共有持分は放棄するべき?「早い者勝ち」「もったいない」と言われる理由も解説

共有持分の放棄とは、共有名義の不動産で自分が保有している持分をすべて手放すことです。共有名義から抜け出す方法を考えている中で、共有持分の放棄を検討している方もいるのではないでしょうか。
共有持分の放棄には、主に以下のようなメリットとデメリットがあります。
放棄するメリット | 放棄するデメリット |
---|---|
・不動産の共有によるトラブルを避けられる ・共有不動産における税金を支払う必要がなくなる |
・共有持分を現金化することができなくなる ・他の共有者の協力が必要になる ・他の共有者が贈与税を支払わなければならない可能性がある |
共有名義のままだと、不動産の売却や賃貸などの際に共有者の同意が必要になり、意見が食い違うと話し合いが長引いたり険悪になったりなどのトラブルが起こる恐れがあります。
共有持分を放棄すれば共有名義から抜け出せるため、協議や関係悪化を未然に防ぎ、将来的なトラブルから解放されるメリットがあります。また、固定資産税などの税金を支払う必要もなくなり、金銭的な負担が軽減されます。
一方、共有持分の放棄は無償で共有持分を手放すことになるため、売却のように対価としてお金を受け取れません。
とくに共有持分の資産価値が高い場合、売却によって想定以上の価格で現金化できる可能性もあります。共有持分専門の買取業者である弊社から見ても、無償で手放すのは非常にもったいない選択です。
また、共有持分の放棄は自分の意思表示のみでも可能ですが、放棄を成立させるための所有権移転登記を法務局に申請する際には、他の共有者の協力が不可欠です。
なぜなら、所有権移転登記は「放棄する人」と「他の共有者」が共同で申請する仕組みになっているからです。法的には共有持分の放棄に同意は必要ないものの、実際には登記を進めるために協力を得なければなりません。
さらに、共有持分を放棄したときには、共有持分を譲り受けた相手が贈与税や不動産取得税の納税義務を負う可能性があります。共有者に金銭的な余裕がなければ、所有権移転登記に協力してもらうのは難しいでしょう。
このように、共有持分の放棄にはメリットよりもデメリットが多く、共有持分を専門とする弊社としてもおすすめはできません。不動産に資産価値があり利益を得たいのなら売却、他の共有者に共有持分を無償で譲渡したいのなら贈与の手続きが向いています。
共有持分を売却をする場合、共有持分の専門業者に買取を依頼するのがおすすめです。他の共有者の同意を得る必要がなく、スピーディーに共有持分を現金化できます。
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本記事では、共有持分の放棄の概要や、放棄するメリット・デメリットなどについて詳しく紹介します。
また、共有持分の放棄が早い者勝ちと言われる理由や、放棄する際の注意点、放棄に必要な手続き、放棄で発生する税金や費用などもまとめているので、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそも共有持分は放棄できる?
