分を放棄する権利を有しています。もし他すべての共有者が先に共有持分を放棄し、自分しか不動産の所有権を持たない状況になると、あなたは「不動産の単独所有者」になります。

不動産の単独所有者は、自身が持つ所有権を放棄できません。要するに共有持分の放棄は、ある意味で最後の1人になるまでの「早い者勝ち」と言えます。

共有不動産が「維持管理に手間や費用がかかる」「市場価値が低く活用しづらい」という場合だと、他の共有者全員がすぐに放棄する可能性も否定できません。不動産の所有権自体をさっさと手放したいときは、すぐに放棄手続きを進めるのがよいでしょう。

ただし最後の1人なったとしても不動産はあなたの単独名義になるため、不動産会社や個人といった第三者への売却や、賃貸や事業用物件としての活用がやりやすくなるメリットもあります。万が一先に放棄されたときは、不動産の売却や活用も視野に入れた対応を進めるのも1つの手です。

自分の共有持分の一部のみは放棄できない

自分の共有持分の放棄するときは、一部だけではなく所有するすべてを手放す必要があります。たとえば、「固定資産税が高いので共有持分を減らしたいけど、全部を手放すのは避けたい」といった言い分は認められません。

自分の共有持分の一部だけを手放したいときは、売却や贈与など他の方法で対応するのがよいでしょう。

自己持分を他共有者に無償で譲渡したい場合は放棄ではなく贈与が向いている

自分の共有持分を「特定の共有者を選出して無償で譲渡したい」なら、放棄ではなく贈与のほうが向いています。「共有者の一人が自己の持分を放棄すること」でも解説した通り、共有持分を放棄すると、共有者の持分割合に応じて帰属させるのが一般的だからです。「放棄した後は、Aさんへ8割、Bさんへ2割を渡す」と自由に決めることはできません。

たとえば共有持分割合がA20、B50、C30だった場合にAが共有持分を放棄すると、それぞれの共有者へ帰属する共有持分はB12.5、C7.5です。最終的な共有持分割合は、A0、B62.5、C37.5になります。ABC3人の共有持分割合が1/3ずつなら、Aの共有持分をBとCが半分ずつ受け取り、最終的な共有持分割合はB50、C50になります。

もしも贈与で対応すれば、自分の共有持分を特定の共有者へ無償で譲渡できます。贈与は「贈与側と受贈側の2者で交わされる法的な契約行為」であり、贈与契約に基づいて共有持分を特定の共有者に渡せるからです。

贈与契約にてお互いの意思表示が合致すれば、どのような契約内容であっても契約通りに共有持分の所有権が移転します。そのため、「自分の共有持分をA8割、Bへ2割、タダで譲渡する」と明確に指定できます。特定の共有者に確実に持分を移転させたい場合には、贈与が適していると言えるでしょう。

共有持分の放棄に必要な手続きと書類

共有持分の放棄に必要な手続きは、以下の通りです。

  • 持分放棄の意思表示を行う
  • 持分放棄の持分移転登記をする
  • 他共有者が登記に協力しないときは登記引取請求訴訟を提起する

以下では、手続きのプロセスの詳細と手続きに必要な書類を紹介します。

持分放棄の意思表示を行う

共有持分の放棄は、まず共有持分を放棄する旨を他の共有者へ意思表示しましょう。意思表示の方法は、口頭でも問題ありません。意思表示の方法について、法的な決まりがないからです。

口頭で伝える際には、共有持分の配分、所有権の所在、今後の対応などの細かいところをすり合わせておくと、後々のトラブルを防ぎやすくなります。

とくに贈与税や不動産取得税など、放棄した共有持分を受け取る側にかかる費用については早めに話をしておいてください。無断で進めると他の共有者は突然高額の納税を求められることになり、多大な迷惑をかけてしまいます。

なお、口頭だけだと意思表示をした証拠が残らないため、後から「自分は聞いていないと嘘をつかれた」「話したはずなのに忘れられていた」など、言った言わないの争いになるリスクがあります。口頭ですり合わせした後は、書面として残すために内容証明郵便であらためて意思表示をおこないましょう。

内容証明郵便で意思表示するメリットは、次の通りです。

  • 登記引取請求訴訟になったときの法的証拠として使える
  • 他の共有者も放棄したときに、誰の意思表示が早かったのか時系列が明確になる

内容証明郵便の効力を高めるために、作成は司法書士や弁護士などの法の専門家へ依頼することをおすすめします。

持分放棄の持分移転登記をする

対外的に共有持分を放棄したことを証明するには、意思表示だけではなく、共有持分移転登記にて放棄の事実を記録する必要があります。共有持分移転登記を完了させることで、当該不動産において自分に所有権がないこと、他の共有者が放棄した分の所有権を主張できることが公的に認められます。