法律上、共有持分は放棄することが可能です。
民法第255条では「共有者の一人が持分を放棄した場合、その持分は他の共有者に帰属する」と定められています。
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
民法 第二百五十五条(持分の放棄及び共有者の死亡)|e-Gov法令検索
売却や贈与とは異なり、譲渡相手を自由に選ぶことはできず、放棄した持分は他の共有者全員で分け合うことになります。
たとえば、共有者が2人だけの場合、放棄された持分がもう一方の共有者に帰属し、単独名義となります。
共有者が3人以上いる場合は、他の共有者の持分割合に応じて、放棄された共有持分が帰属する仕組みです。たとえば、兄弟3人でそれぞれ長男20%・次男50%・三男30%の持分を持っていたとします。このとき、長男が20%の共有持分を放棄すると、その20%は次男と三男に持分割合に応じて加算され、最終的には次男が62.5%、三男が37.5%となります。
放棄後の共有持分の扱いは、「自己持分を他共有者に無償で譲渡したい場合は放棄ではなく贈与が向いている」にて詳細を解説しています。
持分放棄をするときに他の共有者の承諾は不要
共有持分の放棄は自分の意思表示のみで成立するため、他の共有者からの承諾は不要です。民法第206条にて「自分の所有物は自由に使ったり処分したりできる」との記載もあります。
(所有権の内容)
第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
民法 第二百六条(所有権の内容)|e-Gov法令検索
ただし、共有持分の放棄をするためには、登記時に他の共有者の協力が必須です。共有持分の放棄にともなう所有権移転登記(以下、共有持分移転登記)をする際には、他の共有者との共同申請が求められるからです。
共同申請とは、登記行為において「登記義務者」と「登記権利者」が協力して申請することです。不動産登記法第60条においては、共有持分を放棄する人が「登記義務者」、他の共有者は「登記権利者」に該当します。
つまり持分放棄について登記するときに、結局のところ他の共有者に共同申請を依頼する必要があります。
(共同申請)
第六十条権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
不動産登記法 第六十条(共同申請)|e-Gov法令検索
一方で売却や贈与は、単独行為ではなく、当事者双方の意思表示の合致で権利・義務が発生する「契約行為」に該当します。相手の合意は必要になりますが、共有持分の贈与先を自分で選べます。
相手の承諾がなければ成立しないものの、放棄では不可能な柔軟な対応ができるのが売却・贈与の強みです。共有持分を手放したいときは、自分の意思や状況に合わせた方法を選ぶのがよいでしょう。
以下では、共有持分の放棄・売却・贈与の違いをまとめました。
放棄 | 売却 | 贈与 | |
---|---|---|---|
他の共有者からの同意 | ・不要 ・登記時には協力が必要 |
・自分の共有持分のみを売却するなら不要 ・売却先が他の共有者なら買主となる共有者との契約内容の同意が必要 ・共有不動産すべてを売却するときは全員同意が必要 |
贈与する側・される側の合意が必要 |
現金化 | 不可 | 可 | 不可 |
共有持分を譲渡する相手 | 選べない | 売却相手として選べる | 贈与相手として選べる |
手放す側にかかる費用 | ・意思表示を内容証明郵便でするならその費用 ・共有持分移転登記にかかる登録免許税(受ける側が費用を負担することもある) ・放棄しても移転登記をしなければ固定資産税の通知が来る可能性あり |
売却で得た譲渡所得に対する税金 | 共有持分移転登記に関する登録免許税など |
他の共有者が譲受側だった場合にかかる費用 | 固定資産税や不動産取得税など | ・固定資産税、不動産取得税など ・共有持分移転登記の費用は買主側負担が一般的 |
贈与税、固定資産税、不動産取得税など |
その他補足事項 | ・譲受側が持分を売却する際の譲渡所得税の計算において、放棄した人の不動産取得日・取得費は引き継がない ・譲受側が持分を売却する際の譲渡所得税の計算において、取得費は放棄により譲り受けることになったときの時価となる |
- | 不動産取得日・取得費を引き継ぐ |
共有持分の放棄は承諾不要とはいえ、登記時には他の共有者の協力が必須であるため、他の共有者が登記に非協力的だと放棄手続きが進められないケースもあります。
このようなトラブルを避けるためにも、実際には売却や贈与の手続きが取られることが多いものです。
共有持分の放棄と相続放棄の違い
共有持分の放棄と似た言葉として、「相続放棄」があります。
相続放棄とは、相続が発生した際に、被相続人が残した財産や負債をすべて受け取らないようにするための手続きのことです。相続放棄をした場合、共有持分を含めすべての財産を手放すことになります。
一方、共有持分の放棄は、すでに所有している不動産の共有持分を手放す手続きです。相続放棄とは異なり、所有権を一度取得した後に「放棄」という意思表示をするため、法律上は別物として扱われます。
共有持分の放棄と相続放棄の主な違いを以下の表にまとめました。
共有持分の放棄 | 相続放棄 | |
---|---|---|
放棄する範囲 | 共有持分のみの放棄になる | 共有持分以外の相続財産も一緒にすべて放棄する |
放棄するための手続き | 意思表示のみで成立する | 家庭裁判所での申述をおこなう |
放棄時の他の関係者とのやり取り | 原則として必要ないが、実情としては事前に話をまとめておく | ・原則として必要なく、放棄後に相続人となる人へ連絡する義務もない ・相続をスムーズに進めてもらいたいときには、次の相続人へ相続権が移ったことを連絡するのもよい |
放棄できる期限 | 他に共有者が残っているなら好きなタイミングで放棄できる | 相続開始を知ってから3か月以内におこなう |
放棄が成立するタイミング | 他の共有者への通知等、放棄の意思表示をしたとき | 家庭裁判所が相続放棄の申述を受理することで、相続開始時にさかのぼって効力が発生する |
単独でできるか否か | 単独行為なので1人で可能 | 単独行為なので1人で可能 |
相続財産に含まれている共有不動産を放棄する場合、相続登記のタイミングによって必要な手続きが異なります。具体的には、相続登記をおこなう前なら「相続放棄」、登記を終えて共有名義になったあとは「共有持分の放棄」となります。
なお、どちらの手続きを選ぶべきかは、相続財産の内容や相続時の状況によって異なります。
たとえば、相続する財産が共有持分を含めてプラスになる場合、相続放棄をせずあとから売却・贈与・放棄の手続きをしたほうが資産が増える可能性が高いです。相続放棄をすると、共有持分だけでなく、すべての財産を受け取る権利が消失するためです。
反対に、借金や空き家などマイナス財産が多い場合や、相続人同士で争いが予想される場合は、相続放棄によって一切の相続を避ける選択肢も検討する必要があるでしょう。
相続してから共有持分を放棄したほうが良いのか、相続放棄の手続きをしたほうが良いのか、判断に迷ったときは司法書士や弁護士など法律の専門家に相談してみてください。
共有持分を放棄するメリット
共有持分を放棄する主なメリットは、以下のとおりです。
- 不動産の共有によるトラブルを避けられる
- 共有不動産における税金を支払う必要がなくなる
次の項目から、それぞれのメリットについて詳しく解説します。
不動産の共有によるトラブルを避けられる
共有不動産は、売却・修繕・賃貸などの決定を行う際に、共有者全員の同意が必要です。そのため、不動産の活用方法に関して意見が食い違うと協議が進まず、家族や親族間で人間関係が悪化するケースも少なくありません。
たとえば、自分は売却を望んでいても、他の共有者が「思い出があるから手放したくない」と主張すれば、協議は平行線をたどり続けるでしょう。実際、弊社にもこのような共有者間の意見対立に関する相談が多く寄せられています。
共有持分を放棄すれば、共有者間で起こり得る煩雑な協議やトラブルから解放され、精神的な負担を大きく減らすことができます。
また、共有名義状態を放置すると、管理費や維持費など無駄なコストが発生し続ける場合があります。放棄によって早期に共有状態を解消することで、長期的な負担や争いの種を断ち切れるのも大きなメリットです。
共有不動産における税金を支払う必要がなくなる
共有持分を保有している限り、たとえ不動産を使用していなくても固定資産税の納税義務が続きます。共有不動産は所有者全員で税負担を分担するのが原則ですが、他の共有者が支払わない場合は、トラブルや未払いリスクに巻き込まれることもあります。