共有持分移転登記をするには、必要種類を揃えたうえで、共有持分がある不動産の所在地を管轄する法務局での手続きが必要です。共有持分放棄の登記は他の共有者との共同申請が必要になるため、あらかじめ協力をお願いしておいてください。

他の共有者にお願いする協力の具体的な内容は、以下の通りです。

  • 法務局で一緒に申請する(委任状を用いた代行でも可)
  • 必要書類を揃えてもらう

共有持分を放棄する人(登記義務者)、他の共有者(登記権利者)が揃える必要書類を以下の表でまとめました。

放棄する人の必要書類 概要
登記申請書 法務局の公式サイトよりダウンロード
登記原因証明情報 登記の原因となった事実・法律行為と、それに基づいた権利変動が生じたことを証明する情報
決まった書式はないが、報告形式の書面で作成するのが一般的
自分で作成または司法書士や弁護士に作成を依頼
登記識別情報 不動産の名義変更したときに、登記所から通知される書類
固定資産評価証明書 共有持分を放棄する不動産の固定資産評価額を証明する書類
都道府県や市区町村の役場の担当窓口にて申請
登記義務者の印鑑証明書 放棄する人の印鑑証明書
市区町村役場やコンビニにて発行
発行から3か月以内のもの
登記義務者の実印 登記原因証明情報や委任状などには実印での押印が必要
委任状 代理人が登記する場合に必要
他の共有者の必要書類 概要
登記権利者の住民票 放棄する人以外の共有者全員分
本人確認書類 共有者の本人確認ができるもの
認印 共有持分の譲受側は認印でも問題なし

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登記引取請求訴訟を提起する(他共有者が登記に協力しない場合)

もし共有持分の放棄の意思表示をしたにもかかわらず、他の共有者が登記に協力しないときは、「登記引取請求訴訟」の提起が必要になる可能性があります。

登記引取請求訴訟とは、共同申請が必要な登記において、登記権利者(放棄の場合は放棄する人以外の共有者)が登記申請に協力しないときに起こす手続きです。裁判の判決で勝訴を得ることで、共有持分移転登記であっても単独で登記申請ができます。

登記引取請求訴訟の提起の準備には、「訴状」「登記事項証明書などの添付書類」「放棄の意思表示をした証拠(内容証明郵便など)」が必要です。本人訴訟なら弁護士を依頼せずに進められますが、裁判の手間や確実性を考えると、弁護士に対応を依頼するのがよいでしょう。

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共有持分の放棄によって発生する費用

共有持分を放棄するときには、共有持分を放棄する側にも費用が発生します。また、放棄された共有持分を譲り受ける側はさらに高額の費用がかかります。

共有持分の放棄によって発生する費用は次の通りです。

  • 登録免許税
  • 司法書士への報酬
  • 贈与税
  • 不動産取得税

それぞれの詳細を見ていきましょう。

登録免許税

登録免許税とは、登記手続きをおこなうときに発生する税金です。共有持分の売買・贈与のときは「共有持分を得た側が負担」が一般的ですが、放棄のときは「共有持分を放棄した側が負担」となる傾向があります。

共有持分移転登記にかかる登録免許税の計算式は、次の通りです。

(固定資産税評価額×放棄する共有持分の割合)×登録免許税率

登録免許税の税率は、登記の内容や建物・土地によって変わります。

土地の登記の場合 税率
売買 2%(2026年3月31日までは1.5%)
相続、法人の合併または共有物の分割 0.4%
その他(贈与・交換・収用・競売等) 2%
建物の登記の場合 税率
所有権の保存 0.4%(マイホームの新築や取得のときは軽減措置あり)
売買または競売による所有権の移転 2%
相続または法人の合併による所有権の移転 0.4%
その他の所有権の移転(贈与・交換・収用等) 2%

参考:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表

共有持分の放棄の場合だと、登録免許税は建物・土地ともに税率2%の適用です。

たとえば固定資産税評価額3,000万円、共有持分割合20%の建物の共有持分を放棄する場合、計算は以下の通りになります。

(3,000万円×20%)×2%=登録免許税12万円

司法書士への報酬

共有持分移転登記は、登記に関する知識や実務経験がない人には難易度が高い手続きです。そのため、司法書士などの専門家へ代理申請を依頼するのが一般的です。

放棄の対応に必要な司法書士への報酬は、1件あたり5~10万円程度になります。ただし報酬額は依頼する司法書士事務所や対応範囲などによって変動するため、詳細な金額を知るには料金表の確認や司法書士事務所への見積もりが必要です。

贈与税

贈与税は、放棄した側ではなく共有持分を譲り受ける側に納税義務があります。

放棄する共有持分に課せられる贈与税は、「贈与する共有持分の価格(固定資産税評価額×放棄する共有持分の割合)」から「贈与税の非課税枠(基礎控除)110万円」を差し引いて出した課税価格に、課税価格の金額に応じた税率を乗じて算出します。