共有持分を放棄することで、税負担から完全に解放される点は大きなメリットといえるでしょう。
また、共有持分を保有したまま亡くなると、その持分は相続人に引き継がれます。相続人は不動産を自由に活用できないにもかかわらず、固定資産税や相続税などの負担だけを負うことになり、管理や処分に悩まされるケースも多くみられます。
あらかじめ共有持分を放棄しておけば、相続人に税負担の面で迷惑をかける心配もありません。
共有持分を放棄するデメリット
共有持分を放棄すると、以下のようなデメリットがあります。
- 共有持分を現金化することができなくなる
- 他の共有者の協力が必要になる
- 他の共有者が贈与税を支払わなければならない可能性がある
共有持分の放棄は、現金化できないうえに他の共有者に協力を仰がなければなりません。また、放棄すると共有持分を取得した他の共有者に贈与税が発生する恐れがあります。
そのため、基本的には放棄ではなく、現金化が可能な売却から検討したほうがよいでしょう。共有持分の売却に関しては「共有持分は放棄よりも専門の買取業者への売却がおすすめ」の見出しで紹介しているので、あわせてチェックしてみてください。
次の項目から、それぞれのデメリットについて詳しく解説します。
共有持分を現金化することができなくなる
共有持分の放棄は、所有権を無償で手放す行為であり、金銭的な対価は得られません。
一度放棄した持分を取り返すのは困難であるため、放棄した時点で現金化のチャンスを失ってしまうことになります。
共有持分は一般の買い手が付きにくく、通常の不動産会社では売却が難しいとされますが、専門の買取業者を利用すれば高値で売却できるケースも少なくありません。放棄を検討する前に、売却の可能性を確認してみることをおすすめします。
資産を少しでも回収したい場合は、放棄するよりも買取業者に売却したり、他の共有者に買取交渉をしたりしてみましょう。
他の共有者の協力が必要になる
共有持分の放棄は本人の意思表示のみでも成立しますが、放棄を法務局で登記する際には、他の共有者の協力が欠かせません。
持分を放棄するための所有権移転登記は、登記義務者(放棄する人)と登記権利者(他の共有者)が共同で申請する必要があるからです。申請の際には、登記権利者の本人確認書類や認印などを求められるため、「他の共有者が非協力的で手続きが進まない」という相談をいただくこともあります。
そのため、「共有者と関わりたくない」と考えている方にとって、登記の段階で共有者とやり取りをしなければならないのは大きなデメリットといえるでしょう。
共有者間のトラブルや手続きの滞りを避けたい場合、買取業者への売却を選んだほうがスムーズに進む可能性があります。
他の共有者が贈与税を支払わなければならない可能性がある
共有持分の放棄自体は「贈与」ではないものの、相続税法上では「無償で他の共有者に財産を与えた」とみなされるため、持分を取得した人に贈与税が課される可能性があります。
相続税法には、共有持分の放棄について以下のように記載されています。
(共有持分の放棄)
9-12 共有に属する財産の共有者の1人が、その持分を放棄(相続の放棄を除く。)したとき、又は死亡した場合においてその者の相続人がないときは、その者に係る持分は、他の共有者がその持分に応じ贈与又は遺贈により取得したものとして取り扱うものとする。
相続税法 第九条(共有持分の放棄)|国税庁
贈与税には110万円の基礎控除があるため、放棄する共有持分の評価額が110万円以下であれば、贈与税は発生しません。
しかし、不動産に資産価値がある場合は、評価額が110万円以上になる可能性も十分にあります。評価額が高くなるほど贈与税額も高額になるため、共有者から「贈与税がこんなに高いとは知らなかった」と不満を抱かれかねません。
共有持分の放棄によって税負担が発生するのかどうか、自分の状況を詳しく知りたい場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。
共有持分の放棄は早い者勝ちと言われる理由
共有持分を放棄する権利は共有者全員にあるため、自分よりも先に他の共有者が共有持分を放棄する可能性があります。
共有者全員が先に共有持分を放棄し、自分しか不動産の所有権を持たない状況になった場合は不動産の単独所有者となり、共有持分の放棄ができなくなります。単独所有権には「放棄」という制度が存在せず、売却や贈与など別の方法を取る必要があるためです。
共有持分の放棄は、放棄する意思表示をした後に、他の共有者とともに所有権移転登記の手続きをおこなうことで成立します。気づいたときには他の共有者の放棄が進み、結果的に最後の1人になってしまうケースも有り得るでしょう。
以上のような背景から、「共有持分の放棄は早い者勝ち」と言われることがあるのです。
ただし、最後の1人になってしまったからといって、必ずしも悪い状況になるとは限りません。不動産が自分の単独名義になるため、不動産や個人など第三者への売却や、賃貸活用がしやすくなるメリットもあります。
一方、不動産自体の市場価値が低く活用しづらい場合、単独所有しても不動産を持て余してしまう可能性が高いです。
そのため、不動産が不要な場合は、放棄にこだわらず早めに売却を検討するのが得策です。共有持分を専門とする買取業者に依頼すれば、スムーズに現金化が可能です。
共有持分は放棄よりも専門の買取業者への売却がおすすめ
共有持分の放棄は、言い換えれば資産価値のある不動産を無償で手放してしまうことになります。共有名義から抜け出せるメリットはあるものの、「もったいないかも」と感じる人もいるのではないでしょうか。
実は、共有持分は放棄だけでなく、自分の意思だけで第三者に売却することも可能です。共有不動産全体を売却するときのように、共有者全員の同意は必要ありません。
そのため「とにかく共有持分を手放したい」という場合には、放棄よりも専門の買取業者への売却がおすすめです。共有持分の買取実績がある買取業者なら、適正価格でスピーディーに買い取ってくれます。
さらに、共有持分移転登記などの手続きも、買取業者側の司法書士など専門家がサポートするため、他の共有者と煩雑なやり取りをする必要がありません。
以下では、共有持分を買取業者へ売却するのがおすすめな理由を解説します。
放棄するだけでは得られない現金を得られる
共有持分を買取業者へ売却すれば、放棄では得られない現金が手元に入ってきます。
共有持分は、他の不動産会社や個人への売却も可能です。しかし、実際には以下のような理由で買い手が見つかりにくいというデメリットがあります。
- 買手が知らない共有者と不動産を共有するため、トラブルのリスクがある
- 共有持分の部分しか使えないので、不動産としての活用幅が狭まる
このように、共有持分だけを取得しても不動産の活用がしづらいことから、一般の不動産会社では共有持分を取り扱っていないケースも多いものです。
そこで頼りになるのが、共有持分などの訳あり物件を専門に買い取っている業者です。専門業者なら、共有割合が少ないケースや活用が難しい物件でも、スムーズに買い取ってもらえます。
買取業者へ売却する主なメリットは次の通りです。
- 普通の不動産会社や個人だと買い取ってくれない共有持分買取に対応している
- 買手が買取業者自身なので、第三者の買手を探す必要がなく売却がスピーディーになる
- 豊富な専門知識や活用実績を基に査定するため、売却相場が低い共有持分でも適正価格で買い取ってくれる
共有持分の買取業者を探すときは、「共有持分の買取実績はあるのか」「他の業者と比較して査定額はどうなっているか」などを確認しておきましょう。
なお、訳あり物件買取専門業者クランピーリアルエステートなら、共有持分を含めた数々の訳あり物件の高額買取実績が豊富にあります。
また全国1,500以上の士業と提携しており、所有権移転登記、他の共有者との交渉、その他法的トラブルまでワンストップで対応が可能です。
共有者に所有権移転登記を協力してもらわなくていい
共有持分を放棄するためには、他の共有者に協力を依頼して共有持分移転登記をしなければなりません。
しかし、「共有者との関係を断ちたい」「やり取りしたくない」という理由で放棄を考えている方にとって、再び相手と関わらなければならないのは大きなストレスでしょう。
また、共有者の中には非協力的な態度をとる人も存在しており、登記に応じてもらえないケースも少なくありません。嫌がらせには「登記引取請求訴訟」を提起して裁判所に認められれば対処できるものの、裁判にかかる時間や費用の負担が非常に大きくなります。