具体的な計算式は次の通りです。

{(固定資産税評価額×放棄する共有持分の割合)-贈与税の非課税枠110万円}×課税価格に応じた贈与税率-課税価格に応じた税額控除額

適用する税率は、以下のうち放棄する共有持分が当てはまるほうの税率表から選びます。

  • 一般贈与財産:特例贈与財産以外のすべての贈与
  • 特例贈与財産:18歳(贈与された年の1月1日時点)以上の人が、直系尊属(父母や祖父母など)から受けた贈与
一般贈与財産の
非課税枠適用後の課税価格
税率 税額控除
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円
特例贈与財産の
非課税枠適用後の課税価格
税率 税額控除
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

たとえば固定資産税評価額3,000万円、共有持分割合20%、一般贈与財産の共有持分を放棄する場合、計算は以下の通りになります。

【共有持分の価格計算】
(3,000万円×20%)-110万円=490万円
【適用される税率】
共有持分の価格が490万円なので、一般贈与財産・600万円以下のテーブルの税率30%・税額控除65万円を適用
【贈与税の計算】
490万円×30%-65万円=贈与税82万円

不動産取得税

不動産取得税とは、不動産を取得(相続を除いた購入、贈与、新築など)した人が支払う税金です。贈与税と同じく、放棄された共有持分を得た共有者が、不動産取得税の納税義務を負います。

共有持分の放棄で発生する不動産取得税の計算式は、次の通りです。

(固定資産税評価額×放棄する共有持分の割合)×不動産取得税率(2027年3月31日までは住宅・土地は3%、住宅以外の建物は4%)

たとえば固定資産税評価額3,000万円、共有持分割合20%の土地の共有持分を放棄する場合、計算は以下の通りになります。

(3,000万円×20%)×3%=不動産取得税18万円

なお、2027年3月31日までは宅地等(宅地および宅地と評価された土地)の共有持分なら、固定資産評価額を2分の1にして計算できます。

固定資産税

固定資産税とは、1月1日時点で不動産を所有している人が支払う税金です。共有持分を放棄した後は、原則として共有持分を得た共有者が固定資産税を納税します。ただし、「共有持分の放棄の意思表示をしたが、登記をしないまま翌年1月1日を迎えた」という場合は、放棄していてもその年の固定資産税を放棄した人が支払わなければなりません。

また放棄後に共有持分移転登記をおこなった後でも、登記した年の固定資産税に関しては。自分と共有者の双方が固定資産税を支払うのが一般的です。負担額は、共有持分を所有していた日数を基に日割り計算するのが一番公平でしょう。

固定資産税の計算式は次の通りです。

(固定資産税評価額×放棄する共有持分の割合)×課税標準額(原則として1.4%)

たとえば固定資産税評価額3,000万円、共有持分割合20%、その年の共有持分の所有日数が200日だった場合、計算は以下の通りになります。

(3,000万円×20%)×1.4%×200/365=固定資産税4万6,000円(小数点100円未満は切り捨て)

もし共有持分が「住宅用地の特例」の対象だったときは、固定資産税は最大で6分の1まで減ります。

なお都市計画税がかかる地域の場合は、固定資産税に加えて都市計画税の支払いが発生します。計算式は「(固定資産税評価額×放棄する共有持分の割合)×課税標準額(原則として0.3%)」です。

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まとめ

共有持分の放棄は意思表示のみで成立するため、売却や贈与と比較して手軽に共有持分を手放せます。しかし、共有持分の放棄には以下の注意点が存在します。

  • 売却のような現金化ができない
  • 共有持分を譲渡する相手や譲渡割合を自由に決められない
  • 放棄によって共有持分を受け取った相手には贈与税や不動産取得税がかかる
  • 共有持分移転登記をしないと法的に放棄が認められない
  • 共有者が登記に非協力的だと、登記引取請求訴訟に発展するリスクがある

「共有持分で利益を得たい」「特定の相手だけに共有持分を渡したい」といった場合は、放棄よりも売却や贈与のほうが向いています。自分が持つ共有持分だけなら、他の共有者の同意を得ずに第三者へ売却・贈与が可能です。

もし共有持分を手放したいと検討する人には、買取業者に買い取ってもらうことをおすすめします。とくに共有持分の買取実績がある買取業者なら、共有持分でも適正価格かつスピーディーな買取対応が可能です。また、提携する専門家が、登記対応や他の共有者との交渉などを代行してくれます。金銭面でも手続き面でも、共有持分の買取業者の利用にはさまざまなメリットがあります。

弊社株式会社クランピーリアルエステートなら、共有持分の買取について無料相談・無料査定からの利用が可能です。共有持分の放棄や売却について悩みがあれば、ぜひ気軽にお問い合わせください。

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