一方で、買取業者へ売却すれば、買取業者が提携している司法書士や弁護士が登記手続きなどの法的手続きを代行してもらえます。そのため、放棄とは異なり他の共有者と直接かかわらなくて済むメリットがあります。
共有持分の放棄に必要な手続きと書類
共有持分の放棄に必要な手続きは、以下の通りです。
- 持分放棄の意思表示を行う
- 持分放棄の持分移転登記をする
- 他共有者が登記に協力しないときは登記引取請求訴訟を提起する
以下では、手続きのプロセスの詳細と手続きに必要な書類を紹介します。
持分放棄の意思表示を行う
共有持分の放棄は、まず共有持分を放棄する旨を他の共有者へ意思表示しましょう。意思表示の方法について法的な決まりはないため、口頭での伝達でも問題はありません。
口頭で伝える際には、共有持分の配分、所有権の所在、今後の対応などの細かいところをすり合わせておくと、後々のトラブルを防ぎやすくなります。
とくに贈与税や不動産取得税など、放棄した共有持分を受け取る側にかかる費用については早めに話をしておいてください。無断で進めると他の共有者は突然高額の納税を求められることになり、多大な迷惑をかけてしまいます。
なお、口頭だけだと意思表示をした証拠が残らないため、後から「自分は聞いていないと嘘をつかれた」「話したはずなのに忘れられていた」など、言った言わないの争いになるリスクがあります。口頭ですり合わせした後は、書面として残すために内容証明郵便であらためて意思表示をおこないましょう。
内容証明郵便で意思表示するメリットは、次の通りです。
- 登記引取請求訴訟になったときの法的証拠として使える
- 他の共有者も放棄したときに、誰の意思表示が早かったのか時系列が明確になる
内容証明郵便の効力を高めるために、作成は司法書士や弁護士などの法の専門家へ依頼することをおすすめします。
持分放棄の持分移転登記をする
共有持分の放棄は、単に意思表示をしただけでは成立しません。正式に放棄するためには、法務局で共有持分移転登記をおこなう必要があります。
共有持分移転登記を完了させることで、当該不動産において自分に所有権がないこと、他の共有者が放棄した分の所有権を主張できることが公的に認められます。
共有持分移転登記をするには、必要種類を揃えたうえで、共有持分がある不動産の所在地を管轄する法務局での手続きが必要です。共有持分放棄の登記は他の共有者との共同申請が必要になるため、あらかじめ協力を依頼しておいてください。
他の共有者に依頼する協力の具体的な内容は、以下の通りです。
- 法務局での共同申請(委任状を用いた代行でも可)
- 必要書類の準備
共有持分を放棄する人(登記義務者)、他の共有者(登記権利者)が揃える必要書類を以下の表でまとめました。
放棄する人の必要書類 | 概要 |
---|---|
登記申請書 | 法務局に登記内容を申請するための書類 法務局の公式サイトよりダウンロード |
登記原因証明情報 | 登記の原因となった事実・法律行為と、それに基づいた権利変動が生じたことを証明する情報 決まった書式はないが、報告形式の書面で作成するのが一般的 自分で作成または司法書士や弁護士に作成を依頼 |
登記識別情報 | 不動産の名義変更したときに、登記所から通知される書類 |
固定資産評価証明書 | 共有持分を放棄する不動産の固定資産評価額を証明する書類 都道府県や市区町村の役場の担当窓口にて申請 |
登記義務者の印鑑証明書 | 放棄する人の印鑑証明書 市区町村役場やコンビニにて発行 発行から3か月以内のもの |
登記義務者の実印 | 登記原因証明情報や委任状などには実印での押印が必要 |
委任状 | 代理人が登記する場合に必要 |
他の共有者の必要書類 | 概要 |
---|---|
登記権利者の住民票 | 放棄する人以外の共有者全員分 |
本人確認書類 | 共有者の本人確認ができるもの |
認印 | 共有持分の譲受側は認印でも問題なし |
他共有者が登記に協力しないときは登記引取請求訴訟を提起する
共有持分の放棄の意思表示をしたにもかかわらず、他の共有者が登記に協力しないときは、「登記引取請求訴訟」を提起することが可能です。
登記引取請求訴訟とは、共同申請が必要な登記において、登記権利者(放棄の場合は放棄する人以外の共有者)が登記申請に協力しないときに起こす手続きです。
裁判の判決で勝訴を得ることで、共有持分移転登記であっても単独で登記申請ができます。
登記引取請求訴訟の提起の準備には、「訴状」「登記事項証明書などの添付書類」「放棄の意思表示をした証拠(内容証明郵便など)」が必要です。
本人訴訟なら弁護士を依頼せずに進められますが、裁判の手間や確実性を考えると、弁護士に対応を依頼するのがよいでしょう。
共有持分の放棄に関する注意点
共有持分の放棄を検討するときは、以下の注意点をあらかじめ確認しておいてください。
- 自分の共有持分の一部のみは放棄できない
- 自己持分を他共有者に無償で譲渡したい場合は放棄ではなく贈与が向いている
それぞれの詳細を見ていきましょう。
自分の共有持分の一部のみは放棄できない
自分の共有持分の放棄するときは、一部だけではなく所有するすべてを手放す必要があります。
たとえば、「固定資産税が高いので共有持分を半分だけ減らしたい」などの要望は、放棄という手段では実現できません。
自分の共有持分の一部だけを手放したいときは、売却や贈与など他の方法で対応するのがよいでしょう。
自己持分を他共有者に無償で譲渡したい場合は放棄ではなく贈与が向いている
自分の共有持分を「特定の共有者を選出して無償で譲渡したい」なら、放棄ではなく贈与の手続きを選ぶのが適切です。
前述したとおり、共有持分を放棄すると、共有者の持分割合に応じて帰属させることになります。たとえば「放棄した後は、Aさんへ8割、Bさんへ2割を渡す」というように、誰にどの割合で渡すのかを自由に決めることはできません。
一例として、共有持分を放棄した場合にどのように持分が分配されるのかを紹介します。
共有者ABCの持分割合が1/3だったとします。この場合にAが共有持分を放棄すると、持分はBとCで半分ずつ分配され、それぞれ50%ずつ持分を所有することになります。
【共有持分の割合が異なるケース】
共有者ABCの持分割合が、A20%、B50%、C30%だったとします。この場合にAが共有持分を放棄すると、Bが12.5%、Cが7.5%を追加取得し、最終的にはB62.5%、C37.5%の割合になります。
このように、放棄では持分割合に応じて帰属する形になりますが、贈与なら譲渡する相手を指定したうえで自由な配分が可能です。贈与は「贈与側と受贈側の2者で交わされる法的な契約行為」であり、贈与契約に基づいて共有持分を特定の共有者に渡せるからです。
贈与契約にてお互いの意思表示が合致すれば、どのような契約内容であっても契約通りに共有持分の所有権が移転します。
たとえば「自分の共有持分をA8割、Bへ2割、無償で譲渡する」のように、贈与の内容を明確に指定できます。特定の共有者に確実に持分を移転させたい場合には、贈与が適していると言えるでしょう。
共有持分の放棄によって発生する費用
共有持分を放棄するときには、共有持分を放棄する側にも費用が発生します。また、放棄された共有持分を譲り受ける側はさらに高額の費用がかかります。
共有持分の放棄によって発生する費用は次の通りです。
- 登録免許税
- 司法書士への報酬
- 贈与税
- 不動産取得税
それぞれの詳細を見ていきましょう。
登録免許税
登録免許税とは、登記手続きをおこなうときに発生する税金です。
共有持分の売買や贈与では「共有持分を取得する側(買主・受贈者)」が負担するケースが多いですが、放棄では原則として「共有持分を放棄した側」が負担します。
ただし、誰が登録免許税を負担するのかは、共有者間で話し合って取り決めることも可能です。費用面でトラブルにならないよう、事前に誰が支払うのかを決め、全員の合意を得るようにしましょう。
共有持分移転登記にかかる登録免許税の計算式は、次の通りです。
登録免許税の税率は、登記の内容や建物・土地によって変わります。
土地の登記の場合 | 税率 |
---|---|
売買 | 2%(2026年3月31日までは1.5%) |
相続、法人の合併または共有物の分割 | 0.4% |
その他(贈与・交換・収用・競売等) | 2% |
建物の登記の場合 | 税率 |
---|---|
所有権の保存 | 0.4%(マイホームの新築や取得のときは軽減措置あり) |
売買または競売による所有権の移転 | 2% |
相続または法人の合併による所有権の移転 | 0.4% |
その他の所有権の移転(贈与・交換・収用等) | 2% |
参考:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
共有持分の放棄の場合だと、登録免許税は建物・土地ともに税率2%の適用です。
たとえば固定資産税評価額3,000万円、共有持分割合20%の建物の共有持分を放棄する場合、計算は以下の通りになります。
司法書士への報酬
共有持分移転登記は、手続きや書類作成が複雑であるため、登記に関する知識や実務経験がない人には難易度が高い手続きです。そのため、司法書士などの専門家へ代理申請を依頼する人が多いです。
司法書士の報酬は自由化されているため、事務所によっても異なりますが、放棄の対応に必要な司法書士への報酬は、1件あたり3~10万円程度になります。
報酬額は依頼する司法書士事務所や対応範囲などによって変動するため、詳細な金額を知るには料金表の確認や司法書士事務所への見積もりが必要です。
贈与税
共有持分を放棄した場合、贈与税の納税義務が生じるのは放棄した人ではなく、持分を取得した他の共有者です。放棄によって持分を受け取った共有者は「無償で財産を取得した」とみなされるため、贈与と同様に課税対象となります。
贈与税の課税価格は「(固定資産税評価額 × 放棄する共有持分の割合)-基礎控除110万円」の計算式で算出します。
上記で算出した課税価格に、金額に応じた贈与税率をかけ、税額控除を差し引いた金額が納税額となります。具体的な計算式は次の通りです。
適用する税率は、以下のうち放棄する共有持分が当てはまるほうの税率表から選びます。
- 一般贈与財産:特例贈与財産以外のすべての贈与
- 特例贈与財産:18歳(贈与された年の1月1日時点)以上の人が、直系尊属(父母や祖父母など)から受けた贈与
一般贈与財産の 非課税枠適用後の課税価格 |
税率 | 税額控除 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
特例贈与財産の 非課税枠適用後の課税価格 |
税率 | 税額控除 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
たとえば固定資産税評価額3,000万円、共有持分割合20%、一般贈与財産の共有持分を放棄する場合、計算は以下の通りになります。
(3,000万円×20%)-110万円=490万円
【適用される税率】
共有持分の価格が490万円なので、一般贈与財産・600万円以下のテーブルの税率30%・税額控除65万円を適用
【贈与税の計算】
490万円×30%-65万円=贈与税82万円
不動産取得税
不動産取得税とは、不動産を取得(相続を除いた購入、贈与、新築など)した人が支払う税金です。贈与税と同じく、放棄された共有持分を得た共有者が、不動産取得税の納税義務を負います。
共有持分の放棄で発生する不動産取得税の計算式は、次の通りです。
たとえば固定資産税評価額3,000万円、共有持分割合20%の土地の共有持分を放棄する場合、計算は以下の通りになります。
なお、2027年3月31日までは宅地等(宅地および宅地と評価された土地)の共有持分なら、固定資産評価額を2分の1にして計算できます。
まとめ
共有持分の放棄は、売却や贈与のように契約行為が不要で、他の共有者へ意思表示をするのみでも成立します。ただし、共有持分の放棄には以下のような注意点があります。
- 無償で手放すため現金化ができない
- 共有持分を譲渡する相手や譲渡割合を自由に決められない
- 放棄によって共有持分を受け取った相手には贈与税や不動産取得税がかかる
- 共有持分移転登記をしないと対外的には放棄が認められない
- 共有者が登記に非協力的だと、登記引取請求訴訟に発展するリスクがある
「共有持分で利益を得たい」「特定の相手だけに共有持分を渡したい」といった場合は、放棄よりも売却や贈与のほうが向いています。自分が持つ共有持分だけなら、他の共有者の同意を得ずに第三者へ売却・贈与が可能です。
共有持分をすぐにでも手放したいという場合には、訳あり物件専門の買取業者への売却がおすすめです。とくに共有持分の買取実績がある買取業者なら、スピーディーかつ適正価格での買取が期待できます。
弊社株式会社クランピーリアルエステートなら、共有持分の買取について無料相談・無料査定からの利用が可能です。共有持分の放棄や売却について悩みがあれば、ぜひ気軽にお問い合わせください。